【コミカライズ化決定】引き抜いた聖剣が独占欲剥き出しなヤンデレ彼女面してくる件   作:アスピラント

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 翌日――早朝。

 グランフォリア城内の一室にて、ルカ・ペルシオンは報告書に目を通しながら静かに口を開いた。

 

「――なるほど、魔族の調査員か」

 

 向かいに座るマリーは、昨夜の一部始終を報告し終えて、ルカの反応を待っていた。

 

「グラナダ王国が極秘で動いているとなれば……表立って動けない事情がある、という事だね」

「はい。彼女たちの話が本当ならば、魔族側も被害者です」

「ならば……協力しない理由はないね」

 

 ルカはペンを置いて、椅子の背に身を預けた。

 

「ただし条件をつけよう。行動は常に我々と共に、単独行動は禁止。情報は逐一共有する。破った場合は即座に拘束する」

「わかりました」

「君たちゼピュロスが窓口になりなさい、マリー」

「……はい!」

 

 マリーは背筋を伸ばして答えた。

 内心では、昨夜のレイナのタコ殴りを思い出しながら。

 

 (うまくやれるかな……)

 

 そんな不安を胸に秘めつつ、彼女は部屋を後にしてとある部屋に向かう。そこはあの魔族たちがいる部屋だ。

 

「眠い……」

「しっかりしろ、事件解決までは休む暇ないぞ」

 

 条件付きで拘束を解かれたダリスとキールは、ゼピュロスの3人と共に城の一室へ通された。

 長机を挟んで、向かい合う形になる。

 ダリスは腫れた顔のまま、涼しい顔で椅子に腰掛けた。キールはレイナから出来るだけ離れた席を選び、壁際でそそくさと座った。

 

「……昨夜は、随分と痛い目を見たな」

 

 ダリスが口を開く。

 

「申し訳ありませんでした」

 

 マリーが頭を下げるとダリスは首を横に振った。

 

「構わない、こちらも状況が状況だった。突入してきた相手を、力で制圧しようとしたのはこちらだ」

 

 そう言ってちらりとレイナを見る。

 

「ただ……まさかヒーラーがあれほどとは思わなかった」

「え、あ、その……色々と事情がありまして」

 

 レイナは困ったように笑う。

 

「とりあえず今日からよろしくお願いします、ダリスさん、キールさん」

「ひっ……」

 

 キールが条件反射で身をすくめた。

 レイナは「やりすぎた……」とちょっと後悔すらしていた。

 

「お、俺はキールだ、キール・ルーナ。改めてよろしく……頼む」

「ダリス・グラウだ。よろしく」

 

 握手を交わすのはなんとも不思議な光景だった。

 つい昨夜まで縄で縛られていた相手と、これから協力する――何とも奇妙なスタートである。

 

「では早速なんだが……」

 

 ダリスは机の上に、折り畳んだ紙を広げた。

 そこには細かい文字と図形が書き込まれていた。

 

「これは我々が祠を調べた際に書き写した魔法陣だ、暗黒の魔法を使ったものであり、結界の構築を補佐してるものだ」

「……! 共有してくれるんすね!」

 

 ローズはすぐに興味深そうに眺める。

 暗黒の魔法をマジマジ見る機会はない、すっかり作戦そっちのけになりそうな勢いだ。

 

「勿論だ、今ユピテルスの結界を破るには暗黒の魔法が必要になる。だが迂闊に解除すれば……何が起きるかわからない。とは言え放置するわけにもいかない」

「……ではどうすれば」

「ユピテルスを殺す――復活前に」

「「「!!」」」

 

 その一言にゼピュロスが怒気を露わにする。

 

「そんな真似は許されない!! 守り神のような彼女を殺めるなど!!」

 

 カイロスは激怒した。

 その迫力にローズは目を見開いた。

 

「ではどうしろと? 殺さなければ街は破壊されてしまう」

「洗脳を解けば――」

「真犯人がわからないのに解くもクソもない、いいか」

 

 するとダリスは冷たい目をしながら説明する。

 

「私が提案したいのは聖剣の担い手が結界を破壊した後、騎士団と我々が総攻撃してユピテルスを殺害することだ。結界もそうだが……真犯人がわからない以上は致し方ない」

「…………理屈はわかるけど」

 

 リリアはいい顔をしてない。

 最終的な手段として提案されても、出来ればしたくなかった。

 

「だが時間は待ってくれない、ユピテルスが眠ってる内に決着をつけるべきだ」

「「…………」」

 

 重たい沈黙が流れる中で、ダリスはアレックスに目を向ける。

 

「担い手はどう思う」

「……俺は」

 

 アレックスはマルティアナを撫でる。

 するとマルティアナは優しく言った。

 

『貴方の答えは決まってるんじゃない?』

 

 わざわざ私が言わなくても大丈夫――そう言ってるような気がした。アレックスは薄く笑うと向き合って言った。

 

「俺は……ユピテルスを助けたい」

「…………甘いのでは……?」

「甘いよ、というか……俺は元々君らみたいな戦士じゃないし、普通の村人だったからね」

 

 あははと笑いながらアレックスは言った。

 ダリスは本気で呆れかけたが、次の一言で彼女は固まる。

 

「俺は手の届く範囲なら、全部救いたいんだ」

「……!」

「担い手は冒険者って役割より、勇者に近い――というかそのものでしょ? そんな勇者が救おうとしないでどうするよ」

 

 アレックスの中で勇者は救い主だ。

 困ってる人がいたらほっとけないし、悪さをする奴は退治する。実にシンプルだけど……それを貫き続けるのは容易ではない。

 

「だから俺はユピテルスを諦めない、犯人を見つけて……そいつを退治する」

「……あてはあるのか?」

「……マルティアナと話して、ちょっとね」

 

 そう言ってアレックスは目を伏せると、ダリスはアレックスのパーティメンバーに目を向けた。

 

「お前たちはそれでいいのか?」

「リーダーがそう言ってるなら従うまで」

「あたしはハッピーエンドが好きっすからー」

「私も同じですよ」

 

 パーティメンバーはむしろアレックスの判断を好意的に見ていた。やはり彼は担い手なのだと、改めて感じた瞬間でもあった。

 

「でも1人じゃ無理だ、ダリス、キール、ゼピュロスの皆も……強力してほしい」

「……万が一……失敗したら」

「しないよ」

 

 アレックスはしっかりとダリスを見ながらまた言った。

 

「絶対ユピテルスも……この街の人も救ってみせる」

「…………わかった」

 

 そしてダリスは只人とは思えない、輝く瞳をしたアレックスを前についに何も言えなくなった。根拠はないのに、どうしてか今の彼なら何でも出来る気がしたからだ。

 

「じゃあ……改めて作戦でも練ろうか」

 

 話がまとまった辺りで、レヴァンは空気を切り替えた。

 話し合いの結果、ダリスたちはゼピュロス含めた騎士団とともにユピテルスがいる古塔の付近に防衛用の結界を張り、アレックスパーティは認識阻害用の結界を破壊し、()()の確認をしに行く手筈となった。

 

 かくして魔族との共同戦線が張られた彼らは、迫る戦いに向けて備えるに至った。

 

◇◆◇

 

「――古塔の周辺にいる魔物は粗方排除しています」

「ご苦労……それじゃ、早速頼んでいいか?」

「ああ」

 

 古塔付近――紫色に染まった風の竜巻が天まで立ち上っている。ユピテルスが眠る古塔の周辺にはルカを筆頭とした騎士団のメンバーが、魔物を駆除した後に塔を囲むように散らばっていた。

 

 ダリス曰く――保険を準備するためだという。

 

「今ユピテルスは自らの力で作った結界に、暗黒の魔法を混ぜる事で外から侵入されないようにしてる」

「……それで」

 

 レヴァンが促す。

 

「つまりはだ、我々が敢えて同質の魔力をかけて必要以上に強化すれば、すぐには出れない」

「補強する訳ですね」

「そうだマリー……いやゼピュロスの皆」

 

 君たちの知識を貸して欲しい――ダリスは真剣なトーンで言った。

 

「君らはユピテルスを調べてきて、かつ知識も豊富だろう? 君らがユピテルスの結界を構築する魔法陣を作り、私たちが暗黒の魔法で補強する」

「つまり……合作という訳か」

「そうだ」

 

 前例のない事だ。

 ゼピュロスの3人は顔を見合わせる。

 

「作ることは出来ると思う、でも……馴染むかどうかは運次第です」

「だろうな、私たちもやった事はない――でもやらなきゃいけない」

 

 魔族側も人間側も思いは全く同じ――犠牲を出したくない。

 昔とは違って、今はもう敵ではない。

 

「街を守るはずの力で……誰かを死なせたりなんかするもんですか!」

 

 マリーの声が古塔の周辺に響いた。

 誰も何も言わなかった。だがその沈黙は否定ではなく、全員が同じ気持ちだという証だった。

 

「……やってみましょう」

 

 カイアスが最初に動いた。

 懐から取り出したのは小さなメモ帳だ。ユピテルスの結界構造について、これまで調べてきた内容がびっしりと書き込まれている。

 

「ユピテルス様の結界は風の精霊特有の循環式を基盤にしています。外から力を加えるなら……この循環の流れに沿わせないと弾かれる」

「循環式……」

 

 ダリスが眉をひそめる。

 

「暗黒魔法は侵食が基本だ、循環とは相性が悪い」

「だから馴染ませる必要があります」

 

 カイアスははっきりと言った。

 

「侵食するんじゃなくて、循環の中に溶け込ませる」

「……なるほど」

 

 ダリスは少し考えてから頷いた。

 

「やれるかもしれない」

 

 レヴァンはその間に地面を見渡し、配置点を確認していた。

 

「結界を補強するなら四方に陣を刻む必要がある、塔との距離は……ここからここまでが適切だろう」

 

 彼は杖で地面に印をつけながら言う。厨二病的な言動は鳴りを潜め、今のレヴァンはただの優秀な研究者だった。

 

「レヴァンの言う通りっす」

 

 マリーはすでに膝をついて地面に術式を刻み始めていた。精霊の循環式を基盤に、外部からの力を受け入れやすい構造へと組み替えていく。指先が細かく動き、石畳に魔力の光が走った。

 

「北側はカイアス、南側はレヴァン、東西は私とキールが担当する」

 

 ダリスが素早く役割を振り分ける。

 

「キール」

「わかってる」

 

 キールはすでに動いていた。

 双剣を使って地面を削り、そこにダリスから受け取った暗黒魔法の補助式を刻み込んでいく。器用な手先が、複雑な紋様を素早く描き出した。

 

 全員が無言で作業を続ける。

 塔からは絶え間なく瘴気が漏れ出し、近くにいるだけで息が重くなる。それでも誰も手を止めなかった。

 

 やがて四方の陣が完成した。

 

「起動させます」

 

 マリーが立ち上がり、中央に立つ。

 四つの陣に向かって魔力を流すと、青白い光が地を伝い、陣同士が繋がっていく。ユピテルスの結界に沿った循環式が、塔の周囲にゆっくりと展開し始めた。

 

「今だ、ダリス」

「ああ」

 

 ダリスは目を閉じた。

 全身から黒紫色の魔力が溢れ出す。それはキールの力が加わることで更に増幅し、地を這うように四つの陣へと流れ込んでいった。

 

 接触した瞬間、反発が起きた。

 青白い光と黒紫の魔力がぶつかり合い、陣が激しく明滅する。

 

「……っ」

 

 マリーが歯を食いしばって魔力の出力を上げる。

 押し付けるんじゃない、受け入れるんだ――彼女は自分に言い聞かせながら、術式の流れをダリスの魔力に合わせて微調整していった。

 

「カイアス、北側の安定化式を強めて!」

「了解!」

 

 カイアスが追加の魔力を流し込む。

 レヴァンの補助陣が連動して光り、反発が和らいでいく。

 数秒の攻防の後――青白い光と黒紫の魔力が溶け合い、深い藍色の輝きを生み出した。

 

 その光が塔全体を包み込むように広がり、亀裂から漏れ出していた瘴気が押さえ込まれていく。紫色の竜巻がゆっくりと勢いを失い、風が凪いだ。

 

「……止まった」

 

 レヴァンが静かに言った。

 藍色の結界は静かに、しかし確かに塔を覆っていた。

 

「成功……ですか」

 

 マリーは力が抜けたように息を吐いた。膝が笑っていたが、何とか立っていた。

 

「ああ」

 

 ダリスも長い息を吐き出す。

 

「時間稼ぎにはなる」

 

 キールは双剣を鞘に収めながら言った。

 

「十分だろ、あとはあいつらがなんとかする」

 

 そう言って視線を街の方へ向けた。

 

「――うまく行ったようだな」

 

 一部始終を少し離れた場所から見ていたルカは、静かに息を吐いた。

 

 人間と魔族が、肩を並べて街を守ろうとしている。

 つい昨日まで縛られていた相手と、今日は同じ目標のために力を合わせている。

 

(時代は変わったな)

 

 ルカはそう思った。

 かつては魔族といえば敵だった。1000年前の戦の記憶は、今もこの国の歴史書に刻まれている。だがあの若者たちを見ていると、そんな過去がひどく遠いものに感じられた。

 

 マリーが嬉しそうにダリスに何か話しかけている。

 ダリスはぶっきらぼうに答えながらも、悪くなさそうな表情をしている。カイアスとキールは結界の出来を確認しながら、いつの間にか笑い交じりで話していた。

 

「……ルカ団長」

 

 側にいた騎士団員が声をかけてくる。

 

「結界の安定を確認しました、今のところ異常はありません」

「ありがとう、引き続き警戒を頼みます」

 

 ルカはそう答えながら、藍色に輝く塔を見上げた。

 

(あとは担い手に任せるしかない)

 

 アレックスがどんな策を持っているのか、ルカにはまだわからない。だがあの少年の目を見た時から、ルカは確信していた。

 

 あの瞳は、必ず何かをやり遂げる人間の目だと。

 

「頼んだよ、アレックス」

 

 ルカは小さく呟いた。

 風が吹き、藍色の光がゆらりと揺れた。

 

◇◆◇

 

「――これであと……1つかな」

「いやー……中々地味な作業っすね」

「仕方ないよ、認識阻害をほったらかす訳にはいかないし」

 

 一方でアレックスは昨夜やったように、聖剣をレーダー代わりにして魔法陣を探し歩いていた。先程で3つ目を壊し、いよいよ最後の1つを残すのみとなった。

 

「いよいよ明日だな」

 

 アレックスはぽつりと言った。

 昼下がりの街は相変わらず穏やかで、露店の呼び込みや子どもの笑い声が聞こえてくる。この街の人々は何も知らない。魔法陣の事も、ユピテルスの事も、明日何が起きるかも。

 

 だからこそ守らないといけない。

 

『本当に大丈夫なのかしら』

 

 マルティアナが静かに言った。

 

『そこはかとない不安がつきまとってるわ』

「珍しいな、マルティアナが弱気になるの」

 

 アレックスが少し驚いたように言うと、マルティアナは答えた。

 

『珍しくも何もないわよ、貴方の事が心配なのはいつだって同じ』

 

 その声は、普段の艶やかさが鳴りを潜めていた。

 純粋な心配だけが滲み出ているのだ。

 

 アレックスには聞こえているが、パーティメンバーには聞こえていない。それでもローズは何となく察していた。アレックスの表情と、腰の聖剣がいつもより静かなのを見ればわかる。

 

(聖剣様が……心配してるのかな)

 

 ローズは何も言わずに視線を前に向けた。

 リリアも同じだった。彼女は無表情のまま歩いているが、アレックスを気にかけているのはその歩く位置でわかった。いつもより少しだけ近い。

 

 レイナだけは小さくため息をついた。

 

(犯人が想定通りの人物だとしたら……アレックスが一番危ない)

 

 3人が無言でそれぞれ考え込んでいる空気を、アレックスは感じ取っていた。

 

「……皆、心配してくれてるんでしょ」

 

 アレックスが言うと、3人は顔を見合わせた。

 

「まぁ……っすね」

 

 ローズが正直に答えた。

 

「心配するなって方が無理っすよ、なんせ相手がどれだけの実力者かわからないし、しかも近くにずっといたわけですから」

「囮になるって言い出した時から……ずっと気になってた」

 

 リリアも珍しく率直に言った。

 

「ボク達と離れて単独で動くのは、普通に考えてリスクが高い」

「アレックス、無理はしないでくださいよ」

 

 レイナが静かに、しかしはっきりと言った。

 3人の心配が真剣なのはわかる。

 アレックスは少し考えてから、口を開いた。

 

「大丈夫だよ」

「根拠は?」

 

 リリアが即座に聞いた。

 

「もし僕が本当に邪魔なら……早い段階で消されていたかもしれないでしょ?」

 

 アレックスはあっさりと言った。

 

「黒幕は最初から僕の存在を知ってたはずだ、担い手が現れたって話は王都中に広まってたし。なのに今まで直接手を出してこなかった」

 

 それは確かだった。

 ローズは眉をひそめながらも、否定できなかった。

 

「……つまり、黒幕にとってアレックスはすぐに消す必要がない存在だったという事ね」

 

 レイナが整理するように言う。

 

「うん。もしくは……まだ使い道があると思われてるか」

 

 アレックスは続けた。

 

「どっちにしても、僕はまだ生きてる。ならもう少しくらい大丈夫でしょ」

 

 随分と楽観的な理屈だった。

 だがその言葉には妙な説得力があって、ローズは反論を飲み込んだ。

 

 『……多分』

 

 マルティアナが小さく言った。

 多分――その一言に、アレックスは少し驚いた。

 普段のマルティアナなら「絶対大丈夫、私が守るから」と言い切るはずだ。それがはっきりしない言い方をしたのは、それだけ今回が特別だということだろう。

 

 いやわかってる……何せアレックスは本当に1人になるからだ。

 

「マルティアナ?」

 

 アレックスが静かに呼びかける。

 

『……わかってるの、貴方の言う通りだと思う。理屈は正しい』

 

 マルティアナは続けた。

 

『でも……理屈と感情は別物でしょう。1000年待って、やっと見つけた担い手が危ない目に遭うかもしれないって思ったら……簡単に大丈夫とは言えないわ』

 

 その声は静かで、いつになく素直だった。

 重い愛情でも、嫉妬でもない。

 ただ純粋に、怖いと言っていた。

 

「……マルティアナ」

 

 アレックスは腰の聖剣にそっと手を添えた。

 

「怖いのはわかった、ありがとう」

 

 感謝を言われるとは思っていなかったのか、マルティアナは一瞬黙った。

 

『……何でお礼を言うの』

「心配してくれてるから」

 

 アレックスは歩きながら続けた。

 

「だけど……だからこそ終わらせたいんだ。マルティアナが怖いと思わなくていいように、皆が安心して暮らせるように。それが出来るのが今の僕だから」

 

 マルティアナはしばらく何も言わなかった。

 ローズたちも黙っていた。

 誰かが言葉を足す必要はなかった。

 

『……絶対に死なないで』

 

 マルティアナがやっと言った。

 

『それだけは約束して』

「約束する」

 

 アレックスははっきりと答えた。

 

「さて……最後の1つ、探しに行こうか」

 

 そう言って足を速めたアレックスの背中を、3人は少しだけ遅れて追いかけた。

 ローズは空を見上げながら思った。

 

(あの担い手は……本当にずるいっすね)

 

 心配させておいて、気づいたら応援したくなっている。

 それがアレックス・ブレイドという人間だ。

 

(私がうまくやらないと……っすね)

 

 今日一日じっくり探して、調べて、検証したから大丈夫だと深呼吸する。パーティメンバーも顔を見合わせる。この一連の騒動を解決し、黒幕を暴くのだと決意した。

 

 そして――運命の日が訪れた。

 

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