個性【ボイスデーモン】のヒーローアカデミア   作:ねぎトロ丼ねぎ多め

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ミスコン!

「爆音、そっちの氷もこっちにくれ」

 

「ほらよ」

 

「あぁ、ありがとう」

 

ライブは終わり、オレ達は後片付けに勤しんでいた。

派手にやるためとは言え、後片付けという点においてテープやら氷を出しまくるのは悪手だった。テープ類はもぎもぎで引っ付けて回収できる峰田がいるからまだ良いが、散らばってる氷は集めていちいち轟に渡して溶かさせる必要があるのは面倒すぎる。…だがまぁ、約束しちまったからな。一度した約束をほっぽり出すのはオレのポリシーに反する。

こういう時、熱毒で氷を溶かせるココと触手で一気に片付けられるサニーが欲しくなる。トリコのやつは知らん。

 

「おいお前ら早く氷全部!片付け!済まそうや!!」

 

「うわっ峰田がいつになく真剣!」

 

「なんかあったんか?」

 

「早くしねぇと…早くしねぇと…!ミスコンの良い席取られるだろうが!!

 


 

「ふっ!」

 

『華麗なドレスを裂いての演武!強さと美しさの共存、素晴らしいパフォーマンスです!』

 

「ケンドー!こっち向いてー!」

 

「拳藤、気合い入ってるなー!」

 

「あぁ!演武も素晴らしいけど…何よりドレスで強調されたアレが素晴らしい……」

 

「わかるぅ…!爆音、お前はどう思うよ?」

 

「あぁ…あの動きは悪くねぇ。鍛えりゃ中々のモンになるぞ」

 

「着眼点そこかよ!?少しは高校生らしくあれよお前!」

 

なんだかんだありながら、流れでミスコン会場に来てしまった。あんまりにうるさいもんだから耳栓代わりの"コルク"ボイスをキツくしてないと鼓膜が痛ぇ。

…てか次アイツじゃねぇか?

 

「おーっほっほっほ!!地味!圧倒的に地味ですわ!」

 

拳藤が引っ込むと、入れ替わりで去年ねじれを抑えて優勝してたまつ毛女が出てきた。今年は…なんだアレ、アイツの顔面の形した戦車…?うお、変形した。  

 

『3年サポート科!去年度グランプリ受賞!ミスコンの女王、絢爛崎美々美さん!高い技術で顔面力をアピール!圧巻のパフォーマンスだぁぁ!』

 

「絢爛豪華こそ美の終着点!私には勝てませんことよぉ!おーっほっほっほぉぉぉ!!!」

 

「これは何をする出し物…?」

 

「丁度今わからなくなったとこだよね」

 

呆気に取られるオレたちを他所に、何か叫びながらまつ毛は顔面戦車に乗ったまま舞台裏へと姿を消した。

…いやなんだ今の。てかそれより顔面力ってなんだ。

 

『さて、続いては同じく3年生!去年度準グランプリ受賞!ヒーロー科のアイドル、波動ねじれさんです!』

 

「ねじれ…頑張って!」

 

「波動さん、大丈夫…人間も所詮は哺乳類だから、動物程度に思えば楽になる…」

 

ギャラリー共は期待のこもった目で、知り合い達は固唾を飲んで見守る中。

——ねじれは、飛んだ。

 

「わあっ…」

 

いや、飛んだというよりはむしろ舞った、という表現の方が正しいだろう。

去年と比べると些か地味ではあるが、身体から溢れ出す波動で気の向くまま好きなように飛び回る様子は、さながら妖精のようだ。

その姿を見ていた周囲の生徒達からは次々と歓声が巻き上がっていく。

 

「……ん?」

 

「……♡」

 

一瞬見間違いかと思ったが、やはり気のせいじゃない。ねじれがすげぇこっち見てきてやがる。

なんだあのこっちを見つめる目は…!あれ偶に襲ってくる時の目じゃねえか!! 

…よし、逃げるか。

 

「あれ?どこ行くんだよ爆音」

 

「そうだぞ、折角の波動先輩彼女の晴れ舞台なのに…えっちょっ誰!?」

 

「ん?」

 

「「「「確保ぉぉ!!」」」」

 

「うおぉっ!?」

 

なんだこいつら!?いきなり腰掴んで…!

いや、よく見たらねじれと同じクラスの連中じゃねえか!!普段ならすぐ気づけただろうに…コルクボイスで耳栓してたのが仇になっちまったか…!

 

「ごめん爆音!ねじれから頼まれちゃってさ!」

 

「あんな顔でお願いされたら俺達だって断れないんだよ!」

 

「というわけで少しの間動けなくなってもらうぜ!」

 

「んがっ!?」

 

4人のうちの1人がオレの腕をツボでも押すように指圧すると、途端に体の自由が効かなくなる。

思い出した、こいつは確か相手を拘束できる"個性"の…!!

 

「てめっ甲矢!お前後で覚えてろよ!!」

 

「いいよ別に!その前にねじれが来るだろうけど!じゃあみんな、目立ってるからちゃっちゃと撤収!」

 

クソ、あいつらマジでどっか行きやがった!!

 

『あぁーっと、なぜか観客席で一悶着起きているぅぅ!!…おや?波動さんがそっちの方に…?』

 

「うおおおああああ!!?」

 

「……ふふっ♡」

 

必死に体を動かそうとするが、その抵抗も虚しくねじれは文字通りオレの目と鼻の先まで来てしまった。

 

ちゅっ♡

 

普段してくるものとは対照的な、軽くリップ音がするだけの、額に触れるようなキス。だがそれはほんの数秒だけ、会場中に静寂をもたらした。

 

「きっ……」

 

「「「「「きゃあああああ!!!」」」」」

 

「「「「うわあああぁぁぁぁ!!!!??」」」」

 

「ぐわああああ!!!?」

 

直後、堰を切ったように湧き上がった周りの連中(主に男共)が半ば悲鳴みてぇなバカでかい雄叫びをあげた。

コルクボイスしてんのに鼓膜が…!!痛え…!!

 

「ねじれって彼氏いたの!?ヤバ!めでたくね!?」

 

「ねじれー!おめでとー!」

 

「嘘だあぁぁ!!波動さんに彼氏なんて…嘘だあぁぁぁぁぁ!!!!?!?」

 

「俺の淡い初恋がぁ…!!!」

 

「許可しないぃ…俺は許可しないぃぃぃああああ!!?」

 

『は、波動さん、先程の純真無垢な妖精のようなパフォーマンスから一転!まさかの男子生徒にキス!!これは…脳破壊展開だぁぁぁ!!前代未聞!このようなパフォーマンスは前代未聞です!会場中のあちこちから女子生徒からの祝福の声と、波動さんに好意を寄せていたと思われる男子達の悲鳴が上がっています!ちょ、みなさん落ち着いて!次の方のパフォーマンスも控えてるんです!やめて!勝手にステージに上がらないで!あ、ちょっと波動さん!?勝手に帰らないで!?原因あなたでしょ!?ちょっとー!』

 

阿鼻叫喚の地獄と化した会場とそれをなんとか収めようと必死に叫ぶ司会者をよそに、ねじれは着地するとニンマリと少し妖艶さを含んだ笑みを浮かべながらステージ裏へと戻っていった。

 


 

「いやー、まさか残りの出場者全員が辞退してミスコンが中止になるとは…」

 

「先輩達が言ってたけど、ミスコン中止は雄英史上初らしいぞ」

 

「まぁあんなパフォーマンスする人なんて滅多にいない…というか波動先輩以外いないだろうしな」

 

あの後は本当に酷いことになった。

「あの人を超えられる気がしない」「あんな状況でパフォーマンスしても誰の記憶にも残らないと思う」だとか言って、残りの何人かが参加を辞退。ミスコンは前代未聞の中止という形で終了した。一応投票は行っているらしく、ねじれとその前の奴らの分の表彰はするらしいが…

 

「…と、爆音…その… 元凶波動先輩が後ろで待機してんだけど…」

 

「…んなモンいねえ」

 

「いや、早く反応してあげろよ!俺もう耐えきれねえよこの後ろからの無言の圧力!」

 

「……ハァァァァァ……で、なんだ?」

 

「デートしよ♡」

 

「絶ってぇ嫌だ。オレはもう寮に帰って寝る」

 

がしっ!

 

寮の方に向かってほんの一歩動こうとしただけで制服の襟元をガッチリと掴まれた。

拒否権なんてものはなかったらしい。

 

「じゃあ行こっか♡一週間くらい前から色々楽しそうなトコチェックしといたんだー!」

 

「おまっ離せ…クッソ、全然振り解けねぇ!!」

 

「あぁ、爆音が散歩拒否した柴犬みたいに引きずられてく!」

 

「波動先輩、あの細い腕のどこにあんな巨体引きずるだけの筋肉あるんだろうな…」

 

 

ーーーーーーーー

ーーーー

ーー

 

〜心霊迷宮〜

 

うーらーめーしーいやぁぁぁ!!!?

 

「ガチの妖怪出たああぁぁぁぁ!!?」

 

「助けてマザァァァァ!!」

 

「命だけは!?どうか命だけはぁぁぁ!!!」

 

 

〜クレープ屋〜

 

「奴だ!爆音が来たぞぉぉ!!」

 

「早く出禁にするんだ!!早く!」

 

「急げぇぇ!!仕入れた素材根こそぎ食い尽くされるぞぉぉ!!」

 

〜顔出しパネル〜

 

「ねぇねぇ、写真撮ってもらって良い?」

 

「あ、波動先ぱああああ!!?爆音だああああ!?

 

「天使と魑魅魍魎の類の奴がカップル向けのフォトスポットでツーショット撮ろうとしてる!!何これ!?夢!?」

 

 

ーー

ーーーー

ーーーーーーーー

 

「いやー、ほぼ全部のお店で出禁になっちゃったねー」

 

C組の心霊迷宮は全員オレの顔見るだけでビビって腰抜かすせいで出禁。飲食系の出店はオレの顔を見た瞬間店員全員の顔が真っ青になって、オレより前にも何人かいたのにも関わらずに早々に店じまい。

アスレチックのとこだけは無事に遊べたが、それ以降は全部入る前に閉店、もしくは店に近寄るか入った瞬間出禁だった。

 

「あ、そろそろミスコンの結果発表の時間!」

 

「ん…そういやそんな時間だな」

 

スマホの時計を見れば、時刻は既に夕方を回っていた。

ミスコンの結果発表が確か5時とかそこらだった筈だから、参加者のねじれはぼちぼち戻る必要がある。

 

「もうちょっとデートしてたかったけど……私会場に戻るね!」

 

「おう」

 

「……デートの続きは夜でね♡

 

「っ!?」

 

「じゃあまた後でねー!」

 

不穏な一言を耳元で残してから、ねじれは会場の方へと小走りで駆けていった。

夜がたまらなく恐ろしい。いっそのこと逃げるか?…いや、逃げたところでか。

 

ピロン♪

 

「ん?メール?」

 

今日の夜をどうやり過ごすものかと考えていると、スマホにメールがとどいた。

緑谷からだ。

 

『爆音くん!ちょっと良いかな?手伝ってもらいたいことがあって…』

 

構わない、という旨の文を送ると、待ってましたといわんばかりにすぐさま返信が返ってきた。

……成る程、そういうことか。

 

「ちとめんどくせぇな…」

 

日は半分ほど沈み、少し離れた市街地からカラスの鳴き声と羽を羽ばたかせる音がし始めた。

文化祭の終わりも近い。




オリジナルキャラ紹介
ゼブラの動きを止めた生徒
止賀二郎(しが じろう)! 個性 ノッキング!
秘孔を突くことで、対象の首から下の動きを完全に止めることができるぞ!止められる時間は最大5分!しかし止められる時間は秘孔を突く際の威力と比例しており、5分止めるには突き指どころか指が骨折するぐらいの勢いで突く必要がある!普段はセーブして10秒止める程度のパワーに抑えているが、偶に力加減を誤って突き指するぞ!ちなみに名前は二郎だが兄はおらず、一人っ子だぞ!
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