紅茶と木組みのめぐり逢い   作:ムイト

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第7話 バニー?いえ、うさ耳メイドです

 

 

 

「大変よー!」

 

 バーン!と店の扉を勢いよく開けて入ってきた千夜。

 体力のない彼女だが、走ってきたらしく息切れを起こしながらカウンターに近づいてくる。

 

「扉は壊さないでくれよ?」

 

「そんな事よりシャロちゃんが大変なの!」

 

((そんな事より!?))

 

 ルクとチノは、注意を受けたもののそれをあっさり流した千夜に驚いた。

 

「千夜ちゃん何があったの?というかシャロ・・・ちゃんだっけ、2人は知り合いだったんだね」

 

「あ、幼なじみらしいよ」

 

 ココアはコップに水を入れて千夜に手渡した。ルクもココアの情報に補足を入れながら、千夜の正面に座った。

 

「それで、どうしたの?」

 

「実はシャロちゃんがバイトしているお店のチラシを貰ったんだけど・・・・・・」

 

 千夜は和服からそのチラシとやらを取り出し、ルクに手渡した。

 チラシには

【〜心も体も癒します〜 フルール・ド・ラパン OPEN】

 と、書いている。

 

 さらにフリルがついたバニーのような格好の影絵が描かれており、このチラシで釣っているような気がした。

 

「きっといかがわしい所なんだわぁーっ」

 

「いやこれ広告で釣ってるけどただの喫茶店なんじゃ・・・・・・?」

 

 嘆く千夜にツッコミを入れるリゼ。

 

「あれ、ルクさんどうかしましたか?」

 

 チノはチラシを持ったままのルクに気がつく。よく見るとフルフルと震えている。そんなにショックだったのだろうか。

 

「ティ、ティーポットがある。まさか紅茶なのかっ・・・・・・」

 

「違う所でショックを受けてますね」

 

 どうやらルクはチラシに載るバニー(?)が持つティーポットに注目していたようだ。まぁ紅茶専門店を出したいルクにとっては、同じような店が増えるのには警戒するに値するのだ。

 

「大丈夫ですよ。私、コーヒーが好きですけど、ルクさんの淹れる紅茶も美味しいと思います」

 

「チ、チノ・・・・・・」

 

「そうだよ!私も紅茶パンとか好きだし!」

 

「ココア・・・・・・」

 

 チノとココアががフォローを入れる。

 チノはミルクティー、ココアは紅茶パンがお好きなようで、ストレートティーはあまり飲まない。しかし紅茶は紅茶。ルクは2人の言葉が嬉しかった。

 

「止めるにはどうしたらいいかしら?」

 

 ポツリと千夜が呟く。

 そうだった。今はシャロの問題だったと気づく一同。

 

「まずは潜入とかですかね」

 

「潜入だと!?よし、私に付いてこーい!」

 

「「おー!」」

 

 チノの言葉にリゼが過剰に反応する。あまり興味を示していない話題だったが、小さい頃から軍の影響を受けてきた彼女にとって、潜入は琴線に触れるワードであったのだ。

 

 一気に乗り気になったリゼはラビットハウスを飛び出し、フルール・ド・ラパンへ向かう。ココアと千夜もノリノリで走り出した。

 

「行っちゃったよ」

 

「私達も行きましょう」

 

「え、でも店は?」

 

「お父さんに任せます。ルクさんは先に行ってください」

 

 少し大人びてはいるがやはり中学生。こういった事が好きなのだろう。チノは小走りで2階へ上がっていった。

 

 ルクも仕方なく外へ出てフルール・ド・ラパンへ歩き出した。場所はチラシに書いてあったので覚えている。

 途中後ろから走ってきたチノと合流し、数分後には目的地にたどり着いた。店の前にはリゼ達が既に到着しており、なにやら怪しい動きをしている。

 

「2人とも遅いぞ」

 

「じゃあさっそく偵察しましょ」

 

 ルクとチノの合流を確認した千夜は店内に入ろうとする。

 しかし――

 

「待て。まずは窓からバレないように覗こう」

 

 リゼの提案で、ルク以外は窓際まで寄りそっと頭だけを覗かせた。

 

 とはいうものの、4人がそんな事をすれば目立つに決まっている。その証拠に店内にいるシャロは若干飛び上がったように驚き、トレーを持ったまま外へ出てきた。

 

「皆何してるのよーーー!」

 

「やっぱりバレましたね」

 

「こんにちはシャロちゃん。遊びに来たよ」

 

「あ、ちょっ」

 

 ココアはズンズン店の中に入っていく。シャロは焦って止めようとしたが、ルク達もぞろぞろと入っていくため、座席へ案内せざるを得なかった。

 

「ところでここは何の店なんですか?」

 

 チノがティッピーをテーブルの上に置くとシャロに尋ねる。

 

「ここはハーブティーの喫茶店よ。ハーブにいろんな効能があるの」

 

(よかった。ハーブティーだったか・・・・・・)

 

 ここがハーブティーの喫茶店だと言うことを知ったルクは内心ホッとする。というか心も体も癒すというフレーズはこういう意味だったのか。

 

 シャロはココアからチラシを見て来た事を聞くと、ため息をついた。

 

「誰よ。こんなので勘違いしたのは」

 

「「「じーーーーーっ」」」

 

「あ、あ!シャロちゃん、その制服素敵!」

 

(こいつかー!)

 

 ルク達の視線を受けた千夜は、その謎の圧力に耐えきれなくなり、慌ててシャロの制服を褒めた。しかし、それは勘違いした犯人である事を証明することとなってしまった。

 

 まぁ千夜は後で説教するとして・・・・・・と、シャロは何とか怒りを抑え、メニューをテーブルの上に置いた。

 開店して間もないはずだが、接客中に爆発しないで対応できる辺り、育ちの良さを感じる。まぁ単に千夜のあれこれに慣れているだけかもしれないが。

 

「うーん、やっぱりダンディ・ライオンかな」

 

「飲んだことあるんですか?」

 

「ライオンみたいに強くなれるの!」

 

「ハーブティーは強化ポーションじゃないよ」

 

 明らかにたんぽぽである事を理解していないココアにルクはつっこむ。

 

「しょうがないわね。じゃあ私が選んであげる」

 

 シャロは得意げな表情でメニュー表をめくる。少し考えた後、彼女が出した結論はこうだ。

 

 ルクとチノはカモミール。

 ココアはリンデンフラワー。

 千夜はローズマリー。

 リゼはラベンダー。

 

 なお、チノがティッピーの分も注文すると、用意してくれるらしく、シャロは1匹分のハーブティーも追加した。

 チノは難聴と老眼防止の物をリクエストしたが、そんなものはあるのだろうか。

 

 しばらく話していると、シャロは人数分のハーブティーを持ってきた。

 ルク達はハーブティーを飲むのは初めてだったため、恐る恐るカップに口をつける。

 

「美味しい」

 

 ルクがポツリと感想を呟く。

 

「本当ですか!?」

 

「ああ。結構いける」

 

「なんか落ち着いてきた気がするよ」

 

「ココアさん、それは早すぎです」

 

 この中では最年少のチノも、ココアに呆れながらも満足そうな表情でカップを持っていた。

 

「よぉーし!次行こう!」

 

 カップを掲げてビールをおかわりするかのように言うココア。少し早すぎやしないか。

 シャロも呆れながらココアが注文したハーブティーを取りに行く。

 

 そしてシャロは2杯目のハーブティーを持って来た。

 また、それと同時に彼女が焼いたというクッキーもテーブルの上に置かれた。ハーブをつかったクッキーだというが、ルクはお目にかかった事はなかった。

 

 食べてみると結構いけるお味。リゼにも好評だったらしく、シャロをべた褒めしていた。

 しかし、それ以外の感想を言った少女が1人・・・・・・。

 

「あれ、甘く・・・ない?ほら千夜ちゃん」

 

「んーそうかしら?」

 

 ココアは気のせいかと思ったが、2枚目のクッキーを半分に割り、近くにいた千夜に渡して一緒に食べた。だが両者の反応は全く異なった。

 

「ふっ。ギムネマ・シルベスターを飲んだわね。それを飲むと一時的に甘みを感じなくなるのよ!」

 

「「「な、なんだってー!!」」」

 

「あ、シャロちゃんがダイエットの時によく飲んでるやつね」

 

「こら言うなーっ!」

 

 なるほど。確かに甘味を感じなくなるのなら、いつものおやつの時間や夕食の後に飲めばいい。

 

(でもダイエットねぇ)

 

 ルクはシャロを上から下まで見る。サッと見た感じ太っているようには見えないし、しいて言うなら少し肉をつけた方がいいのではなかろうか。

 

 そんな事を考えていると、シャロがじろりとルクを睨む。

 

「ルクさん。何か失礼な事を考えてませんか?」

 

「い、いや?」

 

「女の子は大変なんですよ。望んでもいない所にお肉がつくんです。フフフフフ」

 

 死んだような目で虚空を見つめるシャロ。

 

「・・・・・・うん。なんかごめん」

 

「まったくルクさんは・・・ってココアさん!?」

 

 チノはルクに呆れていると、いつの間にかココアが机に突っ伏しているのに気がつく。よく見ると寝ているようだ。

 

 いつも騒がしいココアをあっさり寝かせてしまうとは。ハーブティー、なんて恐ろしい。

 

「あらこんな時間。結構長居しちゃったわ」

 

 店内の時計を見た千夜は驚いた様子。結構リラックスしていたらしい。

 

「それじゃ戻るか」

 

「はーい」

 

「シャロさん。また来ます」

 

「うん。いつでも来てね」

 

 そうして一行は店を出た。太陽は沈みかけており、もう少しで街灯も灯りそうだった。

 

 ラビットハウスに戻る途中、1件の書店の店頭に置いてあった雑誌がルクの目に入る。何が視界に入ったのか、最初はわからなかったが、雑誌を手に取り表紙を見てみるとそれが何なのかがわかった。

 

「・・・・・・瓶特集?これください」

 

 ルクはそのままレジに雑誌を持っていき、代金を払ってから小走りで店を出てリゼ達に追いついた。

 

「ルクさん?」

 

「ちょっと気になったから買った。ほら、紅茶を入れるビンが欲しくて」

 

 チノは不思議そうに雑誌見つめる。

 ルク達はラビットハウスで別れ、リゼも学校の制服に着替えて自宅へ帰っていった。

 片付けをしている最中、いつの間にかサボっていたココアは、あるページを見つけて呟く。

 

「あれ?このお店、私の実家の隣町にあった気が・・・・・・」

 

 そこはビン特集のページで、おすすめの店の1件が見開きで載っていた。

 

「そうなのか?」

 

「うん。パンの配達で見たんだと思う」

 

「ふぅん」

 

 ココアはパンの配達を姉と行っており、その時に見かけたという。

 もう少し話を聞こうとしたが、タイミング悪くチノが夕食の支度が出来たと呼びに来たため、この話は強制的に終わり、以降しばらく話題となる事はなかった。

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