個性【ボイスデーモン】のヒーローアカデミア 作:ねぎトロ丼ねぎ多め
Bブロック四回戦。この試合は目も当てられないほどに一方的だった。
「オラァッ!」BOOM!
「っキャア!?」
「おいおい…爆豪の奴、やりすぎだろ!」
「ケロ…麗日ちゃん、大丈夫なのかしら」
相手に触れないと個性を発動させることの出来ない麗日にとって、中遠距離からの攻撃を得意とし、尚且つ女子への手加減など一切しない爆豪は個性なしで戦う事に等しいほど相性最悪の相手だ。寧ろここまでよく耐えたと言うべきだろう。
「あ?丸顔、てめーなんで笑ってやがる」
しかし、そんな状況にあるはずの麗日は何故か笑っていた。
「ありがとう爆豪くん───油断してくれなくて」
「あ……?」
瞬間、爆豪の頭上にフィールドの瓦礫が降り注いだ。
『流星群ーーーー!!! 瓦礫が落ちてくるゥ!!』
爆豪の爆破の際に飛び散ったフィールドの破片を回避する時に隙を見て触れ、空中に待機させていたのか。良い策だったんじゃねぇか?相手が爆豪じゃなければ。
「甘いんだよ丸顔がァ!」
BOOOOOOM!!
爆豪が掌を上に向けて爆破を放つと、瓦礫は全て消し飛ばされていた。
『な、何と爆豪会心の爆撃ッ!! 麗日の秘策を堂々と正面突破ァ!』
プレゼント・マイクが驚きの声をあげる。
「ウソだろ!?やばすぎるだろ!」
「放つ前にわざわざ言っちまったのが悪かったな」
「ま……だ……」バタッ
キャパシティの限界を迎えたのか、麗日が倒れる。
『麗日さん行動不能!2回戦進出は爆豪くん!』
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『轟VS緑谷!レディー…START!!』
あの後爆豪へのブーイングがあったり相澤がそれを一蹴したりと色々あったが、Aブロック二回戦第一試合が始まった。
パキパキパキッ!!
先手を仕掛けたのは轟、瀬呂の時とは真逆の細く、地を這うような氷を緑谷にぶっ放す。
「っんぬっ!!」SMASH!
それに対して緑谷は己の指を犠牲に個性を使い、氷を砕く。…まるで自傷覚悟の帳消しだな。
そこから同じことを数回繰り返す。轟が氷を出しては緑谷が砕き、また氷を出しては砕き…
「っ!はぁ、はぁ…!(もう右手全滅…!)」
そしてついに緑谷の右手の親指以外の4本は全て壊れてしまった。
「すげぇな、轟。爆豪もそうだけど、強烈な範囲攻撃ポンポンだしてくるからなー…」
「ポンポンじゃねえよ舐めんな」
切島が言うが、爆豪が否定する。
「筋肉酷使すりゃ筋繊維が切れるし、走り続けりゃ息がきれる。個性だって身体機能だ。アイツにも何らかの限度はあるハズだろ」
「っ……!」
爆豪の言葉を聞き、とある仮説がオレの頭に浮かんだ。ものは試しだ、可聴域をあげて轟の心音を聴く。
トクン…トクン…
…ビンゴだ。轟から聴こえるのは普段の轟からは考えられないほど小さく、今にも消えてしまいそうな心音だった。
「ククク、爆豪。てめぇの言ったこと、合ってるみてぇだぞ」
「あ゛?」
「今轟の心音を聴いたんだがな、異常なまでに小さい。それによく見たらさっきより動きがちと鈍い」
「ということは…?」
「ああ、多分アイツにも自分の冷気に耐えるのは限界があるんだろうよ。加えてアイツはさっきから感度も氷結をブッパしている。恐らく…というか十中八九アイツは低体温症のような状態だろうな」
SMASH!!
その時、フィールドに衝撃が走った。見ると緑谷が既に壊れた指で轟に衝撃を喰らわせている。
「震えてるよ、轟くん」
「っ!!」
「個性だって身体機能の一つだ。君自身冷気に耐えられる限度があるんだろう…!?」
お、緑谷もそこに辿り着いたか。すげぇな、ノーヒントで。
「でもそれって、左側の熱を使えば解決出来るもんじゃないのか…?」
…そのことは轟自身が一番よくわかってんだろうよ。
「っ……皆……本気でやってる!! 勝って目標に近づくために……一番になるために!!」
緑谷が壊れた指に力を入れる。
「半分の力で勝つ!? まだ僕は君に傷ひとつ付けられちゃいないぞ!!」
「全力でかかって来いッッ!!」
「何の……つもりだ」
緑谷の言葉に、轟の雰囲気が変わる。
「……何のつもりだ。全力……? クソ親父に金でも握らされたか……? イラつくな……!」
轟が緑谷へと近づく。が、身体機能が低下している今、それは悪手だ。
「イメージ…電子レンジの…爆発…しない…爆発…しない……!しない…!!」ブツブツ
緑谷が何か言いながら轟の懐に潜り込み…
SMASH!!
一撃お見舞いする。
『モロだぁー!生々しいの入ったぁ!』
「俺は…親父を……!親父を────」
「君の! 力じゃないか!!」
轟がカッと目を見開き、そして何か覚悟を決めたような顔になる。
ゴォッッ!
『これは────────!?』
「勝ちてえくせに……」
「ちくしょう……敵に塩送るなんてどっちがふざけてるって話だ……」
そこにいたのは、炎を使う轟だった。
「俺だって……ヒーローに……!!」
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結論から言うと、轟の勝利だった。いくら超パワーを持つ緑谷といえど、指がズタボロの状態では本気の轟に勝てなかった。
『さぁ続いてAブロック2回戦第二試合!一回戦では圧倒的な実力を見せつけた爆音!対するは先程は踊らされてしまっていたが今回は抜かりなし!飯田!レディー…START!!』
「最初から全力で行かせてもらう!レシプロ…バースト!!」
初手からいきなりフルスピードで突っ込んできた。だが、普段音速で移動しているオレからしてみれば欠伸が出るほど遅い。
「あらよっと」ヒョイ
体を少しずらして蹴りを躱わす。
「ッ!ならば!」ガシッ
飯田がオレを掴む。どうやら自分ごと落とすつもりらしい。が、無意味だ。
プスン…
「なっ!?エンジンが…!?」
「蹴りの時、"コルクボイス"で排気筒に封をさせてもらった」
今度はこっちの番だ。個性を使えなくなった飯田を掴み、場外に投げ飛ばす。
「オォ…ラァ!!」
「ぬああああ!?」
飯田はそのまま壁に激突し、地面に落ちた。
『飯田場外!爆音、個性をほぼ使わずに準決勝進出だぁぁ!!』
「くっ…兄さん…!」
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『こちら保須警察署、至急応援頼む!』
「名声…金…どいつもこいつもヒーロー名乗りやがって…ハァ…」
とある路地裏、鎧のようなものを着込んだ男が血を流しながら倒れ、そのそばに日本刀のようなものをもったいかにも敵のような男がいた。
「ハァ…てめェらはヒーローなんかじゃねえ…彼だけだ…」
「俺を殺っていいのは ハァ〜…」
「オールマイトだけだ」
『「ヒーロー殺し」が現れた!』