この作品はあらすじで書いた通り『倉持技研2番研究所所長スネイルです』のIFです。
前作を読んでからの方が理解はしやすいと思いますので、出来たら上記作品もお願いします。
多分、いや、間違いなく夢だ。
私の名はスネイル・秋葉。アーキバスグループCEOであり篠ノ之束博士と共同で宇宙開発を行い、人類の生存圏を地球から宇宙へ押し上げた筈…………でした。
朝起きると、そこは懐かしい部屋。まるで学生の頃に住んでいた家のようで違和感はあまりなかった。
だが、鏡を見ると明らかに若い。
私の顔が10代半ばの少年に近いくらいのものになっている。
若返った?それとも篠ノ之束博士のいたずらか?
しかし、洗面所に置いていた端末が私の予定を知らせるように振動する。
『IS男性操縦者に伴う適正テスト、予定バス時刻30分前』
これは…………?
分からない、寝起きなのか夢なのかすら分からない。
しかし、予定にあるならば行動しなければならない。まだ夢かどうか叩いたら分かるというもの。
最低限の身支度をして、予定道理にバスに乗り、IS適正テストを行う会場へと向かった。
長蛇の列、この適正テストにも数少ないISを使用しているため時間がかかっているのでしょう。
全く、このような非効率的な探し方でどれほどの時間を無駄にしているのか。
当時の倉持技研に私が居ない状況だと当然でしょう。私は呼ばれなかったので参加しませんでしたが、こんなことで時間を潰していたなど虫唾が走る。
とはいえ今回の件は完全なイレギュラー、開発初期の織斑一夏の遺伝子情報が織斑千冬と一致してしまったがために起こった事。
まあ今はいいでしょう。だが、私が入社した後は覚えておきなさい…………
と、私の順番が回ってきましたか。
夢の中とはいえ色々と考えていたら私の順番が回ってきました。
このコアは打鉄ですね。見慣れた物だ、メーテルリンクの専用機に近い扱いをしてましたが、そういえば正式な名称がなくそのままACに移行しましたね。
手で触れるだけでランク付けする機械、そんな産廃もありましたね。
本当にそれにしか使えないのでバラして流用した覚えがあります。
全く、こんな物に予算を注ぎ込むなら別のことに使う方が有意義ーーー
「適正…………あり!?」
「で、出た!2人目の男性操縦者!」
……………………何?
「確保!何処にも逃すな!」
両側から拘束され、未だに理解が追いつかないまま連れていかれる。
いや待て、どういう事だ!?私にIS適正だと!?
この時点でIS適正があるのは織斑一夏しかいないはずだ!
ゆ、夢だ。しかし、寝ていても実際に腕に逃さんと食い込む指の感触がやけにリアルだ。
だから、これは…………!
「しっかりして歩いて!意識をしっかり!」
スパァンッ、と頬を叩かれた痛みで現実に引き戻される。
馬鹿な、これは夢じゃないのか!?
私が築き上げた倉持は、アーキバスは無いというのか!?
そんな、私は、企業だぞ…………!?
全ては胡蝶の夢…………うわああああああ!
ホテルに監禁されて1週間経ち冷静になったスネイルです。
夢かどうかは今の所は置いといて、現状を整理しました。
まず、私はAC6の知識及びアーキバスの技術は今でもしっかり頭の中に残っている。
その上に篠ノ之束博士と共同で研究したIS技術についても保有している。
しかし、それらは地道に築き上げた権利や人脈があってこそのものであり、一個人でしかない今では殆ど役に立たない。
この年齢、15歳の私は中学時代でもエリートであり、高校は名門校へ通った後に大学へ進学、そして倉持技研への就職という人生設計を立てていました。
だが全てご破算、このままでは強制的にIS学園へ入学させられるもしくは何処かの研究所で実験動物になる。
それだけは何としても避けたい。
いえ、それよりも相当駄々をこねてようやく手に入れたノートパソコンで調べ物をした結果です。
ルビコンの大火、ありました。
半世紀前に…………ルビコン川燃えてる…………っ!
この時期だとラスティに接触しようにも何故か事情を知っている学生など信用してくれるはずもない。
他のヴェスパー部隊隊長格も消息不明、現状では金勘定に長けたスウィンバーンやフロイトすら見つからない状況です。
あ、頭が痛い…………この裏で亡国機業も動いてるだけでなく『技研』も間違いなく活動している。
篠ノ之束博士も当然ながら行方不明、IS学園に入学した上で夏にならなければ現れない。
それまでに大々的に興味を引くためにMTの開発をやろうにも間違いなくテロリストの害獣が群がるのは火を見るよりも明らか…………
現状を打破するためには篠ノ之束博士の協力は必須。
しかしコネがない。
しかも今は女尊男卑の風潮は強まるばかりでメーテルリンクを始めとする私が再教育した面々も不在のため私自身の地位が低い。
なるほど、これが弱くてニューゲームというやつですか。
出来ることは設計図を今のうちに描き出すくらいしかない。
IS学園に入学をするように誘導して整備課の人員を掌握する事を目標にしましょう。
幸いにも、あそこには更識簪が居る。彼女の専用機を完成させるために手伝えば仲間として引き込め…………
…………し、しまった、彼女は男性操縦者が現れた事が原因で専用機の開発を後回しにされたどころか完全に停止した状態だった!
つまり2人目の男性操縦者の私にも多少の敵意がある筈、上手く入学したとしても私に専用機を渡そうとしてくる企業がない訳もなく、それも特別扱いとなるのは間違いない。
つまり、更識簪は私のことを倉持技研の名誉挽回しにきた職員ではなく最初から敵の男として認識するはずだ。
絶望的過ぎる、あまりにも有利になる状況がない。
裸一貫に近い笑えない状況、そしてコーラルによる人類滅亡のカウントダウンも着実に進んでいる。
手段を選ばない、となると『技研』と同類になってしまうのである程度の良識を持って開発を進めなければならない。
ならばいっそ、最初から…………
「えーっと、名前順だから『あ』の秋葉くん!じ、自己紹介を…………」
「もはやテレビなどでご存知でしょう。2番目に発見された男性操縦者になったスネイルです。私と同学年になれたこと、光栄に思いなさい」
既に荒んだ心を隠さず傲慢不遜、しかし才能は自他共に認め女尊男卑に抗う秀才。
最初から企業に居ないのならば学園丸ごと乗っ取ればいいだけの話。
有能な人材の引き抜きもこの頃から行えばヴェスパー部隊の代わりにはなるでしょう。
純粋にIS操縦者もAC操縦者も必要なのでヘッドハンティングも行います。
しかし、この学園にも亡国機業のスパイが居るのでそこの警戒も必要です。
私の発言で明らかに凍った空気の中、すとんと私は椅子に座り直す。
これは私の挑戦、再び企業になるための試練だ。
企業となり、人類の生存圏を伸ばすための戦いはこれからです。
思いつきなので続くかどうか分かりませんが、気が乗ったら書くので連載にはします。
次回があれば更に過酷になるスネイル君のご活躍を応援してあげてください。