けたたましく鳴り響く目覚ましが、私から安眠を奪い取る。まだ寝ていたい。昨日はつい魔が差して夜更かししてしまった。でも仕方ない。今度公開するシリーズ物映画の予習のため、数日に分けて1作品ずつ観ていくはずがシリーズ全部観てしまった。銃撃戦の中で光るナイフやクナイを魅せる格闘戦、リボルバーの早打ち、殺された仲間の復讐、テロリスト相手に大暴れ、俳優がかつて演じたキャラクターのオマージュ、解散したチームの再集結、爆発する要塞から危機一髪脱出! 流れるように全部観てしまいました。
「だからもう少し寝かせて……」
そんな私の願いも虚しく、目覚ましは一層勢いを増して鳴り響く。このままでは保護者であり叔母である咲笑さんが乗り込んできて、
「おっきろー!」
攻撃間違いなしです。横着してこたつでそのまま寝てしまった私はまた怒られてしまうでしょう。こたつちゃん没収だけはご勘弁を……。
「分かりました分かりました。起きますよ」
目覚ましを止めて、と。
こたつちゃんのぬくもりから離れるのは辛いですね……こたつちゃんも寂しがっていることでしょうし……よし。
「もう少しくらいなら……」
「まばゆちゃ~ん?」
「さ、咲笑さん……」
き、聞かれていたかもしれません……ま、拙い。
「何が拙いのかしら~?」
「いえ! なんでも! いやーいい朝ですねー!」
「まったく、こたつで寝ると風邪ひいちゃうってずっと言ってるわよね? あんまり聞かないようならこたつ、仕舞っちゃうわよ?」
「それだけはご勘弁を! こたつちゃんに入ってぬくぬくと映画を見るのが生き甲斐なんです!」
「なら、どうすればいいか分かるわね?」
「はーい」
ボチボチ着替えて学校へ行きますかね……行きたかないですけど。
──と、この前までの私なら言っていたことでしょう。
なぜなら、この前までは友達一人いない幽霊クラスメイトな陰キャぼっちだったから。
では今は違うのかと言われれば当然YESです。
陰キャなとこは依然変わりありませんが、友達はできました。それもあの成績優秀容姿端麗な巴マミさんです。
いやー、私もやればできるもんですねー。
たまたま咲笑さんが営んでいるケーキ屋さん『レコンパンス』でお手伝いしているときに、あの時はまだただのクラスメイトだったマミさんがお客さんとして来店して、あれよあれよとお喋りしていくうちに名前で呼び合う仲になってしまうとは。
我ながら友達作りの才能が恐ろしいですね。
「ま、そんなものはないのですが」
さっさと着替えて学校へ行きましょうかね。
通学路。
いつもと変わりありませんね。同中の方々がワイワイガヤガヤ、キャッキャウフフと登校しています。
あちらを見ればイチャイチャ、こちらを見ればペチャクチャ、そちらを見れば道の真ん中でパラソルテーブルを広げてお茶会を開いている女子中学生。綺麗な長い黒髪に赤いリボンが映えてお似合いですねー。いやー皆さん朝からお元気ですねー。私のような日陰者に朝はどうも──
「──ん? ん!?」
なんと綺麗な二度見でしょうか。今のを私が遠巻きで見ていたら思わず拍手してしまったことでしょう。
じゃなくて! 道のど真ん中で何やってるんですかあの人! こんなところでお茶会ですか!? 時と場所を考えてください! もう中学生なんですよ! 周りの方々も全スルーですし、誰でもいいから注意してあげてくださいよ!
と、心の中で一通り突っ込みを入れたところで、あんな明らかに危ないものには近付かないのが吉。絡まれでもしたら命がいくらあっても足りません。
お、あそこに見える優雅な金髪ロールはマミさんではないですか。突然後ろから声をかけてびっくりさせてあげましょう。
と、駆け出そうとしたときに聞こえたのは、レコンパンスでお手伝いしているときにたまに聞いてしまうティーカップやコーヒーカップが割れる音。思わず、
「うぎゃ!」
とダサい悲鳴を上げてしまいました。マミさんもカップの割れる音、或いは私の悲鳴……もとい鳴き声が聞こえたのか振り返って辺りを見回していました。
私も、ティーカップに心当たりのある方へ振り返ります。
しかしそこにはパラソルテーブルも、お茶会をしているはずの黒髪赤リボンの少女も、落ちて割れたはずのティーカップも、なにもありませんでした。
何だったんでしょうか……。
「あ、いた。まばゆさーん」
「あ、マミさん」
「どうしたの? 素っ頓狂な声出したりして」
「いえ、気のせい……だったんですかね?」
「そう? ならいいけど……さ、一緒に行きましょ」
「そうですね」
さて、今日も一日頑張りますか。といっても授業はほとんど寝ちゃいますが。
「…………」
数日後。
あの日の朝、通学路でお茶会を開いている彼女を見かけて以降、私はほぼ毎日……いえ、出掛ける度に彼女を見かけるようになりました。通学路では勿論、よく映画を借りに行くお店や映画館までの道中、果てはレコンパンスのすぐ近くにも。
うぅ、流石に怖すぎます。マミさんには相談しましたが、見た事は無いし見た覚えもない。ということでした。
あんなに目立っているのに見かけない、なんてことありますかね? 確かに彼女を見かけるのは大抵、私一人の時ですけど……。
あまりにも怪しいので、最近は逆に気になってきてるんですよね……何故か彼女を見かけると、つい視線を向けてしまうというかなんというか。彼女が気になって映画も碌に観れてませんし……。
「……あ」
またいました。あの日の朝以降、毎日見かける彼女が。
似合っていた赤リボンは、あの朝以降着けていないようです。どうしたのでしょうか……。
とと、また見入ってしまうところでしたね。いつもならスルー、真っ直ぐ帰るところですが、いい加減穏やかな気持ちで映画を観たいので、彼女に何をしているのか聞いてみるとしましょう。
大丈夫大丈夫、私はあの巴マミさんとだってちゃんとお喋りして友達になれたんです。気さくに挨拶することくらい余裕です。
「あ、あああ、あ、あの!」
前言撤回。無理無理無理無理! 自分から話しかけるなんて無理!
大体なんて言えばいいんですか!?
素敵なパラソルですね?
美味しそうなケーキですね?
貴女の事が気になって夜も眠れません? ナンパですか!
ど、どどどどど、どうしましょう! もう声かけちゃいましたし、何とか穏便に済ませる方法を!
「ごきげんよう」
「ご! ごきげんようございます!」
どわー! 頭が回りません! どうしましょう!
「立ち話もなんだし、座ったらどうかしら」
「は、はい、失礼します……」
お茶会に招待されてしまいました……少なくともそんなに怖い人ではないみたいですね。
そして私の前にはコーヒーとケーキが置いてあります。もしかして、歓迎されてるんですかね?
んー、コーヒーのいい匂い、落ち着きますね……。
それにしてもこのケーキ、見覚えが……これ咲笑さんが作ったやつじゃないですか。
まさかこの方もお客様だったとは……世間は狭いですね。
「貴女はこの世界が尊いと思う?」
「へ?」
急に何か言い始めましたよ。この世界が、尊いか? どういう意味でしょうか。
「欲望よりも秩序が大切だと思う?」
秩序と欲望。どちらが大切か、ですか。考えるまでもないですね。
「そりゃあもちろん欲望ですよ。規制の激しくなる昨今ですが、公序良俗に反する物からしか得られないものというのはありますからね。それに、暖かいお部屋でダラダラしながら映画を観る。冷たいコーラとポテチがあれば言うことはありません。もう最高ですね」
「──そうね、貴女はそういう人よね」
そうつぶやいた彼女の顔は、どこか寂しげで、悲しげで。今日初めて顔を合わせて話したはずなのに、私の胸を苦しめた。
「碌に片づけもしてない部屋でこたつに
「ギクッ! いいじゃないですか! 必要なものがすぐ取れる位置にあるんですから、今の状態が一番なんです! それにこたつに包まって映画見るの最高じゃ……ないですか……」
あれ、この人、なんでそんなことまで知って……?
「今日は楽しかったわ。また会いましょうね、まばゆ」
と、彼女が手をたたく。次の瞬間、まるで今まで二人で喋っていたのが嘘か幻だったかのようにすべてが消え去り、その場には私だけが残されていました。
レコンパンスのお手伝い。バイトではありません。
あくまで保護者で叔母である咲笑さんのお手伝いをしているだけです。
と言っても、仕事には全く身が入っていないのですが。
「はぁ……」
もう何回目かも分からないため息がこぼれてしまいます。
彼女が会話の途中で見せたあの悲しそうな顔が忘れられません。
まるで、私の心に絡みついて、解けなくなったリボンのようで。
まるで、彼女にあんな顔をさせた私が、私自身を許せないみたいで。
心のモヤモヤを解決する為に話しかけたのに、返ってモヤモヤが大きくなってしまいました。
「まーばーゆーちゃーん」
「……咲笑さん」
「元気ないみたいだけど、なにかあった?」
咲笑さんにまで心配かけてしまいましたね……。
明るく振舞って問題ないことをアピールするべきなのでしょうが、今はそんな元気も出ません。
この気持ち、一体なんなんでしょうか……。
「咲笑さん、少し相談事をしてもいいですか?」
「ええ、勿論よ!」
まぁすべてそのまま話してしまうと更に心配させてしまいそうなので、少しぼかしつつ……。
「さっき、少し変な人と話しまして……」
「やだ、不審者かしら? まばゆちゃん、大丈夫だった?」
「いえ、不審者とかではなく同じ学校の方で……」
「あらあら、新しいお友達かしら!」
「友達でもないです。そうだ、咲笑さんも見かけたことあるかもしれませんよ。道端でよくお茶会している人なんですけど」
「道端で? それは確かに変な人ね」
「あれ、咲笑さんも見たことないんですか? レコンパンスの近くでもよく見かけますけど」
「見たことないわね~。そんな子がいたらさすがに覚えてるだろうし」
マミさんも咲笑さんも、あんな目立つところでお茶会開いてる女子中学生を見たことない覚えてないなんて事ありますか!? まさか、私にしか見えないイマジナリーフレンド的な!?
……ないわー。
「まぁ、しょっちゅう見かけるので流石に気になりまして……声かけちゃったんです」
「まあ! まばゆちゃんが自分から……成長したのね……この前もマミちゃんと仲良くお話ししてたし、この調子でどんどんお友達を!」
「咲笑さ~ん……」
どんどん話が逸れていく……。なんとか軌道修正を。
「それで、話しかけた後なんですけど、初めて会話したはずなのにあまり緊張しなかったというか、妙にしっくりきたというか……例えるなら、長い時間を共有した人と過ごすような安定感というか、そんなものを感じまして……」
「まぁ……」
「変ですよね、今日初めて会話したのに、彼女が会話の中で見せたどこか悲しそうな顔が頭から離れないんです」
「小さい頃のお友達かしら? 成長していくうちに忘れちゃったとか」
「無くは無いかもしれませんけど……やっぱり違う気がします」
最近の私を知っている様子でしたし……。
「なら! その子にもう一度会って、もう一回お話しするしかないわね。いっそお友達になっちゃえばいいのよ!」
「ま、待ってください咲笑さん! 私コミュ障なんですよ!? それも筋金入りの! もう一回話しかけるとか友達になるなんてそんなこと無理です、できるわけ無いじゃないですか!」
「ファイト!」
『ファイト』
……いま、のは? どこかで誰かに、同じことを言われたような……でも、どこで、誰に?
「まばゆちゃん?」
「あ、いえ! 何でも!」
また心配かけちゃいましたね……。それにしても、さっき咲笑さんが言った言葉、どこで聞いたんでしょうか……咲笑さん、ですかね? それともお母さんでしょうか。……どちらも違う気がします。
「そう? もう時間もいい頃だし、上がってもいいわよ?」
「あぁ、もうそんな時間でしたか。ではお先に失礼します」
「えぇ! お疲れ様、まばゆちゃん。私はお店を閉めた後に仕込みがあるから」
「えぇ、わかってますよ。お疲れさまでした~」
少し早く上がれるとは……二ヒヒ、ラッキー。映画を観れる時間が増えましたよ!
最近は考え込んでしまうような内容にしがちだったのもよくありませんでした。今日は頭を空っぽにして観れる作品にしましょう。
さーて、何にしましょう──
「──あ」
お店の横の小路に例のあの方がいますね……座り込んで何を?
あれは、エイミー?
あぁ、エイミーと遊んでいるようですね。これで私の中のイマジナリーフレンド説がなくなりました。
「……食いつきが悪いわ。まばゆは何をあげていたのかしら」
私の、名前……。そういえば何故私の名前を知っているんでしょうか。
……ストーカー? イヤイヤ、そんなタイプには見えませんし私をストーカーする意味がわかりません。やはり咲笑さんの言う通り、覚えていないくらい小さい頃の友達でしょうか。
いやでも私がエイミーにチキン味のカリカリをあげているところを見たことがあるみたいですし……うーむ、謎が謎を呼ぶ……。
「エイミーはグルメさんなのでチキン味のカリカリしか食べないんですよ」
って! 考え事してるうちになんか話しかけちゃいましたよ! 私のバカ!
「──そう、道理でこのマグロ味のカリカリには食いつかない訳ね」
「で、ですです!」
「なら仕方ないわね、今日は帰ることにするわ。また会いましょうね、まばゆ」
「あ、また名前……」
私の名前……。そして、それを呟いたあなたのその顔……なぜそんなに悲しそうな顔をするんですか?
「──また?」
「え? あ、いえその……さ、さっき会った時もわた、私の名前を……」
「──そう。あなたはまた私の力の内側にいるのね。いえ、私のこの力があの子とあなたの影響を受けていた、という方が正しいのかしら?」
「な、なにを……」
「貴女は大切な人たちを絶望から救うために、その大切な人たちの中から、そして貴女の中からも貴女という存在を消して見せた。共に時間を歩んだ少女に全てを託してね。結果としてその少女は、貴女の献身と大切な友達の自己犠牲の果てに報われない運命から解放され──悪い魔女のいない未来を掴んでみせた」
「あ、あの──」
「でもね、あとを託されたその少女はそんな未来、認めたくなかったの。あの子が傷つき、犠牲になることで救われるくらいなら、そんな未来は欲しくない。だから私は女神を引き裂き、世の理を搔き乱したの。何よりも大切な人には幸せな未来を歩んでほしかったから」
「……貴女は、優しいんですね」
「──もし、貴女が望むなら。私を見つけてみせなさい、まばゆ」
その言葉を最後に、彼女は姿を消した。辺りに舞い散る黒い羽根を残して。
翌日。
とは言っても、そう簡単に見つけられるはずもないですよね。
ただ見つけるだけなら、いつものようにあそこでお茶会を開いているところに声をかければいいわけで。「見つけて」と言った上で私の目の付くところに現れるなら、ただ見つけるだけでは意味がないというわけです。
そもそも、見つけるってどういう意味なんですかね? 思えば彼女の名前も知りませんし。
──そう。何も知りません。覚えもないし、憶えてもいません。知らない、ハズなんです。
と、一人で考えていても仕方ありません。こんな時こそ友達を頼るとき! 先日とうとう咲笑さんとレコンパンスの連絡先以外に追加されたマミさんの番号を呼び出します。やはり持つべきものは頼れる友達! もう私はぼっちじゃない!
『ごめんなさい、まばゆさん。今日はちょっと外せない用事があるの……また今度でいいかしら?』
「終わりだ……私はぼっちに逆戻り……」
そういえばホームルームが終わったら急いで教室を後にしてましたね……。先日の抜き打ちテストで補習だった私はそのことをすっかり忘れてました。
あぁ、夕焼け空が眩しいですねぇ……。
「なぁさやか、すげぇ変なヤツ居る」
「こら杏子、仮にも先輩に向かって何てこと言ってんの!」
「だって空見て泣いてんだぞ、気になるじゃんか。それにたぶん同業──」
「そんな事より急がないとヤバいよ、ただでさえかなり待たせちゃってるんだから」
「もうそんなか、まったく誰かさんが補習に捕まったりするから」
「アンタも補習だったでしょうが!」
「アタシは逃げるつもりだったのに、道づれにしたのはさやかじゃんか~!」
「だから、逃げる方がおかしいんだってのぉ!」
全部キコエテマスヨー……。
にぎやかな方々でしたね。
さて、このままグダグダしてても仕方ありませんし、私も行動するしかないですかね。
ちょうどあそこでお茶していますし。
「それで、私に聞きに来たと」
「はい」
「バカなの?」
「ストレートな暴言! 仕方ないじゃないですか! 私友達なんて一人しかいませんし、その一人には断られちゃったんですから!」
例のあの方……なんていうと誤解を招く可能性が無きにしも非ずですが、ほかに呼称の使用がありませんからね。せめて名前くらい教えてほしいものですが……。
ともかく、また昨日の放課後のようにお茶会にお邪魔して、軽く経緯を話したところです。
「貴女に友達がいないことくらい知っているわ」
「い、言いますね……」
「普通なぞかけを出された人が出した人にヒントを聞きに来るかしら?」
お、思ったよりキツイ事を……ん?
「……それって普通のことでは?」
「…………」
「おやおやぁ?」
「風穴、あけられたい?」
「あはははは、ジョーダン、ジョーダンですって!」
よしよし、いい感じにお喋りできてますね。今日の愛生まばゆは絶好調ですよ。
「それで、何が聞きたいのかしら?」
「では、貴女の名──」
「却下よ」
「言いきってすらいないのに却下!?」
「それも含めて貴女が見つけなさい」
「うぅ……では貴女のことをどう呼べばいいんですか?」
「そうね……なら、『悪魔』とでも呼びなさい」
「……」
厨二病ってヤツですかねって声に出したら間違いなく風穴コースですね。
頭に風穴なんてとんでもない。
「では悪魔さん、貴女を見つける……とはどういう意味ですか? こうして会っているのは見つけたの内には入らないんですよね?」
「そうよ。貴女には少し難しかったかしらね。少しヒントをあげるわ。──私を見つけたければ、まずは貴女自身を知りなさい」
──へ? 私、自身を?
「今晩……いえ、これから巴マミを探しなさい。運が悪ければ見つかるわ」
「──マミさんを? でも、マミさんは用事があるようで……」
「今日も楽しかったわ。また会いましょうね、まばゆ」
──また消えて居なくなってしまいました。SFチックな不思議パワーってあるものなんですね。
しかし、私を知る……ですか。
「むむむ……難しい!」
私のことは私が一番理解してますとも! 映画好きで根暗で友達が一人しかいない陰キャですよ!
でもそういうことじゃないんですよね……。
それにこれから探せといっても、マミさんは用事があると言っていましたし、何処かにお出かけでしょうか?
マミさんの行きそうな場所……レコンパンス、ならわざわざ私に断りを入れる必要も感じませんし……あぁ、まだ友達になったばかりでマミさんのこと全然知らないんですね私……。
とりあえず街のショッピングモールへ向かってみましょう。闇雲に探すのは時間の無駄ですし、何より疲れますからね。
あそこなら大抵のお店がありますし、もしかしたらマミさんも見つかるかも。
見つかりませんでした。割とくまなく探しましたが、何処にも。
せっかくここまで来ましたしついでに映画でも借りようと思いましたが、レンタルショップは臨時休業。全く運が悪いですね……。
もう辺りも暗くなってきましたし、咲笑さんに怒られる前に帰りましょう……。
「──あ
──と、俯き気味で歩いていたためか、誰かにぶつかってしまいました。直ぐに謝ってこの場を離れましょう。
「す、すみません、よく見ていなくて……で、でで……」
謝罪した先に居たのは、人のようで、そうでないような、なにか。
顔の部分には何となく靄がかかっていて、色白を通り越してもはや真っ白な巨大な人型の化け物。
それが、まるで私を取り囲むように立っていて──
「でぅわああああ!!」
に、逃げなきゃ逃げなきゃ! で、でもどこに──
「はぁああ!」
一閃。私の周りにいた化け物は、まるで蛇のように自在に動く刃の一振りと、空から降ってきた剣の雨によって切り裂かれ、消えてしまいました。
「──っと。結界を張るって話だったけど、見逃し?」
「かもね。マミさんも完璧超人ってわけじゃないし、他にもいるかも」
「ったくどれだけぬるま湯に浸かってたんだか。にしてもアンタも運が悪いね」
あ、この方々、先程の……大分ファンシーでファンタジーな格好というか、コスプレ? でもさっきの化け物から助けていただいたみたいですし……。
「大丈夫でしたか? えーっと、先輩でいいんですよね?」
「は、はい……助けて頂きありがとうございます……。あの、先ほどはどうもすみませんでした……変なものをお見せしてしまって……」
「あー、さっきのやっぱ聞こえてましたかぁ……ほら杏子、謝りなさい」
「あ? いやあれは道のド真ん中で空見て泣いてたコイツの方が変だっただろ! 誰でもああ言うって!」
「普通は思っても言わないの。ほら」
「貴女の言葉が一番刺さりますけどね……」
それからその場を急ぎ目に離れつつ、自己紹介を終えました。
美樹さやかさんと佐倉杏子さん。なんと本物の魔法少女なんだとか。
それに加え、私の友達であるマミさんも魔法少女で、三人でトリオを組んでさっきの化け物──魔獣を倒しているんだとか。
マミさんを探していた旨を伝えたところ、マミさんの元まで案内してくれるそうです。
なんでも前衛二人で守るより広範囲を攻撃できるマミさんの近くの方が安全とか何とか。
「いやー……にしても、運が良かったですねぇ」
「良かった? 悪かったじゃなくて?」
そう返してきたのは佐倉さん。喋り方が乱暴で多少怖い時はありますが、根は優しい方のようです。美樹さんにそう言われて照れてましたし。
「は、はい。こうして日常の裏側では魔獣が蔓延っていて、知らない内に誰かが餌食になっている。美樹さんと佐倉さんがいなければ、どんくさい私なんてすぐやられていたでしょうし……」
「それ、アタシも少し気になっているところがあんだけどさ」
そう言って佐倉さんは私の左手首を掴んで顔の前まで持っていくと、マジマジと私の左手を見始めました。
「コレ、ソウルジェムだよね? やっぱりアンタも魔法少女だったんだ」
──は?
私が、何? 魔法少女?
「えぇえええ!?」
佐倉さんが私の左手に少し力を込めると、中指に着けている──いつから身に付けていたか、そもそも買った覚えすらないのに、身に馴染みすぎて存在を忘れていた──指輪が紫色に光を放ち、卵形のマジックアイテムのようなものに変化しました。
咲笑さん、いつの間にか私もファンシーでファンタジーな存在になっていたみたいです。
マミさん宅。初めてお邪魔しますが、とても居心地が良いですね。寝転んで雑誌を読みたい気分になってきます。
あの後、マミさんと合流する頃には魔獣も姿を消していました。よく分かりませんが、なんでもマミさんが頑張りすぎてしまったとか。理由は教えてくれませんが……。
ともかく、今日のうちにこれ以上出現することもなさそうとの事で、色々事情を聞くためにマミさんのお家にお邪魔した次第です。
「でも驚いたわ。まさかまばゆさんも魔法少女だったなんて」
「私も今日初めて知りました……」
「さやかやアタシと連むようになって緩んでんじゃないの?」
「うっ……だってまばゆさんの魔力、小さいんだもの……」
「背だけでなく魔力までちんちくりんで悪かったですね……」
言われ慣れてますよーだ。
それから、魔法少女の詳細と、魔獣の詳細を教えてもらいました。
人が無意識に生み出す負の感情、呪いである魔獣と、希望を振りまく魔法少女の存在。
まさかそんなキラキラした魔法少女に私みたいなのがなっていた、なんて信じられませんよね。でも実際、変身できてしまった訳ですから。信じざるを得ません。
というか、そもそも魔法少女になるにはキュゥべえなるものと契約しないといけないと聞いたんですけど。
願いを一つ叶えてもらう代わりに、キュゥべえと契約して魔獣と戦う使命を背負う事。コレが魔法少女のシステムだとの話でしたが……。
いつ契約したんですか、私! 全く身に覚えがありません!
──まぁ、契約した理由は何となく察せますが。
恐らく、お母さん関係でしょう。こちらは以前色々あって気持ちの整理は着きましたが、不可解な点も多かったですからね。理外の力──魔法少女の契約によって願いが叶ったからと考えると腑に落ちる点もありますし。
問題は何故私が契約したことを忘れているか、です。
「うう、なんか損した気分……」
「まあまあ先輩、マミさん特性の紅茶でも飲んでリラックスしてくださいよ」
美樹さんの優しさが染みますね……。聞いたところ癒しの願いで契約したため治癒能力が頭一つ抜けているのだとか。まさに癒しの天使という訳ですか。
「魔法少女に関する事はこんな感じかしら。キュゥべえがいればもっと細かく説明できたのだけど……最近見かけないのよね」
「どこ行ったんですかね?」
「さぁ……元々神出鬼没みたいなところはあったから、気にしなくてもいいんじゃないかしら」
「ですね」
「だな」
魔法少女のマスコット枠にしては扱いが雑ですね。
「今度はまばゆさんの番ね。私に用があるって聞いたけど……」
「ああえっと、用事というか、ただ探していただけというか……」
「用もなく?」
「探せと言われまして……」
「誰に?」
「同じ見滝原中の方なんですけど、本名は教えてくれない変な方で……悪魔、と名乗っていました」
「ブフッ」
「どうしたの美樹さん? ちょっと待ってて、拭くもの取ってくるから」
何故か美樹さんが飲んでいた紅茶を吹き出しました。
そんな面白い要素ありましたかね?
「ゴホッ、気管に、入った」
「ったくなにやってんだよさやか」
「ごめんごめん、先輩もかかってませんか?」
「あぁいえ、こっちは全然」
なんだそういうことでしたか。たまにありますよね。
私も部屋で映画を見ている時にコーラが変なとこに入って盛大に咽せる事ありますし。
マミさんも戻ってきましたね。お手拭きすらお洒落とは、流石です。
「それでまばゆさん、その悪魔……って人に私を探してって言われたの?」
「はい」
「なんのために?」
「あー、えっと、私自身を知るため? ……あ、ああ!」
「ま、まばゆさん!?」
そういうことですか! マミさんを探した事で魔獣に遭遇して、そして私が魔法少女だったという事を知った! 自分を知るとはこれの事でしたか!
あれ、だとするとなぜ悪魔さんは私が魔法少女だったことを知っていたんでしょうか?
なにか他にも忘れている事がある?
そして、悪魔さんはそれを知っている?
「大丈夫、まばゆさん?」
「えぇ、すみません、急に」
「そう? ならいいんだけど……それで、まばゆさんはまばゆさん自身を知るために、私を探していたの?」
「はい、たった今謎が一つ解けた所です。ありがとうございました、マミさん」
「特に何もしてないけど……」
謎が一つ減り一つ増えましたが、それでも一歩前進です。
「まー感謝されてんだから貰っとけばいーじゃん」
「そういうものかしら? えっと、どういたしまして?」
「なんか解決したみたいなんで、先輩の歓迎会も兼ねて魔法少女同士の懇親会でも──」
美樹さんの言葉を遮るように私と美樹さんの携帯が鳴りました。
私の方は咲笑さんからのメールです。
『まばゆちゃん、まだ帰ってないみたいだけどどこに居るの?』
……そういえば遅くなることも何をするかも連絡していませんでした。
美樹さんを見れば携帯から目を背けています。恐らくは私と似たような内容で、且つお叱りの色が強いメールだったのでしょう。
「……今日はお開きで、先輩の歓迎会は後日でもよろしいでしょうか」
「そうね、時間も遅いし、そうしましょう」
「私も今日は帰った方が良さそうです」
「さやかが怒られるってことは、アタシもおばさんに怒られるってことか?」
「……多分」
「……まじかぁ」
どんよりする二人と共に、マミさん宅を後にしました。
私のために歓迎会まで開いてくれるとは……にひ、にひひひひ……。
「まばゆ先輩」
「──はい?」
「あの悪魔とは、あまり関わらない方がいいですよ」
「え?」
「あいつはきっと、魔法少女の敵になる……忠告はしましたから、それじゃ!」
……行ってしまいました。さっきの美樹さんの目、すごく暗かった。まるで何処か、何かを諦めているみたいに……。
それに、美樹さんは悪魔さんを知っている様子。魔法少女の、敵? でも、マミさんと佐倉さんは悪魔さんのことを知らないみたいでしたし、何故美樹さんだけが……。
今度悪魔さんに会った時にその辺も聞いてみることにしましょう。もしかしたら帰り道に居るかもしれませんしね。
翌日。お昼休み。
結局、昨日の帰り道で悪魔さんに会うことはなく、今朝の登校時に通学路で見かけることもありませんでした。
まぁ、そのうち出会うでしょう。悪魔さん依存になってしまうのがネックですが、各教室を探してまわるのも面倒ですし。というかそもそも学校に来てるのでしょうか?
「うぎゃ!」
「きゃ!」
考え事をしながら歩いていたら、また誰かにぶつかってしまいました。今度は相手の声も聞こえたのでうっかり魔獣にぶつかったなんてこともなさそうです。直ぐに謝ってこの場を離れましょう。
「す、すみません、ちょっと考え事を──あ」
相手を見て真っ先に目に止まったのは、髪を結んでいる赤いリボン。
「い、いえ、私もちゃんと前を見てませんでしたし、すみません」
あ、あー! この赤リボン、悪魔さんが以前一度だけ着けてたものじゃないですか!?
「あ! ああぁあ、あの!」
「ひゃい!」
「とと、とってもお似合いなリボンですね!」
「へ? あ、ありがとう、ございます? これ、転校してきた日にクラスの子に貰ったもので……」
ほぼ確定です。まさか悪魔さんのヒントがこんなところに転がっているとは……。
「でも、あれからほむらちゃんとあまり話せてなくて……ってすみません、ぶつかっちゃったのにこんなことまで……も、もう行きますね」
「い、いえいえお気になさらず。それでは……」
彼女は足早にこの場を去っていきました。
しかも、悪魔さんと思しき方の名前まで知ることができるとは……。
「ほむら、さん……」
「なにかしら」
「ぎゃああ!」
いつの間にか後ろに悪魔さんが立っていました。
「い、いきなり驚かさないでくださいよ悪魔さん!」
「あら、もう名前では呼んでくれないの? 結局前も一度しか呼んでくれなかったのだし、名前で呼んでくれてもいいのだけど」
「え! ほ、ほ、ほほほ……ほあくまさん!」
「あら、残念ね」
いきなり名前呼びは難易度が高すぎますよ……もう少し段階を踏んでですね……。
「まぁいいわ。自分のことも知れたようだし」
「あ、そのことなんですけど……」
「えぇ、教えておげるわ。付いてきなさい」
そう言われて私は悪魔さんに付いていき、二人で屋上に来ました。
いつもなら他の生徒がいる昼休みの屋上ですが、今日は私と悪魔さんの二人だけのようです。
「あの、悪魔さ──」
先を歩いていた悪魔さんが振り返る。
妖しく笑う悪魔さんが手を叩く。
景色が一変する。まるで宇宙のような、何もない空間に──
「慌てる必要はないわ。面倒なのに嗅ぎ回られると嫌だから結界で区切っただけよ」
「は、はい──はいぃ!?」
悪魔さんが悪魔っぽい恰好してます! 布面積が際どい悪魔コスプレです!
「貴女も変身しなさい」
あぁ、悪魔さんも魔法少女だったという訳ですね。自らの魔法少女衣装を悪魔に見立てて名乗っていた、ということですか。
「なるほど……」
「まばゆ? 何をしているの?」
「あ、すみません」
言われた通り、魔法少女へ変身します。もう慣れた物ですね。
「私の目をよく見なさい」
「目、ですか?」
「そうよ」
「な、なぜ……」
「見ればわかるわ」
目……見つめ合うのってなんだか照れてしまいますね。
「先に行っておくわ。これから貴女の力が貴女に視せるのは、貴女の母親が視ていたのと同じような『未来』じゃない。『私の歩んだ道と犯した罪』、そして貴女が切り取った『貴女の記憶』よ」
なんでお母さんのことを──
そう聞く前に、私の中にフィルムが差し込まれた。
映画が始まる────
溶けていく。溶けて、溶けて、私の中に混ざってゆく。
違和感も、既視感も、疑問も、全てが私に溶けていく。
絶望の未来を見て、希望を目にして、切り取って、忘れて、繰り返して、また絶望して、また希望を持って、最後の朝に全てを託して、また切り取った。それは咲笑さんの言う、優しい忘却だったのか、あるいは違うものなのか。今の私には判断できない。
一人の少女の
大切な人を絶望の因果から救うために同じ時間を繰り返し、戦い、繰り返し、傷付き、繰り返し、絶望に立ち向かった少女の
その少女の傍らには、同じ時間を共に繰り返す相棒の少女が居た。
同じ時を過ごすうちに、相棒の少女は大切な人のために頑張る少女に憧れ、惹かれていく。
それも当然なのでしょう。時を繰り返す少女の相棒とは、私だったんですから。
「気分はどうかしら、まばゆ」
「……最高に最悪です」
「そう。それは良かったわ」
地のない空間に横たわる私に、膝枕をして私の顔を覗き込む悪魔さん。もとい──
「──
「嫌よ。また逃がしちゃうかもしれないでしょう」
「ここ、貴女の結界の中ですよね。逃げられるハズないじゃないですか」
「それでも」
「……」
そんなことを言う彼女を振り払うことは、私にはできませんでした。
私が全てを暁美さんに託した後。鹿目まどかさんは魔法少女となり、全ての魔法少女を絶望の未来から救済した。それにはもちろん、私も含まれていて。
鹿目さんは円環の理という、魔法少女が魔女になる瞬間にその魂を救済する概念と成り果て、この世界から存在そのものが消えたはずでした。
なら、なぜ先ほど私がぶつかってしまった人物──鹿目さんがこの世界に存在しているのか。
「なぜ、あんなことをしたんですか」
「この前言ったはずよ。大切な人には──まどかには人としての幸せな人生を歩んで欲しい。魔法少女なんかのために犠牲になって欲しくない」
事の発端は、悪魔さん──暁美ほむらさんの限界に目をつけたキュゥべえの実験です。
魔女が存在できない世界でもいそしくエントロピーがどうこう言いながらエネルギー回収をしていたようですが、呪いを溜め込んだソウルジェムが何物にも干渉できない場所で限界に達した時、何が起きるのかを観測するために暁美さんのソウルジェムを取り上げ、その為の装置を作り実験を開始。
結果として、暁美さんはソウルジェムの中で魔女となり、彼女の記憶の中の親しい人々を、自ら生み出した手下を使って結界の中へ誘い込んだ。
それに紛れ込んで暁美さんの結界の中へ入ってきたのが、円環の理とその鞄持ち。鹿目さん、美樹さん、そしてなぎさちゃん。
それぞれが暁美さんと親しい人であるという条件はクリアしていますしね。
結界内での出来事は割愛します。映像化されてますからね。
問題は事件解決後。つまり、ソウルジェムが限界だった暁美さんが円環の理に導かれる寸前で起こりました。
暁美さんは導かれる瞬間、円環の理を捕まえて、人間だった頃の鹿目さんの情報と力の一部を円環の理から引き裂き、世界を、宇宙を改変してしまいました。
そして、あの日の──初めて悪魔さんを見た朝に繋がる訳です。
「駄目じゃないですか。鹿目さんを裏切って……一人になっちゃうなんて」
「いいの。私がどうなろうが、まどかが生きてさえいてくれれば、それで」
「駄目です」
「いいの」
「駄目です」
「埒が明かないわね」
「譲りません。暁美さんは鹿目さんの傍にいるべきです」
記憶を切り取る前の私と、同じような事を言う。
前の私が、その裏に隠していた思いは伝えられない。
「貴女は何か勘違いしていたようだけど、私のゴールは『まどかを魔法少女にしない』ことが大前提なの。『全ての魔法少女の救済』は関係ない」
「……えぇ、知っています」
きっと知っていて、知らないフリをしたんです。私が絶望から救われたかったから。
「人間のまどかと円環の理を切り離すことはできたけれど、彼女はまだ不安定。何かのキッカケがあれば、まどかは円環の理へと戻ってしまう」
「……そういうことですか」
「そういうことよ。また協力してもらうわよ、まばゆ」
貴女のお願いを、私が断れる訳ないじゃないですか。
私が返事をするよりも早く、暁美さんの結界が崩壊し、学校の屋上へ戻ってくる。
私たちの格好も制服に戻り、暁美さん越しに空を見ればもう夕日が沈みかけています。
午後の授業はまるまるサボってしまいましたね。何も伝えていないので、マミさんは特に心配しているかもしれません。
「見つからないように用意した結界だったけど、上手く作用したようね」
「見つかる? 誰にですか?」
「巴マミ」
「あー……」
そういえば、魔法少女の皆さんとも敵対しているんでしたっけ。いえ、美樹さんの言い方的には、まだ敵じゃないけどそのうち敵になる、みたいな?
「なんでマミさん名指しなんですか」
「佐倉杏子は自分の利益にならないことに対しては積極的に動かない。美樹さやかは現状、まどかが関係しない限り私にはあまり近寄らない。校内で何者かが結界を作れば真っ先に駆けつけるのは巴マミ、貴女と親しいのも巴マミ。一番面倒なのが巴マミなのよ」
「なんという言い草……」
でも、暁美さんの記憶を見た限り苦手意識を持つのも仕方ないと言いますか、なんというか、複雑ですね……。
「あの、マミさんと私、友達なんですけど……」
「そこは問題ないわ。むしろ好都合よ。貴女が巴マミの近くにいれば、まどかとの接触を回避しやすいはず」
なるほど。美樹さんの時と同じ流れですね。美樹さんの時と違ってマミさんとはもう友達なので友達作りで苦戦する必要も無い訳ですし、やはり私は成長しています。
「細かな作戦会議は今度にしましょう。私の家はわかるわね」
「はい」
ようやく、暁美さんの手が私の頭から離れました。
しかし……いざ起き上がって良くなると、暁美さんの膝枕から離れたくなくなってしまいますね。もう二度と味わえないでしょうし。
……寝返りでも打ってみましょうか。
「やったら風穴よ」
「ジョーダンですよ、ジョーダン」
あはははは。
迅速にその場から起き上がり、服をはたいて汚れを落として、二人で屋上を後にし、廊下を渡り、校門を出て、別れ道まで一緒に歩く。
その間、特に会話はなかったけれど、何処か心地好くて、あの朝以降感じていた胸のモヤモヤが取れて、スッキリとした気分で、私は暁美さんの隣を歩く。
──前の私は。本当はずっとこうしていたかった。
でも、それはありえない。貴女の隣は私の席じゃないから。
いつの日か、こうして別れ道に当たるのでしょう。
「それじゃあ暁美さん。また、明日」
「ええ。また会いましょう、まばゆ」
あと少し……なんて、言えません。
それでもせめて、別れ道までは貴女の傍に。
「今夜からは、ゆっくりと眠れそうね」
レコンパンスのお手伝いを終え、自室へ帰ってきました。
「ただいま帰りましたー」
「おかえりなさい、まばゆ」
と言ってもパジャマの暁美さん以外は誰も居ないですけどね。咲笑さんは明日の仕込みでまだレコンパンス──
「でぇえ!?」
「何を驚いているのかしら」
「あ、暁美さん!なぜここに!?」
「見れば分かるでしょうゆっくり眠るために来たの」
「「「「Gott ist tot」」」」
「どちら様!?」
「気にしなくていいわ。私の子供たちよ」
「「「「Gott ist tot」」」」
「子供!?」
「さあ早く未来を視て頂戴。今日まどかは円環の理への覚醒未遂をするのかしら?」
「「「「Gott ist tot」」」」
「ぎゃ、ぎゃああ!」
「「Gott ist tot」」
The End
以下、後書きの後書きです。
ここまで読んでいただきましてありがとうございます。
皆さんscene0は何回見ましたか。私は2周です。
愛生まばゆと暁美ほむらの関係性というか、互いへの矢印の向け方というか、大きさというか、とても好きです。ほむばゆはいくらあってもいいですからね。皆様もどんどん、まばほむばゆを育ててください。
scene0発表時は「ほーん。まぁ情報くらいは押さえとくか。近々映画もやるし」くらいな期待度だったんですが、まぁどハマりしましたよね。まばゆちゃんすこすぎる。
scene0配信決定の生配信から見ていたんですが、なんかその時点で既に好きになりかけてましたよね。マジカルハエたたき。
このssの冒頭の映画ですが、私がたまたま直近で観た映画がエク○ペンダブルズだったと言うだけですので本編には全く関係しません。皆さんも直近で観た映画をまばゆちゃんに語らせましょう。
このssはこれでおしまいですが、これ以降はサザエさんや銀魂のように単発一話を無限に生成できそうなので、まばほむが足りなくなり、ネタが溜まって爆発したらまたなんか書くかもしれません。
そうならないよう皆さんもscene0を見てほむばゆ、いえマミばゆ、いやいや、scene0で二次創作を作ってください。そうすればあなたは幸せになれるし私も幸せになれる。win-winの関係ですね。おや、作らないのですか。作りましょうよ、作れ。人質がどうなってもいいのか。