すごく興味あるね   作:あほみね

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第5話

野宿かと思ったら⋯⋯ベッドのついた部屋で寝ることができました!

今日の俺は運のいいやつだね!

 

住む場所ないってティファに相談したところ、何とタダで泊まれるアパートを紹介してもらえた。

大丈夫?怖い人出てくるとか心配しちゃうんだけど?

アバランチ割りって何よ?星を守る戦いに理解ありすぎじゃないかここの大家さん⋯⋯

 

お花にマテリアにアパート。なぜだか知らないが今日は出会った女の子から色んなものをタダで貰えてしまう⋯⋯まあ元ソルジャーだからね。当然の結果だ。

 

おおお⋯⋯ベッドに沈んだ指がふわふわする。カラカラだった口の中は水道水で潤い、一日働き続けて疲れきった体に染み込む癒しが目の奥を熱くする⋯⋯

 

忙しかったこの一日を振り返ってみよう⋯⋯

 

ティファにいきなりテロのお誘いを受けて、神羅兵を斬りまくり魔晄炉に潜入。

サソリにミサイルを乱射されるが辛くも脱出。そして魔晄炉爆破。

 

花売りの少女を正体不明の見えない敵から守り、その後故郷を燃やした英雄セフィロスと再会。しかしそれは多分幻覚だった。偶然出会った医者に余命宣告をされ落ち込む。その後治安維持部門に追いかけられるも頑張って逃走。

 

列車に乗ったら社畜の神羅課長とバウト。ズタボロに負ける。7番街スラムにようやく戻ってくるも、ティファに花をうまく渡せず爆死。挙げ句の果てにはマリンが俺をチョコボにする。そして報酬は明日へと後回し⋯⋯

 

何だこの過密スケジュールは?あまりにも密すぎる。

元ソルジャーじゃなかったら途中で倒れていたぞ?

 

「うあああ⋯⋯うああああ⋯⋯」

 

「えっ?」

 

隣の部屋から変な声が聞こえてくる。怖い人出てきちゃったよ。

確かティファが明日紹介すると言っていた人だったか。

念のために見ておこう。うめき声を聞きながら寝たら悪夢を見てしまいそうだし。

 

「おい?大丈夫か?」

 

扉が開いている⋯⋯お隣さんもっと防犯に興味を持った方がいいね──

うっ!?頭が急に痛く!?

 

「えっ!?」

 

部屋の中にいたのはかの英雄。さきほど再会を果たした死んだはずの男だ。

 

バカな──なぜここにセフィロスが!?

大家は何を考えている!?セフィロスに部屋を貸すなんて正気か!?

そもそもこいつは何を思ってスラムの片隅でこっそりと暮らしているんだ!?

 

いやそんなことを考えている場合ではない。今すぐこいつを叩き切る!

 

「せやあっ!」

 

カアアアアアンッッ!!

 

ば、バスターソードが扉の枠縁に!?

こんなときになにドジを踏んでいるんだ俺は!これが死因になったらソルジャーの恥だぞ!

落ち着け。部屋の中に入ってしまえば剣を振り回すスペースはある。

 

よし今だ斬れクラウド!

おまえは思い出の中でじっとしていればいいんだ!

 

「やめてクラウド!」

 

「ティファ!離れてろ!」

 

「うあああ⋯⋯」

 

えっ!?

セフィロスが急にのしかかって来た!?まずい咄嗟のことで反応が──

 

「リ⋯ユニ⋯オン」

 

頭が痛い⋯⋯

何だこの景色は?どこかの谷。激しい風の中を黒マントたちが行進している⋯⋯

俺は一体なにを見せられているのか?

 

「うああああああっ!!」

 

「クラウドっ!」

 

「あっ!?」

 

セフィロスがいなくなった⋯⋯いるのは一人の唸っている黒マントの男だけだ。

ほんの3秒前までは確かにセフィロスがそこにいたはずなのに。

今はまるで嘘のように消えてしまっている。

 

また幻覚かよ。

いや、よく考えれば当たり前だ。こんなところにセフィロスがいるわけがない。

それでも本物と見間違うような幻覚を前にするとどうしても突差に動いてしまうのだ。

 

今回は間違って人を斬ってしまうところだった。

ティファがいなかったら本当に殺してしまっていたかもしれない。

 

「すまなかった」

 

「うあああ⋯⋯」

 

「この人、体の具合が悪くてずっとこんな感じなの。

マーレさんが面倒を見てこの部屋を貸してる⋯⋯」

 

魔晄中毒。

今、ティファに抱えられ部屋に戻された男は、魔晄を浴びすぎたものの一人なのだろう。

魔晄は星の命であり、文明の光を照らすエネルギー。しかし同時に人を狂わせる毒でもある。

魔晄に犯されたものは正気を失い、幻覚を見るという。

自分の症状と重なるところがあると思う。ひょっとすると俺は将来ああなるのかもしれない。元ソルジャーはやっぱ辛えわ。

 

「クラウド⋯⋯どうして斬ろうとしたの?

ちょっと怖いかもしれないけど、悪い人じゃないよ」

 

「それは⋯⋯」

 

セフィロスに見えたから。

そう言いそうになる口をグッと抑える。

そんな妄言、信じてもらえないだろう。

 

いや、信じてもらえないだけならまだ問題ない。

本当にまずいのは信じてもらえてしまったとき。

セフィロスが生きていると聞かされたらティファはどんな気持ちになるだろうか?

 

ついうっかり口を滑らせて、セフィロスと言ってしまったら3秒後を悔いることに間違いはない。俺には分かるんだ。

だがいきなり人を斬ろうとしておいて何も言わないわけにはいかないだろう。

肝心なところはぼかしつつ本当のことを話すのが元ソルジャーの話術。

 

「昔の敵に見えたんだ。

ときどき幻覚に襲われる」

 

「大丈夫、なの?」

 

「問題ない。

生き残るのは運のいいやつか強いやつだ。

俺は強いぞ?

 

つまり、多少幻覚を見ようが俺は生き残れるということだ。

元ソルジャーを舐めるな」

 

「ふふ。頼もしい」

 

月の見えないプレートの下、かすかに灯る人工の光の中で優しく笑うティファ。

その微笑み、とてもきれいだ⋯⋯

何だかとてもいい雰囲気だ。30分前にチョコボの真似をして笑われた仲だとは思えない⋯⋯

 

「じゃあまた明日」

 

「おやすみ、ティファ」

 

早く部屋に戻って眠りにつこう。

もうこれで本当今日は終わりにしてくれよ?

まさか魔晄炉を爆破した後、アパートの中でまでセフィロスと会うことになるなんていくら何でも忙しすぎる。

これ以上の面倒ごとは勘弁してほしい⋯⋯

 

「あっ」

 

「どうしたティファ?」

 

「クラウド⋯⋯扉の上壊しちゃってる」

 

「えっ!?」

 

おっとさっきバスターソードを引っ掛けたところに亀裂ができてますね。

コンクリートの破片がポロポロと落ちている。

まあまあまあ。こんな細かいところ誰も興味ないし、気にしないでいこうよみんな?

 

「マーレさんに怒られちゃう」

 

「このくらい大丈夫だろう」

 

「ダメだと思う。

前に貸した部屋を汚くした人のこと、すっごく叱ってたから」

 

「えっ!?」

 

「タダで住ませてもらえなくなっちゃうかも⋯⋯

ちゃんと弁償しなくちゃね。

明日一緒に謝ろう」

 

「お願いします⋯⋯」

 

ただでさえ少ない報酬から修理代が引かれてしまう⋯⋯

なんという理不尽。悪いのは狭いアパートに住んでいるセフィロスじゃないか。

本当にこれで最後にしてくれよ?不運を恨みます⋯⋯

 

 

 

「JSフィルターの交換に来ました!」

 

報酬をもらうはずだったのにどうして俺はアイテム屋でJSフィルターの営業マンをしているのだろうか?

愛想悪いやつに営業させるのはやめなよ。惨劇に躍ることになるぞ_

 

「いらっしゃ〜いティファちゃん!ところでそいつは?」

 

「集金係のクラウドです。お代は彼にお願いします」

 

「あんたうまいことやったな?」

 

ほら〜いきなり喧嘩売られる。ティファの横にいるってだけで因縁つけられてるよ俺。

ボディガードとか言って同伴させられたけどティファさんこれ俺がいない方が絶対スムーズにお代を回収できたよね?

何だろう。魔晄炉爆破。マリン。JSフィルター。俺はティファにいいように使われすぎじゃないだろうか?

 

幼なじみとはいえ限度があると思います。俺はもう騙されない。

ティファ、お前への贈り物を考えていたんだ。散々振り回してくれたお礼を贈ろう。

お前をダシにしてお金を稼いでやる!

 

「知りたいか?」

 

「ナニぃ?」

 

「ティファとうまいことやる方法を知りたいかと言ったんだ。

セブンスヘブン癒しの店主と距離を縮めるノウハウをまとめた情報商材、興味あるよな?

今なら期間限定特別価格500ギルでおまえだけに教えてやる」

 

「クラウド?何を言ってるの?」

 

「ティファちゃん悪いことは言わねえ。こいつとは今すぐ縁を切れ」

 

とか言って本当は興味あるね?俺には分かるんだ。

7番街スラムでのティファの評判は調査済みだ。ずばりセブンスヘブンの天使!

肩から下がる謎の黒ベルトで胸を強調するセクシーダイナマイツな格闘家。なのに性格はお淑やかで清楚!ギャップ萌えたまんねえ!

右腕が銃のグラサンと天望荘の大家さえいなければ絶対にアタックする⋯⋯それがこの街の野郎どもの総意。

 

いきなり湧いて出てきたチョコボ野郎が気に食わなくてしょうがないが一体どうやって周りを出しぬくことができたのか興味があって仕方ないんだろう?俺には分かるんだ。

その需要を突いたビジネスだ。何でも屋なら情報商材も取り扱えて当然だよなあ?

 

ってちょっと待て。あの棚にあるのはクイーンズブラッドのカードじゃないか!?

どれどれ──

こ、このカードの効果は!?あまりにも強すぎる。俺はまた幻覚を見ているんじゃないだろうか!?

 

「おい店主。このカードは売っているのか?」

 

「ああ?

──ほう。そいつに目をつけるとは。悪くない目をしている」

 

「これを買いたい」

 

「いいだろう。だがそいつは放っておいてもそのうち買い手がつく。

わざわざ気に食わないやつに売る理由はないな。

──ここは取引と行こうじゃないか?」

 

「ふっ」

 

ティファと仲良くなる未来へと繋がる敷かれたレールには抗えまい?

くっくっくっ⋯⋯クイーンズブラッドのレアカードを俺は今手にいれる⋯⋯

待ってろよ社畜の神羅課長。このカードでお前のデッキを破壊するゥ

 

では会計を⋯⋯あ、俺今無一文でした。

 

「すまないがまずJSフィルターの代金をもらえないか?」

 

「ああ?ほらこれでいいか」

 

「毎度あり。そしてこのお金でカードを買わせてもらう。ちょうどピッタリだ」

 

「クラウド?」

 

「ティファちゃんこいつやっぱやめた方がいいよ」

 

おい俺が稼いだ自分のお金だぞ?自分の欲しいものを買って何が悪いんだ。

人の趣味に口を挟むのはやめなよ。いいから早くそのつよつよカードを渡すんだ!

 

「知りたいのか?知りたくないのか?どっちだ?」

 

「やけに自信満々じゃねえか?

ほらよ受け取れ。

で?どうやってあんたうまくやったわけ?

まさかバウターに二言はないよな?」

 

「ああ。当然だ」

 

「クラウドって私とうまくやってるのかな?」

 

悲しくなること言うのはやめなよ。昨日の夜はいい感じの雰囲気だったじゃないか?

とはいえもちろんティファとうまくやる方法なんて知らない。知っていたら昨日お花を渡すときに苦笑されることはなかったわけで⋯⋯

おっとついあの爆死シーンを思い出して目の奥が熱くなってきたぞ⋯⋯思い出の中でじっとしていてくれ黒歴史⋯⋯

 

さて、うまくやる方法は知らないけど、とにかく他の人からしたら一気に距離を詰めてうまくやっているように俺は見えているわけだ。俺と俺以外、その違いを生んだのがなにかと言えば⋯⋯

 

「簡単なことだ。ニブルヘイムに生まれてティファと幼なじみになればいい」

 

「バカが!それができたら誰も苦労しねえんだよ!

再現性ゼロの話しやがってこの詐欺師が!

死んで生まれ変われってか!?」

 

「星へお帰り」

 

「アバランチかてめえは!

もういいお前に聞いた俺がバカだった。

ティファちゃん?こいつが嫌になったらいつでも言ってね。

集金係は俺が代わりに手伝うから」

 

嘘は言ってないからセーフ。これが情報商材のやり方だああ!

そしてお前が俺の代わりに集金係を務めることはない。

幼なじみを舐めるなよ。

 

「覚えておきます。クラウド、もっとしっかりしてね?

それじゃ次に行こっか。

JSフィルターのご利用ありがとうございます!」

 

「またのご来店をお待ちしています。

ティファちゃんを連れてるときだけな?」

 

 

 

「次はマーレさん。愛想よく、ね?」

 

「愛想とか苦手だね」

 

「何でも屋さんのお仕事するならとっても大事なことだよ。

ご縁はお金よりも大事なんだから」

 

要はコミュ力がものをいう仕事っていうことか?

何で俺何でも屋をやろうなんて思ったんだっけ?

モンスター退治だけやって飯食ってくことはできないのか?

うっ!?頭がっ!?

 

「ほれ。これが代金だよ。受け取りな」

 

「毎度あり。そしてこのお金で壊した扉の弁償をする。

昨晩は入居初日で設備を壊してしまってすいませんでした。

よしちょうどピッタリだ」

 

「クラウドまた回収したお金すぐ使ってる⋯⋯」

 

無駄遣いする気は全くないんだよ?なのに出費が嵩むんだ。

おかしい手元にお金が全く残らない。一体どうなっているんだ⋯⋯

 

 

 

「ああっ!?効果がないのに料金を払えって!?世の中甘く見てるんじゃねえぞ!!」

 

「払うよな?」

 

「ちっ⋯⋯」

 

「毎度あり。そしてこのお金で後ろのかっこよさそうな剣を買う。ちょうどピッタリだ」

 

「クラウド、いい加減にしなさい!」

 

あれ〜?料金回収し終わったのに結局無一文のまま。

目の奥が熱いんだ!どうしてこうなった!?

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