紅茶と木組みのめぐり逢い   作:ムイト

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第30話 お酒は20歳になってから

 

 

 

「今日の夕飯どうしよっかー」

 

「ねー」

 

「あ、さんま安いですね」

 

 あと2日で冬休みが終わりを迎えようとした日、ルク達は夕飯の買物をしていた。新年のお祝いムードも落ち着いたためか、スーパーもいつも通りの営業に戻りつつあった。

 

 ラビットハウスの年末年始はもちろん休み。ルク達は伸び伸びの羽を伸ばして休んでいる。

 最近は色んな物を食べた。千夜から【お餅】を勧められたので食べてみたらかなりイケる事がわかり、調子に乗って食べまくった結果、2人の女性の悲鳴が洗面所から聞こえたのは黙っていた方がよさそうだ。

 

「新年祝いの余りものもなぁ・・・・・・あれ?千夜じゃないか」

 

「ホントだ。千夜ちゃ〜ん!」

 

 ココアが少し声を大きくして千夜を呼ぶと、直ぐに千夜と、彼女の一緒にいたシャロが気がついた。

 

「ココアちゃんも買い物?奇遇ね」

 

「というか皆揃ってるわね」

 

「夕飯の買い物なんだ。迷ってるところ」

 

「だったらカレーにしない?」

 

 千夜はカゴの中からカレーのルーを取り出す。最近巷で有名になってきた【とろけてまうんやでカレー】だった。作った当日から2日目のカレーのような味わいが出せるとちょっと話題になっている。

 

「「「さんせーい」」」

 

 香風家の満場一致で夕飯はシャロの家でカレーとなった。タカヒロに連絡すると快く送り出してくれた。

 材料をカゴの中にポンポン放り込むと、ルクは食材でいっぱいになったそれを持って会計へと向かった。

 

 ルクが会計を済ませている間、チノ達は袋詰めするスペースで彼を待つ。

 

「そうだ。リゼちゃんも呼ぼうよ」

 

「いいわね。シャロちゃん電話」

 

「な、なんで私が」

 

 と言いながら携帯を開きリゼに発信したシャロ。2コールでリゼに繋がり、彼女の声が聞こえた瞬間、シャロの身体はピクリと反応した。

 

『シャロ?どうしたんだ?』

 

「あ、あの!今日私の家でカレーを作るんですけど、よかったら来ませんか!ココア達も一緒です」

 

『へぇ〜、珍しいな・・・・・・わかった。直ぐに向かう』

 

「ありがとうございます!」

 

 なんとかリゼのOKはとれたみたいだ。

 

「じゃあシャロちゃんの家にレッツゴー!」

 

 食品の袋詰めが終わったため、ココアの号令で一行はシャロに自宅へ向かう事に。

 到着すると、玄関の前にはリゼが立っていた。保冷バッグを肩にかけ、ウサギ小屋で寝転がっているワイルドギースをじっと見ていた。

 

「リゼ先輩!」

 

「おっ、来たか」

 

「ん?何持ってんの、それ」

 

 ルクは保冷バッグを指した。

 

「これは肉だ。あとお菓子も少し入ってる」

 

 さすがはリゼ。手ぶらで来ない所は親の教育がいいのか、かなりしっかりしている。

 ルク達はシャロの家に入ると、さっそくカレーを作る準備を始めた。

 

 鍋等の調理器具は千夜が提供してくれた。危うく各家からかき集める必要があるところだった。

 肉を切り、野菜を切り、全てを炒めた後煮込む。ルー等の香辛料を投入すれば、後はさらに煮込むだけだ。

 

 米も同時進行で進めており、千夜の家で炊いている真っ最中。シャロの家では無いのは、単純にスペースと電気の問題だ。

 

 後は待つだけとなった。

 正直暇だ。今回の目的はカレーを食べる事なのだから。

 そこでルク達はリゼが持ってきたお菓子を少し食べることにした。

 

「リゼ、このお菓子ってチョコレートか?」

 

「そう。親父に渡されたんだ。食べようか」

 

 リゼはチョコレートの包装を解く。

 中からはいかにも高級そうなチョコレートが姿を現した。

 

「あら高いんじゃないコレ」

 

 箱の中のチョコレートを見て千夜はそう言う。

 

「値段は知らない。ルク、ほら」

 

 リゼは箱を持ち上げてルクの方へ近づける。最初に食べる権利を頂けるとは思わなかったが、よくよく考えてみれば毒味役として選ばれたにすぎないと気がついてしまった。

 

 ルクは手を伸ばして1個を口の中に放り込む。さすがリゼ父に贈られたチョコレート。予想通りの美味しさだ。

 ただ1つ問題になりそうなのが、若干アルコール・・・これはブランデーか・・・の香りがした事だ。ブランデーを使ったチョコレートはいくつか存在するが、ここまで露骨に香る物は珍しいのではないだろうか。

 

「皆、これ気をつけた方がいいよ。ブランデー入ってる」

 

 ルクはリゼ達に注意を促した。

 しかし、それは時すでに遅しと結論づけられた。なぜなら全員が口の中にチョコレートを運んだ後だったからだ。

 

「・・・・・・あ」

 

 ルクはしまったという表情を浮かべる。

 

「む、確かに洋酒感がある」

 

「日本酒と違った香りも珍しい〜」

 

「美味しいじゃない」

 

 等と余裕の表情を見せるのはリゼと千夜、そしてシャロだ。意外と大丈夫そう。

 

「えへへ。ルクお兄ちゃんが2人に見えるよぉ」

 

 ココアはダメみたいだ。

 少しだけ顔を赤くしてルクを見るココア。酔っ払ってるなとルクは思ったが、彼女の目に違和感を感じたので、ココアの前に座ってじぃーっと目を見つめる。

 

 しばらく見つめていると、ココアはふいと視線を逸らす。やはりそこまで酔ってはいなかったか。

 

「ココア。酒が飲めるようになったら飲みすぎはもちろん、酔っ払ったフリはダメだからね。どんな人間がいるかわからないんだから」

 

「はーい。バレたか」

 

「ん?ところでチノちゃんはどこにいったのかしら」

 

 シャロはチノの姿が見えない事に気が付く。

 全員で辺りを見回すがチノは発見できない。部屋の外にでも出たのかと考えたが、直後ルクの膝にポスンという感覚があった。

 

「チノ?」

 

「お兄ちゃんの膝枕です。しばらくこのままがいい」

 

「チノちゃんが甘えんぼに!!」

 

 ルクはチノの目を見ると、とろ〜んとした眼差しで自分を見つめる少女がいた。これは確実に酔っ払っている。

 なるほど。チノはこういう風に酔うのか。と納得してしまったルク。将来的に甘え上戸になる確率は十分あるだろう。

 

 ではなく、早急にチノを元に戻さなくてはならない。食べたのは1個だけだしブランデーの量も多くはない。少しすれば戻るだろうが、彼女のためにめ早く酔いを覚まさなくては。

 

「お兄ちゃん。頭を撫でてください」

 

「はいはい」

 

 無理だった。

 普段からツンとしているチノの違う一面を見たからか、つい甘やかしてしまう。

 

「ずるーい!チノちゃん私も!」

 

「ココアお姉ちゃんも大好きです」

 

「ガハッッッ!!」

 

 チノはルクの膝から離れてココアの所へ。なお、ココアは今のセリフでかなりのダメージを受けたらしい。もし漫画ならココアは鼻血によってできた血溜まりに沈んでいたかもしれない。

 

「お姉ちゃんは今の私の方が好きですか?」

 

「チノちゃん・・・・・・」

 

 チノの言葉にルクとココアは覚えがあった。

 普段から「素直になればいいのに」とか「敬語はいいんだよ」とか言っているが、チノの性格なのか治る事はなかった。

 

 ココアが望むのはまさに今のチノなのだろう。だがそれで良いのだろうか。素直になったとはいえ酒の力を借りたに過ぎないし、摂取自体も事故だ。確かに酔っ払った状態のチノは好きだ。しかし、それは元々の性格があったため・・・・・・。

 無理矢理人間を変えてしまうのは絶対に嫌だ。

 

「そんな事ない!私は元々のチノちゃんが大好きなんだから!」

 

 ガバッとチノを抱きしめたココア。

 感動的な場面だが、そこへ水を差すように黒い影が突進してきた。

 

「あ!ワイルドギース!その人参返しなさい!」

 

 人参を盗みシャロの追跡を逃れたワイルドギースだったが、逃げた先にチノの頭があった。

 

 ゴンッ

 

 といい音をたてて1人と1匹は接触し、少女はココアに倒れ込んだ。なお、ウサギはシャロに確保されてしまう。

 

「チノちゃん大丈夫!?」

 

「意外といい音したけど・・・・・・」

 

 ルクも心配になりチノに近づいた。

 

「・・・・・・あ」

 

 彼女に視線を合わせると、先程とは違いパッチリと目が開いている。元が良いのかかなり可愛い。

 いつもこんな表情ならいいのに、とルクは思ったが、そんな事よりチノが元に戻った事の方が大切だ。

 

「あのあのあのっ!よ、酔ってないです・・・よ」

 

「そうなの!?」

 

「演技です・・・から・・・・・・」

 

 必死の言い訳は非常に可愛らしい。ココアは騙せるようだが、他はそうないかない。

 

(無理だよそれ)

 

(無理がある)

 

(記憶が残るタイプだったのね)

 

(あれじゃココアしか騙せないわよ)

 

 満場一致でチノの言葉は却下された。

 今までで5本の指に入るくらい羞恥で真っ赤に顔を染めたチノ。そろそろ介入しないと気絶してしまいそうだ。

 

「ほら、そろそろ飯にするぞ。カレーもできたし」

 

 パンパンと手を叩き全員を注目させたルクはそう言う。

 これで空気が一変したのか、全員が食事の準備を始めた。

 

 米とカレーをよそい、ついでにほうれん草とモヤシのナムルを作り皿にのせた。

 

「じゃあいただきます!」

 

「「「いただきまーす」」」

 

 ルク達は夕食を食べ始めた。

 1日目のカレーなのでまだ尖った所もあるが、今のままでも美味しいので2日目のカレーはもっと美味しくなるだろう。

 

 しばらく食べ進めていると、リゼは目の前に座る2人の少女の様子がおかしい事に気がついた。

 

「あ、こら。人参残すな」

 

「お母さん。大目に見て?」

 

「お姉ちゃんの言う通りです?」

 

 ココアとチノは可愛く首を傾げる。本当の姉妹みたいだ。

 

「こんな時に姉妹らしくなるな!食べるの!」

 

 結局2人はリゼ教官の指導のもと、人参を食べさせられる事に。

 ヴァカめ。ルーを残しておけば人参の味を緩和できたものを。

 

 カレーは全員の皿からあっという間に無くなり、固まらないうちに直ぐ洗い始めた。

 残ったカレーは夕食会場を提供してくれたシャロに渡された。リゼ主導で作られ・・・創られたカレーは彼女にとっては家宝のように感じ、嬉し涙を浮かべてタッパーを受け取った。

 

 帰り道、ココアが前の方を歩いているのを見ながらチノがポツリと呟く。

 

「ルクさん。私が酔っ払った事は誰にも言わないでくださいね」

 

「わかったよ。可愛かったんだけどなぁ」

 

「わ、忘れてくださいっ」

 

 さすがに演技であると言い張るには無理があると思ったのか、チノは言い訳をしなかった。

 そう言えばチョコレートにもカフェインが入っていたはずだ。シャロは大丈夫だったのだろうか。

 

 

 

「いえーい!今夜は遊ぶわよっ!」

 

「ね、寝かせてシャロちゃん」

 

 

 

 撤退ヲ許サズ。

 現有戦力ニテ対処セヨ。

 

 

 

 

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