対策委員会の教室。そこは、私の───いや、私たちの日常の象徴。
誰かさんが白昼堂々昼寝してたり(まあ最近はなりを潜めてるけど)。
誰かさんが床とか壁とか天井とかをすり抜けて入ってきて皆でびっくりしたり。
私が紹介した商売とかビジネスが『それは詐欺だ』とか言われたり。
誰かさんがドヤ顔で銀行強盗の計画を発表したり。
時折、誰かさん主催の魔法教室が開かれたり。
───そんな、私たちの日常風景は。
現在、たった一人の怒り狂った同級生により、完全に破壊されてしまった。
いつも眠たげで面倒くさがりで、でもいざという時は誰よりも頼りになる先輩は。
「……ああ、これだよこれ……この柔らかさが私をおじさんにするんだ……うへへ……」
とても、とても妬ましくなる程に大きな胸部をお持ちの幽霊の先輩の胸に顔を埋めて、変態と化していた。
いつも朗らかでマイペースで、私たちの精神面を支えてくれている、これまた妬ましい程の胸部をお持ちの先輩は。
「ねえねえシロコちゃん!私、気付いちゃったんです☆……宇宙は、地下にあるんですよ!空の上なんかじゃなくて、地下深く、ずっとずぅっと下にあるんです♧夜空に見える星々は、地下にあるそれを映し出しているだけに過ぎないんですよ〜☆」
キマった目で何か理解してはいけなさそうな事を言い放つ狂人と化していた。
やれ銀行強盗だ、やれ襲撃だとか危険な提案をする、けれど誰よりもこのアビドスを大切に想っているスポーツ好きの先輩は。
「ん、ノノミ。それは流石に嘘だよ。宇宙はそれは嘘宇宙は空の上ウチュウにあるって流石にそれは嘘宇宙は空の上にあるからソレハサスガニウソ空は宇宙の上にノノミウソん、ノノミ、それは流石に嘘だy嘘だy嘘だy嘘だy嘘だy───」
盛大にバグり散らかしていた。
そして。
いつもいつも外の世界の常識なんかで私たちを盛大に困惑させて、でもいざと言う時は数々の魔法とか道具なんかで私たちを助けてくれる同級生は。
「『宇宙が地下にある』だって?HAHAHA!そいつは傑作だな!正に『ラダゴンの狂い火信仰*1』と言う奴だZE☆……ああ、それにしても……正気を奪われ、この様な憐れな姿にさせられるとは……。黄金樹の祝福よ、どうか彼女を導き給え。おお、アンバサァ……」
なんかもう色々と駄目になってた。すごい清らかな微笑みを浮かべて祈りを捧げていた。誰がどう見ても立派な聖職者の姿だった。
この地獄みたいな光景を創り出した本人───アヤネちゃんは、凄くニッコニコの良い笑顔で私に語りかけて来る。
「あ、セリカちゃん!良かったら私が用意したお菓子、食べる?」
と、まるで何も起こっていないかの様に、いつもと何一つ変わる事のない調子で話す彼女に対し、私は───
「イヤッイヤ イヤ!!!わっ……わァ……」
もう、ちいかわになる事しかできなかった。
そうだ、ゲヘナに行こう。
『例のあの一件』から数日経過し、全員が正気を取り戻した所、あなたは唐突に思い立った。
ゲヘナと言えば、以前知り合った便利屋達や風紀委員会達の学園であり、ここキヴォトスでも屈指の治安の悪さを誇る土地である。
そのゲヘナに、あなたはふと行きたくなった。特に用事がある訳でも無く、別に誰か知り合いに会いにいく訳でもない───つまり、あなたはゲヘナに何の用も無い訳だが、何故だか行ってみたくなったのだ。
せっかくキヴォトスにやって来たのだから、色々な場所を見て回ろう。つまりはそういう事だ。
と言う訳で、あなたは腰にロングソードと銃を携え現在ゲヘナ自治区に足を踏み入れている。アビドスから電車で遥々数十分、今までで最長距離にして最短時間の旅路であった。
「……ねぇ、アレ。あの人、例の『アビドスのヤバい人』じゃない?」
「……ほんとだ。『アビドスのヤバい人』だ」
……それにしても、慣れない光景だ。風化している訳でも、荒廃している訳でも無い建物を見るというのは。
狭間の地には、こうした風景は『王都ローデイル』くらいでしか見られなかった様に思う。
「……ほら、見なよ。噂は本当だったんだ、アビドスの男子生徒は剣持ってるって」
「……そうなの?私が聞いたのはムチなんだけど。知ってる?散々ムチでひっぱたかれた子の話」
「……うわ、ムチって。あいつその手の変態かよ」
「二人共、静かに!聞こえてたらどうするの!?なんか花が咲いて生きたまま体が腐るよ!」
「「や、ヤベッ!」」
……それにしてもどうしたのだろう。ここに来てからやけに警戒されている気がする。……いや、実際されている。何故か生徒達はあなたを遠巻きに眺めてヒソヒソと何かを話し合っているのだ。
……もしやアビドスが特殊だっただけで、キヴォトスでは人型の男性は狭間の地でいう褪せ人やしろがね人並被差別種族なのだろうか。だとすれば以前ゲヘナへ行ったと言う先生が大変危険な博打を打った事になるが。
「よっ!お兄さん、一人?今空いてる?」
と、突然にあなたの肩に腕を回しつつ声をかける者が現れた。大変馴れ馴れしい態度だが、以前出会った事があっただろうか。
「よ、良かったら……その、今からご飯食べに行かね?イイ店知ってるし、アタシが奢ってあげるから「本当にすみません、大変お騒がせいたしましたーーーッ!」ウボァ!?」
……?
何かあったのだろうか。先程あなたに声をかけてきた生徒の友人と思しき人物が、あなたからその生徒を引き剥がして逃げ出して行ったのだが。
「ちょっと???アンタね、なんて人ナンパしてんの???いや、『ちょっと声掛けてくる』っつったから見守ってやろうとしたらあの人って。なんでよりにもよって『アビドスの例のあの人』に声かけたの???」
「……いや、何だよ『例のあの人』って」
「ご存知無い!??『例のあの人』をご存知無い!?!?アンタもっと噂に耳を傾けな???」
「お、おう……?」
……本当にどうしたのだろう。
……まあ、余り気にし過ぎるのも良くないか。別に、仮に大怪我を負ったり死んだり攫われたり監禁されたりした所で別にどうということはないのだから。
しばらく辺りを歩いていると、あなたはゲヘナの治安の悪さを目の当たりにする事になった。
突然大爆発を起こす建物に、突然始まる喧嘩に銃撃戦。
それらが、そこかしこで毎分の様に起こるのだ。
そして、あなたは遭遇した。
「
「行きますわよ、フウカさん!究極の美食を求めて───!」
「
角の生えた少女の手足を縛り口をテープで封じ、車に乗せどこかへ行く四人組の人攫い集団に。
……攫われている少女はどこからどう見てもあなたに助けを求めているが、しかしあなたに彼女を救出する義理は無い。だがせめて無事を祈っておこう。高い信仰心の見せ所だ。おお、アンバサ……。
「
……少女は祈るあなたを見るや否や、更に涙目になって悲痛な表情を浮かべ始めた。可哀想に。
人攫い達を見送ったあなたは、ふと付近が騒がしい事に気が付いた。先程人攫い達が逃げ出した方向に急ぐ彼女らは……確か、ゲヘナの風紀委員会の筈だ。
だがおかしい。非常に奇妙だ。彼女達の殆どが、あなたから出来るだけ離れようとしている様に見える。それに顔が引き攣っている上に、どうやら怯えている様だ。一体どうしたのだろう。
「先輩!?なんでここにあの人が居るんですか!?私聞いてないんですけど!?!?」
「わ、私だって知らない!知ってたら今日欠席してた!」
「……お、思い出したら吐き気が……うっ」
「……ちょっと?気持ちは凄く分かるけどここで吐くなよ?」
と、あなたは地面に何かが落ちているのを発見した。拾い上げて見れば、どうやらそれは学生証の様だ。持ち主のものであろう名前と顔写真が載っている。
……はて、この写真の人物、どこかで見た覚えがあるのだが。一体どこだっただろうか。
きょろきょろと周りを見回すと、あなたは写真の人物と同一人物であろう生徒を発見した。後ろ姿なので確証は無いが、きっと彼女の筈だ。
その生徒に、あなたは声をかける。
「……はい?どうしまし」
彼女は振り返ってあなたを見るやいなや、脱兎のごとく逃げ出した。それはもう必死の全力逃走である。
一瞬見えた顔からして、彼女がこの学生証の持ち主で間違いない。だが何故あなたから逃げ出すのだろうか。これがわからない。
あなたは逃げる彼女を追う事にした。別にこの学生証を彼女に返却する義理は無いが、しかし逃げるものは追いたくなるのが褪せ人というものだ。スカラベしかり、手負いの敵しかり。
あなたは暫く自分の足で彼女を追っていたのだが、しかしその差は埋まらない所かむしろ徐々に離されていた。やはりキヴォトスの住人は、あなたの遙か上をゆく身体能力の持ち主の様だ。
……そうだ、トレントを呼ぼう。
あなたは『霊馬の指笛』を吹き、トレントを召喚し───
『
───霊馬は拗ねている。呼び出す事はできない
この駄馬が!!!!!!
……いけない、取り乱した。
仕方がない、自分で追いかけよう。
どうやら例の彼女は角を右に曲がった様だ。後を追い、同じように曲がると、そこには壁に背を着けガタガタと震える学生証の落とし主の姿が。
……それにしても、どこかで彼女の姿を見た様な気がする。
記憶の引き出しを漁ってみると、すぐに思い出した。
……そうだ、この生徒。確か以前に『朱きエオニア』の直撃を喰らわせた人物だった気がする。もしもそうなら、あなたに対してこの様な反応をするのも頷ける。
試しに、あなたは左手に聖印を取り出してみた。
「『朱き……』」
「ひ、ひぃっ!?」
途端にうずくまって怯え出す風紀委員。これは間違いなくあの日あなたと戦闘になった風紀委員だろ───
「動くな!そこで何をしてい……ん?」
と、あなたの背後から声をかけられる。
……しかしどうした事だろう。この声にも聞き覚えがあるのだが。
振り返って見ると、そこには長い銀髪をツインテールにした褐色肌の少女の姿が。
「……お前は……星見……?な、なんでここに……?」
彼女は確か『銀鏡イオリ』、風紀委員会の所属で、かなりの猛者である生徒の筈だ。カイザーとの戦闘ではお世話になった。
「……か、観光に来た?……えっと、その子はどうしたんだ?」
「ああ、学生証を落とした様なので渡そうとしたらこの有様だ。……以前彼女に魔法を使ってな。恐らく、それがトラウマにでもなったのだろう」
「魔法……ああ、アビドス自治区での件か。……その節は、本当に悪かった」
「……もう良いさ。それより、この学生証を渡してやってくれ。私ではご覧の有様だからな」
「ひええええーっ!苦しいよー!怖いよー!」
現在学生証の落とし主は、しゃがんで幼子の様に泣き喚いている。これはちょっと自分にはどうしようも無い。
「……あ、ああ。そうする。……所で、だな」
「……どうした?」
「その……あれから、大丈夫か?……ああ、その、頭を撃たれてから……」
「……ああ、問題ない。私は慣れているからな」
「そ、そうか……。……あと、彼女も元気にしているか?そのユメって名前の幽霊の……。いや、幽霊相手に『元気』って言葉はどうなんだ……?」
「……ああ。彼女も元気にやっている。それと、普通の人間と同じように扱うと本人も喜ぶ」
そうだ。下手な事を言うとマジギレのホシノ先輩が全力で敵対する事になるので是非注意して欲しい所だ。
……以前この地雷を見事に踏み抜いたあの不良生徒は、今も病院の中で治療を受けているのだろうか。
「……分かった。機会があればそうする」
銀鏡と別れた後、あなたはアビドスに帰還する事にした。というのも、騒ぎを聞きつけた生徒たちがあなたを更に警戒する様になってしまったのだ。
道を歩く度に銃に手をかけられ、或いは踵を返して逃げ出されると言うのは、存外心に来るものだ。
電車から降り、暫く歩いていると、あなたはふと後を付けられている気がした。
こうした直感には従った方が良い。あなたはそれを良く知っている。
素早く振り返ると───そこには誰もいない。
気のせいだったのだろうか。そう考え再び前を向くと───
「……クックック。お久しぶりです、星見さん」
そこには『黒服』が立っていた。
「……貴公、何用だ」
黒服───以前、契約によりホシノ先輩の身柄をカイザーに引き渡した、因縁の相手。とは言っても、あなたは彼に直接出会ったのは数分にも満たない一瞬の事だったが。
さて、その黒服が自分に一体何の用だろう。
……所で、あなたの感覚が正しければ、彼は現在非常に興奮している様だが。一体何があったのだろう。
「以前砂漠にてお会いした際の事を、覚えておいででしょうか?……私は、あなたにお礼がしたいのです。『エルデンリング』に『ルーン』、それに『魔術』、あなたの不死性。───非常に興味深い事柄を、私に見せてくれた事に対しての。……所で」
「……?」
「あなたの身体に満たされている力───そして───おお……あなたの『神秘』。以前よりも……その量が。その質が。倍以上に膨れ上がっている。一体何故?どの様に?何があった?……いえ、失礼致しました。悪い癖ですね、これは」
……ああ、モーゴットの大ルーンの恩恵とルーンによるレベルアップの事か。一瞬なんの事かと思った。それにしても、あなたの能力値の上昇が分かるとは、彼は一体何者なのだろうか。
「クックック。随分と余裕がお有りの様だ。私の様な存在などとは、既に幾度となく出会っているからか。……それとも、私程度の存在など、何時でも排除できる故の余裕か。……あなたさえ良ければ、お聞かせ願えませんか?」
「……何をだ?」
「あなたは……一体、何者ですか?我々とも、先生とも違う位相の『キヴォトスの外』からやって来た稀人さん?」
「……そうだな」
自分が何者かと言えば。
「円卓所属の褪せ人にして星々の探求者の『星見』にして火山館所属の背律者にして血の君主に仕える血の指にしてカーリア王家の従者にして王にして血の指狩りの『狩人』にして夜の律の王(予定)にして獣の司祭に仕える『獣の爪』にしてケネス・ハイトに仕える騎士(予定)にして黄金律の信者にして狂い火の信徒にしてアビドス高校一年廃校対策委員会所属兼柴関ラーメン店員の星見ユウだ」
「なんて……?」
妙だな、何でいきなり黒服が出てきたんだ……?出す予定無かったのに。何で「クックック」とか言ってるんだ……?
もしも主人公がやって来たのが、原作開始前(アビドス編が始まる前)のゲヘナだったら?
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