それゆけ!テスターAC乗り大豊パイロット訓練生!   作:テキサス仮面

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4話目 多重ダム襲擊①

 レッドガン入りして少し経ったG12銭塘です。

 

 大豊訓練生時代が霞んで見えるぐらい訓練が辛い。

 

 しかし、スパルタと言っても計算尽くされたものであり、決して根拠なき精神論で殴ってくることはなかった。

 この厳しさは生き延びる力をつけさせる為であり、断じて英雄にさせるためではない。ある意味優しさでできている。

 というかあまりやりすぎると兵士が育たない以前に、憎悪を肥大させた敵を作りかねないのでバランスが大事なのだろう。

 

 それに先輩は大体良い人達だ。

 

 ミシガン総長と対面してすぐに「忠言は耳に逆らいて行いに利あり」という古代の賢者の言葉を思い出した。

 彼は鬼軍曹という悪評に反しとても真っ当な人物で、罵倒に聞こえるその言動全てが慢心を戒める為の鞭なのだ。

 大破したとはいえランカー相手に立ち回れた操縦技術への自信を、完膚なきまでに叩き潰してくれたのが記憶に新しい。

いや、本当に強い。ACの操縦技術もさることながら、人を惹きつける力が凄まじい。

 レッド先輩が彼に憧れ、エミュまでする程の熱量を持つのも納得がいく。

 

 そんなミシガン総長を支えるのがナイル副長だ。

 彼はレッドガンの前身となるベイラム治安維持部隊のトップで、元々競合企業の人間であったミシガンを引き入れてしまうほどの手腕の持ち主であるらしい。

 荒くれ者…もとい、体育系の人材ばかりのレッドガンの中では、ある意味異質とも取れる。

 石橋を叩いて渡るという言葉がぴったり当てはまるようであり、その慎重かつ堅実な気質は本当にベイラムの人間なの???と首を傾げてしまうほどだ。

 彼はからは実践訓練だけでなく、兵站やMT部隊との連携の重要さを叩き込まれ、俺の頭は定期的にスタッガーしてますが元気ですよハイ。

 

 五花海さんは元詐欺師ということもあり、非常に頭の切れる人だ。

 エンブレムをぼったくられた件は報告済なので、いきなり借金を背負った新人は爆誕せずに済んだ。捕まってからも詐欺を働くな。

 お詫びということで丁寧に資産運用を教えてもらったのだが、給料の一部を搾取されそうだったのでナイルさんに突き出した。

 

 重火力のタンクを駆る、というのが風貌からすぐに推測出来るのが、ヴォルタ先輩の特徴だろうか?

 彼のACの操縦技量の高さに対する自信は、傲慢に近いところがある。

 しかし、五花海さんから割と真面目に商売を学んでいたりと意外に堅実さを兼ね備える面もある。

 将来はナイルさんやミシガン総長のような重鎮に違いない。

 そんなヴォルタ先輩に食堂からクラッカーをちょろまかす方法を教えてもらい、翌日食堂のおばちゃんからしっかり説教されたことは忘れないぞ。

 

 イグアス先輩がレイヴンと同じ術式の旧型強化人間と知ったときには、思わず二度見したものだ。特に深い意味はない。本当にない。

 そんなイグアス先輩に賭博に誘われ、しょぼいイカサマで有金巻き上げられたので上顎を殴り飛ばして取っ組み合いになったのは、つい昨晩のことである。

 

 レッド先輩はとても面倒見がいい人だ。

 幼い兄妹達に少しでも良い生活を送らせたいと死に物狂いで精鋭部隊にまで登ってきた彼は、小説やドラマといった物語の主人公のような好青年だ。

 欠点らしい欠点は、その熱意あふれた性格ぐらいだろうか?

 イグアス先輩をAC模擬戦で倒すべく特訓に付き合ってもらうと、全力で対応されて翌日医務室のベッドに転がる羽目になるので要注意だ。

 

 うーん、実に個性豊か。俺なんか埋もれてしまうな。このメンツの中で目立ちたいなら女装するぐらいしないと無理そう。(してどうするんだ!)

 

 訓練明けで朝から疲れ切った俺は、大豊以上に騒がしい食堂で麦茶のようなフィーカーを啜り、漠然とした思考を浮かべながら行き交う人々をぼんやりと眺めた。

 麦茶だなこれ。レッドガン流訓練に加え、戦闘技能教習シミュレータに入り浸っている影響で想像以上に疲弊しているのかぁ。

 頑張れ、俺。今日の仕事が終われば休みがもらえるはずなんだ……! たぶん。

 眠気覚ましになるかなと周囲に耳を傾けると、解放戦線の武装採掘艦が撃破されたと密やかな話題になっていた。

 もしやと思い、俺は端末を取り出し彼女へメッセージを送ってみる。

 

『もしかしてストライダーを撃破しました?』

 

 すると、今回はすぐに返信が返ってきたではないか! 内心小躍りしつつメッセージを再生する。が、

 

『いや、護衛に失敗した』

 

 どうやら失言だったらしい。俺のバカ! 

 

「クソ新人、てめえ誰と話してやがる」

 

 向かいの席から携帯シーシャを蒸しながらガンを飛ばすイグアス先輩を無視して、適切な弁明をするべく頭を悩ませる。

 食堂が混んでいたため仕方がなく空いていた席に座っただけで、何故ガンを飛ばされるのだろうか? 

 

「おい、聞いてんのかクソ兎」

 

 五花海さんに買わされたエンブレムのせいで、すっかり兎呼ばわりだ。

 確かに大豊経済圏や大豊宿舎は、兎小屋と揶揄されるくらいには狭かったけれども。

 

「クソ兎って名前じゃないので」

 

「……んだと? てめえ表出ろ。そのふざけた態度矯正してやるよ」

 

 旧型強化人間特有の赤い光を伴った鋭い視線で殴りつけてくる。

 イグアス先輩の目、レイヴンさんより綺麗な色してるなぁ。

 

「俺に構うくらいなら賭け事の腕を良くした方が良くないですかね。また五花海さんに持っていかれたんでしょ、先輩?」

 

「あぁ!?」

 

 乱暴に胸ぐらを掴まれ、至近距離故シーシャの甘い匂いが鼻をつく。

 おそらく紙タバコを賭博で巻き上げられ、嫌々不味い携帯シーシャを吸っているのだろう。

 だから朝っぱらから機嫌が悪いのかぁ、傍迷惑だなぁ。距離感の狂った狂人に比べればよっぽどマシだけど。

 

 星間航行が一般化したこの時代において、管理や原料生産に手間を食う紙タバコは嗜好品の中じゃかなり高額だ。

 しかも星外からの補給が困難なルビコン下ではさらに値段が跳ね上がる。もはやその価値は(少なくともレッドガン内においては)CORM(企業保証通貨)に並ぶのだ。

 というわけで一般的には香料や化学物質で作られた液体リキッドを燃焼する電子シーシャ(タバコ)が代用品としてその位置に収まっている。

 噂によると、ルビコンでは中にコーラルを入れた物が出回ってるとかなんとか。

 ……想像するだけで胃がムカムカする。

 そこに降りかかるゲロ甘いシーシャの煙と、喉にこびりつく不味いコーヒー。それが合わさり、口内に酸味がせり上がってきたではないか。

 

 やばい。

 吐きそう。

 

 イグアス先輩の拳が俺の右頬を撃ち、

 胃の内容物が逆流する。

 

 この一件以来、G5をゲロで撃退した新人と呼ばれるようになってしまった。

 これがレッドガンとしての初出撃の朝の出来事である。

 

 


 

 

「これよりベイラムグループ専属AC部隊レッドガンによる作戦行動を開始する。突入しろ、役立たずども!」

 

 レッドガンとしての初めての正式な仕事、解放戦線の治水拠点ガリア多重ダムの変電施設破壊。

 

 ようはインフラ破壊任務というやつだ。

 

 ベイラムはルビコン進駐初期から幾度もルビコン現地住人である解放前線から激しい抵抗に遭っており、上はキツイお灸を据えたいらしい。

 

 雪により視界が悪い。見ているだけで体温が下がっていくような気がする。あぁ、信じるべきは使い棄てカイロ! 

 ヘリから投下されるなり、両翼に展開した先輩たちの背中を追うように俺は機体を走らせる。

 この短期間で厳しい特訓で叩きこまれ、跳躍も回避も呼吸のように思考を介さずこなせる様になってきた。

 しかしレッド先輩ならともかく、イグアス先輩に勝てるビジョンが見えない。 

 現在進行形でチリでも払うかように解放戦線のMTを撃破していく先輩の動きに、より一層劣等感と憧れを募らせてしまう……。

 

 でも、そんなことよりレイヴンだ。

 

 レイヴン! そう、俺を護衛してくれたレイヴン。

 今回の任務はなんとレイヴンが同行しているのだ! 

 

「今日はよろしくお願いします、レイヴン!」

 

「ああ、お前か。確か月餅?」

 

「銭塘です」

 

 愛嬌ある丸い機体……ではなく、イグアス先輩と瓜二つの黒い機体から、メッセージの時と同じで抑揚のない通信が返ってきた。

 

 軽い挨拶を交わしてくれたし機体名も覚えてくれてたし、吐き戻しも忘れるくらいテンションが上がってきた。

 彼女は全身ベイラムのパーツで固め、武装は以前の組み合わせにミサイルを増量。流石強化人間だなぁ。

 俺なんか武装を変えるだけでもたつくのに、全身のパーツを入れ替えることなどできる気がしない。

 ブースターを先輩達が使ってるファーロン製に変えてみたいんだけどなぁ。

 いっそのこと、この推力の低いブースターを活かせるアセンを考えるのも一興かもしれない。

 

 もしかしてACに乗るのは好きじゃないが、組むのは好きなんだろうか? 

…いや、単に初めての機体の構成に不満を抱きすぎたせいで、色々気にしてしまうだけだろう。

 

「独立傭兵かよ。クソ新入りに加えて野良犬の世話までしろってのか。レッドガンも舐められたもんだ」

 

 敵の先鋒を片付けたイグアス先輩が、唐突にレイヴンに向かって毒づいたではないか。

 いつもの事だが、非常に印象が悪い。

 俺のことはどうでもいいんだけども、恩人であるレイヴンに対して野良犬は無いだろ。

 

「関係ねえ。俺たちで終わらせればいい」

 

 ヴォルタ先輩が宥めるように声をかけたおかげか、それ以上暴言が降ってくることはなかったのが幸いだ。流石先輩、扱い方を熟知してるなぁ。

 ヴォルタ先輩が居なくなったらどうなることやら、考えたくも無いよ。

 

 解放戦線の兵力の展開に合わせ予定より早い地点で下されたが、今のところ問題無し。少し機体を進めると、雪と岩の間に身を隠すダムの施設が見えてきた。そして、ロックオンサイトが敵MTを捉える。

 

 ……いよいよだ。

 

 先輩達は機体を浮かせ、敵の頭上から弾の雨を降らせた。

 俺はそのうち漏らしを処理すべく、もたつきながらライフルのトリガーを引いた。初期装備の瞬間火力に秀でたBAWS製ものではなく、ベイラム製のアサルトライフルだ。

 

「ずいぶん手を焼いてるじゃねぇかクソ新入り」

 

「両手が焼けて焦げそうだなオイ」

 

 先輩方々からの熱いエールを受け取りながら、焦らず的確にMTを削っていく。

 何も難しいことはない。MTにスタッガーが入るまでもなく、簡単にその機体は爆散していった。

 

 初期装備のバーストライフルは敵に張り付いてこそ真価を発揮するタイプの物だったが、現ブースターの推力では活かしきれないと、早い段階で変更した物だ。

 俺は操縦適性があるとは言え、武器一つ付け替えるだけで苦労する真人間。

 適切で無いアセンに慣れてしまう前に、切り替えて鍛錬を積まなきゃならないんだ。

 

 一撃一撃しっかりと弾を撃ち込んでいくうちに敵の防衛戦は消え、一つ目の変電施設が丸裸となった。

 

 よし、かっこよく決めてやると思った瞬間、横からすっ飛んできたブレードの一閃が、ターゲットの変電施設を叩き切った。

 

 レイヴンさぁん……かっこいいっ……。

 彼女の無駄のない動きに見惚れている間に、一つ目の変電施設の破壊が完了した。

 

 

 うう、空腹のあまりヴォルタ先輩の大豊頭が月餅に見えてきた。

 自分自身に引くくらい頭が回っていない。そういや俺の機体も月餅だよなぁ……。

 駄目だ駄目だ! 樹大枝細、樹大枝細。思考を集中させろ。大豊の「樹大枝細」の「樹大」には食事も含まれているとか、今考えることじゃあ無い。

 現に別の場所から敵の攻撃が飛んできており、予断を許さない状態が続いている。まだ遠足は始まったばかりなのだ。

 

「よう野良犬。お前のような木っ端は知らんだろうがな、俺たちレッドガンは「壁越え」にアサインされている。この仕事は慣らしだ、終わったら土着どもの要塞を落としにかかるのよ」

 

 向こう岸にある二基目の変電施設へ向かう最中、レイヴンに向けイグアス先輩のマウントが始まった。

 

「先輩、コンプラって言葉知ってます?」

 

 この前俺がレイヴンさんに調子に乗ってつい色々話してしまった後、ミシガン総長に「独立傭兵に喋りすぎだ!」とお叱りを受けた事を思い出し、不味いのではと指摘する。

 

「んだよクソ兎……またぶちのめされてぇのか?」

 

「やめとけイグアス。またゲロぶちまけられるぞ」

 

「お前、オレ以外にやったのか。よく吐くんだな」

 

「ちょっとレイヴンさん!?」

 

「貴様らぁ! 自由時間を許可した覚えはないぞ!」

 

 愉快なおしゃべりは終わり。次の目的地での仕事が始まる。

 

 二つ目の変電施設の周りには砲台が設置されており、馬鹿正直に突っ込めば砲弾に吹き飛ばされてしまうだろう。現にMTを処理しようと斬りかかった俺の機体は、派手に砲台を喰らってしまった。

 

 思ったより弾放つ間隔が短い。

 思わず先の狂人に追いかけまわされていた時の恐怖がフラッシュバックするが、落ち着け俺。

 今回は味方が3人も居るし、敵は有象無象だ。こんなことでパニックを起こしたら、カッコ悪いぞ。

 自身に喝を入れ、悪夢のような記憶を振り払う。あの時とは何もかもが違うのだ。

 

 雪肌を滑るようにこちらに向かってくるMTをイグアス先輩が高度を上げ狙い撃つ。実に良い的だ。

 重火器を積んだヴォルタ先輩の前に運悪く出てしまったMTは、そのまま蹴り飛ばされ爆散した。

 二基目の変電施設もレイヴンがばっさり斬り捨てた。

 

 俺の出る幕が……ない! 

 

「準備運動は終わりだ続けるぞ! 役立たずども! 遠足はここからが本番だ気を引き締めてかかれ!」

 

 役立たずですねぇ! 

 

 前線の施設が片付き、奥の変電施設へ向けブースターを吹かす。

 ヴォルタ先輩とイグアス先輩は二手に分かれ、レッドガン流の戦いで派手に飛び入った。

 負けじと俺もレイヴンと共に後に続こうとしたが……何やら彼女の様子がおかしい。

 何もないところで立ち止まり、少しすると俺に通信を飛ばしてきた。

 

「お前、何でも相談に乗るって言ったな?」

 

「えっ、はい」

 

「オレと戦いたいか? オレはどちらでもいい」

 

 ……? シュミレーター上なら全然構わないが、今? 

 

「質問の意図は分かりませんが、今はご遠慮させてください。あっ、この仕事終わった後食事に行くとかなら全然大丈夫ですよ」

 

「わかった」

 

 何事も無かったかのように、レイヴンは回線を切る。彼女の声色からは何も分からない。

 相も変わらず流暢な割には、感情らしいものが見えない。まるでCOM(コンピューター)ボイスのようではないか。

 これって食事はokということか? 完全にスルーされたのか? 冗談のつもりはないが、ここまで無反応だと、なんか恥ずかしくなってきた……。密やかな期待にときめいた心が隙間風に晒される。

 

 ええい、仕事中だ。レイヴンがイグアス先輩の方向へ向かったことを確認し、俺は左手のヴォルタ先輩の応援に向かう。

 爆風に巻き込まれないよう神経をとがらせながら、ヴォルタ先輩の機体の周りをうろつくMTに銃弾を浴びせ沈黙させていく。こちらの被弾は……無し。

 

「やるようになってきたじゃねえか」

 

 爆風を巻き起こすヴォルタ先輩のさりげない発言に、胸の中でガッツポーズを取った。

 他のMTを全て吹き飛ばした先輩は速度を上げてダムの奥へと進む。道中の三基目の変電施設はすでに破壊されており、残すは後ひとつ。

 俺はヴォルタ先輩に続き巨大な壁のようなダムを飛び越え、最後の変電施設を視界にとらえた。若干先行していたイグアス先輩達とも無事に合流できた。

 そこに男の怒声が割り込む。

 

「聞こえるか強欲な略奪者ども!」

 

 オープン回線から声が響くのと時を同じくして変電施設を守るMTの動きが激しくなる。

 

「我々ルビコニアンが屈することはない。鉄の棺桶で送り返してやる」

 

 MT軍群の中から、ACが一機先陣を切って飛び出してきた。

 

「「灰かぶりて 我らあり」!」

 

 お決まりの警句を号令に、ダムの守備本陣が一斉に火器を放つ。

 

 敵の数こそは多い。だが、こちらはACが四機。相手の士気がいくら高くとも、負ける気がしない。いや流石に負けたらに不味いだろ。

 しかし、油断は厳禁だ。遠足は帰るまでが遠足とミシガン総長が口を酸っぱくして言っていたじゃないか。

 油断はしない。古典作品の名言を引用するなら「「ありえない」なんて事はありえない」だ。

 俺は機体を走らせ、MTに銃口を向ける。不意打ちを喰らわせて、ブレードで蹂躙。

 機体はMTとさほど性能が変わらないとしても、やはり武器の火力は一目瞭然だ。

 

「略奪者どもめ……!解放戦線を、なめるな!!」

 

 威勢の良い雄たけびで耳を破壊しに来ているのも作戦の内なのだろうか。

 氷上をくるくると回るように駆け、回避と攻撃を両立させているが中々良いなこれ。

 シミュレーターでは感じられない遠心力に内臓が振り回されていくも、敵の攪乱が上手くいっているのが分かる。

 俺の三半規管が悲鳴を上げない限り、複数を相手取る時に使っていこう。

 

 MTの数は確実に減っている。

こんなことをせずも、彼らを無視して奥に見える大型施設を破壊すれば任務成功なのだが、誰一人として向かおうとしない。

 今はイグアス先輩とヴォルタ先輩、そしてレイヴンの三人がかりで解放戦線のAC一機を蹂躙しているところだ。

 もはや戦闘と呼べぬ過剰戦力、解放戦線の敗北も秒読みだろう。

 

 …このまま役立たずで終わるのは嫌だ。だったら俺が最後の発電機を破壊しに行くか!と進路を変えたその時、解放戦線のACが叫ぶ。

 

「誉も知らぬ企業の犬どもめ!! 『アレ』を投下しろ!! 奴らを生かして返すものか!!!」

 

 おそらく増援のことか? だとすれば不味い。俺は慌てて先輩たちの所へUターンする。と、同時にガリガリと凄まじい音が斜面から鳴り響く。

 

「なんだ、あれは」

 

 ポツリとイグアス先輩が困惑を零す。

 俺も全く同じ気持ちだ。

 解放戦線のACが爆発し、炎上しているが誰も意識しない。斜面を転がる、『アレ』を目にすれば誰だってそうなるだろう。

 

 巨大な車輪のような物が、火を吹きながら俺達に襲いかかってきたのだった。

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