それゆけ!テスターAC乗り大豊パイロット訓練生!   作:テキサス仮面

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3話目

 ベイラムグループ専属AC部隊レッドガン。

 我が大豊核心工業集団の同盟企業、ベイラムの主力部隊。

 

 そこに正式に配属されました。

 

 厳密には出向扱いになっているらしい。

 大豊核心工業集団に所属したまま、レッドガンに?大丈夫か? 

 

 競合企業であるアーキバスのAC部隊ヴェスパーは企業そのものであるが、レッドガンはベイラムの精鋭部隊とはいえその実態は元競合企業(ファーロン)所属であるミシガン総長の私兵部隊同然なのだ。

 両社の仲は以前よりマシになったとはいえ、詳細以外は大豊(他所)の木っ葉訓練生でも知っている、同盟企業(ベイラム)の無視できない不安要素。

 そんなところに大豊の新人が? ……すごくややこしいです。

 

 もしかしてベイラムやレッドガンからの()()のクッションになる事を期待されてる?

 ただえさえ同盟とか言っておいて、ベイラムから子会社のような扱いをされてる大豊だ。雑に扱われそうな予感が嫌でもよぎる。

 

 物量による制圧出来てますか?

 

 現状ルビコンで動けるレッドガンは6人。

 対して対立するアーキバスの()()()()()()9()()。数ですら負けて無いか? 

 時代は樹大枝細ですよ、ご友人。

 

 ……怪電波を受信してしまった気がする。

 

 悪夢の断片を無理やり振り払い、現実に逃避しよう。

 色々終えて、今はナイルさんに連れられ施設内を移動している。

 道すがらすれ違う人たちには歓迎の声を掛けられるが、そのたびに愛想笑いを浮かべる自身に対し嘔吐を催していた。

 

 偶々生き残っただけで、俺の勝ち取ったものではない。

 

 入隊試験も無しに突然今日からレットガンだと言われても、実感は一ミリも湧かない。

 ランカー相手に与えられた機体で戦闘に生き残った時点で合格だとと言われても、それはレイヴンのおかげに過ぎないのだ。

 生命があっただけでも、幸運に思うべきだろう。

 そんな俺の憂鬱が顔に出ていたのか、

 

「元々ベイラムは補充要員として優秀なパイロットを欲していた。テスターACの輸送に成功していた場合でも、レッドガンMT部隊行きはほぼ確定していただろう。しかし、ここまで優秀だったとは…大豊も侮れんな」

 

 とナイルさんは苦笑する。

 

「結果としてテスター機体の輸送自体は失敗に終わってしまったが、ある意味成功だったと言える。誇れ」

 

 そう言ってナイルさんは俺の肩を叩くが、気分が軽くなることはない。テスターAC自体には初めから期待していなかったという風に聞こえるのですが、気のせいですかねぇ!? 

 

 進んだ先、自動ドアの向こうはただっぴろい空間で、MTやACが立ち並んでいる。目的地はここ、格納庫。その隅っこの方だ。

 

「これが今日からお前の乗る機体だ」

 

 整備員の方々に頭を下げて、俺は与えられた機体を見下ろした。

 

 手足は外に向け細くなり、コアは重厚。頭部は必要な機能だけをまとめ、まさに樹大枝細を体現した……

 

 どこかで見た機体です、ありがとうございました。

 

 精神的に疲れ果てた俺を、武装以外上から下まで我が大豊のパーツで構成された、テスターACと瓜二つの機体が俺を出迎えた。

 

「流石大豊製だな。ダメージのほとんどが外部装甲のみに留まっていた。おかげでお前に渡すまでに修理が間に合った」

 

 確かにレッドガンに届けるものだったけれども! 

 以前と違い、肩は丁寧に赤く塗られているが、邪気祓い……じゃなくてレッドガン仕様というやつなのだろう。あのアセンで前線にまた出ろと……? 頭が、痛い。端末に転送された資料に目を凝らすも、そこに並ぶパーツはどれも以前見たものばか……

 

 おや? ジェネレーターの名称が違う。あの極端な《DF-GN-02 LING-TAI》が、《DF-GN-06 MING-TANG》に変わっているではないか! 同じく自社製品ではあるが、カタログスペックを確認する限り、かなりバランスの取れているジェネレータだ。

 これは一体? と顔をあげると、

 

「大豊と()()をした」

 

 ナイルさんは短く答えた。

 

「実際にうちの奴らに乗ってもらったんだが、皆使い難いと口を揃えていてな。……大豊はアレが(テスターAC)本当に良いアセンだと思っているのか?」

 

「どうなんでしょうかねぇ……」

 

 こればかりは苦笑いで返すしか無い。俺が一番知りたいよ。想定外のサプライズは喜ばしいのだが、ついでにあの適当すぎる名称のブースターを推力高いのにして、FCSもミサイルロック性能を高くして欲しい。

 望みすぎ? 冗談? いやいや、本気ですよ。

 

「ところで機体名はどうする?」

 

「あっ」

 

 


 

 

 俺は自身のデバイスで、ルビコンのとあるサーバーに接続した。

 

 かつて自由と言われたインターネットは、生成AI技術の氾濫により情報の信用性を失った無法の荒野となり、今の時代ネットとは企業に管理されたローカルネットのことを指す。

 あらゆる人々を距離を超えて繋げる可能性は、その可能性によって自壊したと、何処かの学者が言っていた……ような気がする。

 

 

now loading……

 

「傭兵支援システム「オールマインド」へようこそ。新たな傭兵である貴方を歓迎します」

 

 この手の傭兵雇用システムは多岐に渡り、ルビコンでは昔からこの「オールマインド」というものが使われているらしい。

 発祥も実態も不明だがシステムとしては非常に優秀で、コーラルに関わる技術との関係性も噂されている。

 ルビコンでコーラルを求めた傭兵家業をやるなら登録するに越したことはない。

 しかし、この焼けたルビコンのどこにオールマインドのサーバーはあるのだろうか?

 アイビスの火という大災害と封鎖機構による遮断によって、この星にまともな街や会社もほとんどないと言って過言ではない。

 

「我々オールマインドは傭兵となられた方々に、ネットワークを通じて様々なサポートを行っています」

 

 そのサポートは多岐に渡り、パーツの売買に高性能なシュミレーター、データ採取と引き換えにオールマインド製の高性能パーツを提供したりと、かなり手厚いと聞く。

 

 ますます怪しい。

 たかだか人材斡旋のシステムにしては異様な充実度じゃないのか?

 しかもコーラルで焼かれ封鎖されていた辺境ルビコンで?

 

 実際はコーラルの情報をリリースした元凶で、集まって争い始めた傭兵達相手に武器を売りつつ戦闘データを集めるのが目的の黒幕的存在なのではなかろうか?

 頃合いを見てコーラルを掻っ攫ったりしないだろうか?

 せめて大豊に損害を与えるな、ベイラムは痛い目見てもいいかな…?

 

「本日はどのようなご用件

 

「機体名とエンブレム決めるの手伝ってください……!」

 

 


 

 

 オールマインドとの激闘を終え、何時間も睨み続けたタブレットが滑り落ちる。どっと押し寄せる疲労感に、俺も格納庫の床に倒れ込んだ。

 

 AI? とプロンプトの殴り合いは精神を削る。

 結局満足できるものには辿り着かず、最終的に通りすがりの先輩に「縁起がいい」とお出しされたエンブレムを選ぶこととなった。

 虚無時間ぇ……。

 いや、そもそも「かっこいい奴がいい。棺桶になるかもしれない物だし、なんか良い感じのやつ」とかいうアバウトな指示がまずかった。

 俺自身に具体案は無く、AIは指示通り出力する無数の虚無を選別し、無に返す簡単なお仕事。

 AIって人の仕事を楽にする存在じゃ無いの? 絵の価値を壊滅させただけでは?? 

 

 しかし「古来より幸福の象徴であり、風水的に縁結びも期待できる」という謳い文句に流されるまま選んでしまったが良かったのだろうか? まぁいかにも大豊系って感じの人だったし悪い人では無いだろう。

 もういいやぁ……機体名も覚えやすいのでいいや…………。

 

 実質個室状態の格納庫の床に転がり、見慣れぬ天井を仰ぎ見る。

 縁結び、か。その言葉に、一人の少女の顔が浮かぶ。

 端末を確認するが、返信は一向に返ってこない。

 まぁ、そんなもんでしょ。次に会うことはないかもしれないし、会ったとしてもそれは戦場のはず。期待はしていな

 

 新着メッセージ 一件。

 

 その文面にあわてて端末を手元に引き寄せた。

 期待はしていない。だが、来たら嬉しい。嬉しいったら嬉しい。俺は焦る気持ちに押されながら、メッセージの再生ボタンを押した。

 

『どうして感謝するんだ? オレは任務に失敗したんだぞ』

 

 それは少女の声だ。

 男のような口調は平坦で、下手なCOM音声よりもよっぽど機械らしかった。一見チグハグのように感じるが、記憶の中の姿とこの感情を感じさせにくい声を重ねると不思議と噛み合う。

 かわいいな……。何度も再生したくなるがそれは後にしよう。

 

『貴女がいなければ、俺は死んでいたでしょう。貴女は命の恩人なんです。おかげでレッドガンに入ることができましたし! いくら感謝しても足りませんって! 何かあったら言ってください! 俺にできる事ならなんでも相談に乗ります!』

 

 そんな感じで二十分ぐらいボイスメッセージに入れてました。

 調子こいて色々伝えてしまったが……まぁヨシ! 

 窮地にあっても攻めることを忘れなかったレイヴンには頭が上がらない。いやぁ、早速縁結びの恩恵があったな! いい先輩に恵まれて幸せだよ俺……。

 

 

 


 

 

「メッセージって、これでいいのか?」

 

「ああ、問題は無い。…人工喉頭はどうだ?」

 

 幼さをまだ残す少女は、首輪によく似た機器に手を当てながらゆっくりと首を縦に振った。

 整っているその面立ちに感情らしきものはなく、さながら精巧な人形のようである。

 

 コーラルを用いた旧技術を用いた強化人間C4-621 レイヴン、彼女はそのなかでも「失敗作」に分類されていた。

 第4世代型にありがちな感情の欠如だけではなく、戦闘CPU以外の価値を持たないほど人間の機能を失っている。

 

 もはや「人間」と呼べるかどうかすら怪しいものだ。

 

 そんな彼女が先日のテスターAC護衛の際に共闘した青年のメッセージに返信したいと自ら言い出したのだ。

 ウォルターの頬が無意識に緩んだのも無理はない。

 

「621、例の訓練生が気になるのか?」

 

「わからない。よくわからない」

 

「……そうか」

 

 友人。

 もしかしたらすべてを奪われた彼女にも、友人という大切な存在ができるのではないのか?

 そのためにも一刻も早くコーラルを見つけ…彼女を解放せねばと、自身を炎に焚べ続けきた男は決意をより一層固めたのであった。

 

「確かレッドガンに配属されたと聞くが、名はなんという?」

 

「G12銭塘」

 


 

 登録番号 Rb81

 識別名 銭塘 

 機体名 月餅

 エンブレム 「吊られたウサギ」

 

 




なお元訓練生君は後日多額のエンブレム代金を五花海に請求された模様。
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