そこは、偉大なる航路のとある島。
その中心部には、巨大な苔むした木々がうっそうと茂るジャングルが広がっていた。
明るいが、どこか全体的に冷たく沈んだ瀬戸物の絵のような、小鳥のさえずりが似合う静かな場所だ。
だが、今、響いているその音は……
「ぬぉぉぉ!!!」
2人の男の雄たけびだ。
髑髏のマークをつけた帽子をかぶる男と、眼鏡をかけ髭をはやした男が、仲良く浜辺を走る。
「おい、レイリー!! なんとかしろ!!」
「飛んでる相手に剣でどうしろってんだ!!」
「オレもだよ!!」
「元はと言えば、『腹減ったからアイツ食おう!』とか言ってちょっかいかけたのお前だからな!! ロジャー!!」
「仕方ねぇだろ、腹減ってたんだから!!」
「あんなの食えるわけねぇだろ!! 見てわかれよ!! アホ!!」
砂に足を取られつつも、両腿に気合という鞭を入れ、勢いよく地面を蹴りながら器用に喧嘩を続ける2人。
そんな2人がなぜ逃げているのか?
それは、彼らの背後からやって来ている生き物が問題だった。
空は朗らかに晴れ、絵巻のように黄金に輝く雲が浮かんでいた。その光を巨大な影が遮った。
全体的に丸みを帯びたフォルム、体の上面と下面で異なる色合いの巨大な鱗。
上面は黒みがかった黄色の鱗が集まって大きな甲殻を形成し、首や尻尾の下側からは黒銀色の鱗が果実のように垂れ下がっている。怒りのまま力を振るうその姿。
それを表す言葉はこうだ。
生きた戦略爆撃機
「BAOOOOON!!!」
咆哮とともに地面へと落ちた鱗が、ロジャーたちの背後で爆発を繰り返し、砂埃を上げる。
「ヤベェ、追いつかれるぞ!!」
「とにかくあいつの目の届かない場所へ隠れるぞ。降りてくれればやりようはある!!」
まずは上空を飛ぶ竜の視界から外れる必要があった。そして、彼らの目の前にジャングルが広がっていた。
「レイリー! 森だ!!」
「よし、まずはあそこに!」
ダバダバと音を立てながら高速で足を動かし、見つけたジャングルへと飛び込む。その上を旋回する竜。
「なんとか逃げきれたか」
「飯を食うにも食べものがなきゃな。先に進むか。水場もあったらいいが」
2人はそのまま森の奥へと歩いていった。
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森の中を進むと、後方にトサカのような発声器官、棘の生えた尻尾、肩から尻尾にまで張り出した背ビレを持つ生き物や、斑模様のある緑がかった体色の鹿に似た生き物がいた。
ロジャーとレイリーはさまざまな島で冒険を続けているが、こんな生き物は見たことも聞いたこともなく、不思議に思っていた。
「見たことねぇ生き物だらけだな、この島」
「食べられそうといえば食べられそうだが、毒があると困るな」
しばらく森を歩くと、開けた場所に出た。そこは空気がはっとするほど新鮮で、あたりには静寂が満ちていた。
小さな川が村の中央を流れ、小鳥のさえずりがどこからともなく聞こえてくる。
稲が風で揺れ、太陽の光をめいっぱい取り込み、すくすくと育っている。
家は数えるほどしかないが、確かにそこは村だった。
すると、川で洗濯をしていた老婆が話しかけてきた。
「おや、旅人かい? よくこんなところまで来れたね」
「ここに上陸したとき、空から爆弾を投下する謎の生物に襲われてここまでな。おかげで仲間と逸れちまったよ」
「ああ、あれかい? 私たちにもよくわからなくてね。1か月くらい前からこの辺りを飛ぶようになったんだけど、おかげで沖に漁も出られなくて困っているんだよ。
前に
そう言われ、辺りを見渡す。ここは、森の中とは違って開けた場所。
周囲は巨大な大根のような木に覆われているが、見晴らしはいい。
上空から爆撃されればすぐにでも更地になるだろう。
あれほど好戦的な相手が襲わない理由が、この地にはある。
レイリーはそう考えていたが、その通りだった。
大根のような木は「ダフトグリーン」と呼ばれ、動物たちが嫌う匂いを放っており、どんな生き物も村には近づかないのだ。
「少し休ませてもらえるか?」
「ああ、いいとも」
老婆に誘われ、食事と共に休息をとることに。村人の家に入ると、そこには見慣れない生き物の絵が飾ってあった。
「これは?」
「この村の守り神さ。昔、この村に降りかかった厄災を退けてくださったようだよ」
そこに描かれていたのは、白い体毛と額から伸びる一本角。
ユニコーンと呼ばれる空想の生き物に似ていた。
どこの島でも伝承のひとつはあるかと、レイリーは気に留めなかった。
「さて、どうするか。ここで仲間が来るまで待つか、冒険に出かけるか……聞くまでもないか」
「当然! 冒険だ!!」
自分たちが入って来た場所とは逆方向へと進む。変わらぬ景色だが、のどかで平和な村だ。
小さな家が並び、誰もが幸せそうに一日を暮らしている。
村を散策すると、その奥、村から100mほど離れた場所に古びた小屋を見つけた。
気になって2人がその戸を開けると、中には薄暗い空間が広がっている。
その中心には、部屋いっぱいを占領する正六面体の石。その意思の正体をロジャーたちは知っていた。
「ポーネグリフ、こんな所にもあったのか」
「相変わらず、なんて書いてあるかさっぱりだな」
「早くこれを読めるやつを見つけないとな」
石に触れながら、これを書き残した者の真意が読めれば──そう思うロジャー。
すると、石の陰で何かが動いているのが気になり、顔を裏側へ回すと、何かが視界を覆った。
「gyui!!」
「うぉっ!?」
足元から飛び出してきたのは、人間の大人よりは小さいが、しっかりと地に足をつけた竜だった。
まるで本物の白銀のように金属質の光沢を放つ甲殻は、月のように静かで冷たい輝きを持っていた。
高い飛行能力と多様な環境への適応力により広大な縄張りを持ち、「天空の王者」と呼ばれたリオレウスの子供だった。
それも、ほとんど存在が確認されていない希少種だ。
本来は親に育てられるはずの竜が小屋にいる理由など、簡単なことだ。
親とはぐれたか、あるいは捨てられたか──そのどちらか。
「なんだってんだ。ロジャー、コイツ何か言ってるか?」
レイリーが背後のロジャーに声をかけると、剣を持つ手をじっと見ているロジャー。
その視線に不思議さを覚えるが、自分が声をかけるよりも先に、ロジャーが目を細め、狐につままれたような表情で口を開いた。
「ああ、言ってんな……」
──ギャルのパンティくれ!!
「なんか、アホな言葉覚えてるわ」
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「んで? おまえはなんなんだ?」
──ボク、リオレウス! キチョーなやつ!!
「りおれうすか、こんな所で何してんだ?」
──ボクのトーチャン待ってる!! なんかドラゴン倒すって言ってた!
「父ちゃんがいるのか。おまえもドラゴンみたいだが」
──トーチャンは人間だよ!!
それを能天気に話を進めるリオレウスに、ロジャーは言葉に詰まる。自然では当然のことか、それとも、子供だからまだ分からないのかと、心苦しくなる。
「いつからここにいるんだ?」
──ながーくいるよ、お日様が何回も登ったかな。
戻って来ないというのは変だ。あの海岸からここまで何日もかけてくるような場所でもない。戻って来ないということは、何かに巻き込まれたか、戻れない何かがあるかだ。そして、ロジャーは昔、赤子を拾った時のことを思い出していた。
「……レイリー、アイツ、倒すぞ」
「なんとなくおまえたちの会話から察したが、あれはオレたちの剣が届かない位置から攻撃してくる。何か策を考えないと」
「リオレウス。アイツは絶対にオレがなんとかしてやる」
──トーチャンのお手伝いしてくれるの?
「ああ。オレに任せとけ」
──うん!
「はぁ……仕方ねぇな」
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翌日、爆撃してくる竜を森の中から息を殺し観察してみることに。
浜から森にかけてが縄張りのようで、そこに来たものたちを爆発させ、すぐに上空を旋回する。やはり、かなりの高度で飛んでいるため、手出しができない。
降りている所を狙ったところで、空を飛ばれては意味がない。気が付かない速度で羽を切り飛ばす手段もあったが、森から浜へは障害物が無く、それも難しい。
「お手上げじゃね?」
「おい、こら。おまえがやるって言ったんだろ」
ちなみに覇王色の覇気は全然効かず、むしろ怒らせるだけであった。
覇王色で威圧した瞬間、すぐにロジャー達へと上空から放たれる爆撃。追われながら浜を全力で走るロジャーとレイリー。
その光景は、青春を送る学生のように爽やかであっただろう──爆発がなければ。
その日、1日は、成果を得ることができず、再び村に戻ることに。
──ロジャー、ロジャー、よく来た!!
「お、リオレウス、迎えに来てくれたのか」
ロジャーに一目散にかけより、その胸に飛び込んだリオレイス。
──たおせた?
「まだ作戦が思いつかないな」
──そっか。ボク、この石守らないとダメだから、手伝えなくてゴメンネ。
「この石を? なんでまた」
──トーチャンに言われたんだ。この石は、大事な歴史が書かれてるんだって! 歴史は大事なんだよー、ギャルのパンティくらい!
ギャルのパンティの重要性はさておき、ロジャーは石をそっと撫でる。
「この声は、歴史よりももっと違う。悲願に似た感じが────っ!」
ロジャーがリオレウスを抱え、咄嗟に窓から外へと飛びだす。レイリーも同じくタイミングで扉から飛び出した。
次の瞬間、小屋に、光り輝く烈風のようなガス状のブレスが、高速で吹き付けられた。
その一撃はまるで、神罰の如き暴風。
建物が吹き飛び、木片が宙を舞い、砂埃が視界を覆う。
だが、見聞色の覇気でその気配ははっきりと感じ取っていた。
「BGNOOOOON!!!」
地響きのような声で砂埃が晴れた。
咆哮が空気を裂く。
濡れたように光る暗緑色の鱗に覆われた体躯。
異様に太く発達した後脚と尾、それに対して極端に小さい前脚。
首まで裂けた口と棘だらけの顎は、完全な肉食性の証。
喰らう。見るものすべてを喰らい尽くす、終わりなき捕食の化身。
小型から大型の竜、果ては古龍種まで、目に映る者全てを喰らい尽くそうとするアウトロー。
その姿を見たロジャーは即座に刀を抜いた。
濁流のような殺気が、その場を支配する。
「……強いな」
──あ……アイツ…
その声を、ロジャーは聞き逃さなかった。
リオレウスを木陰に降ろし、目を細める。
次の瞬間、振り向いたロジャーの視界いっぱいにイビルジョーの顎が迫る。
だが──すでに行動は始まっていた。
振り向きざま、その巨大な顎を剣で跳ね上げる。
悲鳴のような咆哮とともに、イビルジョーの体がのけぞる。
ニヤリと笑うロジャーは、刀に覇王色の覇気をまとわせる。その剣閃が、無防備な顎を貫いた。
「BGUA!?」
ゴキッという鈍い音共に、そのまま仰向けで倒れたイビルジョーは、仰向けに倒れたイビルジョーは、尾を振り回し、接近を拒む。
「リオレウス、逃げろ!!」
──あ、でも、
「大丈夫だ…任せろ」
──う、うん!
ロジャーの笑顔に、リオレウスは安心したように頷き、森の中へ走っていく。
イビルジョーの意識を自分に向け続けるよう、絶え間なく攻撃を浴びせるロジャー。だが、ただではやられるだけではない。
一度、その場から飛び退き距離をとったイビルジョーが、その顎で地面をえぐりながら近づく。視界がいっぱいになり逃げ場がない。
逃げる必要などないと、その場で足を踏み締め、剣を横に払う。
ぶつかり合う両者は互いに拮抗し、力一杯踏み止まる。その最中、胸騒ぎがし、見聞色で未来を見た。リオレウスが最悪の事態になることを。
「レイリー!!」
「ああ」
ロジャーの声に応じ、走り出すレイリー。その視線の先で、木々が次々と倒れていく。レイリーが剣を一振り、投げ飛ばされた巨木を真っ二つにしたが、その勢いは止まらず、イビルジョーへとぶつかり、ゴロゴロと転がる。
森の中から飛び出してきたそれは、漆黒の体毛と側頭部から真横に伸びる一対の巨大な角を持つ、背後に正義のマントを付けた何かであった。ロジャーはその姿に見覚えがあった。
「ガープ!? なんでここに!!」
ロジャーの言葉にガクリと肩を落とすレイリー。ズレたメガネを掛け直しながら、ため息を吐く。
「いや、よく見ろロジャー、ガープじゃねぇ。あれはゴリラだ」
「いや、なんでゴリラがこんな覇気垂れ流せるんだよ」
「オレが知るか」
緊張感のない会話を言葉を遮ったのは、金属がぶつかるような重い衝撃音だった。
レイリーの剣と、ゴリラの拳がぶつかり、風圧が爆ぜる。受け止められるとは思っていなかったゴリラは、目を見開き驚いた様子だった。
「たしかにガープなら、これくらいじゃすまねぇな!! 」
ゴリラの横腹を、剣を振り抜くロジャー。その場から吹き飛ばされたかに思えたが、しっかりと両足で着地し、斬られた脇腹をさする。
ダメージはそこまで負っているわけではなく、むしろ怒りを増幅させただけだった。
「なかなかタフだな。どっちをやる?」
「ガープっていいてぇが、あっちのゴーヤに用があるからな」
「じゃあ、オレがガープだな」
ロジャーとレイリーが背中合わせに、お互いの敵へと剣を向ける。先に動いたのはレイリーだった。
振り下ろされた拳を剣で受け流し、懐へ入ると、目にも止まらぬ速さで斬撃を繰り出す。
初めは分厚い毛皮でダメージは少ないが、何度も何度も斬ればその刀身が、届く。
「GOAAA!!!」
とうとう痛みで声を上げたゴリラ。両手を組んで振り下ろすダブルスレッジハンマーを繰り出す。
その攻撃はジャンプで避けられ、空を切った拳が大地を割り、地面が盛り上がった。降りてきた腕へと着地したレイリーが、その腕を駆け上がり、顔面を斜めに袈裟斬り。
傷口からは、赤い体液が噴出した。左手で傷口を抑え、右腕を振り回すゴリラ。
本来、全身が筋肉、特に腕の逞しさは異常であり、腕を使った攻撃は驚異的な攻撃力を持っていた。
軽く振り下ろすだけで大地を揺るがすほどの剛腕に殴りつけられれば、生半可な防具では、一撃を耐える事さえも無理なほどの威力。
だが、それが1人の人間に、躱され、傷を負わされ、ついに怒りが頂点に達した。
突然大部分の体毛が金色に変色し、さらに後頭部から背中にかけての鬣に当たる部分が逆立つ。暗闇の中でも判別できる程に明るく輝くその様相は"金獅子"と呼ぶにふさわしい。
「GAQUAAAAAA!!!!」
その者の名は、ラージャン。破壊の権化と恐れられる、古龍すら倒せる異端者だ。
「えぇー!! 金獅子!? なんでここに!!」
「いや、シキじゃねぇよバカ!!」
激しく胸を叩くドラミングとともに、ラージャンの両腕が異様に肥大化し、赤黒く変色していく。
「GROAAAAA!!!」
咆哮とともに跳躍し、対象に目掛けて猛烈な勢いで豪腕をたたきつけた。まとった気光エネルギーを炸裂させ、大地を揺るがし、衝撃波を巻き起こした。
「くっ! さっきの光はコイツの仕業か!!」
その光は、村を囲う一部のダフトグリーンを焼き払う。バキバキと音を立て、地面に倒れたタフトゲリーン。
それは、村を守るものが無くなったことを意味した。
それを見ていたイビルジョーの目が光る。が鎌首をあげ、一直線に走り出す。未だ敵はいるにも関わらずだ。
イビルジョーが誰にでも襲いかかるのは、自らの生命活動を維持するためだ。
つまり、村へ向かう理由は、得られるエサがあるからだ。
「ロジャー! マズイぞ、アイツ村に!!」
「クソ、オレを無視するとはいい度胸──っ!!」
走り出そうしたロジャーが胸を押さえ、膝をつく。
「ロジャー!?」
「くそ、こんな時に病が……」
だが、相手の方が走り出しが早かったのに加え、あの巨体だ。歩幅が違い過ぎる。既にイビルジョーはの中へと入り込んでいた。
村では、悲鳴を上げ、村人たちが逃げ惑っていた。だが、皆が若いわけではなく、老人たちも多いい。
ロジャーですら追いつけない相手から逃げられるはずもなく、すぐそこまで来ていた。狙いをつけられ、口を大きく開くイビルジョー。
「間に合わねぇ!!」
その時、上空から何かが落下した。
それが頭に当たったイビルジョーは、村人を食べる前にその上空を見渡す。その隙に逃げ出す村人。
地面に落ちたそれにイビルジョーが顔を近づけた瞬間──それが爆発した。
「BGARAAA!!」
一つが爆発したのを皮切りに、周辺の落下物が連鎖的に爆発。家ごとイビルジョーを爆炎に飲み込んだ。
「あ、アイツは……」
その姿に見覚えがあった。いや、爆発物を上空から落としてくるやつなど
「BAOOOOON!!!」
「BASYAAAAA!!!」
爆発の煙を吹き飛ばすように、イビルジョーが咆哮し、バゼルギウスと対峙する。
滑空してきたバゼルギウスと組み合い、村の中で激しくぶつかり合う。
──ロジャー!!
「リオレウス!? まさかおまえが?」
──うん! あの人ナワバリ?ってのすごい気にしてて、この村もそのナワバリだから、怒ってるみたい。
バゼルギウスは、縄張りや獲物に対する並々ならぬ独占欲がある。
海岸を根城にしていたのも、あの村を縄張りと決め、誰にも縄張りに入れないように見張るためだ。
またプライドの高さも相当なものがあり、相手が古龍級生物だろうと、簡単には退くことはない。リオレウスがナワバリが荒らされていることを教え、怒り狂ったバゼルギウスが、イビルジョーへと攻撃を仕掛けたのだ。
両者が向かい合い、火花のような咆哮をぶつけ合う。
口を大きく開き、その首元へと噛みつき、振り回すと、バゼルギウスと体についていた体の下面から垂れ下がる無数の鱗が落ち、地面に爆発が起こる。
尾を顎にたたきつけ、一度はその凶悪な噛みつきから逃れるが、すぐに噛みつかれ地面へとたたきつけられた。
その振動で爆発が起こり、その熱で離れたまた向き合う両者。爆発で地面がえぐれ、家を壊していく。
──あっ! 村が!!
「これは、どっちかが死ぬまでやめる気配がねぇな」
──ぼ、僕のせいで。
「そんな事ねぇよ、おまえがいなきゃまず人が死んでた。村ならなんとかなる、なんとかしてやる。とりあえず────」
ロジャーは武装色をまとわせ最上大業物である愛刀エースが黒刀へとなる。更に覇王色を重ねがけ赤みがかった黒い稲妻を放ち始める。その2匹の間に飛び出したロジャーが、振りかぶる。
「──おまえら、うるせぇ!!!」
怒声とともに、ロジャーが2匹の間に飛び込む。
大気が震え、木々が軋む。
その剣、「エース」はすでに武装色と覇王色を纏い、黒刀と化していた。
重ねがけされた覇気からは、赤黒い稲妻が弾けるように放たれ、空気を灼く。
空中で一閃。
振り抜かれた剣が、地面をえぐり、爆風のような衝撃波が周囲を飲み込む。
「うおおおおおおおおっ!!!」
ロジャーの咆哮と共に、技が放たれた瞬間、
バゼルギウスとイビルジョーの巨体が、まるで木の葉のように吹き飛ばされる。
何トンもの肉塊が空を舞い、巨木をなぎ倒しながら岩壁に叩きつけられる。
その岩すらも耐えられず、粉砕。
土煙が舞い上がり、瞬間、すべてが静止したように感じられた。
しかし──
「GASAAAA!!!」
「AUGOOOO!!!」
呻き声をあげながら、2匹が立ち上がる。
だがその身体は明らかに限界に近い。
傷つき、爆炎に焼かれ、今の一撃で内臓にも大きなダメージが走ったはずだ。
それでも、殺意を向けてくる。
まるで、全てを貪らなければ止まらぬ野獣のように。
「──ったく、頑丈だな」
ロジャーの身体から、覇気がさらに高まっていく。
全身からあふれる気圧が空気を押しのけ、地面を軋ませる。
髪が逆立ち、口元に笑み。
その瞳に宿るのは、王の風格──いや、覚悟。
「オレの冒険の道を阻むな」
──そして、ロジャーはその技名を口にする。
「
一瞬、時間が止まったかのようだった。
次の瞬間──
轟音とともに、覇気が炸裂。
2匹の体が空を裂くように跳ね飛ばされ、山肌をえぐって地面に叩きつけられる。
衝撃波は周囲の森を押し潰し、大地が爆発するようにめくれあがる。
誰も、その中心に立つ男から目を離すことができなかった。
ゴール・D・ロジャー 海賊王の名にふさわしい、一撃だった。
──す、すっごぉ。
「わははは!!! どんなもんだ!!がばっ!!」
──ロジャー!!
不治の病に侵されていたロジャーは、血を吐き出す。戦闘音に気がついた男が1人、声をかけに来た。その男は、頭や体に包帯を巻いていた。
「大丈夫ですか!!」
──あ、トーチャン!
「え!? トーチャン!?」
「リオレウス! よかった無事で」
──ロジャーが守ってくれた!!
「あんた、死んだんじゃ」
「ああ、ラージャンにやられてここ数日動けなくて。ようやく歩けるようになった時に、こんな事に。本当に助かりました」
その様子を遠目から見ていたレイリー。
「……どうやら、大丈夫みたいだな」
激しい戦闘後を残し、地面に倒れ、目を回すラージャン。その背の上に座りながら、ホッとするレイリーが笑っているロジャーを嬉しそうに笑っていた。
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△
「ロジャー船長!!」
「頭ー!!」
「お、アイツら、良かった、無事だったか」
その後、合流したロジャー海賊団は、飯を食べさせてくれたお礼にと、村の復興を手伝うことにした。
暴れ回ったイビルジョー、バゼルギウス、ラージャンは気がつくといなくなっていた。
ナワバリにいる様子もなく、死んだ様子もないが、そもそもあれほど凶悪なモンスターがいて、村がある方が不思議だったため、元の根城にでも帰ったのだろうという結論に至った。
そして、数日が経ち、船が止めてある海岸にて出航の準備をしていた。そこには、リオレウスと、トーチャンが見送りに来ていた。
「うし、おまえら準備出来たか!?」
ロジャーの言葉に船員「おう!」という陽気な返事が聞こえた。
「村を救ってくれただけでなく、復興の手伝いまで、本当に助かりました」
「いいってことよ! 」
──ロジャー、行っちゃうのか? 僕も連れてってよ!
「リオレウス、おまえはまだ小さい。大きくなったら、海に出ろ。いずれ、おまえにも出番が必ずやってくる。その時が来たら、助けてくれよ」
──寂しいけど、分かった!
ロジャーの船、オーロジャクソン号が進み、その姿を町人は手を振って別れた。
ロジャーが島を去った後、リオレウスのトーチャンが、ポーネグリフの前に立つ。破壊された小屋を立て直され、ろうそくの炎でトーチャンと、ポーネグリフの影を映し出す。
「ゴール・D・ロジャーか。彼らなら、いずれ必ず現れる存在にも辿り着くであろうな」
男の影の形が揺れる。ポーネグリフは、ただそこにある。
世界各地に置かれたキューブ状の石碑。決して砕けず、割れず、融けない硬石に記された古代文字による歴史文。
ロジャーが再びこの島に現れることは無かった為、このポーネグリフが書いてあることが世に出ることは無かった。
誰にも読まれなかったこのポーネグリフには、こう書かれていた。
禁忌に触れることあらず。
古き龍が倒れた時、奴らは嬉々として現る。
奴らは終焉を喜ぶ。
故に、古代の兵器を残す。
願わくば、終焉の日がこぬことを切に願う。
ジョイ・ボーイ