……まあこの作品にコハルは出ない予定ですがね。
という訳でミレニアム編です。長いので分けました。
時系列は『時計じかけの花のパヴァーヌ編』二章の後です。
結局、黒服からは『アビドス砂漠には気をつけなさい。あそこには───あまり、近づかない方が宜しい』『デカグラマトンの預言者がどうこうでそれらは神の模倣が云々』と言われた。だから今度アビドス砂漠を探索してみようと思う。
ちなみに黒服からは『あなたも我々『ゲマトリア』に所属しないか?』というスカウトを受けたが、『高確率で構成員が全滅すると思うし実際そうなって来たしそうして来たがそれでも良いか?』と返すと『クックック……』と言いながら帰って行った。
「星見さん、お久しぶりです」
という訳で、本日あなたは『当番』───先生の指名により彼の仕事の補佐をする生徒───として、先生の仕事の手伝いにやってきた。ここはシャーレ、先生の仕事場のある場所だ。
そして今あなたの目の前に居る彼女は七神リン。連邦生徒会所属の生徒で、失踪した連邦生徒会長の代理を務めている。
「……それで先生。この書類の提出期日は本日中ですが、勿論終わっていますよね?」
「"そうだね…………。私は『仕事の完遂』だけを求めてはいないんだよ。『仕事の完遂』だけを求めていると、人は近道をしたがるものだから……。やる気も次第に失せていくしね……。大切なのは『達成しようとする意志』だと思っているんだ。例え期日までに作業を終わらせる事が出来なかったとしても、いつかは終えられるでしょう?終点に向かっている訳だから今日はこの辺でしつれ「逃げないで下さい!」ぐえー!?"」
そして今、余りにも無茶な計画により仕事の量が飽和状態になり、何やら名言のような事を呟きどさくさに紛れて仕事から逃げ出そうとしたのは件の『先生』。以前あなた達対策委員会が世話になった人物である。
「先生、こんにちはー!」
その時、何やら元気な声の来訪者が扉の向こうから現れた。我らがホシノ先輩と同じ位の背丈の金髪少女だ。頭には猫の物らしき耳……を模したヘッドホンを付けている。腰の辺りからは尻尾を生やしている様だ。こちらは本物の尻尾だろうか。*1
……?
何故だろう、彼女の姿に見覚えがあるが……?
「……?あら、あなたは?」
「えっと、ミレニアムサイエンススクール一年、ゲーム開発部の才羽モモイです!先生に当番の指名をされたので来ました!」
……おや?確か当番の生徒は一日につき一人だけだった筈だが。もしや自分が日にちを間違ってしまったのだろうか。
「才羽モモイ……才羽……あら、あなたの当番の日は来週の様ですが」
と、七神は手元の紙を捲りつつ答えた。彼女が持つそれには、この一ヶ月の当番生徒の割り当てが記されているのだ。
「……あ、あれっ!?……そうじゃん!今日、☆日じゃなくて◎日じゃん!し、しまったぁ〜……。その、お先に失礼します……」
「……待て」
意気消沈し退出しようとした彼女を、あなたは呼び止めた。
「私はアビドス高校一年、廃校対策委員会所属の星見ユウだ。……君、確か才羽と言ったな?……以前、私と会った事は無いか?君に見覚えがあるのだが」
「……えっ?う〜ん……?多分、初めましてだと思うけど……。あっ!私、双子の妹が居るんだ!もしかしたらそっちかも!」
「"……ケガ……手当て……その時……うっあっぁあ……"」
と、その時。七神の手によりデスクに縛り付けられ瀕死状態の先生が作業の傍らに話しかけて来た。
怪我の手当て……ああ、そう言えば。
「……そうだ、君か君の妹が、最近大きな怪我を負っていないか?その時、先生に頼まれて治療をしたのだが」
そう。いつの日か、先生から『"生徒が大怪我をして意識を失った。どうか回復の祈祷で怪我を治してくれないか?"』という依頼を出された事があったのだ。
重傷を負い、意識の無い彼女に回復の祈祷を使い怪我を癒したのは良いのだが、しかしその意識までは回復させる事が出来なかった。あなたに出来る事は、あくまでも怪我の治癒。
唯の眠りであれば『回帰性原理』で無理矢理覚醒させる事が出来るが、今回の様に意識不明に陥った状況はどうしようも無い……らしい。自分も当時初めて知った。
「あ、そうなの!?だったらそれは私だと思う!えっと、手当てしてくれてありがとう!怪我の手当てが出来るって、星見くんはお医者さんみたいな知識とか技術とか習得してるの?」
「ああいや、そういう訳では無いな。……だが良かった。その様子だと、無事に意識を取り戻せた様だな。後遺症などは無いか?」
「ううん、全然平気!……あれ?でも、それならどうやって怪我を治したの……?」
「それは───」
一瞬、あなたは言い淀んだ。初対面の人間に、あなたの使う魔法の存在を伝えても良いものか(因みに七神はあなたの事情───あなたが魔術・祈祷に優れた
……まあ、良いだろう。別に何がなんでも秘匿しなければならない事でも無い。先生や七神から言いふらす事を特に止められている訳でも無い。
何ならあなたは現在しっかりと『死王子の杖』を左腰に差しているので『それは何?』と聞かれれば一瞬でボロが出る事請け合いだ。
……それに彼女の纏う雰囲気は、紛れもなく純度100%の善人の物だ。伝えた所で悪用はしないだろう。たぶん。
……まあ、された所でその時はその時だ。礼儀正しく復讐して妹共々ボコボコにしてやろう。
「───魔法だ。実は私は魔法を使う事が出来てね。先日、重傷を負った君に回復の魔法を使った訳だ」
「……えっ。ほ、本当に……?」
「ああ」
……その一言は、どうやら彼女の何か琴線と呼ぶべき何かに触れたらしい。
「ま……魔法……?」
ぴしり。
そんな音が聞こえて来そうな程に、彼女は見事な硬直をして見せた。
「……?」
しかしそれも一瞬。彼女のその両眼が、キラキラと輝きを放ち始めたのだ。
「え、ええっとー、もし、もしだよ?キミさえ良ければ何でもいいから一つだけ魔法を見せてくれないかなーって……」
「……ふむ」
なるほど。本当に魔法を使用出来るかを証明して見せろ、という事だろうか。そういう事なら話は早い。あなたは杖を引き抜いて───
「ま、待って下さい何をするつもりですか!?」
───しかし異様に焦った様子の七神に止められた。
「待って下さい星見さん!またここで魔法を使うんですか!?あなた以前に書類を焼却しかけた事忘れたんですか許可出来ませんよそんな事!?」
……ああ、そう言えばそんな事があった。
極限まで追い詰められた先生の『"何とか……この仕事達を、魔法で何とか出来ませんか……?"』との一言であなたが使おうとした祈祷、『火よ、焼き尽くせ』により以前この部屋の一切合切が消滅ならぬ焼滅しかけた事件があったのだ。
以来七神はあなたがこの部屋で魔法を使う事を許さないのだ。どう考えても妥当かつ適切な処置である。
「……うーん、そっかぁー。……なら、ミレニアムに来る?そこなら色んな設備があるし、基本何でも出来ると思うよ!……それに、怪我を治してくれた事のお礼もしたいし。私に出来るお礼と言ったら……ね!」
『私に出来るお礼』……?
「……そうか。しかし……」
あなたは先生の方を見た。脚を椅子の足に縛り付けられ、文字通りの書類の山に埋もれる彼を。
今日のあなたは、彼の手伝いをする為にここシャーレにやって来た訳だ。途中で放り出すのは良くない事では無いか。
「……いえ、構いませんよ」
「えっ、いいの!?……言い出した私が言うのもアレだけど……。先生、大変そうだし、また今度でも……」
「良いですとも。……アレは、仕方の無い事なのですから。見なさい。あれは、破綻した計画の、妥当な末路と言う奴です」
「"ひぃん……ひぃん……ひぃん……"」
かくしてあなたは『ミレニアムサイエンススクール』の自治区へと足を踏み入れる事になった。
あなたは対策委員会のグループチャットに『諸事情によりミレニアムサイエンススクールに行く事になった。何かあったら連絡してくれ』と連絡をいれ、才羽の方は所属する部活、『ゲーム開発部』に客人を招く旨を連絡した。どうやら彼女以外に三人の部員が所属する部活動らしい。なおその内の一人が例の才羽の妹だそうだ。
シャーレからミレニアムに向かう、その道中。
「オラ!金出せ!」
「ひ、ひぃっ!?」
あなた達は一人の不良生徒に遭遇した。どうやら気弱そうな生徒に絡み、金品を強奪しようとしているらしい。
つまり狭間の地でのあなたの行いを物凄く穏便にした行為を実行している訳だ。
「早く助けないと!」
と、才羽は絡まれている生徒を救うべく銃を構えた。そしてやけにキラキラとした目であなたの方を見ている。
「(もしや……これはこの目で本物の魔法を見れるチャンス!?)」
現在、不良生徒はあなた達に背を向けている。つまりまだあなた達に気づいていない。不意打ちするなら今だ。
あなたは斧槍の一種、『ハルバード』を取り出し、腰だめに構えて突撃した。
「ほら、さっさと大人しく金を"ぉっ!?」
あなたの不意打ちを喰らった彼女は見事に吹っ飛ばされた。そこに、あなたは追撃の振り下ろしを見舞う。
「げぐぁっ!?」
蛙の潰れた様な声を残して、彼女はその意識を失った。あなたは先程絡まれていた生徒に声をかける。
「……大丈夫か?」
「……ま、まあ。……いや待ってくれ、まさかあんた噂のアビドスの『例のあの人』か?ゲヘナの友人から色々と聞いたんだがお願いだから命だけは助けてー!?」
……彼女はどこかへ逃げ出してしまった。
所でちょっと待って欲しい。少し待ってくれないか。
何故あなたがここまで恐ろしい存在の様に扱われているのか、これが分からない。別に敵対しなければ何かする訳でも無いし、しろがね人にする様な大量虐殺をキヴォトスの住人相手にしでかした覚えも無い。
……まあ、今は良い。才羽と共にミレニアムへ向かうのが先だ。
「……では才羽、ミレニアムに向かうとしよ───」
その時、あなたは才羽の背後に宇宙を知覚した。
「(なんで?魔法使……えっ、魔法……いや、あれ?魔法使いってなんだっけ……?あんな斧槍なんて振り回す様なジョブだっけ?あれぇ……?)」
どうやら彼女は激しい混乱に見舞われているようだ。一体何が原因なのだろうか。
「───という訳で、ようこそ!ここが『ミレニアムサイエンススクール』だよ!」
あなたの視界に広がる光景は、正にキヴォトスの技術の粋、それらの結晶とでも呼ぶべきものであった。
仕組みがどうなっているのか検討も付かない、複雑な機械があちこちで自律して動き、生身の人間やロボット達、そしてホログラムの姿の彼らが入り交じって歩いている。
「これは……」
「ふふ、凄いでしょー!なんてったって、ここミレニアムはキヴォトスに普及する『最先端』とか『最新技術』を沢山生み出してきた学校だからね!」
なるほど。そう言えば、あなたが先生から貰ったスマートフォンにも、ミレニアムの校章が刻印されていた様な気がする。
「それで、お礼って言うのは……私たちゲーム開発部が創り出した『テイルズ・サガ・クロニクル2』、ミレニアムプライスで特別賞を受賞した作品を無料で贈呈する事だよ!最近スマホにも対応したから、それを直接キミのスマホに入れてあげるね!」
……『テイルズ・サガ・クロニクル2』?
一体何だろうか。ゲーム開発部に所属する才羽達が創り出したという事は、それは恐らく『ゲーム』という物なのだろう。だが生憎あなたはゲームという物を知らない。
……嘘だ、流石に知っている。スマートフォンを持っている以上、そうした情報は勝手に流れ込んでくるものだ。それは娯楽の一種だと言う事を、あなたはインターネットの海を通して知っている。
「……あ!居ました、モモイとお客さんです!」
「おーい!お姉ちゃーん!」
「あっ!アリスとミドリだ!おーい!」
と、あなた達は遠くから声をかけられた。才羽の反応からして、どうやらゲーム開発部の他のメンバーの様だ。
見れば、そこには二人組の少女の姿が。
「初めまして。才羽から聞いているか?アビドス高校一年、対策委員会所属の星見ユウと言う者だ」
「あ、初めまして。ゲーム開発部所属の天童アリスです。……あの時は、モモイの治療をして下さり本当にありがとうございました」
と、ホシノ先輩よりも若干高い身長の地面まで届く長い黒髪を持つ少女があなたに頭を下げ感謝した。
「その……実は、モモイにあの怪我を負わせたのは私なんです。モモイは許してくれたのですが……あなたが治してくれたお陰で、モモイは後遺症も無く復活する事が出来ました。本当に、なんてお礼を言えば良いか……」
なるほど。何故天童が才羽(姉)に攻撃したのかは分からないが、被害者の才羽(姉)が許したのならあなたにどうこう言う資格は無い。それにあなたとしても大した事はしていない。
実際、本当にあなたは目的地までワープした後に祈っただけなので自分目線では本当に大した事はしていないのである。全ての事は5秒で片付いたのだ。
「『大した事はしていない』……って、あなたはどうやって怪我を治療したんですか?あそこまでの怪我を跡形もなく治療するって、並大抵の技術では無さそうですが……」
と疑問を呈したのは才羽(妹)。
「ふっふっふ……」
その疑問に腕を組んで何故か自慢げに答えるのは才羽(姉)。
「ふたりとも、───聞いて驚け、なんと星見くんは正真正銘の魔法使いなのだー!」
「……。はぁ、だから昨日あれ程『明日は早いんだから早く寝なよ』って言ったのに……。お姉ちゃん、寝ぼけてるでしょ」
と、呆れた様に姉を見つめる才羽(妹)。
その緑色の両眼には、何か可哀想なものでも見るような感情がありありと浮かんでいた。
「……魔法、使い?」
対して天童は、あなたに対して何か非常にキラキラと輝く視線を向け始めた。そして───
「おお!アビドスからのお客さんのジョブは魔法使いだったのですね!……何を隠そう、アリスのジョブは勇者なんです!もしも───」
「……『勇者』?悪いが、とてもそうには見えないのだが」
「───え?」
「───アリスは、勇者になります。例え私の正体が世界を滅ぼす『魔王』だとしても……。先生が、みんなが教えてくれたから。『なりたいものに、なっていい』って。……こればかりは、譲れません。モモイを治してくれた恩人が相手だとしても……」
あなたが口走った言葉は、どうやら何か彼女達の琴線のようなものに触れる言葉だったようだ。現在、あなたはやけに硬い決意をその眼に宿した天童に上記の啖呵を切られていた。
だが待って欲しい。少し待ってくれないか。
見えないものを見えないと言って何が悪いのか、これが分からない。どう見たって天童の姿は『勇者』のそれとはかけ離れている。武器は───それを鈍器として見なすなら───申し分無いが、それにしたって体格が余りにも華奢過ぎる。
……いや、『勇者を目指す』のだからこれから身体を鍛える、という事なのだろうか。確か普通の人間は20歳まで身体を成長させる事が出来る筈だ。猶予はまだある。少なくともどこかの桃色髪の先輩よりは。
「……体格……?まさか……。その、あなたは『勇者』について、一体どの様なイメージを持っていますか?」
と、あなたは才羽(妹)に質問された。
勇者。
勇者と言えば、やはりその高い筋力から繰り出される必殺の一撃だろう。彼らは戦斧を好んで振るい、あらゆる敵を豪快に叩きのめすのだ。
曰く、彼らは蛮地の王の末裔であると言う。
「やっぱり……!お姉ちゃん、たぶんこの人原義の意味の方の『勇者』の事言ってるよ!」
「なんですとっ!?しまった、この私とした事がぬかった……!」
「……?どうしましたか、二人共……?」
「あっ、えっと……。その、星見くんが言ってる『勇者』って、普段私たちがイメージする『勇者』とは違う方の『勇者』みたいで…… 」
「ええっ!?そ、そうだったんですか……?」
……なるほど。どうやらキヴォトスではあなたの知る素性、『勇者』とは違う意味で『勇者』が使われているらしい。ならば、この地における『勇者』とは一体何者なのか。
「はい!勇者とは、どんな困難や強敵にも決して諦めず、仲間と共に勇気を振り絞って戦う者です!剣などによる近接戦闘も魔法も、どちらもこなす事ができる万能職です!」
……なるほど。
どんな困難や強敵にも諦めず戦い……
近接戦闘と魔法、どちらも熟す……
「……なるほど、私はこの地において『勇者』だったのか」
「「「え、ええっ!!?」」」
実際そうだ。困難や強敵との戦闘を諦めていたら、あなたは現在ここに居ない。生命力が9だったから尚更だ。
近接戦闘は出来る。魔法はもっと出来る。
……これは紛うことなき『勇者』ではないだろうか。
「ま、魔法が出来るって……寝ぼけたお姉ちゃんの妄言じゃないって事……?ねえお姉ちゃん、星見くんが魔法を使う所、見たの?」
「見てない!」
「?????????」
……ああ、そう言えば。確かミレニアムに足を運んだ理由の一つは、才羽(姉)に魔法を見せる為だった。
「……え?魔法を見せてくれるの……?」
あなたは『死王子の杖』を抜き、空に向かって『ほうき星』を放った。杖先から飛び出した魔術の大彗星は長い尾を引いて空中を駆け、そして消えた。
───そして、あなたが魔術を放った瞬間。
「やあ……マイフレンド。今の見たかい?」
「ああ、勿論だともマイフレンド。……『あの形状のデバイスから何らかの飛翔体を発射する』技術、聞き覚えもしくは開発した覚えはあるかい?」
「……いや、無いね」
辺りの空気が一変した。
「……やあやあそこの君!……そう、ゲーム開発部のちびっ子諸君に囲まれているそこの君だ!ちょっと君が今右手に持ってるその黒い物体とそれから発射された飛翔体について詳しい話を聞きたいんだがいいかい?いいよね?ああ大丈夫だ別に人体実験しようとかそういうんじゃない、当然相応の金は払うから───」
もしも主人公がやって来たのが、原作開始前(アビドス編が始まる前)のゲヘナだったら?
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美食研究会ルート
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温泉開発部ルート
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激長!便利屋ルート
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やっぱり激長!風紀委員会ルート
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全部書いて♡