紅茶と木組みのめぐり逢い   作:ムイト

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第20話 仕事とは・・・・・・

 

 

 

「ルク兄貴〜、来たよ〜」

 

「ルクお兄さんおはようございます!」

 

 今日は日曜日。

 ラビットハウスにはマヤとメグが訪れていた。なにやらやる事があるみたいだが・・・・・・。

 

「2人ともおはよう」

 

「あれ?ココアは?」

 

「寝てるよ」

 

「寝坊助だなぁ。起こしてくる!」

 

「私も〜」

 

 2人はそう言うと店の奥から階段を上がって行った。もちろんチノも一緒だ。

 

 ルクはふと時計を見ると、もう11時となっていた。上ではゴトゴトと物音がするため、ココアは妹三人衆に叩き起されたのだろう。

 

「おーっす」

 

 1人でカップを磨いていると、店にリゼが入ってきた。今日はシフトを入れていなかったはずなので、プライベートの来店となる。

 

 リゼはカウンターに座るとルクにアイスココアを注文する。店に来たら必ず何かを注文してくれるので嬉しい限りだ。

 

「ああリゼさん。こんにちは」

 

「リゼちゃんおはよ〜」

 

 店内に上にいた4人が戻ってくる。ココアはまだ眠そうだ。

 

「・・・ココア、また寝坊したな?」

 

「本を最後まで読んじゃって」

 

「リゼ!」

 

「こんにちは〜!」

 

「お前達も来ていたのか。今日はどうしたんだ?」

 

 マヤとメグに囲まれたリゼは、ココアを飲みながら2人を見る。

 

 この質問に答えたのはチノだった。

 実は金曜日に職業インタビューの宿題を出されたらしい。各自興味のある職場に行きインタビューをするのだ。

 

 宿題は次の月曜日に発表するらしく、クラスメイトの前で自分の研究結果を読み上げるという。

 

「とりあえずココアはやりがいとかある?」

 

「はい、それはお客様の笑顔です」

 

「それ昨日のテレビでやってたセリフですよね」

 

 それは良い笑顔でマヤに答えるココアだったが、ルクとチノは昨日の夕飯を食べながら見たテレビ番組にて同じセリフがあったのを覚えている。

 

 2人で突っ込むと、ココアは「バレたか」というような表情を浮かべてリゼが飲んだアイスココアのグラスを片付ける。

 

「じゃあチノは?」

 

 マヤはペンをマイクのようにチノの口元へ持っていき質問をする。

 

「決して楽ではない。しかし、この息詰まる社会の中でここを癒しの場として、1杯のコーヒーを求めに来る客がいると思うとやりがいがある。彼らの帰り際に『また来るよ』という一言は、彼らにとってここが第2の家なのだと実感する。そして――」

 

「なんかチノが語り始めたんだけど!?」

 

 チノは口元を押さえティッピーが語り始めた。マスターとして店を切り盛りしている時間は彼の方が長いので、やりがいを語るには持ってこいだろう。

 

 頑張ってチノもといティッピーの言葉をメモし始めるマヤの一方で、メグはリゼに質問をしていた。

 

「リゼさんは何かありますか?」

 

「私バイトなんだけど・・・でも懐かしな。私もその宿題やった事あるんだ」

 

「お父さんにインタビューをしたの?」

 

「私は軍人になる気はない!しかしあの頃は冒険したものだ。まさか花屋にインタビューへ行くなんてなぁ」

 

 意外にもリゼは花屋にインタビューしたらしい。その光景を思い浮かべると微笑ましく感じる。

 また、当時も言ったであろう「父親の跡は継がない」というのはリゼ父にかなり刺さっているだろう。無論彼とて娘を軍人にしたい訳ではないだろうが、正面から跡を継がない宣言をされると心にくるものがあるのではないだろうか。

 

 ちなみにルクもメグに質問された。

 質問内容は変わらずだったが、将来的に店を開きたいルクはやりがいではなく夢を話した。

 

「俺はこの街かはわからないけど店を開きたいんだ。ラビットハウスみたいに癒しの場もいいけど、様々な産地の紅茶を売る事でその場所に興味を持って欲しい。特に若い人には外へ旅立つ起爆剤になってもらいたいんだ」

 

 ルクは外からこの街へ来た。前は夢を持って都会に訪れる人を多く見てきたが、木組みの街に来てからは遠くに出る人は少なく感じていた。

 

 ここも良い街だ。

 とはいえ若いうちに色んな所を訪れて様々な体験をすれば貴重な経験値を得ることができる。たとえこの街に戻ってくる時があったとしても、それは良い経験だろうが悪い経験だろうが、己を成長させてくれる事は間違いない。

 無論、別に海外とは言っていない。国内でも十分だ。

 

 成功すればそれを活かして木組みの街で活動すればいいし、悲しい事があれば生まれ育った土地で心を癒せばいい。

 

 しばらくインタビューは続き、それが終わるとマヤとメグは内容をまとめ始めた。

 

「この街は喫茶店が密集しているんだね」

 

「やっぱり競争が厳しいのかな?」

 

「私の知ってるだと甘兎庵とフルール・ド・ラパンがあるよ。この後行ってみようか!」

 

「「本当!?」」

 

「ルクお兄ちゃん、いいよね?」

 

「いいよ。休憩時間をずらせばいいし」

 

「ありがとう!行ってきます!」

 

 そう言ってココアは、まず最初にマヤとメグを連れてフルール・ド・ラパンへ向かう。

 3人が到着して店内に入ると、丁度シャロがバイトをしていた。

 

 シャロの衣装を見たマヤはしばらく唖然とした後、こう叫ぶ。

 

「ラビットハウス完敗じゃん!うさぎっぽさが負けてる!」

 

「確かに!」

 

「・・・はい?」

 

 いきなり勝利してしまったシャロは何が何だかという表情をする。

 席に案内する事も忘れ、さらにはマヤとメグにまとわりつかれてしまう。

 

「見てこのスカート丈!」

 

「なんか歌い出しそうだね〜」

 

「そんなサービスないわよ!」

 

 褒められて我に返ったシャロは、真っ赤になりながらもココア達を席に誘導する。

 中学生2人が注文を決めている最中、シャロはココアから事情を聞く。将来のために様々な所でインタビューをする課題で、わざわざ自分の所に来てくれたのは少しだけ嬉しかった。

 

 注文が決まるとキッチンへ戻るシャロ。

 5分ほどすると、ハーブティーをお盆にやって来る。

 

「服もいいけどね。私としてはハーブティーの方を気に入って欲しいわね」

 

「わーい・・・あ、やっぱり美味しいね」

 

「うーん。リラックスできる・・・・・・あれ、もしかしてこの隙にグサッと?」

 

「やらないわよ!」

 

 マヤの感想はともかく、2人はハーブティーを気に入ったようだ。中学生でも何かしらの悩みや疲れがあるのだろう。

 

「ん?青山さんだ」

 

「誰?」

 

「小説家さんだよ。メグちゃん、聞いてみたら?」

 

「うん。こんにちは〜」

 

「話は聞いていました。ココアさん、久しぶりです」

 

 青山さんはココアに手を振るとカップを持って近づいてきた。話の内容を聞いていたとの事なので、わざわざ説明する必要はないだろう。

 

 さっそくメグは青山さんに、なぜ小説家になったのか、やりがいは何かを聞く。

 

「私が小説家になったきっかけはある方に勧められて書いてみた小説が賞をとったからなんです」

 

 青山さんは当時の事を思い出すように、ハーブティーの反射で映る自分の顔に、昔の自分を重ねる。あの時はハーブティーではなくコーヒーだったが。

 

「やりがいは・・・小説家というものは取材も仕事です。なのでこうしてお店の店員さんを観察できるわけです」

 

「人間観察ってやつですね」

 

「ちょっと!覗かないでくださいよ!」

 

 取材、という建前で店員の制服姿をまじまじと見る事ができるのは良い事だ。

 特にフルール・ド・ラパンの制服はスカート丈が短いため絶対領域を拝む事ができる。シャロのように細い人もいれば、ムッチリとしたナイスバディの人もいる。

 

 ただ覗いているようにも見えるが、人によって制服の見方が変わるため、小説内での服の表現には役に立っている・・・にしては覗きすぎだが。

 

 次に向かったのは甘兎庵。

 よく考えれば2人がここに来るのは初めてなのだ。

 

「いらっしゃい。あら、ココアちゃんのお友達?」

 

 ココアはかくかくしかじかと千夜に事情を説明する。彼女も似たような課題をやった覚えがあるのか、懐かしそうにマヤとメグを見つめた。

 

「途中ココアから聞いたんだけど、昔ラビットハウスとは敵対してたの?」

 

「敵対・・・?私は良き友、良きライバルだと思っているわ。最近はチノちゃんのお父さんがジャズをやってたって聞いて私も何かやってみようと思うの」

 

 そう言って千夜は店の奥から大きい機械を持ってきた。ココア達には見覚えがなかったが、それはカラオケの機械だった。

 

「でも楽器は弾けないから歌います!」

 

「カラオケ和菓子屋!?」

 

「新しいモノを取り入れる事も大切なんですね」

 

 それからいくつか質問をした後、千夜はお茶と和菓子を持ってテーブルへ戻ってきた。

 

「ところで勉強とバイトの両立って大変じゃないですか?」

 

「そうだね。でもバイトも勉強だよ!」

 

「メリハリのある生活をしてればなんとかなるものよ」

 

 ココアと千夜は現在高校1年生。中学生とは異なり、学ぶ科目が増えただけでなく、難しさも上がっていた。

 そんな彼女達はなんとかなると言った。それならばそこまで不安がることは無い。担任の教師だって人生勉強ばかりだと言っていたのだから。

 

 マヤとメグはココアと千夜に尊敬の眼差しを向ける。歳は2つしか変わらないが、中学生から見る高校生というのは、大人の階段を先に行く憧れの対象なのだ。

 

「ココアちゃん。今度のテストの数学教えてくれない?」

 

「私もちょっと国語を・・・・・・」

 

 だが現実はこんなもの。毎回のテストに怯え、わからない事に頭を悩ませている。

 ココアと千夜の会話は2人には聞こえていない。その方が幸せだろう。

 

 その後、マヤとメグはこの2店舗以外にも取材をしたいと言い、ココアはそれを受け入れた。

 3人がラビットハウスに戻ったのは、予定より1時間ほど遅くなった時間であった。

 

「ただいま!」

 

「おうおかえり。どうだった?」

 

「うーん、ライバル店で働く・・・かも?」

 

「マヤさん!?どういう事ですか!」

 

 2人は色んな事を学んできたのだろう。視野が広くなるのはいい事だ。

 

「ルクお兄さん、お店をこの街に開いたら働いてみてもいいですか?」

 

「もちろん。ぜひとも来てくれ」

 

「メグさん!?」

 

 チノは2人と一緒にラビットハウスで働きたかったのだろう。しかし2人は別の店で働くかとしれないと言う。驚かない方がおかしい。

 

 マヤとメグはチノをからかうように話すが、3人の顔は笑っていた。

 チノは軽口を言う同い年の相手がいる事に、マヤとメグは友人が少なかったチノに素敵な兄や姉がいる事が嬉しかった。

 

 互いの事を想い、笑い合える3人は人生の中でも長い付き合いになる事は間違いないだろう。

 

 

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