それゆけ!テスターAC乗り大豊パイロット訓練生!   作:テキサス仮面

14 / 28
4話 ドーザー他派勢力排除

 レイヴンが、大豊に。

 

 彼女のあまりの衝撃的な発言に俺は現実が呑み込めず、迎えのヘリが来るまでの記憶は欠落した。どうやってACを操縦していたかも定かではない。

 

<<エサを漁りにきたカラスかよ>>

 

 というクソ同胞たる涇河のクソ生意気な声で正気に戻る羽目になり、衝動的にACから飛び出して顔面に拳を叩き込んだ。

 もちろんレッドガン流だ、これでしばらくはおとなしくなるだろう。

 

「ここに置いてくぞ死に損ない!」

 

 前言撤回。もう数発必要だな。

 涇河をヘリのコックピットから引き摺り出して、わからせようと拳を振り上げる。

 

「いつ大豊に行くんだ?」

 

 可愛らしい声が俺の手を止めるように頭上から降ってきた。

 そこには、ACのハッチを開けて俺たちを見下ろすレイヴンの姿があった。

 

 


 

 

「クソッタレめ!」

 

 怒りを言葉にしたところで冷める気配が微塵も見えない。

 大豊上層部もレイヴンの補給及び一時滞在を許可した。

 有能な傭兵を飼い慣らしたいという下心が見え見えだが、だいぶ破格の対応だ。

 大豊ルビコン支部に着いたレイヴンを職員達が好意的に迎えてくれた上に、ちょっとした食事会をしようと盛り上がってきたのに……

 

<<ビジター! 私だよ カーラだ。あんた達を上層に案内する約束だが……その前にひとつ掃除を頼みたい。今から来れるかい?>>

 

 RaDに襲撃者撃退を依頼され、まさかの蜻蛉返りとなった。

 

 おのれドーザー。

 おのれコヨーテス。

 

「殺してやるぞ、ブルートゥ!」

 

<<声を下げろ銭塘>>

 

「すいません」

 

 俺がこうなるのも仕方がない。

 今回の襲撃者は「ジャンカー・コヨーテス」。なんとあのブルートゥの纏めるドーザー組織なのだ。

 俺たちが暴れ回った後を狙ってRaDを襲撃するぐらい昔からゴタゴタのある犬猿の仲だという。

 カーゴランチャーの件あるとはいえ正直気の進まない依頼だったが、カーラにブルートゥの存在を聞かされてしまった以上、俺は拳を振り上げるしかなかった。

 結局、エアの顔を見ることもできなかったなぁ。俺は肉包を無理やり呑み、強引に腹に押し込む。

 怒りは、向けるべき場所がある。しかも最適な場所がね。

 

<<おい! ACが出てきたぞ>>

 

<<見たことねえ機体だ。カーラの野郎、ビジターに金を積みやがったな!>>

 

 わらわらと蠢くMT達。その中身であるRaDと敵対するドーザーのコーラル特有の不快感がチリチリと肌を焼く。オエッ、呑み込んだばかりの昼食を思わず戻しそうになった。

 体調が悪くなるので相手にしたく無い反面、引き金は軽い。

 彼らも同じ人間のはずだが、長年刷り込まれた無意識の軽蔑に抗うことは困難だ。

 最悪だな俺。命の重さに違いなんてないはずなのに。

 

<<パンチャーとキッカーを突っ込ませろ!>>

 

 お馴染みの逆脚ガードメカが俺に向かってマシンガンを撃ち込み、弾丸の雨を潜り抜け足の太い機体が月餅を蹴る。まぁ大豊のフレームにはかすり傷しかつかない……と思いきや、足にパイルでも仕込んであるのか思ったよりダメージを受けたようだ。

 まぁ、汎用兵器相手に遅れをとるような奴はレッドガンに必要は無い。

 俺は月餅を旋回させ、適切な距離からマシンガンを撃ち込んだ。次々にレーダーから敵性反応が消滅し、ドーザーの連携はめちゃくちゃになる。

 

<<うちの技師が作ったカスタムMTじゃないか。あんなのまで市場に流れてるとはね>>

 

 とカーラはどこか自慢げに言った。

 さらっと機体をハッキングされ通信を繋げられていることはあえて突っ込まないでおこう。あとでログを見られたときに上に知られると面倒だし、自然に振る舞うのが一番いい……たぶん。

 

「よかったらうちにも流してくださいよ、特にトイボックス」

 

 もちろん冗談だ。俺にそんな権限があるはずがない。

 

<<構わないよ。こちらも大豊のレーションってのに興味があったからね>>

 

 残念ながらコーラルをキメたドーザーに、冗談は通じなかったらしい。

 RaDの連絡先の追加通知が視界の隅に顔を出した瞬間、俺は思わず頬を引き攣らせた。

 やっちまった! 

 上への言い訳へ思考リソースを割き、スマートに暴力で敵機を片付ける。

 ルビコンでの兵器購入先が増えるのはいいよね? いいよね……? ハッキングはぁ……知らない! 

 

<<クソッ! こんな奴がいるなんざ聞いてねえぞ……!>>

 

<<他のやつもやられてやがる! もう一体どっかにいるぞ!>>

 

 汚い鳴き声を上げるドーザーを見るに、レイヴンもなかなか爽快に暴れ回っているようだ。

 レイヴンはドーザーが設置したハッキングドローンの排除に回っており別行動中だが、この様子ならすぐに合流出来るだろう。

 

<<クソ! コーラル飲まなきゃやってられねぇぜ>>

 

 コーラルを直接服用? 体の防衛反応を覚醒だと勘違いしている中毒者どもめ。

 マシンガンを浴びせ、目の前に広がる死を傍観する。少し腹の底で高揚が湧き立つ感覚に後ろめたを感じつつも、流れに身を任せた。思考を止めるのは良くないのだけど、偶にはいいだろ。

 俺はコーラルによる吐き気を呑み込みつつ、淡々と排除をこなしていった。

 

<<なんだあ!? なんか来やがったぜ!>>

 

<<ありゃあ間抜けのラミーじゃねえな、RaDの新入りか!?>>

 

<<ミサイルで撃ち落とせ!>>

 

 次から次へとキリがない。洪水のように押し寄せるコーラルと耳障りな戯言に頭を痛めながら、敵の装甲を抉っていく。

 まったく、たまったもんじゃない。誰がドーザーの新入りだ? ふざけやがって。

 最悪な気分をそっくりそのまま蹴りに乗せ、細いレールの上に張り付くMTを蹴り落とした。

 遥か地面までご案内。ただし、1人で行け。

 

<<は、話が違うじゃねえか……。こんなのやってられるかよ!>>

 

 生き残ったMTの一機が戦線から離れていく。戦況を理解した賢い襲撃者が逃走を図ったようだ。

 戦意喪失を見逃すべきか、はたまたきっちり撃破するべきか。少しばかりの良心と責任感の間で揺れるうちに、無慈悲にも俺の頭上を越えて飛んできたミサイルによって梁上の君子は跡形もなく吹き飛んだのだった。

 

「レイヴン!」

 

<<こっちは終わった>>

 

 レイヴンが俺の横に降り立ったという事は、任務終了だな。よし、早く終わったな。

 

<<ついでにカウンタープログラムも完走だ。連中と主要取引先のサーバーを全部焼いておいた。これで暫くコヨーテ共も大人しくなる……まて>>

 

 カーラが何か言いかけたが、知ったことではない。さぁ、早く大豊に帰ってレイヴンと楽しい夕食を──

 

 

<<まさかこんなところで君と再会するとはな>>

 

 

 突然スピーカーから男の声が響く。それは若く透き通っており、俺が相手にしていたドーザー共とは全く異なるものだった。

 

 戦塵を切り裂くように高速で旋回し、粉砕されたMTの間に青い機体が降り立つ。それは大豊の樹大枝細を体現した重厚なACの対極に当たると言えるだろう。最低限の装甲しかない風を切るための無駄のない曲線で構成されたACに、思わず俺の目は奪われてしまった。

 

<<アリーナ登録情報から機体名「スティールヘイズ」と識別。ランキング9位……上位ランカーです!>>

 

 エアは素早く情報を集め、俺たちに警戒を促した。

 アリーナ、上位。嫌な響きに呼応して脳裏に過る黄色い影を振り払って新しい客人と対峙する。

 

<<やぁ戦友、久しぶりだな>>

 

 一番に口を開いた男は、慣れ親しんだ友人を相手にするように軽い挨拶をレイヴンの機体へと向けた。

 

<<お前は確かストライダーの時の……ラスティだったか?>>

 

 ラスティ。レイヴンがその名を口にした瞬間、驚愕と共に悪寒が脊髄を撫でる。

 アーキバスの強化人間部隊ヴェスパー、その四番隊長。競合企業の主力であり、立場だけで判断するなら間違いなく敵だ。

 幸いレイヴンと友好的? なのか、即時戦闘に入る様子は見せていなかった。

 だがそれは警戒を解く理由はならない。

 

「こちらに交戦の意向はありません。そちらの目的は何でしょうか?」

 

 マシンガンの引き金に指をかけたまま、俺は言い放つ。

 

<<まぁ、小遣い稼ぎとでも言っておこう>>

 

 見え透いた嘘つきやがって。華のヴェスパーの隊長がわざわざ端金欲しさにドーザーの依頼を受けるのか? イグアス先輩ならやってそうだけれども! 

 

<<君達もこんなところで一体何をしている? ここにあるのは古びた輸送施設とドーザーぐらいのはずだが……>>

 

「だから、なんです?」

 

 警戒を最大まで引き上げ、V.Ⅳの発言を聞き漏らさないよう気構えた。

 

<<君と戦友は一体どんな関係なのかな?>>

 

「は?」

 

 突然の場違いな質問に面くらったのも無理はない。レイヴンとの関係? これはまじめな質問なのか、それとも……何? 何なの!? 

 命の恩人、レッドガンの仲間、戦友。様々な呼称が脳内でぐるぐると踊る。

 

「ご、ご友人ですよ! ですよね?」

 

 俺は気が動転し、思わずみっともない裏声が出てしまった。

 

<<ご友人>>

 

 永遠とも感じられるような冷たい間を置いて、

 

<<そうか、オレとお前は友人なんだな>>

 

 とどこか納得したようにレイヴンは肯定した。た、助かった……!! 

 

<<友人、なるほど>>

 

 対してラスティは声こそ明るいものの、妙に重さを感じない。確認したいことはそんな事じゃないってか。気が動転した俺が馬鹿みたいじゃないか。いや馬鹿なんだけども。

 

「そうです友人です、個人的に仲良いんです。企業が贔屓にしているだけじゃないんですよ」

 

 安堵のあまりご友人マウントを口走ってしまったが、この発言は良くなかった。

 

<<ほう、君は個人的交友のある独立傭兵を自社の輸送機に乗せられるほど発言力があるのか。よほど将来有望なのだな>>

 

 ラスティのその言葉にゾッと冷や汗が溢れる。此奴、いつから見てた……!? 

 何が小遣い稼ぎだ、明かに俺とレイヴンに探りにきているじゃないか! おそらく俺たちの目的もはなから知っていたに違いない。

 この男、腹の底が読めやしない。ニヤついた笑みを貼り付けた五花海先輩の姿がちらついて見える。

 

 ……だが、何だろうこの違和感は? 

 

 奴の目的は何かと必死に思考を巡らせるが、皮膚の妙な疼きが集中力を削ぐ。

 ラスティは強化人間部隊ということもあり、強化人間であることは間違いないだろう。

 だか、この感覚は旧型強化人間よりも解放戦線といったルビコン土着に近い。ような気がする。多分。

 これは個人的な感じ方(俺以外に感じられる人間がいたら教えてくれ!)なのだが、コーラルを使用した旧型強化人間はコーラルが頭の中にしかないのか、コーラルの感覚は一点集中。

 解放戦線達ルビコニアンは地元の食料や大気などから常にコーラル汚染に晒されているからか、全身から満遍なく淡いコーラルを感じる。

 そしてドーザーは、一言で言うと最悪でありこれ以上具体的な言葉に表したくない。

 

 とまあ完全に俺の勘違いかもしれないが、少しカマをかけてみるか。

 

「あなたほどの才能はありませんよ。しかし、ルビコニアンが企業に尻尾振るってプライドとかないんですか? もしかしてスパイ目的です?」

 

 一瞬、ほんの一瞬だけラスティの声が揺れたのを俺は聞き逃さなかった。

 

<<大豊は無礼なのが売りなのか?>>

 

 なんか、こいつの立場がわからなくなってきたぞ……どうしよう。

 そんな要らぬ発言で余計に思考が回らなくなってきた俺に、想定外の救いの手がやってきた。

 両者睨み合いが続く中、突然どこからともなく現れたレーザーが俺の機体を焼いたのだ。

 

「くそ! これが目的か、ヴェスパー!?」

 

 エネルギー武器の耐性が低いとはいえ、並のACより頑丈な大豊ACだから致命傷を避けられたがものの、余りある殺意に辟易とする。

 俺はマシンガンとミサイルのロックをラスティの機体に定めた。これがアーキバスのやり方か! 

 

<<待て! 私も襲撃されている!!>>

 

 ……なんだって? 

 こちらに飛んでくる攻撃をギリギリで回避しつつ、俺は半信半疑に周囲に目を配った。

 グリッドの外壁側から複数のレーザーが俺たちを狙い、他にも何体かが姿を隠しつつ攻撃をしてきている。

 確かにここにいるAC全てが攻撃対象のようだ。アーキバスの罠でないとすると(ラスティがアーキバスから恨みを買ってる場合は別だが)これはどういうことなんだろうか。所属不明機体による襲撃、しかも複数機。

 

 とにかく生き延びることを考えねば。

 

<<暗号通信を行う不明機体……!?>>

 

「エア、生体反応は!?」

 

<<ありません! 無人機です!>>

 

 俺の声にいち早く反応したエアは、ベテランオペレーターのような貫禄を持って対応する。

 

<<スキャナーを使え。迷彩にはマーキングが有効だ>>

 

 レイヴンが何かを思い出したらしい。スキャンとは大豊頭には相性の悪いことで! 

 アドバイスに従ってスキャンを放つと、視界に見覚えのない輪郭が浮かび上がった。

 それは懐中時計に手足が生えたような珍妙な姿をしており、鞭のような武器を月餅の装甲に叩きつけてきた。

 コックピットを強い振動が襲う。結構痛いなこれ!? 

 エネルギー武器なのかパルス武器なのかはわからないが、ドーザーなんかよりもずっと危険だ。

 ならば速戦即決! しかし集中してマシンガンを放つも、一向にダメージが入らないではないか。もしやシールドでも展開しているのか? 肩に積んでいる高火力のミサイルを横から叩き込んでやりたいが、目標にプレッシャーを与えるため追尾性能が高い割には速度の遅いミサイルは長時間戦場にとどまるため、敵味方入り混じった混戦状態では不向きだ。

 やるなら、接近戦か。

 

<<どいてろ>>

 

 俺の後方からABで飛んできたレイヴンはブレードを展開し、捉えた不明機体を薙ぎ払う。

 スタッガーにより硬直した機体に向け、俺はマシンガンを叩き込んだ。

 対処法が定まれば、あとは冷静に対処するだけ。敵の武器のリーチを気にしつつ、しっかりとシールドを割ってダメージを与える。

 レーザを放つ機体は射線から位置を特定したラスティに食い付かれ、もはや脅威ではない。

 数体撃破すると攻撃は止まった。どうやら撃ち止めのようだ。

 

<<迷彩にシールドときたか。これは一体どの勢力だ……?>>

 

 ラスティ周りには不明機体の残骸が散らばっており、スキャンを重ね情報を集めているようだ。

 

<<戦友、これに心当たりは?>>

 

<<前にBAWSの工廠で戦ったことはある。だが、正体はわからねえ>>

 

<<そうか……>>

 

 俺には見当もつかない。

 アーキバスとベイラムと独立傭兵、それぞれ三者が居合わせた場を狙ったのはなぜか。何もわからないし、憶測すら立てれない。

 ただ、ルビコンでのコーラル争奪戦は海を越えた先で大きく変わる。そんな漠然とした予感を俺は感じ始めていたのだった。

 

<<……あれについてはうちの技師たちで調べておこう。そしてビジター、悪い知らせだよ>>

 

<<どうやらクソッタレのコヨーテどもが封鎖機構にチクリやがったらしい。封鎖機構の連中、カーゴランチャーを潰すつもりだ>>

 

<<ビジター! 30秒で支度しな!>>

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。