でもなんか奇跡的に時間が取れたので投稿。
突発的に
「本当に成人しているとは思えないな、これも爺の教育方針の弊害か。」
何もかも好きにさせるとこうなるという図である。自尊心の塊となり醜い人間の皮膚を被った悪魔。というのはマッドサイエンティストの目の前の少女への覆しようの無い評価である。
「おい、そこな秘書艦。こちらの演習用の艦隊編成は済んでいる。そちらの艦隊を鎮守府正面海域に呼び出してくれ。」
ひゃいっ!と、怯えながらこちらを見る少女。その目からは天敵を目にした被捕食者を連想させる。
──そうだったな。私に対する艦娘からの普通の評価はこんなものだ。ここの鎮守府に慣れて外向的な視点を失うのは良くない。これは反省点だ。歴史に記そう。
そう思案していると、左手にかかる抵抗力がました。否、私の抑制力が弱まっていただけだが。まぁ話は着けたし、そこで腰を抜かしている眼鏡の少女は使い物にならない。
そろそろこいつにも発言権を与えてやるのが仮にも兄としての慈悲というものだろう。
「っぷは!よくもやってくれたわね!このクソ兄貴……。ここで口論を繰り広げたいところだけれど、時間が押しているのも確か。とっとと演習を始めるのが吉ね。」
頭では理解しているのであろうがこちらを睨みつける目は変わらない合法ロリ。まぁ、あと身長が20センチくらい有れば迫力もあったのだろうか。
「お前とは考えが合わないが、ある程度合理的に動いてくれるところは好意的に捉えている。」
「あたしはクソ兄貴のこと嫌いだけど。」
「安心しろ、私もお前のことは嫌いだ。」
可愛げのない兄の義妹はまた可愛げがない。遺伝子は繋がっていないはずなのに、性格は似てしまった。環境、基親の教育の賜物だ。
もしも流れ弾が飛んできて無惨にもシリカの破片が飛び散ったら、貧弱な人間の肉体では耐えられない。それを見越して
──研究してぇなぁ。勿論許可など誰もくれないし
階段の途中で憲兵と合流して、一悶着。
「貴方、相当腕の鳴るSPらしいじゃない。こんな僻地で燻ってないであたしのところに来ない?」
憲兵はその言葉に驚いているが、妥当。というか適当な判断である。大湊なら待遇もここに比べて天と地のはず。
「大変嬉しい話ですが、私にとってはここが風通しの良い職場ですので。それに、お言葉ですが近いうちこの鎮守府は五大鎮守府に匹敵する予定ですから、燻る、なんてことはないのでご安心を。」
まるで実家に来客が来たような態度での返答。マッドサイエンティストに対する無邪気な少女のような側面は、内弁慶的存在なのかもしれない。
憲兵はそうロリに返答しながら、長髪の男のメガネの先を細目の、しかしはっきりと分かるように見つめる。いつまでも白衣を崩さない男は、憲兵と酷く対照的である。
「認めたくないけど、確かにクソ兄貴ならそういうこともできるかもね。仮にも超合理主義者の天才なんだから。」
大湊の合法ロリは、再度言うが現元帥の血の繋がった一人娘である。そして元帥は、極度の親バカという上役飲み会における酒の肴として、定例文になるほどの人間性を持つ。
幼き頃から天使のように扱われたロリの、その矜持が肥大化しないわけが無い。そんな擬似王族の滅多に言わない褒め言葉なのだから、本音で喋っているのだが。
残念ながらマッドサイエンティストは皮肉としか捉えていない。つまり、畢竟この男のせいで兄妹関係が終わっていると言っても過言では無い。
「……続きは上で聞こう。そこの艦娘、記録用映像については後で共有するから把握しておけ。」
「…ッハイ!」
大淀の後方秘書面が唐突に頓挫し、内心震えながらマッドサイエンティストに反応する。自分の提督が、
あんたねぇ、大淀には大淀って名前があんの!それくらい覚えなさいよ!
とクレームを入れるが、その庇護対象艦は必死になって自身の上司を諌める。大事なことなのでもう一度お伝えしておくが、これが一般的なマッドサイエンティストに対する評価だ。反比例して僻地鎮守府が問題児の巣窟だと明白になる。
無言で階段を登って行ったポニテの男を見て、ごめんなさい。と謝る憲兵が続く。不機嫌な表情でついて行く上官と、一先ず生にしがみつけて一息つく艦娘が居た。
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「賭け事、しない?」
演習を観測するための特殊加工部屋で、物騒な話を持ち出す合法ロリ。
──私の返し方などわかっているだろうに。
「しない。」
「またまたぁ、クソ兄貴いつもそう言うけど毎度の如く結局勝負になるわよねぇ?」
「毎度の如く負けに来る歴史を学ばないガキがいるからな。」
マッドサイエンティストの煽り性能レベル
心做しか合法ロリの髪が若干つり上がっているようにも見えたと、その場に居合わせた加賀は供述している。
「今回も!勝てる自信があるようねぇ?」
話し方に苛立ちが隠せていない。これではマッドサイエンティストの
「さぁな。」
ぐぬぬ……気取ったように言いやがって。と心の声が少しだけ漏れている少女ロリ。しかし、埒が明かないと思ったのか。自分は大人だ、と言い聞かせ賭けの内容を説明始める
「演習の勝ち負けを巡って勝負しましょう?勿論あたしは自軍に賭けるけどね。勝者は……そうね、負けた相手になんでも言うことを聞かせられる権利はどう?」
言葉の上っ面だけを聞けば甘美な響である。しかしその実ここまではテンプレ。権利の聴く範囲はとても狭く、そいつ個人で完結することでなければいけないのだ。
例えば、あのロリに対して研究用の艦娘を差し出せと言っても、その命令はあたし1人の判断で出来る範疇に無い。という屁理屈に押されて使えない。
「その権利、既に36回分持っているんだが。」
「っさいわね!そういうことは覚えてるんだからほんとに……はぁぁ。」
「口約束だとしても、立会人のいるちゃんとした誓約だ。記録義務はあるだろう。」
白衣の胸元からメモ帳を取り出す。日時、場所、賭け内容等々、完璧に記している。矜恃の塊である合法ロリにとって、そのメモ帳を破り裂くなんてことも出来るはずなく、眉間の皺を歪めながらメモ帳の端を握っているだけだ。
「それに、賭けるには条件が違いすぎる。方や大湊の熟練艦娘、反してこちらは僻地の素人艦娘ばかりだ。どれだけ私が上手く指示しても艦娘が着いてこれなければ負ける。第一、私はここの鎮守府の艦娘の練度は不知火しか知らん。」
「はぁ?兄貴そんなこともまだ把握してないの?提督としてどうかしてるわよ?」
「お前が一昨日裏切ったせいで今日に回しているってことを忘れるなよ?」
ぐぬぬ……と歯ぎしりをしながら、痛いところを突かれて言い返せない合法ロリ。ちなみに昨日、マッドサイエンティストの抗議により正式な謝罪動画が送られてきて、艦娘には謝罪したらしい。長髪の男の元には謝罪動画は来てないが。どうしてもプライドが邪魔をするのだろう。
「喧嘩は同レベルの人間同士でしか起きない。故に、私に対して誹毀行為を重ねても一向に構わん。……そんな事よりも、とっとと出撃命令を出せ。お前の嫌っている時間の無駄が出来ているぞ。」
よくある売り言葉に非買い言葉で、もはや口論することすら諦めたのだろう。ロリは無線を使って出撃要請を出す。
こうして、今日の主題である対大湊演習が始まったのだった。
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6戦6敗。わかりきってはいたことだが、こんなものか。横目で合法ロリを見ると、完全勝利にいつの間にかに機嫌を直している。やはり
それに反比例するように、側に仕える
「さて、わかっていたことだけどあたしの艦隊の完全勝利ね!」
「そうだな。負けを認めよう。」
降参と伝えたいのか両手を上げるマッドサイエンティスト。
ここまで心が満たされたのはいつぶりだろうか、と満足そうに目を弛める合法ロリ。ロリはその甘美に酔いしれていると、
「なんで不知火を出撃させなかったんですか?」
長髪の男のポニテを弄りながら不機嫌そうにつぶやく少女。
「不知火の戦闘能力は把握している。今日の演習目的はうちの艦娘の練度確認だ。やる意味が無いだろう。」
不知火はマッドサイエンティストの黒髪を二つ編みにしながら、大きなため息をついた。
「不知火なら単騎でも敵艦隊を壊滅させられます。」
大口を叩くピンク髪の少女。それに乗せられたように大湊側から不満が飛び出す。
「言ってくれるわね?駆逐艦1人であたしの最高傑作を潰せるとでも?……見た感じ改装もしてないのに。」
「司令の艦隊指揮を細分まで完璧に再現できるのは私だけです。」
味笑うように言う大湊の
「不知火、私の艦隊指揮を過信されても困る。仮に大湊の主力艦隊と1人で相対しても、袋叩きにされて負ける未来しか見えん。一昨日のは奇襲が成功するという、限りなく有利な状況で戦っていたことを忘れるな。」
「……ぬい……。」
信頼していた上官から裏切られ、しょぼくれる少女。
「仮に不知火が6人居たら勿論勝利するがな。」
「……ぬい……!」
近くで聞いていた大淀からしたら、有り得ない話だと思ったが、合法ロリはと言うと、苦い思い出があるのか目を逸らして内心舌打ちをしている。
「時間も時間だ。そろそろ日が傾いてきたし私は執務室に戻るぞ。大淀……だったか?記録映像の共有をする。着いてこい。」
呼ばれてビクッと体を震わせながらも、オドオドと追いつく大淀。それに続き不知火と合法ロリも出ていき、部屋に残ったのは1人の若女だ。
「明坂提督…、無防備すぎますよっ……。」
憲兵の小さな手に握られているのは、大きすぎるナイフや弾丸の数々。弾丸を素手で受け止めたのか手の平には跡が残っており、ナイフの刀身には日本陸軍特殊部隊の印。
「
──不知火ちゃんのせいで監視カメラとかがすぐ取り外されちゃいますから、自分の目で確認しに行かなければ。
そう言って暗器を処理した後階段を下る憲兵の表情は、数日前とは違って情けない顔を晒していた。
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クソ兄貴と出会ったのは、13歳の頃だ。
元帥…、その時はまだ中将だったお父さんが急に連れてきた。なんでもあたしの義理の兄とのこと。
気に入らなかった。お父さんは基本的に子供を自由に選択させる。家の前で花火をするのも、側仕えに強く当たるのも、最終的に海軍に入るのも。一切止められることは無かった。今では酒の席とかで、それがお父さんからの愛情だと知ったが、13歳の幼稚な思考回路にとって、裏を返せば放任主義。子供に興味が無いとも取れたのだ。
そんな中、連れてこられた義兄。まるで、あたしに変わってお父さんに気に入られたのだと思った。
……あたしが生まれる時、母親は死んだ。お父さんとお母さんは体の相性が悪く、子が作りにくかったらしい。それ故にあの歳までことをし続け、結局できた頃には高齢出産となってしまった。文字通り命懸けであたしを産んだのだ。
その知らせを受けて、産まれたての泣いているあたしを、泣きながらお父さんは抱きしめていたらしい。
もう記憶には無いが、小学生になるまではとても可愛がられていたらしい。入学してからは同時期にお父さんが元帥になったこともあり、触れ合える日数が減ってしまったが。
連れてこられたクソ兄貴は、お父さんに頭を撫でられていた。ぽっと出の癖に、あたしの13年間を数瞬の内に追い抜いていった。それならまだいい。許せた。羨ましいで終わったのだ。
しかしあのマッドサイエンティストは、お父さんに対して何も反応を示さなかったのだ。嬉しい、とも。ウザったい、とも。本来自分の居るべき場所に勝手に現れ、いやしくもお父さんの愛情を無下にするなど、到底あたしの堪忍袋の緒が耐えられるはず無かった。
クソ兄貴が1人の時、詰め寄った。お父さんを返せ、と。それを聞いたあの頃から変わらず女の子みたいな長髪だった男は、どうぞご自由に奪ってくれ。と宣ったのだ。
それが出来たら、苦労は、あんなに辛い思いはしなかったのに。どれだけ''あたし''を主張してもお父さんは振り返ってくれなかった。
あたしが防衛大学校に入学した辺りから、クソ兄貴と賭け事を始めた。勝ったらなんでも言うことを聞くという条件でだ。命令でお父さんから離れて貰うために。
最初の内容は艦隊指揮。幼い頃からお父さんの影響で大きな船の操縦を見たり、艦娘が台頭してきた頃から将来を見越して指揮訓練を積んでいたこともあり、絶対勝てると思った。だから挑んだのだ。
完敗だった。同じ条件から、少しづつハンデを足してもらって、人数を減らしてもらって、装備を減らしてもらって。それでも勝てなかった。もう、幼少期から積み上がったプライドという巨大な城は崩れ落ちてしまった。今となっては大湊警備府代表となり、自信を持って矜恃と言えるまで心は修復したが、当時の荒れ具合は酷いものだった。
でも、今思えば、そこで初めてお父さんに気にかけて貰えたのだった。だから、親子という関係性に戻れたのは、少なくともあのクソ兄貴のおかげではあるのだ。絶対に本人の前では言わないが。
でもでも、願わくば、自分がもっと正直になれれば、少しくらい兄妹として接することも出来るのだろうか。そう思っている自分も居たことは、認めざるを得ないのだと思う。
元々妹は生理的にガチ嫌い(ツン︰デレ=100︰0)にしたかったんですけど、書いてるうちにデレ成分生み出したくなって、
ツン︰デレ=99.99︰0.01にしたっぽい。悔いは無い。