それゆけ!テスターAC乗り大豊パイロット訓練生! 作:テキサス仮面
プロローグ
正直なところ、別にACに乗ることは好きじゃない。
単に工業用非戦闘MTのパイロットになりたかっただけで、それも単に操縦適性が高かったからという身も蓋もない理由でしかない。
安全な仕事でそこそこの収入でそれなりの生活を維持したいだけの現代っ子。
そのためなら被動的な状況だって目を瞑れると内心諦めた。
それが今はどうだ?
訓練成績が良いから戦闘MTに回されるわ、同盟企業の資源惑星進駐に回されるわ、ついにはAC輸送と来た。
ちょーっと目を瞑りすぎである。
好きではない。
好きではないが……誇らしく思っている。
期待の新人だと上官は褒め称えてくれるし、取り柄らしいものがなかった俺に春がきた様な気分だった。
ここまでテンションが上がってくると、行けるところまで行きたいと思うのが人間というものだろう。
しかし、しかしだ!
確かに訓練は上々で模擬戦も他者を圧倒、ACを相手にできると散々褒めちぎられたよ?
それで少々天狗になっていた自覚はあるけれど、この状況は身の丈以上の望みを抱いた俺への罰なんだろうか。
視界が赤一色で埋め尽くされる。
単に外の光景を目に投影しているだけなのに、脳が勘違いして痛覚を送ってくるの、めちゃくちゃ傍迷惑。上官、助けてください。
火炎放射器持ちとか、訓練で戦ったことないんですが。
衝撃とともに機体が動きを止め、操縦を受け付けなくなる。
やばいやばいやばい!!
熱やら衝撃やらで姿勢制御システムがやられた時に起こる「スタッガー」によって機体が硬直してしまった!
そして畳み掛ける様な衝撃の連続。
相手の接近武器から発せられる不愉快な金属音に、腹を直接抉られる様な錯覚を受けてしまう。
あぁ、まずい。これをもう一発喰らえば俺は間違いなく死ぬだろう。
アーキバスが嫌がらせに金をばら撒いているのか、はたまたどこかの勢力がベイラムを邪魔したいのか。
別になんだって構やしないよ!
どうせ撃ち合ってるコックピット内から、何か出来るわけじゃないんだし!
ひたすら脳内で喚き散らしていると、また強い衝撃に殴られる。
先程より大きな揺れに、後頭部をべらぼうに硬い座椅子にぶつけ視界に火花が散った。
火炎放射器の熱でシステムがあっという間に悲鳴を上げる。
またスタッガー取られた!
幸にも遮蔽物の間に滑り込むことができたので、追加の被弾は無し。
しかし嫌な予感がずっと付き纏うので、姿勢制御システムが戻るなりすぐにその場を離れる。
案の定、俺がさっきいた場所にバズーカが撃ち込まれ、汚い花火を地上に咲かせていた。
クソっ、またエネルギー切れかよ。
外部アーキテクトに委託した、洗礼されたアセン?
これが?
思わず叫びそうになるが、理性は死んでいないのでグッと堪える。
通信システムが音声を拾っている状態で、愚痴を他者に聞かれてしまうのはあまり良くない。減給だってありえるだろう。
まぁ、給料をもらえるまで俺が生きられるかわからないのだが!
乗れば乗るほど、滲み出る様に疑問と文句が内から溢れ出てくる。
すぐに切れるジェネレーターに、肩のミサイルを当てさせる気のない火器管制装置。
明らかに致命的に合わない内装を! 誰が! 組んだ!?
まだ普段使うMTの方がまだ戦える気がするんだが??
こんなものを天下のベイラムのAC部隊にお出ししようものなら、まぁた交渉という名のカチコミ仕掛けられるぞ上層部。
価値があると思えないMT級アセンと、工場用MT乗り希望だった訓練生を守るために、わずかな金額で護衛を引き受けてくれた傭兵が気の毒になってくる。
少し離れた場所で別の相手と戦うレイヴンという傭兵、俺より明らかに動きが良いのは分かるのだが、素人を抱えながらAC二機目を相手にするのは困難だろう。
あちらが相手している赤い機体が落とせたとしても……俺の方は逃げ切れる気がしない。
俺を追いかけ回す敵ACは、常に頭上に飛んでは火炎放射器でこちらの視界を奪い、広範囲型のバズーカを撃ち落とす。
スタッガー状態になったところですかさず、チェーンソーのような近接武器を打ち込んでくる。
接近したら分裂するミサイルってのも中々に痛い。どう避ければいいんだよ!
それに、一番深刻な問題がある。
「さぁ! 踊りましょ、新しいご友人❤️」
殺されるにしても、もっとまともな奴に殺されたい。