リア充に憧れて   作:荒北龍

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英雄になりたかった少年

 

 

 

 

 

「··········タイヤキ、気がついたか」

 

「ハイにゃ」

 

「もんはんえろ○んの続きが未だ出てねぇ」

 

商人に頼んでいた今ハンターの間でものすごい流行っているR-18漫画、『もんはん○ろほん』。

なんでもこの本の内容が「これ今度試してみるわ」「こうすればあの野郎も··········」などと漢女(おとめ)ハンター達が片っ端から草食系ハンター♂を食い散らかしてるとか。

 

「アスール!アスールとアカムの兄貴!この後どうなるんだよ!?あとアスールのアイルーヘアバンド可愛い」

 

「何の話にゃ」

 

「もんはんえろほ○の話だけど」

 

「··········ご主人様、向こうで一瞬ヤバい気配を感じたにゃ。ご主人様も感じたかにゃ?」

 

「あぁ、さっきのね。俺が今まで会ったモンスターの中だとダントツでやべぇ気配だっな。多分【終焉(オストガロア)】と同じレベル··········それ以上だな」

 

「今噂の【黒龍教】と絡んでるんじゃないのかにゃー?」

 

「さぁな、俺たちはギルドに言われたモンスターを狩るだけだ。難しいことは『上』が勝手に考えればいい」

 

「そんなんだからご主人様は【番犬】なんで呼ばれるにゃー」

 

「うっせー」

 

「いいのかにゃ?このままじゃ一生ご主人様は【番狼】にはなれないにゃ」

 

「·························」

 

───あとは頼んだ

 

「いいんだよ、俺は所詮首輪の着いた犬ころがお似合いだ」

 

「はぁ、もういいにゃ。それよりそろそろアザミちゃんがクエストを受け取ってくれてる頃にゃ」

 

「もうそんな時間か。んじゃ、そろそろ行くか」

 

俺とタイヤキは本をアイテムボックスに入れると、そのままギルドに向かった。

 

 

 

 

▷▶︎▷

 

 

 

 

「アザミさんは来てませんよ」

 

「ま?」

 

「マジです」

 

着いてそうそう俺は頭を抱えた。

まさかいきなり弟子がバックれるとか思いませんもん。

 

「ご主人様、どうするにゃ?」

 

「どうするって、探すしかねぇだろ。とりあえず頼んでたクエストお願い」

 

しかし受付嬢はいつまで経ってもクエストを渡すことは無かった。

ギルドに入ってからあった違和感。

ギルドの中にいるハンターたちの目線と殺気。

 

「ダンテさん」

 

「なに、デートのお誘い?」

 

「ロスぞ」

 

「サーセン」

 

怖っ

まぁ受付嬢の言いたいことが分からないほど俺も鈍感系ハーレム主人公では無い。

 

「わかってるんでしょう」

 

「野郎とデートする趣味はないんだがなぁ」

 

「原因は貴方です、何とかしてください」

 

そんな話をしていると、一人のハンターが立ち上がった。

190cmほどある巨体に上位のレギオスシリーズ一式の男。

背中に担いだセルレギオスの素材で作られた叛断刀アルザバル。

かつてセルレギオスの上位個体三体の群れを討伐した知る人ぞ知る英雄の一人、ヒダン。

ハンターランク7、総合ハンターランキングで上位の6位の男だ。

 

「おい、あんた───」

 

「それ以上進むな」

 

その言葉でヒダンの足が止まる。

 

「むやみに殺気は出すもんじゃねぇ、特にG級ハンターにはな。俺じゃなかったらとっくに死んでるぞ」

 

「───てめぇッ!!」

 

ヒダンの逆鱗に触れたのか俺の肩を乱暴に掴んできた。

次の瞬間、轟音と共にヒダンはギルドの出口の方まで吹き飛ばされた。

その光景に、見ていたもの達は驚く。

 

ダンテは座ったまま、しかしヒダンはおそらくは顔面を殴られ吹き飛ばされている。

ギルド内には20人以上ハンターがいたにもかかわらず、ダンテが動いた瞬間を誰も見てないのだ。

 

「はぁ、めんどくさ」

 

「アザミさんはハンターたちの間ではアイドルですから」

 

「そうなの?」

 

「えぇ、何せ古龍ダレン・モーランをソロで討伐してこの街を救った英雄ですから」

 

「へぇ、あんなガキがねぇ」

 

「え?」

 

「気づいてないの?あれまだ未成年(14歳)だぞ」

 

「··········流石ですね」

 

ハンターとして狩りができるのはある例外を覗いて18歳にならなければ武器すら持たせて貰えない。

常識だ。

なのにも関わらず14歳の子供がハンターランク7であり、古龍を殺した英雄として祭り上げられているという事実。

おそらくはギルドの上が関係してるのだろう。

 

「どうせ実力があるからって理由で通したんだろ?」

 

「···············」

 

「ま、答えらんねぇか。変わんねぇな、ギルドも···············ハンターも」

 

「クエストです」

 

「どうも」

 

まるで早くこの話を切り上げたいと言いたげにクエストを出した。

 

「なぁ」

 

「なんですか?」

 

「これは予感だが、多分俺はそのうち死ぬ」

 

「···············くだらない」

 

まぁ当然か。

受付嬢にとっちゃハンターの死なんて日常茶飯事、顔見知りがひとり死のうが、例えG級ハンターの俺が死のうが「代役を見つけるのが面倒だなぁ」程度にしか思ってないだろう。

 

「だろうな。だが、もし俺が死んだら俺の財産は全部アザミに渡してくれ」

 

「何故ですか?」

 

「アレは英雄だ。これも俺の勘だが、アザミはいつかモンスターから世界を救う英雄になる。なに、あるべきものをあるべき場所に返すだけだよ」

 

アレはほとんど"師匠"の使っていた武器と装備。

師匠は本物の英雄だった。

英雄の為の、英雄の装備を、俺が使う訳には行かない。

本物の英雄こそが、あれを持ち、使うべきなのだ。

 

「····················あなただって」

 

「ん?」

 

「なんでもありません。分かりました、あなたが死んだら伝えておきます」

 

「どーも」

 

そう言ってダンテはクエストの書かれた用紙を持ち、ギルドの出口に向かう。

 

「最後に───」

 

「ん?」

 

「行ってらっしゃい。頑張ってくださいね」

 

受付嬢は、仕事笑顔を作り、手を振ってダンテを見送った。

 

「···············やっぱり今すぐこう───」

 

「はよ行けカス」

 

「はい、行ってきます」

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