個性【ボイスデーモン】のヒーローアカデミア   作:ねぎトロ丼ねぎ多め

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えー、前回最後の更新が8月15日。それからあれよあれよと言う間にもう1月ですよ!なんと四ヶ月!あっはっは!
…すみませんでしたぁあ!!


最悪の災厄!②

 

 

 

「谿コ縺谿コ縺谿コ縺谿コ縺谿コ縺!!!!」

 

「うわぁっ!!?」

 

「通形先輩!!」

 

「ぐぎぎぎぎ…!!そぉいやぁっ!!」

 

ドゴォッッ!!

 

治崎だったものが雄叫びを上げながら通形に殴りかかるが、通形はそれを全身で受け止めて、無理矢理明後日の方向に投げ飛ばす形で受け流した。

 

「よくやったルミリオン!我々が援護に周る、それまで治崎を抑えておいてくれ!」

 

「はい!…って言いたいところですが、すみませんサー、流石に今みたいなのを何発も食らったら持ちません…!比喩とかじゃなくて、本当に死んじゃいますよ…!」

 

「ミリオ!?お前、腕が…!!」

 

「んなっ!?」

 

ナイトアイが驚愕した様子で声を荒げる。

さっきは衝撃で発した土煙でよく見えなかったから気づかなかったが、よく見ると通形の腕は皮膚がズル剥けて血まみれになっている。

 

「ウソだろ…!?コンクリートの塊で突き刺されても傷一つ付かなかった通形先輩の腕をあそこまでズタボロに!?」

 

「(今まで見た未来が変わる事なんて無かったが、まさかこんな最悪な形でそれが覆されるとは…!!)イレイザー!"個性"を消せないのか!?」

 

「消してはいるが…全く効いてる様子がない、どうやらアレが素の腕力らしい。捕縛布での捕獲も不可能な脳無と同類の異形の化け物、つまり俺とは相性が最悪だ…!」

 

目を赤く染めながら相澤が歯を食いしばる。どうやらアイツは増強系の"個性"抜きの、素の腕力だけでコンクリートすら砕く通形の鉄壁の筋肉を破壊したらしい。

"個性"抜きでさえアイツの体が耐えられないパワーか…下手しなくてもAFOとか言う魔王気取りのジジイなんて目じゃないぐらいにはやばいんじゃねぇのか?

 

「 險ア縺輔↑縺 險ア縺輔↑縺 險ア縺輔↑縺!!!」

 

「なっ!?また…!!」

 

「ぐぅっ…!?(ヤバい、流石に2発目は…!!)」

 

「チャージ満タン、出力60…!ねじれる波動グリングヴェイヴ!!」

 

ドゥンッッ!!

 

「逞帙>ッ!!?」

 

治崎はダメージを受けた通形を無視して間髪入れずにもう一発飛ばしてきたが、ねじれがそれを波動でぶっ飛ばして止めた。

だがダメージは受けておらず、ただ体がよろけただけだったのかすぐに体勢を立て直すと、治崎は今度はねじれの方に向き直って殴りかかった。

 

「きゃあっ!?全然効いてない!?」

 

「どいてろ!!"レーザーボイス"!」

 

ドォゥンッッ!!!

 

「辭ア縺ッ!!?」

 

オレの"レーザーボイス"が当たったことで、治崎の体、人間で言うところの肩の辺りにデカい風穴が空いた。

急所は外しといたから、死ぬ…とまでは行かなくとも、多少はダメージが……

 

「…ッ!!」

 

メ゛キ゛ッ…メ゛キ゛ョメ゛キ゛ョ゛ッッ…

 

「『…マジかよ』」

 

思わずオレとボイスデーモンの声が重なる。

空いたばかりの風穴は、治崎が力むような動きを見せた直後、5秒と経たぬ内に塞がれてしまった。恐らくニトロが待ってた再生能力だろう。

…めんどくせぇのも引き継いでやがったか。

 

「ネジレチャン、ゼブラ、離れて!!"ドラグーン…パニッシュ"!!

 

ダァンッッ!!

 

「谿コ縺谿コ縺谿コ縺谿コ縺!!!?」

 

攻撃をすんでのところで避けたオレとねじれに続き、今度はリューキュウが両腕を振り上げて、そのまま治崎を叩き潰した。

しかしこれまた全く効いている様子は無く、逆に押し潰してきたリューキュウの腕を軽々と持ち上げて投げ飛ばしてしまった。

 

「ぐうぅっ!!?(嘘でしょ、"個性"発動中の私を投げ飛ばすなんて…!!)…きゃあっ!!?」

 

「リューキュウ!?だ、大丈夫ですか!?」

 

「通形先輩に爆音くん、リューキュウまで…!あの3人が歯が立たないなんて一体全体どんなパワーをしているんだあの化け物は!?」

 

「無駄口を叩く暇があるなら少しでも脳を回して打開策を考えろ!…尤も、そんな物があるとは到底思えんがな…!」

 

「……… 谿コ縺谿コ縺谿コ縺谿コ縺…… 險ア縺輔↑縺 險ア縺輔↑縺 險ア縺輔↑縺……」

 

「な、何をしているんだ…?」

 

緑谷達が治崎の圧倒的なパワーに狼狽えていると、治崎が突如殴るのをやめた。

だがその目にはまだ殺意とも闘志とも取れる、何なのかは分からねえが良くないものが宿っている。少なくとも攻撃を止める気は微塵もないらしい。

 

おはようございますきょうもいい天気ですね……」

 

「な、何をしているんだ…!?」

 

「開幕見当もつかないが、少なくとも我々にとって良いことではなさそうだ…構えろ」

 

治崎はゆっくりと屈むと、足元に転がっている、自分の手のひらにギリギリで収まる程度のデカいコンクリートの塊を手に取った。

 

握るッ!」

 

バキッッ!!!

 

「うわっ!?」

 

「コンクリートを握りつぶした…!?」

 

天喰が言ったように、治崎は手に取ったコンクリートの塊を握り潰した。そしてソレを手にしたまま、まるでソフトボールを投げる時のように振りかぶる動作に入る。

 

「ま、まさか…」

 

……オイ、嘘だろ?

 

投げる投げる投げる投げる!!!」

 

「ふっ…伏せろぉぉぉ!!!

 

「うわあああああ!!?」

 

オレの悪い予感は的中した。いや、してしまった。

治崎の野郎は塊を握り潰すことで球数を増やし、そのままこっちに投げつけてきやがった。

 

「チィッ…!"音壁"!

 

咄嗟に"音壁"を展開するが、朝からの長期戦もあってエネルギーが足りず、流石に広範囲は守り切れない。

オレの方に飛んできた瓦礫は鈍い音を立てながら弾かれたが、それ以外の半数以上がそのまま後ろにぶっ飛んで行った。

 

「フゥー…よくやったゼブラ。今のが直撃していたら最悪何人か死人が出ていた」

 

「おう…だが今のがそう何度も来たら流石に守り切れねえぞ。エネルギーが足りん」

 

「…なぁ爆音。俺からも聞いて良いか?」

 

「んだよ天喰」

 

「…その…アレは守り切れるか?」

 

「アレぇ?」

 

天喰が若干震えながら指さす方を見ると、また治崎が野球選手のようにコンクリート片を投げる体制に入っていた。

ただ一つ違う点がある。コンクリート片が明らかにデカい。さっきの奴の2倍くらいはある。

 

「そうだな…まぁこれはあくまで勘だが…」

 

死ね投げる死ね投げる死ね投げる死ね投げる!!!!!」

 

「…多分無理だな」

 

「ぎゃああああ!!?」

 

天喰が叫んだ直後に第二波が飛んできた。

しかも一つ一つがデカいから他の奴では対処できないどころかオレでも弾けないと言うオマケ付きだ。

 

「っ!!」

 

と、ナイトアイが何かを見た瞬間、突如としてエリの方に飛び出して行った。

 

グギシャァッ!!

 

「ぐうううっ……!!?」

 

「さっ……」

 

「「サー!?」」

 

飛び出したナイトアイの右脚に、飛び散った瓦礫の中でも特にデカい奴が直撃してしまい、それを見た緑谷と通形が悲痛な叫び声を上げる。

どうやらエリを守ろうとしたみたいだ。

死にはしないだろうが、アレはもう駄目だ。骨も砕けてるし、オマケに肉がほぼ裂けてる。医療に詳しく無いオレでもわかる、あれは確実に治らん。

 

「サー!!大丈夫ですか!?」

 

「あ、あぁ…そ、それよりエリちゃんは…?」

 

「無事です!サーが体を張って守ったから…!!」

 

「とにかく早く病院に!」

 

「私が上に運びます!」

 

「私も手伝うわ」

 

「俺も手伝おう。…教師として恥ずかしい限りだが、ここだと俺は足手纏いにしかならん」

 

「すまない…!」

 

麗日が自分の体ごと"個性"を使ってナイトアイを浮かせ、それを舌で先導しながら蛙吹が上の警官どもが集まっている場所へ向かう。相澤は転がっているコンクリート片の対処にあたっている。

 

「險ア縺輔↑縺谿コ縺 險ア縺輔↑縺!!!」

 

「んなっ!?」

 

近くにあったコンクリート片が尽きた治崎は今度は直接こっちに殴りかかってきた。

攻撃…いや、すぐに回復するから効果が薄い。かと言ってここで避けたら後ろの奴らが死ぬ。クソ、一か八か防御するしかねぇか…!

 

「耐えろよ…"音壁"!

 

「フルカウルッ…100%…!!」

 

「…ん?」

 

「うおりゃぁぁぁっっ!!!

 

SMAAASSSHHH!!!

 

痛覚!!!!??」

 

「…!?」

 

俺が殴られるのを覚悟で"音壁"を展開した刹那、何かを背負って緑谷が飛び出して治崎を殴り飛ばした。

 

 


 

緑谷side

 

痛覚!!!!??」

 

思いっきり殴り飛ばした治崎の体が、波動先輩が空けた穴から外へと吹っ飛んでいく。

 

「っ…!!?いっってぇぇ…!!?」

 

飛び出して治崎を殴ったとこまでは良かったけど、やっぱり100%オールマイトの力はシャレにならない…!入学した時よりずっと鍛えてるのに、全く制御できる気がしない…! 

 

「ううっ…!」

 

「あぁっ!ごめんねエリちゃん…!」

 

僕の背でエリちゃんが苦しそうに呻き声を上げる。

エリちゃんの暴走を利用して無理矢理治す、と言うのは我ながら無茶苦茶だけどいいアイディアだったと思う。だけど決着が着くまでに"個性"の扱い方をまだよく分かっていないエリちゃんの"個性"と体力がもつか…!

 

「谿コ縺險ア縺輔↑縺谿コ縺險ア縺輔↑縺!!!!??」

 

「うわあっ!?」

 

それに何より、今の治崎に僕の全力がほんの少しでも効いているのかすら怪しい。コレが1番キツイ。

殴った瞬間こそ怯むけどほんの1、2秒足らずだし、今の様子を見るにダメージを受けるどころかピンピンしてる。攻撃は【オーバーホール】を含めた"個性"を全く使わない、単純な軌道の殴打だけだから避けやすいのが不幸中の幸いといったところだ。

 

殴打ッッ!!」

 

「うわぁっ!?危ねぇっ…!(でもこれくらいなら…!)SMAS——」

 

馬鹿!投石!ッッ!!!」

 

「えっ」

 

しまった!左の拳はブラフ!!右の拳に本命のコンクリート片を隠し球のように持っていたのか…!

しかも僕のSMASHは奴の左拳に向かって打ってしまった、もう戻せない…!

 

(死っ——)

 

迫り来るコンクリート片に思わず目をつぶってしまったが、いつまで経っても衝撃が来ない。

ゆっくりと目を開けると、そこには——

 

「っ!爆音くん!!」

 

ゼブラside

 

「暴れんなよ…一つ妙案があるんでな」

 

そう言いながら小脇に抱えていた緑谷を地面に下ろす。

まさか暴走したエリを背負って、【巻き戻し】を利用して腕を折れたそばから治して無理矢理ぶん殴るとは…中々良いアイディアじゃねぇか。

 

『ハッハァ!!俺が言えた事じゃねぇが、アイツもアイツで大概狂ってんじゃねぇか!気に入ったぜ!』

 

(うるせぇな、黙って集中しろ!)

 

ボイスデーモンが俺の中でギャーギャー騒ぎ出した。

緑谷のあのイカレっぷりを気に入るのはわかるが、こんなヤベェ場面で騒ぐんじゃねぇよ!オレが死んだらテメェも死ぬんだぞ!!

 

「…オイ緑谷、一度しか言わねえからよく聞け。あのデカブツはニトロを吸収してただろ?」

 

「?うん」

 

「そしてニトロには再生能力がある。大抵のダメージ…銃で撃たれたぐらいなら数十秒で回復しちまう」

 

「えっ!?じゃ、じゃあどうやって…」

 

「騒ぐな。…話を戻すぞ。一見すると無敵に見えるこの再生能力には弱点がある」

 

「弱点…?」

 

「再生してる間はな、一切動けないんだよ・・・・・・・・・。たとえ目の前に敵が迫ってようとな」

 

職場体験のあの時出てきたニトロがそうだった。

治崎の動きからして、発動には一度全身に力を入れる必要があるんだろう。人間とて体中に力を込めて動き続ける…それも殴り合いなんざ不可能だろう。

 

「つまり破壊し続ければアイツは回復に必死になって、少しの間だが身動きが取れなくなるはずだ。その隙に細胞が再生を諦めちまうくらいデカいのを一発打ち込めば或いは…」

 

「なるほど…でもその『デカいの』って?」

 

「あるだろうが、お前のそのSMASHとかいう奴だよ」

 

「えっ?」

 

オレがそう言うと、緑谷が素っ頓狂な声を上げた。

馬鹿じゃねえのか、ここ戦場だそ?死にてえのかコイツ。

 

「…その、爆音くん…言いづらいんだけど、さっきからエリちゃんの力を借りて打ってるのが僕の全力なんだ…これ以上の火力は見込めないよ」

 

「馬鹿、話を最後まで聞け。良いか、オレの"ビートパンチ"は知ってるな?」

 

「うん、確か音の振動を拳に乗せて相手を内部から破壊する技…だっけ?」

 

「そうだ。そしてお前は俺以上のパンチを持っている。…もう分かるな?」

 

「え?……っ!なるほど、そういうことか!僕のSMASHに音の振動が加われば…!」

 

状況が状況だから色々と省いた説明だったが、どうやら伝わったみたいだな。緑谷の推測能力と記憶力さまさまだ。

 

「…でもその作戦を実行するならまず治崎にダメージを与えないと…」

 

「それはオレが「そこは俺達にまかせて欲しいんだよね!」

 

作戦の手筈について話そうとすると、突然通形が名乗り出てきた。

いや、通形というよりはBIG3の3人の方が正しいか。

 

「せ、先輩方!?」

 

「少しでもダメージを与えるためにも、爆音は声を使わない方が良いんじゃないかなと思ってね!」

 

「…それに爆音は短期決戦型だ、ガス欠も早い…いざって時に喉が潰れたら元も子もないだろ」

 

「…だが……」

 

さっきの戦いを見ればどんな馬鹿でもわかる。

コイツらでは確実に治崎に殺られる。

コイツらだってただの人間としては最高峰の戦力を持っているが、それでも治崎には敵わないだろう。 

 

「…えいっ」

 

「んぶっ」

 

俺がどもっていると、ねじれが指で頬を突いてきた。

 

「大丈夫だよ、私達なら。私達が強いってことは声野が1番分かってるでしょ?」

 

「…コイツは訳が違う。お前らでも多分死——」

 

「声野」

 

「っ…」

 

なんのつもりなのか、突然頬にやさしく手を添えてきた。

大丈夫、大丈夫とぐずるガキでも宥めるかのように何度も頬を撫でてくる。

 

「……鬱陶しい。行くなら行け」

 

「ふふっ…分かってくれて良かった!」

 

結局押しに負けて行かせちまっが…もうこうなりゃオレにできることは無いようなもんだ。アイツらの実力を信じることぐらいしかできない。

 

「すっごく疲れるけど…!チャージ満タン、出力85!ねじれる波動グリングヴェイヴ!」

 

「そおらぁっ!!」

 

「(熊+タコ+蟹…!)ふんっ!!」

 

3人の攻撃がそれぞれ肩、腕、足に命中した。直撃した箇所には穴が空き、その周りも明らかにダメージを負っている。

これなら攻撃も移動もままならない、まずは再生をするだろう。その隙に…!

 

「逞帙>逞帙>蜉ゥ縺代※ 蜉ゥ縺代※ 蜉ゥ縺代※ 蜉ゥ縺代※……!!!」

 

「なっ…!?効いてない!?」

 

「いや、違ぇ…さっきので破壊されたトコを片っ端から再生しながら無理矢理動いてんだ…!!」

 

体中からギチギチと不穏な音を鳴らしながら、本来なら再生中は動けないはずの治崎がゆっくりと、だが確実に通形達に向かって動き出した。

雑魚を3人とニトロを二頭吸収しただけで弱点踏み倒せるのかよ…!

 

邪魔ッ!!!」

 

「ぐっ…!?」

 

「チャージ満タン、出力…100!ねじれる波動グリングヴェイヴ!」

 

天喰に殴り掛かろうとした治崎の左腕を、ねじれが思いっきり吹っ飛ばした。たがあの技は確か…!

 

「ありがとう、波動さん!」

 

「うん!…でももう…無理……」

 

「波動先輩!?」

 

天喰の無事を確認すると、ねじれはふらふらと落ちて行った。

ねじれは自分の活力をエネルギーとして打ち出している。あんな大技を連発したせいで活力を使い切ってしまったんだろう。

怪我は無いが、ああなったらしばらくの間動けない。

 

「無理やり動くと言うのなら!動けなくなるまで殴れば良い話だ!!」

 

今度は通形がとんでもない事を言いながら治崎の足を何度も殴り始めた。いかに人外の化け物であろうと、脛は痛いらしく、嫌がる素振りをした後足元の通形を何度も踏みつけ始めた。

 

「通形先輩っ!!」

 

「ミリオッ!!この…!!」

 

天喰が通形を助けようと治崎の体に何度も熊の手が付いた触手を叩きつける。

だが奴はそれを意にも介さず、ボロ雑巾のようになった通形を拾い上げると、天喰の方に向けて投げつけた。

 

「!ミリ——オ゛っ!!?」

 

天喰は咄嗟に通形を受け止めようとしたが、その隙をつかれて腹に蹴りを叩き込まれてしまった。

 

「そんなっ…!先輩方がこうもあっさりと…!!」

 

「だがアイツらの健闘は無駄じゃ無かったみたいだぞ……!!」

 

通形のラッシュで右足が穴まみれになったのを見て、治崎は動きを止めた。すると、足の穴が塞がり始めた。どうやら回復に専念することにしたようだ。

 

「今しかない!爆音くん、お願い!」

 

「応!…!そうだ、コイツもくれてやるよ!!」

 

「うわっ!?」

 

緑谷の右手に無理矢理"死神の拳"をつけさせ、チップを取り付け巨大化させる。

ただでさえオレに合わせたサイズだから小柄な緑谷にはブッカブカなのに、巨大化させたせいで絵面が余計に酷くなってるが、まぁ無いよりはマシだろ。

 

「行ってこい!そらよっっ!!」

 

「谿コ縺險ア縺輔↑縺谿コ縺險…谿コ縺險ッッ!!?」

 

右手だけ馬鹿デカくなった緑谷を突っ込んで来た治崎の方に向かって、思いっきり投げ飛ばす。

 

「スゥゥゥゥゥ…」

 

再生を終えた治崎が吹っ飛んできた緑谷に気を取られてる隙に、可能な限り息を吸い込む。

…肺が悲鳴をあげ始めた。こんだけエネルギーを使ったら"メテオノイズ"を2、3発くらいは打てそうだが、そんなの今のオレには関係無い。

溜めに溜めた音を、緑谷の方に向かって打ち出す。

 

すんじゃねーぞ緑谷ァ!!」

 

声を張り上げたつもりだったが、想定以上に音を使い過ぎてしまったらしく、調節が効かないのか喉からチグハグな大きさの声が出てくる。

だがそんなことはもうどうでもいい。

—吹っ飛んでいった緑谷が拳を構えているからだ。

 

「喰らえっ…!BEAT…SMASH!!!」

 

SMAAASHHH!!!!

 

「!蜉ゥ!?縺代※ ?!?」

 

緑谷の己の体すら破壊する程の威力を誇る全力のパンチの衝撃と同時に、オレの音の振動が治崎の身体を駆け巡り、片っ端から細胞を破壊していく。そして細胞が再生した瞬間、間髪入れずに破壊する。

再生して、破壊して、再生して、破壊して、再生して、破壊して、再生して、破壊して……

 

「 險ア縺縺輔↑ 縺縺!!?谿コ縺谿コ縺 谿谿谿谿アアアアアアア!!!!!???!?!?」

 

ついに細胞が本能でこれ以上の抵抗は無駄だと判断したのか、再生が止まった。そしてそのまま先程までのあばれっぷりとは対照的に、ピクリとも動かなくなった。

 

「勝った…のか…?爆音、確認を頼む」

 

「…心拍音は聞こえるが、それ以外は全くだな。気絶してんじゃねえのか?」

 

相澤にそう返しながら、全てを出し切って倒れ込んでいる緑谷の方へと歩を進めていく。

 

「おーおー…派手にぶっ壊しやがって…」

 

ため息を吐きながら、さっきの衝撃でズタボロになって吹っ飛んできた"死神の拳"を屈んで拾う。コレ、まぁまぁ高いんだがな。

 

「はぁっ…はぁっ…ご、ごめん爆音くん…でも、これなら…!」

 

チラリと治崎の方に目を向けると、治崎の体は膝をついて仰け反った体勢のまま動かない。そして再生を諦めた体は、足の先からボロボロと崩れていく。

そして支える足が無くなった巨大な体はゆっくりとこちら側に向けて倒れて——ッ!!

 

「なっ!?」

 

「オイ…アイツ、頭どこ行きやがった!?」

 

なんとか成功させた余韻で気付かなかったが、ついさっきまであったハズのアイツの頭が無くなっていた。

 

メ゛キ゛ッ…メ゛キ゛ョカ゛キ゛ョ゛ッッ…

 

「まさか…っ!」

 

さっきから何度も聞いている、ズタズタの肉と骨が擦れ合ったような不穏な音。

その音の出所に目を向ける。

 

「谿コ縺… 險ア縺輔↑縺!!!!!

 

「嘘だろ…!!?」

 

そこには、さっきぶっ飛ばした筈の治崎がいた。

どうやら緑谷のパンチの衝撃が伝わる前に核とも言える頭をもぎ取ることで逃れたらしい。たださすがに再生でエネルギーを使い果たしたのか先程より身体が二回り程小さい。

見てからでは対応不可能な一撃…それを躱させたのはアイツの野生の本能とでも言うべきかもしれない。

だがそんなの今はどうだって良い。

 

「クッソォ…!爆音くん、もう一回今のを!」

 

「無茶言うな…!今ので"死神の拳"がイカれた、オマケに音をほとんど使っちまったからもう喋るだけで精一杯だ…!」

 

「そんな…!?」

 

『今の満身創痍のコイツじゃ精々時間稼ぎ…にもなれねぇな。腹括っといた方が良いぜ、ゼブラ』

 

(五月蝿え黙ってろ!!)

 

脳内でボイスデーモンに啖呵を切るが、実際は虚勢もいいとこだ。正直、オレや自傷覚悟の緑谷と同等以上の火力を持つ奴がいない現状、全員が助かる見込みは無い。ここで全滅するか、1人か2人でも生き残れば万々歳といったところだ。

 

「谿コ縺險ア縺輔↑縺谿コ縺險ア縺輔↑縺!!!!??」

 

メギョッ!!

 

「がっはぁっ!?」

 

さっきの一撃で緑谷を危険だと判断したらしく、治崎はオレ達を無視して緑谷に拳を叩き込んだ。

筋力が低下している影響で威力は下がってる筈だが、それでも防御力がそこまで高くない緑谷には致命傷になりうる。

 

ズオオオ…

 

「っふぅぅぅ…!!」

 

緑谷のダメージは後ろに背負っているエリの【個性】ですぐに回復するが、それをみた治崎は何を思いついたのかエリを無理やり引き剥がし始めた。

 

「ひっ…!」

 

「っ!エリちゃんから離れろ!!」

 

「何手ェ出してんだ…!」

 

巨大な手で無理矢理エリを握り込むが、そうはさせまいと俺と緑谷が腕を掴む。

だが、それが奴の何かに触れたのだろう。明らかな敵意を剥き出しにしながら、足を上げていく。 

 

「がっ…はぁ…!!?」

 

その瞬間、ミサイルのように射出された治崎の足がオレの腹にめり込んでいた。

腹に焼けた鉄でも押し付けられたかのような熱を感じるのと同時に、肺から空気が漏れ出ていく感覚がオレを襲う。

…多分肋骨が何本か折れてる、もうオレは戦闘不可能だ。

 

「爆音くっ…ぐあぁっ!?」

 

オレが吹っ飛んだのを確認すると、治崎は既にボロボロになっている緑谷を蹴り飛ばし、エリを完全に引っ剥がした。

そして転がっていった緑谷に近づいて行くと、ゴミでも踏み躙るかのように緑谷の体を踏みつけた。

 

「ぐぅぅっ…!!」

 

わらうわらうッ!!」

 

苦しむ様を嘲笑うかのような声をあげると、治崎はゆっくりと足を上げ始めた。

緑谷にトドメを刺そうとしているのだろう。しかしうつ伏せになっている緑谷は呼吸するのに必死で、治崎の行動に気づいていない。

 

「ゴフッ…!…おい緑谷、動け…!!そのままだと虫ケラみてぇに踏み潰されるぞ…!!」

 

「はぁーっ…!はぁーっ…!!」

 

もうズタズタになっている声帯を無理矢理使ってほんの僅かな声を絞り出すが、緑谷には届いていない。

そうしている間にも崎は足を上げきり、勝ち誇ったような顔を浮かべた。

 

「やめて…!!お願いだから…やめて…!!」

 

死ねッッ!!!」

 

「っ!?しまっ——」

 

治崎が足を落とした瞬間に緑谷が気づいたが駄目だ、もう間に合わねぇ…!!

 

…パチッ…バチバチバチッ…

 

…!?なんだ、このプラズマみてぇな音は!?エリの方から聞こえてくるが…

 

「もう…いやあああアアアアアア!!!!!」

 

ズグゥォォォォ!!

 

「っ!?ぐおおおお!!!!?(んだコレ…!?)」

 

『オイオイ、んだよこいつは…!』

 

突然エリが頭を抱えて叫び出したと思った次の瞬間、エリの体から何かエネルギーのようなものが溢れ出した。

 

グギッ…ブチブチチッ!!

 

「縺斐a繧薙↑縺輔>!!?縺斐a繧薙↑縺輔>縺斐a繧薙↑縺輔>…ぁ……」

 

エリを逃すまいと捕縛していた治崎の腕がそのエネルギーに触れると、肉体が解けるように分解され、瞬く間にバラバラになっていく。

そして最初の4人とニトロ二頭に分裂…いや、戻った。

 

「っ!エリちゃんっ!!」

 

謎のエネルギーを垂れ流しながら落下するエリをもう全身が悲鳴をあげているはずの緑谷が走ってキャッチした。

だがキャッチするところまでは良かったものの、エリから出てくるエネルギーに当たり続けている。

さっきの治崎を見てなんとなくわかったが、恐らくあれはエリの"個性"のエネルギーが飛び出してきたものだ。話によるとエリは長期間監禁されていたらしいし、多分制御が効いていない。触れるもの全てを無差別に巻き戻してしまうのだろう。このままだと緑谷が赤ん坊になっちまう…が、オレはもう動けない。せめてあのエネルギーが少しでも当たれば…!!

 

「おい爆音、これはどういう状況だ!?」

 

「相澤…!」

 

どうしたもんかと歯を食いしばっていたら、ちょうど良いところに相澤が戻ってきた。

とにかく、これを逃す手はねぇ…!

 

「エリの"個性"が暴走した…!早く緑谷の方を見ろ、お前ならアレを止められんだろ…!」

 

「そういうことか…!任せろ」

 

相澤が目を見開いてエリを見ると、先ほどまでの様子が嘘かのようにエリの"個性"の暴走がピタリと止まった。

そして糸の切れた操り人形のようにぐったりと倒れ伏せた。それをあわてて緑谷が抱きかかえて保護する。

 

「あっ!治崎…!」

 

そして物陰から麗日が飛び出してすっかり忘れられていた治崎を確保するが、当の治崎とニトロを含む全員は意識が無いのか、白目を剥いてグッタリと横たわったままピクリとも動かない。

 

万事解決とは言えないが…作戦成功。

 

 

 

 





オリジナル技紹介
BEAT SMASH
ゼブラが音を緑谷の腕に付与することで、オールマイト並みとか言う桁違いのパワーと音速を超えた化け物みたいなスピードを掛け合わせてぶん殴る。ゼブラのサポートアイテム(死神の拳)と手に纏わり付いた音が籠手の役割を果たすので腕へのダメージも普段より格段に軽減されるが、スピードがスピードなので普段のSMASH以上の衝撃やダメージが発生するため結局死ぬかどうかの重症を負う。なんなら普段の方がまだマシなレベル。壊理の【巻き戻し】が暴走しているからこそ実質的にリスクを踏み倒せる、普段なら封印必須級の諸刃の刃と言えるような技。

ドラグーンパニッシュ
公式では存在と名前のみしか明かされなかったので完全に作者の自己解釈。ドラゴン化した後爪を出した状態の両腕を持ち上げ、そのまま全体重をかけながら振り下ろして相手を押し潰す。相手が防御系の"個性"でない限りほぼ確実に死ぬ、確かに強力だがヒーローとしては最悪な技。




えー、改めて謝罪させていただきます。本当に申し訳ございませんでしたぁぁ!!!
リアルが忙しかったのとここ数ヶ月過去最大レベルのスランプに陥ってしまって…!
ただ文化祭編はある程度構想を練ってるのでぼちぼち更新していけると思います!重ね重ね申し訳ございませんでした!
それではみなさま、良いお年を!
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