「クラウド?おまえクラウドだよな?」
誰だおまえは記憶にないね。
でも神羅兵なら昔の俺のことを知っていた可能性はあるのか。
実はここ5年あたりの記憶には所々抜けがある。
さっき幻覚を見ていたことも考えると頭がちょっとお辛いことになっているのかもしれない。
やはり医者に行くべきか⋯⋯
ともかくこいつが本当に俺の知り合いなのかを試してみよう。
嘘はつくなよ?俺はもう騙されないからなァ
「名前は確かにクラウドだが⋯⋯
それだけで知り合いというのは早計だ」
「だけどその髪型はどう見ても⋯⋯」
「他に知っていることはないのか?」
チョコボとかいうのはやめなよ。
俺の髪は癖っ毛でじっとしていてくれないんだ。
「故郷はニブルヘイム」
「正解」
「性はストライフ」
「正解」
「セフィロスに憧れて神羅兵になった」
「初めはな⋯⋯」
今はもう興味ないね。
次見つけたときには必ず斬り刻む。
思い出には負けない。元ソルジャーを舐めるな。
「というのが建前で実は幼なじみのティファにいいとこ見せたかったのが本音」
「えっ?」
「全然話したことないのにやけっぱちで水車に呼び出したらなんかうまくいったんだよなクラウド?」
おっとそれ以上俺の過去を話すのはやめなよ。誰も興味ないと思うからさ多分。
その一件は思い出の中でじっとしていてほしかったやつなのに⋯⋯
なぜ昔の俺はこの話をしてしまったのだろうか?医者に行けバカ!
「んで嫌いなやつはエミリオ。
ニブル山にティファを置き去りにした挙句濡れ衣を着せたバーローって文句言ってたっけ?
あいつより絶対出世してやるって息巻いてたんだよな〜」
「もういい!
──それ以上言ったら3秒後を悔いることになるぞ?」
「わかったわかった。
でもこれで信じてもらえただろ?
ほら、俺のこと顔見て思い出さないか?」
「記憶にないね」
っん?またちょっと頭が痛くなってきたな。やっぱ辛ぇわ。
ニブルヘイムのことを話していたことを考えるにこいつとは割と深い仲だったらしい。俺にはわかるんだ。
だけど不思議なことに全く記憶がない。なぜだろうか?
ソルジャーも初めは他の下級兵士たちとともに訓練を受ける。
その中で素質のあるものが昇格して、さらに優れた実績をあげたものがクラス1stまで上り詰めるわけだが⋯⋯
俺がこいつと知り合ったのはソルジャーになる前の訓練生時代だったと思われる。
ときどき仲の良い下級兵士とソルジャーがいることもある。
だが活動内容、戦士としての力量の違いがあるためそれは稀だ。
「で?おまえこの五年間何をしていたんだよ?
急にいなくなっちまって。死んだって噂が流れてたんだ。
心配したんだぞ?」
「ソルジャーとして仕事をしていたんだ。
知らないのか?」
「ソルジャー?
クラウドは俺と同じ下級兵士だったろ?」
「うっ!?頭がっ!?」
ま、また急に頭が痛くなってきた⋯⋯辛くて目の奥が熱いんだ!
耳鳴りがする──
「お、おい?大丈夫か?」
「⋯⋯あ、ああ。平気だ。
それでどこまで話していたっけ?」
「あんまり無理すんなよ?ってちょっと待て。
──瞳が魔晄を帯びている。
驚いたおまえ本当にソルジャーになったのか?」
しかもクラス1st。俺は強いぞ?
多分俺がソルジャーになった後のことをこいつは知らないんだろう。
ウータイでの任務は極秘のものが多かったしね。
「まあ確かにポテンシャルは凄かったよな⋯⋯
メンタル弱くて試験には受からなかったけど」
「うっ!?頭がっ!?」
ま、また急に頭が痛くなってきた⋯⋯辛くて目の奥が熱いんだ!
耳鳴りがする──
「おいおいまたかよ?大丈夫か?」
「へ、平気だ」
「ならいいけど。
なあ、ソルジャーならやっぱ何かすごい技とか打てたりするのか?
セフィロスとかアンジールは化け物みたいに強かった。
おまえの技も見てみたい!」
「いいだろう」
俺の技に興味があるんだね?
問題ない。元ソルジャーとして腕を振るうことにしよう⋯⋯
3秒後を楽しみにしてろ!
「まずはブレイバー!」
「フォー!バク宙かっこよすぎんだろー!?」
「そしてこれが破晄撃!」
「どっから魔晄エネルギー出してんだーい!この人間マテリアがよー!」
こいつ褒めるの上手いね。想いを言葉で伝える能力、高いと思います。
ここまできたら後には引けない。持てる全てを出し尽くす!
「凶斬り!」
「見える見えるよ!凶の字見えるよー!?」
「クライムハザード!!」
「犯罪級のかっこよさ!こいつはクラス1stだ〜!!」
「ふっ」
決まったな。
魔晄炉爆破するときよりも頑張ったかもしれない。
わっしょいされるとじっとしていられなくなるタチなんだよね。
「すげえなクラウド!
おまえ本当にソルジャーになったのか⋯⋯」
「元ソルジャーだ。
色々あって今は神羅をやめた。
これからは何でも屋をやっていくつもりだ」
「辞めちゃったのか?せっかくソルジャーになったのにもったいない⋯⋯」
「ブラックだからな。
思い当たる節はあるだろう?」
「まあ色々なあー。
でも給料はまあまあいいから俺はもうちょい粘るつもり。
それにしても何でも屋か。自営業は色々大変だと思うぞ?クラウドみたいなのは特に」
やめなよ。愛想が悪いのは分かっているけどやるって決めてるから。
もう後には引けない。途中下車はできねえんだわ。
神羅は確かに金払いがよかった。資源と産業を掌握した世界一の企業。
その下で命懸けで戦うわけだからソルジャーの報酬が弾まないわけがない。
だが額面に踊らされて労働環境の確認を怠ると大変なことになる⋯⋯
スカーレット、ハイデッカー、宝条。こいつら直属の部下の離職率は半端じゃない。
辞められるならいい方で、漏らしてはいけない機密を知ってしまった場合は最悪殺される。
ここで長年働いている連中の面構えは他とは違う。地獄を見てきたことがひしひしと伝わってくるのだ⋯⋯
だから転職を決意した。
まさかその初仕事が魔晄炉爆破になるとは思ってなかったけどね?
「まあ、頑張ってみるさ」
「何か困っていることはあるか?
俺にもできることがあるかもしれない。頼ってくれよ」
何だこいつ。めちゃくちゃいいやつだな。
クイーンズブラッドに興味はあるか?おまえとの楽しい遊びを考えていたんだ⋯⋯
といっても今は逃走中だしあまり時間をかけてもいられない。
するとこれはもうあれしかないな。
「医者に行きたい」
「え?医者?」
「幻覚を見るんだ。頭が時々痛くなる⋯⋯
どうなっているのか知りたい。
場所を教えてくれないか?今度行く」
「まじで?もちろんいいけど大丈夫かクラウド?」
大丈夫じゃないから医者に行くんだよバカ!医者に行け!
あれはもう幻覚ってレベルじゃなかった。
頭の痛みは電波を受信しているかのよう⋯⋯これで何もないはずがないだろう!?
病気は初期段階の内に検査を受けて早々に治療する。
母さんの教えだ。
「無駄じゃよ。
お主のそれはソルジャーの宿命だ」
「誰だ?」
通報したババアの家から出てきた一人の老人。
ソルジャーの宿命?それは何だ?興味あるね。
「ちょっと警備さん?お友達か何だか知らないけど早くその人連れていってくれない?
感動の再会はよそでやりなさいよ」
「まあまあばあさん。少し待ってくれ。
──少年。
わしは元々神羅で医者をやっておった。
そのときソルジャーの患者を何人も受け持ったことがある。
そして気づいたのだ。彼らは皆、しばらくすると精神に異常を来し始めることに」
「何だと?」
「ソルジャー技術はまだできてから日が浅い。
その詳細を部門の違ったわしが知ることはなかったが、危険な方法が使われていると噂されている。
幻覚や頭の痛みを訴えるソルジャーが少し前から急激に増え始めた。
ソルジャーは劣化する。治療方法は確立されておらん。
医者に行っても無駄じゃよ」
お、俺はもう騙されない⋯⋯
治療法がないだと?まだ20代前半。人生これからで、何でも屋を始めていこうというのに道半ばにして終わってしまうのか?
指先がチリチリする。口の中はカラカラだ。目の奥が熱いんだ!
後一体どれだけの時間が残されているのだろう?
そもそもこの老人は何を思ってそのことを伝えたのか?
「なら一体どうしろというんだ?」
「ま、生き急げよってことじゃよ。
仲の良かったソルジャーが最後に残した言葉は、もっと人生はっちゃければよかった。
その後は黒マント被ってどっかに消えおったわ。
そうはなりたくないじゃろ?だから思い残すことがないよう精一杯生きるといい。
とりあえずお主は女をまだ知らなそうだし、六番街にでも行ったらどうだ?」
「興味ないね」
つまりそのソルジャーと俺が重なって見えたということか。いい爺さんじゃないか。
だが女を知らないとか言うのはやめなよ。元ソルジャーを舐めるな⋯⋯
とにかく話をまとめると、俺は多分近いうちにラリって死ぬ。
あれ?さっきの幻覚ってそんなヤバめの奴だったの?
てかこれも全部神羅のせいじゃん!何人体実験してんだよバカ!?
帰り道に思わぬ事実を知ってしまった。
あとは列車に乗ってじっとしているだけだと思っていたのに⋯⋯
家に帰るまでが魔晄炉爆破。なので魔晄炉爆破はやっぱ辛えわ!
「クラウド⋯⋯」
「大丈夫だ。
俺は負けない。
俺は最強だ」
「無理すんなって。
はぁ〜神羅はやっぱりブラックだなぁ⋯⋯
ここまで酷いとは思っていなかったけど」
「やばくなったらすぐ逃げたほうがいいぞ」
「そうするよ⋯⋯
ところでクラウド、ティファとはもう会えたのか?」
「まあな」
「じゃあとりあえずおまえはあれだな。死ぬ気でティファと距離を縮めたほうがいい」
「えっ?」
いきなりこいつは何を言っているんだ?恋バナとかやめなよ興味ないね。
大体ソルジャーの劣化でラリってしまうかもしれないとはいえ、流石に今日明日、一週間後くらいの話ではないでしょう多分?
別にティファと付き合いたいとかそういうんじゃないし⋯⋯カップルになりたいとか本当興味ないんだからね?
クイーンズ・ブラッドの最新パック買うとか、何でも屋で一発当ててでっかいお家建てるとか、スクワットの最高記録を目指すとか他にもやることはたくさんある。
「いや別に、そういうのは興味ないね」
「照れんなって。死んでから後悔しても遅いぞ〜?」
「勘違いをするな」
「俺のとっておきデートプランを教えてやるよ。
いいかよく聞け?
まずは劇場デートだ。文化的なところを見せて彼女のハートをキャッチ!
見に行くならやっぱ王道のLOVELESSだな。ポスターそこら辺に貼ってあんだろ?
で次は──」
「マジで興味ないね」
LOVELESSを見に行こうよ、みんな?
ふざけるな演劇とか興味ないね。
劇場の隅っこでじっとしていることの何が楽しい?元ソルジャーの俺には退屈すぎるね。
そんなことよりスクワットだ!筋力!体力!持久力!
宿舎!訓練!戦場!それが俺の世界だ!
「大体俺にはこいつがある。
見ろ。再会の花だ」
「おまえ、それ一本で勝負するつもりか?
無理すんなって。
花束でもクラウドじゃからかわれておしまいだろうよ?」
「えっ?」
「大体それさっき広間で可愛い姉ちゃんが100ギルで売ってたやつだろうが!
贈り物にはもっと金をかけろ!」
「俺はタダだった」
「え?そうなのか?」
「ふっ⋯⋯値段は相手、見て決めるそうだ」
おまえはタダにはしてもらえなかったみたいだなァ!?
タダできれいなお花をもらえてしまう元ソルジャーを舐めるなよ!?
決め手はやっぱこのチョコボみたいな髪ですかねやっぱ。
「タダなら尚更ダメじゃねえか!
──ていうかもうそれほぼ逆ナンじゃねえか!
何女の子からの贈り物を他の女の子に渡そうとしてるんだおまえは!?
羨ましいぞ医者に行けバカ!」
「今行ってきました」
「そうだったよ!」
あれは逆ナンだったのか⋯⋯やっぱり元ソルジャーを舐めたらいけないな。
街を歩くだけで逆ナンされてしまう。やっぱオーラが出てんだろうな。クラス1stのオーラが。
魔晄帯びちゃってるー!?ひゅーひゅークラウドー!!
「ん。ちょっと待って連絡だ。
⋯⋯はい、もしもし。えっ!?魔晄炉爆破の逃走犯の捜索!?
私たちは管轄外なのでは⋯⋯
い、いえっ!何でもありません!直ちに任務に努めさせていただきます!
それで犯人の特徴は⋯⋯
でっかい剣、ネジの生えた肩パッド、チョコボみたいな髪型──
分かりました。失礼します」
「⋯⋯」
「何やってんだおまえェ!」
「感想はいらない他に方法がなかった。じゃあまたな!」
「ちょ待てよお!」
神羅によって引き裂かれる再会した友との絆⋯⋯
男たちは己の悲運より、友のために涙を流した。
一体どうしてこうなってしまったのか?
深淵の謎。それは女神の贈り物。その謎を探るべく我らは求めジャングルの奥へと飛びたった⋯⋯