Tarnished Archive   作:助動詞

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所で今回、作者のオリジナル設定が多分に……というか今回のお話は殆ど全てオリジナル設定で構成されています。ご了承くださいませ。





超・説明回

 

私がキヴォトスに来てから数日が経った。

 

その間何をしていたのかと言うと、ちょっとした実験である。

とは言っても、別に『壺の中身』を治療しようとしてみたり人を改造してみたりといった狭間的なそれではなく、自分自身と適当な不良生徒を被検体としてキヴォトス人がどれ程の、そしてどのような攻撃に耐えられるのかを検証していたのである。

 

というのも、この数日の間にかなりの大事件が発生した……と言うよりも発生させてしまったのだ。

 

鬼方に警告されたにも関わらず、性懲りも無く一人でゲヘナを彷徨い歩いていた所、突然人気のない路地裏に連行され銃を突きつけられながら『今身につけてる武器とかを全部寄越せ』と言うふざけた脅しをかけられてしまった私は、怒りの余りうっかりその不良生徒をぶち殺しかけてしまったのである。

 

渾身の膝蹴りによる反撃に怯んだ彼女に、最大強化の慈悲の短剣を抜き放ちそのまま思い切り突き刺した。

ヘイローがあるのだから別にこれくらいは平気だろうと思っていたのだが、私の予想とは裏腹に、短剣はまるでヘイローの護りなど存在しないかのようにずぶりと敵の身体に突き刺さった。

 

当然、私の持つ必殺の武器の一つである慈悲の短剣でこんな一撃を食らってしまえば、待っているのは死だ。みるみるうちに、彼女の生命が終わっていくのを感じる。

これは面倒な事になったかも知れない、と思案したその時、

 

───私は感じ取った。

 

このまま絶対的に取り返しのつかない何かが───否、『ナニカ』が、他ならぬ私自身の行動によってこれよりこのキヴォトスに齎される事を。

 

恐ろしい。背筋が凍り付く。

───眼の前に横たわる少女が、今まさに死への恐怖・絶望から無意識下において『反転』しようとしているからだ。

 

空が赤い。少し前までは青空だったはずなのに。

───今より『テラー』が顕現する。透き通る様な青は、最早この地に相応でない。

 

崩れていく。倒れている彼女のヘイローが。

それだけではなく。

全てが。

 

這いずり出てくる。彼女の身体の底から、───

 

そこまで感じ取った瞬間、私は陽だまり石を取り出し、己の身に宿る総ての魔力と祈りを込めて彼女の傍に叩きつけた。

 

暖かな光が彼女を包み込み、傷を少しずつ癒していく。

どうやらギリギリの所でセーフ───全然、全くもって『セーフ』などではない様に思えるが便宜上そう呼称する───だった様だ。

 

傷口が塞がって行くにつれて、異様な雰囲気は失せて行き、いつの間にか全てが元に戻っていた。

 

意識を取り戻した不良生徒や道行く人々に今の現象を尋ねてみた所、『今日は何も起こってなんかいない』『空が赤くなった? お前変なクスリでもやってんのか?』『異様な雰囲気? いや、私は別に。 そんな事よりも私のお気に入りのお店が爆破されちゃったんだけど! 確かに店員は態度悪いし料理もそんなに美味しくないしその割には価格が安いって訳じゃないし店内クッソ汚いけど……それだけじゃん! 何で爆破なんてされちゃったのぉ〜!』

 

……などの回答が得られた。どうやらあの現象を知覚出来ていたのは私だけだった様だ。

一体何故なのか。容易に想像がつく。

 

単純に、私がやらかしたからだろう。

 

あの武器屋の主人の獣人も言っていたではないか。『ここでは殺しは禁忌だ』と。

その禁忌を犯した私に、何か上位の存在がペナルティ的な何かを与えようとしてきた───大方そんな所だろう。

 

さて、こうなってくると話が変わってくる。

慈悲の短剣は確かに強力な武器だが、もっと強い武器はいくらでも持っている。『名刀・月隠』に『暗月の大剣』などだ。

もしもそれらの武器もヘイローの護りを貫けるのだとしたら、武器を振るう度にあの謎の現象が発生する事になる。

それは物凄く困るのでなんとしてでも回避したい所だ。魔法の使えない今の状況で上位存在に喧嘩を売れる程、私の知力は低くない。

 

という事で、狭間の地の武器や道具、状態異常などがヘイローを持つ我々に対してどの程度作用するのかを数日かけて検証していたのである。

 

その結果、『最大強化の武器』や『毒や腐敗の状態異常』などを使うと例の現象が発生する事が分かった。

ただし、私が死んでも例の現象は発生しないらしい。上記の方法などで試しに何度も死んでみたのだが、一切何も起こらなかった。

 

また、『死』の状態異常でも例の現象が発生する可能性が高いと私は踏んでいる。

というのも、これは効果を発揮した時点で対象を即死させる状態異常であり、有事の際は確実に取り返しの付かない事になってしまうからだ。

まあ、これに関しては一切問題ない。この状態異常を現状唯一使える『蝕のショーテル』なんて武器はこれまでに使った事なんてないし、これからも使う事なんて無いのだから。

 

それよりも最大強化の武器たちが使えなくなったのが余りにも痛すぎる。『名刀・月隠』に『暗月の大剣』など、数々の愛用武器が一斉に観賞用の置物と化してしまった訳だ。

尚、最大強化の聖印や杖による殴打はいずれも対象に『いてっ』という反応を引き起こす事に成功している。

 

また、検証の過程で『ティビアの呼び声』や『呪霊呼びの鈴』と言った、死者などの霊魂を召喚するアイテムも使えなくなっている事に気づいた。

まあ、これは当然の事だろう。ティビアの呼び声とは死に迷う者を召喚するアイテムであり、ヘイローの影響で死者が極端に少ないキヴォトスで使える訳が無い。

呪霊呼びの鈴はその名の通りに呪霊を召喚するアイテムであり、呪霊とは呪いによって殺された人の魂である。

キヴォトスには魔法も呪いも存在しないので、当然呪死した人間も存在せず、よってこのアイテムも使える訳が無い。

 

更に戦技に関してだが、最大強化の武器以外で『暗殺の作法』や『切腹』、『血の刃』といった自傷を伴う戦技を使えなくなってしまった。

 

 

 


 

 

 

そして現在。ゲヘナ学園は『ドニチヤスミ』という事で今日・明日と授業を行わず(これに関しては僥倖だった。何せ授業が全く分からない。『ホウテイシキ』とは一体……?*1)、休日という事になっており、それに乗じて私は最後の実験を行おうとしていた。

 

というのも、ここキヴォトスは狭間の地とは全く異なる世界らしく(月の見え方や空崎の持つ『すまほ』による知識などから分かった)、他者に向けて放った戦技などが『最悪の結果』を引き起こす可能性が否定できないのである。

 

という事で、私の持つ武器を与えるという条件で空崎に実験台になって貰った。

実験台と言うと聞こえは悪いが、彼女曰く『……まあ、憧れが無い訳じゃないわね*2』との事。

目を輝かせてとても乗り気だった。

 

そして実験の当日。

 

「所で星見くん、戦技って何? 以前使った剣から弾を飛ばすやつ以外にもあるの?」

「そうだ。戦技とは武器に宿る……まあ、特殊な攻撃だ。攻撃以外にも、強化や回避など、その効果は多岐に渡る」

「へぇ。それなら、銃にも戦技は宿っているのかしら?」

「そうだな……」

 

残念ながら、私が今持っている銃には戦技が付与されていない様だ。

 

「……この銃には、戦技が付与されていない様だ」

「そう。……ごめんなさい、話を遮ってしまって。それじゃあ、始めましょうか?」

「ああ。では、まずは直剣の『構え』から行くぞ───!」

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

結局、戦技は今回試していない『死の刃』や毒や腐敗などを付与するものやなどを除いて全て正常に機能した。つまり私の検証はただ単に空崎を痛めつけただけで終わった訳である(当然、ぬくもり石などで適宜回復を挟んだ)。

 

「それじゃあ星見君、約束の報酬を」

「ああ、そうだな。……それで、武器種は何がいい?」

「大斧を希望するわ」

「分かった。それで、戦技は何を付与する?」

「『瞬雷』でお願い」

 

という事で、私は望みの戦技を付与したグレートアクスを手渡した。

 

「ねぇ、早速使って見ても良い?」

「分かった、私が的になろう。……さあ、来い!」

 

私は空崎から距離を取った。彼女の武器に付与した戦技の『瞬雷』は敵に一瞬で距離を詰める戦技。近距離ではその効果を発揮出来るとは言い難い。

 

「……じゃあ、行くわ」

 

そう言った次の瞬間、彼女の姿は雷となって一瞬で距離を詰めた。

 

「……っ!」

 

彼女の一撃は、いとも容易く私を斜め上方向───つまり空中へと吹き飛ばした。

 

「っ『瞬雷』!」

 

所で妙なものが見える。というのも、どうにも空崎が()()()()()()()()()()()瞬雷を放っている様に見えるのだ。

私の知る『瞬雷』は、間違っても空中の相手に手出できる様な戦技では無い。単なる見間違い───

 

「はあっ!」

「ぐぼあ」

 

───などでは無かった。

空崎は普通に地上でしか動けないはずの戦技で空中を駆け抜けていた。

 

今度の一撃は私を斜め下方向───つまり地面へと叩きつけた。ぐふう、という声が口から漏れる。

 

何とか視線を上げた私が見たものは、空中で大斧を振り下ろした姿勢の空崎が、その翼を羽ばたかせて太陽を背にして武器を高く掲げて今にも私に突撃しようとしている姿だった───

 

 

 


 

 

 

 

所で、キヴォトスから狭間の地、そして狭間の地からキヴォトスへの祝福による行き来だが───

 

問題なく行き来出来る様だ。ただし、狭間の地でも私のヘイローは消えなかった。

向こうならヘイローが消えて魔法がまた使える様にならないか、と淡い期待を抱いていたが、世界は私に甘く無かった。腹いせにしろがね人を虐殺しておいた。

 

 

 

*1
いくら知力が高いとは言え中学校どころか小学校にも行っていない剣とかと魔法のファンタジー世界()出身の人が高校の授業についていける訳がないね

*2
武器名に「終幕:デストロイヤー」、技名に「終幕:イシュ・ボシェテ」って名付けるタイプの人






という事で今回はここまで。
読んで下さりありがとうございました。

次回には……風紀委員会に入ります……多分……そしてやっとこさ……。

今後の展開について

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