『共に流れた時の先で』からの続き物となっております。
ほむばゆだけがまばゆの専売特許じゃねぇぜ!
騙して悪いが読んでもらおう。
ほむばゆマミ百合修羅場はいくらあってもいいのになぜか数が少ないので自家発電ついでにネットの海へ放流することを決めました。
対戦よろしくお願いします。
なぜか百合修羅場はそんなにありません。なぜなのか。
けたたましく鳴り響く目覚ましが、私から安眠を奪い取る。
まだ眠っていたい。暖かい布団から出たくない。
そもそも、今日は学校も休みだというのになぜこの目覚ましは鳴っているんですか……。
昨日の私は何を思って目覚ましなんか──
「あぁあああ!」
今日はマミさんたちとお出かけの日でした! じ、時間は……まだ慌てるような時間じゃありませんね。
今日は以前中断となってしまった私の歓迎会を開いて頂けるとのことで、皆さんと一緒に買い出しへ、という話になっています。
買い出しの後、またマミさんのお家にお邪魔してお茶して、という流れです。
にひひ、ありがたいですね。
暁美さんも一緒に、と誘ってみようと思ったんですが、美樹さんは暁美さんをよく思ってないようですし、暁美さんはマミさんが苦手のようですし……ということで今回はお声がけできませんでした。
……後に敵対するかもしれなくても、やっぱり仲良くしてほしいと思ってしまいますね。
美樹さんとは折が合わないことが殆どでしたが、暁美さんが作った偽物の見滝原では仲良くやれていたようですし……。
マミさんへの苦手意識は、何とか私が間に立って……って、そんな器用なら苦労しませんでしたか……着替えて待ち合わせ場所へ向かいましょう。
やって来ました、いつものショッピングモールです。大抵のものはここで揃いますし、安牌ですね。
さて、皆さんは──お揃いのようですね。集合時間丁度のはずですが、お待たせしてしまいましたか。
「お待たせしましたー」
「あ、まばゆセンパイ!」
「おせーぞ」
「大丈夫よ、今来たところだから」
もう既に矛盾が……佐倉さんを見る限りそれなりに待っていたようです。
「す、すみません……」
「いいんですよ、主役は遅れてくるものなんですし!」
「しゅ、主役!?」
「まばゆさんの歓迎会だもの。まばゆさんが主役よ」
「あたしとしては美味いモン食えればなんでもいいけどな」
「み、皆さん……」
目頭が熱くなってきました。
マミさんはともかく、まだ出会って数日、数回しか会ったことの無い私にこんなに良くしてくれるなんて……!
「それに、私達のチーム名だって考えてきたのよ! ピュエラ・マギ──」
「あーマミ、それは後でな。さっさと買い出し済ませちまおう」
「そうですよマミさん! 折角ですし、それはトリに取っておきましょう!」
「そう? じゃあ早速買い出しに行きましょうか」
「待ってました!」
「……ふう、危ねぇ」
…………。
まぁ、マミさんにはそういう所もありますからね。
マミさんのテンションに乗っかれるといいんですけど、佐倉さんや暁美さんのような方とは合わない部分もありますし。
偽物の見滝原では仲良さそうにチーム組んでたんですけどね……時の流れとは残酷なものです。ブラックジョーク……。
今は皆さんとの買い物を楽しむことにしましょう。
佐倉さんが試食コーナーに突撃していき、それを阻止する美樹さん。まるでそう動くのが分かっていたかのような綺麗な動き……精度は未来視に勝るとも劣らない……流石は美樹さん。
あらかた買い物も終わりましたね。思ったよりも荷物になってしまいました。こんな時に暁美さんの盾収納があれば……アレってどういう原理で収納していたんですかね? 入口よりも大きなものも出し入れ可能のようでしたし……まぁ、もう確認できませんが。
「あとは紅茶の補充と……この前、レコンパンスの店長さんから聞いた、コーヒーのブレンドを買ってみようかと思ってるんだけど……」
「あ、それならコーヒー豆の方は私が買ってきますよ」
「じゃあお願いしてもいいかしら、まばゆさん」
「任せてください」
咲笑さんが最近発見したというお店のオススメブレンドは私も気になっていましたし。
あの咲笑さんを唸らせる程とは、どれほどのものなのでしょうか。
「あ、まばゆセンパイ。あたしもついて行っていいですか?」
おや、美樹さんが仲間になりたそうにこちらを見ていますね。
暁美さんとの関係を考えると、少し難しいような気もしますが、ここで断るのも空気が悪くなってしまいますからね。
それに、今度はきっと上手くやれるはずです。
「えぇ、構いませんよ」
「やった、この前まばゆセンパイのとこのマキアート飲んでから、ちょっと興味あって!」
「えぇえぇ、咲笑さんのカフェマキアートは絶品にして芸術ですからね」
美樹さん、以前からたまにお店に来てくれていたみたいですからね。にひひ、私も鼻が高いというものです。
マミさんの方には佐倉さんがついて行くみたいですね。
「じゃあ、それぞれ買い終わったら合流しましょう」
「分かりました。それでは」
マミさん達と一旦別れて、美樹さんとコーヒー屋さんに入るとしましょう。
「おお、いい香りですね」
「そっすね、こう……独特の香り、って言うの?」
「缶コーヒーやインスタントものとは別格ですよね」
店舗内を色々物色……種類も豊富ですね。
咲笑さんの言っていたオススメブレンドは……どこでしょう、店員さんに聞いてみますか。
「あの、お店のオススメブレンドって……」
「ああはい、少々お待ちください」
「あ、二つお願いします」
用意してくれるみたいですね。少し手間が省けました。
「まばゆセンパイ」
「なんですか?」
お店に入ってから豆探しに夢中になり過ぎてましたかね……。
「センパイ、最近ほむらとつるんでますよね」
「へぁ!?」
「やっぱり」
まずいまずいですまずいですよ! 私が暁美さんと繋がってることが美樹さんに……!
「別に責めようって訳じゃないんで、あんま慌てないで下さいよ」
「へ?」
どういうことでしょうか……この前、美樹さんは確かに暁美さんは敵になるって……。
「まぁ、そのうち敵対するのはほぼ確ですけど、あいつもあたしたちも守りたいものは同じですし……やり方を認められないってだけで……あいつが大切なもののためにどれだけ頑張って来たかは分かるから」
「美樹さん……」
「それに、センパイを初めて見かけたあの時に、あいつはこの人に助けを求めるだろうなってのも、何となく分かったんですよ」
「暁美さんが、私に助けを……?」
「そ。あいつの塗り替えた世界に囚われてから、記憶がどんどん変わってって、あたしが何だったのかとか、もう前のことなんて殆ど思い出せないけど……多分あたしは、ほむらとセンパイが頑張った結果救われたって事を知ってたんだと思います。まぁ、もう接触済みなのかよって感じでしたけど」
それでマミさんの部屋で悪魔さんの話しをした時に……あれ?
「じゃあ、あの時の忠告はどういう?」
「これから敵になるやつに塩を送る人はいませんよ、ほむらへの嫌がらせです!」
い、嫌がらせ……まぁ、暁美さんの戦力が減るという意味では正しい戦法ではありますか。
「まあ結局ほむらの側に着いたみたいですけど」
「あ、あの、これは別に皆さんを監視しているとかそういう訳では無くて」
「分かってますって。多分ですけど、センパイ嘘下手ですよね?」
「うっ……自覚はあります……」
「やっぱり。そんな気がしてました」
あの繰り返す日々の中でも、美樹さんには何度も見抜かれましたからね……。もうあの顔で睨まれたくないです、思い出すだけで涙が……。
「いいんですよ、別に。それに、ほむらも結構抱え込むんで、あいつの支えになってやってください。変に抱え込みすぎて動けませんーなんてなったら張り合いないんで」
「──はい、分かっています。元よりそのつもりで暁美さんの傍にいますから」
できれば、美樹さんとも敵対なんてしたくは無いんですが……やはり暁美さん次第になってしまいそうですかね……。
「お客様、お待たせしましたー」
あ、店員さんがブレンドを持ってきてくれたみたいですね。お会計してきましょう。
「ありがとうございましたー」
「そろそろマミさんと杏子も終わった頃ですかね」
「待ち合わせ場所へ向かいましょうか」
<さやか……さやか……助けて……>
「ッ! 杏子!?」
これは、佐倉さんからのテレパシー? あの佐倉さんがこんな風に助けを求めるなんて……異常事態じゃないですか!
「何があったの!? すぐ向かうから、何処!?」
<集合場所……集合場所……まばゆは来んな……>
「なぜぇ!?」
名指しで拒否されましたよ!?
「とにかくすぐ向かうからそれまで持ち堪えてよ!」
「わ、私どうしたら!」
「よくわかんないですけどセンパイも行きますよ!」
「は、はい!」
美樹さんと共に魔法少女スピードでモールの中を駆け抜ける。
人集りを潜り抜け、マミさん佐倉さんとの集合場所に辿り着いた私たちを待っていたのは──
「だから、まばゆさんは私の一番の親友なの」
「まばゆは私のパートナー。この氷層の上にあるこの世界で運命を共にしてくれる大切な人」
「運命? それを言うなら私たちだって運命よ。同じクラスで、たまたま行きつけのお店でまばゆさんが働いてて、その上私たちは偶然にも同じ魔法少女──正に
「なあ、二人共もう落ち着けって……」
マミさんと、何故かここにいる暁美さんが激しい口論をしていて……二人共いつ
そして、そんな二人の間に挟まれてシオシオになってる佐倉さん。
「……一体、どういう?」
美樹さんを見ると、もう目頭を押さえて上向いてますね。
「とにかく事態の収拾を、美樹さん」
「あー、そっすね。スゥー……杏子ぉ! 向こうにたい焼きの屋台来てたから一緒に行こー!」
「美樹さん?」
「マジか! 行く行く!」
「佐倉さん?」
これって、つまり──
「じゃ、まばゆセンパイ! 後はよろしくお願いします! 荷物は私と杏子でマミさんの部屋まで持ってっとくんでー!」
スタコラサッサ、という擬音が目に見えるくらいの速さで美樹さんが佐倉さんを連れてこの場から居なくなりました。
そして、先程美樹さんが大声で私の名前を呼んだことから導き出される結論は──
「ねえ、まばゆさん」
「ねえ、まばゆ」
お二方の声が聞こえるのと同時に、私の両肩に衝撃。ガッチリと掴まていますね、これは。
壊れかけの機械人形のように、ギチギチと音を立てながら振り返ってみれば、怖いくらいの笑みを浮かべたマミさんと暁美さん。
美樹さん! 美樹さーん! 戻ってカムバーック!!
「ナ、ナンデショウ?」
「私とこの暁美さん、どっち?」
「私と巴マミ、どちらを選ぶのかしら」
そんな旅に出る時に最初に選ぶパートナーじゃないんですから……。
一旦CMです。まあ、そんなものは当然ありません。舞台裏です。
これより先はマミさんの回想となります。
…………。
一体何がどうなってあんな事になってしまったのでしょうか……。
巻き込まれた私の運命や如何に。
以上、舞台裏からでした。
少し前。
まばゆさんたちにコーヒー豆を任せて、私と佐倉さんは紅茶の葉を買いに。目当てのものが直ぐに見つかり、少し早く集合場所で二人を待つことにした。
そんな時、佐倉さんが誰かを見つけたのか、大きく手を振ってその誰かに呼びかける。
「おーい、ほむらじゃんかー。何してんだ?」
クラスメイトらしい。呼びかけた彼女がこちらに向かってくる。
「奇遇ね、こんなところで会うなんて」
「そうか? この街で買い物って言ったら大体ここじゃん?」
「そうかもね」
「あぁ、マミは初めてだろ? 紹介するよ、クラスメイトの暁美ほむら」
「はじめまして、巴マミです」
「どうも」
それだけ? 初対面の人に対して失礼、というか無愛想過ぎないかしら?
「あー、無愛想なヤツだけどさ、悪いヤツじゃないんだ。この前なんかあたしの行きつけの店のラーメン奢ってくれてさ!」
それは貴女が食べ物で釣られただけじゃないかしら。
「私も前から気になっていたし、貴女には借りがあったから返しただけよ」
「そんなの覚えがないって言ってるだろ」
「いいのよ、覚えてなくても」
……不思議な人ね、暁美さん。ここにいて、ここで佐倉さんと喋っているのに、違う場所にいるみたい。
なんだか次元の違う……ちょっと失礼だけど、キュゥべえと話しているときと似た感じを覚えてしまうわ。
そして、肌で感じる強大な魔力……とても強い魔法少女ね、暁美さん。ここまで近付かないと気が付かないなんて、前に佐倉さんに言われたように鈍っているのかもしれないわね。暫くはツーマンセルを組んで魔獣退治をしましょうか。
「んで、ほむらは何しに来たんだ?」
「知り合いが言ってたコーヒーのブレンドが気になったから、それを買いに。貴女たちは?」
「あー、似たようなもん。コーヒーならさやかたちが買いに行ってるし、頼むか?」
「たち?」
「そ。最近知り合った、まばゆってやつ」
「あぁ、貴女たちと居たのね。道理で部屋に居ないはずだわ」
「え……?」
いま、なんて? まばゆさんの部屋?
私はまだ呼ばれたことないのに、この人は部屋に呼ばれたことがあるというの?
「お、ほむらも知ってんのか」
「えぇ、とても大切なパートナーよ」
「なんか恥ずくねぇ? それ」
なん……ですって?
パートナー?
この人と、まばゆさんが?
「貴女と美樹さやかがただの友達ではないのと同じように、私とまばゆもそうなのよ」
「んなもんかね……ん? どうした、マミ?」
負けられない……暁美さんに、まばゆさんを取られてしまう!
再び舞台裏です。
暁美さん、私たちと同じくコーヒーを買いに来ていたみたいですね。
そしてお店への道中でマミさん佐倉さんと遭遇。
佐倉さんがうっかり私の名前を出したことが発端……いえ、私が暁美さんに歓迎会の事をちゃんと伝えていればこんなことそもそも起こりませんでしたね……。
ま、舞台裏の私がそんなこと言ってもどうしようもありませんか。
ここから先は再び、私視点に戻ります。
この騒動、私一人で収拾できる気がしませんが……。
以上、舞台裏からでした。
板挟み。二つの事柄の間にて、どちらに付くこともできずに悩むことを指す。
「まばゆ」
「まばゆさん」
正に今の私のことを指しています。
マミさんと暁美さん。両者が私の肩を掴み、手に指を絡めてきています。
絡めた指には段々と力が籠っていき、綱引きのように私を引っ張り合い始めました。
大岡裁きですか。
「い、痛だだだだだ」
「ほら、まばゆさんが痛がってるわ! 離して!」
「離すのは貴女よ巴マミ」
マジで大岡裁きじゃないですか!
「ま、マミさんも暁美さんも離して……」
「ほら、苗字で呼ばれてる貴女より名前で呼び合う私たちの方が深い仲なのよ!」
「私も名前で呼ばれたことはあるわよ、別れ際に一回。恥ずかしがって苗字呼びに戻ってしまったけれど」
「何それズルいわ! まばゆさん、私のことも苗字で呼んでみて!」
「と、巴さ──」
「やめて! 巴さんって呼ばないで! いつもみたいにマミさんって呼んで!!」
「痛だだだだだ!」
マミさん、ガチ泣きじゃないですか。対する暁美さんはこれ遊んでますよね。私とマミさんをイジって遊んでますよね。周回中には見せなかったようなにやけ顔が抑えられてませんよ。
「あ、あ、私が裂けちゃう」
あ、私が裂けてまばゆ1/2になる前にお二人から解放されました。全くの同時……大岡裁き再現ならずです。
「やっぱり貴女とは直接決着をつけるしかないようね、暁美さん」
「私はそれでも構わないけれど──」
「そ、そんなのダメです」
「という事よ。それに、せっかくのお楽しみ会を台無しにしたくはないでしょう?」
暁美さん……なんでそんな言い方するんですか。
マミさんたちとも、もっと関係を深めた方がいいに決まってます。
<貴女には教えてあげないわ>
おっと、テレパシーで返してきましたね。当然のように心を読まないでください。私がわかりやすいだけ? そんなぁ。
「じゃあ、私は行くわ」
「あ、暁美さん。これ……」
袋を二つに分けて貰っておいて正解でしたね。暁美さんのために購入した分のコーヒー豆を渡してしまいましょう。
「先日お話したブレンドです。是非試してみてください」
「……そう。ありがと、まばゆ」
「はい、ではまた」
暁美さん、行ってしまいました。この後のお茶会に誘えれば良かったのですが……結構ギスってましたからね……またの機会にしましょう。
「私たちも行きましょうか」
「……そう、ね。帰りましょ、まばゆさん」
マミさんと共に帰りましょう。帰って美樹さんと佐倉さんに説教です。
まだ日は高い。春が過ぎ行くのは早いもので、もう既に夏の兆しが見える街道を二人で歩く。本当だったら四人で、もっと荷物もあったはずでしたが、美樹さんたちが先に持って行ってしまいましたからね。ラッキーと捉えるべきでしょう。
「ねえ、まばゆさん」
「はい? なんですか、マミさん」
「貴女と暁美さんって、どんな関係?」
「私と暁美さん……ですか」
どんな関係。以前一緒に時間を繰り返して鹿目さんを救おうとした仲……とは言えませんし、やはり相棒や助手、バディというものでしょうか?
仲が良くないという訳ではありませんが、友達というのも少し違う。
いいえ、私たちはきっと──
「お互い、迷子になってしまったんです。大切なものを、切って、裂いて、失くしてしまって……空いた穴を埋め合うために、互いが互いを求めているんです。自分の手で傷つけたのに、自分の手で切り捨てたのに、それを忘れていて……暁美さんも失ってしまった大切なものを、それでも守るために頑張って、頑張って、そんな暁美さんの助けになりたかったんです。だけど、結局私にできることは、暁美さんも傷つけるようなことばかりで……なのに、暁美さんは私に手を伸ばしてくれたんです」
「……そう。優しいのね」
「はい。暁美さんは優しいんですよ」
そんな暁美さんだから、鹿目さんを助けたくて、助けられなくて、それでも手を伸ばして、今際の際に円環の理を捕まえて……この
「貴女が、よ」
「そう、ですかね」
マミさんはそう言ってくれるけど、私は優しくなんてない。
いま、暁美さんと共に居るのだって、結局は自分のため。
暁美さんが私を求めたと。鹿目さんへの言い訳にして、暁美さんの傍に居たいだけ。
前の私が、暁美さんやマミさん、自分の記憶も切り取ったのだって、いずれ来る魔女化という絶望から逃れるために、鹿目さんを利用しただけ。
そうすれば、魔法少女は救われると。
暁美さんなら最高の未来を掴めると、勝手に託して。
暁美さんはそんな事は望んでいないと、きっと知っていたはずなのに。
心が澱み、ソウルジェムが濁っていく。
少し震える私の手を、マミさんが両手で包んでくれた。
──とても、温かい。
「そうよ、私の一番の友達だもの。……ねぇ、まばゆさん。私は? 私は貴女にとっての、何?」
一番の、友達。
私、思ったより単純だったみたいです。
マミさんからその言葉を貰えただけで、心が晴れて軽くなる。
私にとっての、マミさん。
それこそ、決まっています。今も、始まりも。
「ずっとずっと、大切な一番の友達です」
「ありがと、まばゆさん。さ! 早く戻って歓迎会をしましょ! 美樹さんと佐倉さんが待ってるわ!」
「はい、そうしましょう。楽しみですね!」
マミさんに手を引かれ、マミさんのお宅へ駆け足で向かう。
マミさんが、美樹さんが、佐倉さんが、私のために開いてくれる歓迎会。
これ以上暗いことは無しで行きましょう。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、解散の時間となりました。
今日は楽しかったですね。
美樹さん佐倉さんとは帰る方向が違うため一人で帰宅……の、はずでしたが。
なぜか暁美さんの子供たちの内の一人、ヤキモチちゃんに手を引かれながら街を歩いています。
向かう先は……まあ一つしかありませんか。暁美さんの家ですね。
そういえば、この子達って普通の人には見えているんですかね?
もし見えてないなら、手を前に出しながら歩いてる変な人みたいに見られていそうな……。
……。周りの目は見ないことにして行きましょう。
ヤキモチちゃん、話しかけても相槌しか返してくれませんし、なんだか少し怒ってる……みたいな感じがします。名前だけに、なにかにヤキモチを妬いてるんでしょうか?
──と、着きましたね。やはり暁美さんのお宅でした。
ヤキモチちゃんはそそくさと家の中へ入って行き、中から手招きしています。……思えば、記憶を戻して貰ってからも暁美さんの家に上がる機会がなかったので、結構久しぶりな感じがしますね。
鹿目さん対策の未来視は大体昼休みと学校帰りで、たまにレコンパンスのお手伝い帰りに私の部屋で、というような具合でしたし。
「お邪魔しまーす」
おや? 暁美さん、出てこないですね。
それに何やらドタバタと……暁美さんが出てきましたね。それに、この匂い……早速試してくれたみたいですね。
「……何をしているのかしら、まばゆ」
「何って、暁美さんが呼んだんじゃないんですか?」
「用事があるなら電話かテレパシーで呼ぶわよ」
「で、でもヤキモチちゃんが……もういませんし……」
「そう。用がないならもう帰っていいわよ」
「え」
初めて顔を合わせた頃並みの冷たい態度!? 思わず涙が出てしまいそうな……。
「……冗談よ、上がりなさい」
「ほっ」
「特に何も無いけど」
「いえ、お気になさらず。それより、コーヒーの方はどうでしたか?」
「貴女には伝え忘れていたかしらね、豆を渡されても挽き方も分からないし、道具もないのよ?」
「……あ」
「道具は帰る前に購入したけれど、結局上手く作れなかったわ。これならレコンパンスで貴女が淹れてくれるものの方が美味しいわね」
「そ! それはなんだか嬉しいことを言ってくれますね……」
「事実を言ったまでよ」
「じゃ、じゃあこれからは私が淹れてあげます! カフェオレでいいですか!?」
「いえ、別に……そうね、お願いするわ」
「かしこまりました!」
「……まばゆ、今日は泊まっていきなさい」
「へ!?」
い、いきなりお泊まりのお誘いですか!? そ、そんな、私初めてなんですよ!? お泊まり会なんて!
「もう外は暗くなってきたし、コーヒーのおかげでしばらく眠れそうにないもの。眠くなるまで付き合ってもらうわよ」
「ぐう、咲笑さんに連絡します……許可が貰えなかったら見逃してください」
外が暗いくらいなら魔法少女である私には大した事ではありませんが、コーヒーを引き合いに出されてはぐうの音しか出ません。咲笑さんに電話してみましょう。
……あっさり許可が降りました。むしろ泊まってきてと言われました。
「貴女とはもっと話しをする必要がありそうだもの、ちょうどいい機会ね」
「それは私も思っていました」
長い間、一緒に行動して。お互いを知った気になっていたけれど。知っているようで、実は知らない事の方が多い。
あの旅は、一ヶ月という縛られた時間の中で鹿目さんを救うために奔走していましたから、腰を据えてお互いの事を話すような暇はほとんどありませんでしたしね。
話しの種は沢山、時間は更に沢山あります。学校は明日も休みですし、お泊まりに免じてレコンパンスのお手伝いも休みにしてくれましたし、夜通し語り明かすとしましょう。カフェオレでも飲みながら。
「貴女って、あの子たち全員の名前を覚えているの?」
「逆に暁美さんは覚えてないんですか……」
「沢山居て似たような顔、そのうえ名前が負感情だから覚える気が起きないのよ」
「結構可愛い子たちですよ」
「そうかしら?」
「そういえば、なぎさちゃんがたまにマミさんのお家に泊まっているらしいんですよ」
「あら、なぎさは普段から巴マミの所に居座っているものだと思っていたけれど」
「普段は施設……と言っても割合的にはマミさんの家の方が多い様です。私がマミさんの家に上がる日に限って施設の方に行ってる様なので、まだ会えていないんですよね」
「そのうち会えるわ」
「はい、その時は是非、暁美さんもご一緒に」
「考えておくわ」
「マミさんがチーム名を考えてくれたんですよ」
「あの人は大衆が想像する魔法少女らしい魔法少女の一面もあるものね」
「チーム名はピュエラ・マギ──」
「ホーリーカルテット」
「おお、流石です。なぎさちゃんがいる時はクインテットになるそうですよ」
「まどかと私が居ない分、貴女となぎさが入った訳ね」
「……三人で行動されてた頃は特にチーム名はなかったみたいですね。マミさんの方針でなぎさちゃんは魔獣とは積極的に戦わせないようにしているみたいです。なぎさちゃんはまだ小さいですからね」
「そこの判断はやはり巴マミという感じね。もしあの子の姿が百江なぎさではなく、お菓子の魔女……べべだったら魔獣との戦いにも連れて行っていたしょうけど」
「佐倉さん曰く、最初は駄々が凄かったようですよ」
「お子様だもの、仕方ないわ」
「今度からはスチームミルクも用意しますね。ラテもマキアートも任せてください」
「そこまでするならお店でもいいんじゃないかしら」
「私が暁美さんと楽しみたいんですよ」
「そう?」
「はい。またこうやって、ダラダラとお喋りできたらなと」
「いい加減名前で呼んでくれてもいいのよ?」
「そ、そう言われると余計呼びにくくなります! 自然に、自然な形で呼べるようになるまでお待ちください!」
「そう、待ってるわ」
「暁美さん。お風呂、一緒に入る必要ありました?」
「ひとりぼっちは寂しいってよく聞くじゃない」
「一人の時間も必要だと思います。パジャマ、洗って返しますね」
「気にしなくていいと言っても貴女は気にするでしょう?」
「その通りです」
「先程の引っ張り合い、結構痛かったですからね」
「貴女が私に何も伝えずに巴マミたちと遊んでいるからじゃない」
「良かれと思って伝えなかったんですよ!」
「軽率な自分の行動を恨みなさい」
「こういう事が起きないようにするためにも、もっと話し合いの必要がありそうですね……ん? もしかして暁美さん、マミさんにヤキモチを妬いていたんですか?」
「さぁ、どうかしらね」
「思えば、見滝原の魔法少女の皆さんの関係って、マミさんが起点となっていることが多いですよね」
「そうね。貴女はもちろん、杏子も初めは巴マミを師事していた。まどかも、初めて会った魔法少女は巴マミ。美樹さやかはケースバイケースだけれど、最後の周回では私と巴マミが同じタイミングで接触している。なぎさは……現在進行形といったところね。そして、私も初めて会った魔法少女は、まどかと巴マミよ。貴女はコソコソと隠れていたようだけれど」
「な、な、なんのことかわっかりませんね」
「これらにも巴マミの願いが関係しているのかもしれないわね」
「確か、事故にあって『助けて』と願ったと聞きましたが」
「その願いで得たのが、あのリボンの魔法よ」
「マミさんから聞いたことがあります。リボンは何かを繋げることができる、と」
「もしかしたら、巴マミの魔法がみんなを引き合わせ、繋げたのかもしれないわね」
「そうだったら、とても素敵ですよね」
「そろそろ寝ましょうか」
「ベッドの他に敷布団とかは……」
「ある訳ないでしょう」
「仕方ありません。私はソファで──」
「入らないなら廊下よ」
「お邪魔しますね!」
「──まばゆ、まだ起きてる?」
「はい、なんですか?」
「……今日は楽しかったわ」
「……変なものでも食べました?」
「カフェオレのせいかしらね」
「ひどい!」
「ふふっ、冗談よ。こんなに長いこと誰かとお喋りしたのは、久しぶりだったから。結界の中のまどか以来よ」
「……そうですか」
「きっとまどかは、これからも魔法少女なんかに関わらず、人としての生を過ごしていく。そんな無くしたはずの彼女の未来を、私は見たいの。例えその中に、私が居ないとしても」
「……そんなの、悲しいですよ」
「悲しくないわ。貴女が居るもの」
「ッ私は、鹿目さんの代わりにはなれません!」
「代わりじゃないわ」
「──え?」
「貴女はまどかの代わりじゃない。まどかはまどか。貴女は貴女。私の大切な、唯一無二のパートナー、愛生まばゆ」
「暁美、さん……」
「寝る前に喋り過ぎたわね。おやすみなさい、まばゆ」
「え、このタイミングで寝るんですか? 暁美さん?」
「すぅ……すう……」
「寝るの早! まだ日付変わるか変わらないかくらいですよ、私まだ目が冴えてるんですけど、暁美さーん」
「んぅ、うるさい……」
「ごめんなさい」
天井を眺めながら、さっき暁美さんに言われたことを思い返す。
ずっと私は、鹿目さんの代わりだと思っていた。自分でもそういう風に感じていて、キュゥべえにもそう言われたから。
でも、どうやら。暁美さんにとって私は、鹿目さんの代わりではないらしいです。
暁美さんにとっての希望──絶望という名の暗い闇の中、迷わず進めるように道を示す北極星は、鹿目さん。
なら私は、貴女の足元を照らす懐中電灯に、貴女が疲れた時は止まって休める木になります。
いつ
大切なもののために足掻き、羽ばたく貴女のための止まり木になれたら。
それはきっと──
「──とても嬉しいことですね」
おやすみなさい、ほむらさん。
草木も眠る丑三つ時。
目覚めた悪魔は隣りで眠るパートナーを撫でる。
どこか自分に似た所があるこの人もまた、自己完結の色が濃い。
「あなたを物や道具のように扱うつもりはないのだけど……伝わらないものね」
自分が彼女に求めていることは、ただ一つ。
一筋の光を頼りに進む夜道を、日が差すまで一緒に歩いてほしい。一緒に居てほしい。
ただ、それだけ。
未来視だって、本当はしなくてもまどかの監視は足りている。
十四の手下が今もまどかの監視をしている。なにか異変があれば、イヤーカフス越しに耳打ちされる。
記憶の切り取りも、事足りている。
協力してと言って、貴女を傍に置いておきたいだけ。
自分にはそれを伝える術がない。どうすれば伝わるかが分からない。
自分の性質は、そう簡単に変えられるものではなかった。
「まぁ、いいわ。まだ夜明けまでは遠いもの」
自らの希望への愛と、パートナーを想うこの気持ちは、きっと別のもの。
ぐっすりと眠るパートナーへ腕を回し、抱きしめながら眠りにつく。
やっと捕まえたのだもの。
まどかも、貴女も、もう離さない。
「ゆっくり歩いていきましょうね、まばゆ」
以下、後書きです。
くぅ疲。
マミさんVS暁美の百合修羅場を見たかったから書き始めたはずなのに肝心の修羅場がすぐに終わってしまった……なぜ?
これも全部知久ってヤツが悪いんだ。
日々scene0の二次創作やポストを漁るゾンビ活動をしていますが、結局ハザードしてしまいましたようですね。
需要と供給がまるで釣り合っておらんぞ。公式は責任取って月一でサイドストーリーの更新及びサ終までにscene0サイドストーリーとMSSをフルボイスにしてください。
そしてこのSSをクリックして読んだ貴方も是非scene0の二次創作を作りましょう。ほむばゆ、マミばゆ、カップリング要素なんてなくてもいい。scene0を舞台とした二次創作を作りましょう。
なんですって?もう作っている?素晴らしい。これからもどんどん創作すればいいことがきっと起こります。女神様も悪魔様もよくご覧になっておりますからね。
え?自分は読む専・見る専?関係ないですよ、これまでたくさんの作品を見てきた貴方ならきっと素晴らしいモノが作れます。ほら、作りましょうよ。作らないんですか?作りなさい。作れ。
最近まどマギの新作アプリが配信決定しましたね。公式サイトを開けば緑の色違いキュゥべえがドドンと出てるやつです。巷ではネギキュゥべえとか、まばゆでは?とかよく言われてますよね。
正直な話、scene0はあくまでもまどマギ外伝というか、本編とはすこし違う世界線みたいな感じで受け取っているので、まどマギのアプリと謳うならメインキャラとして愛生まばゆは出さないで欲しい心もあるんですよね。外伝scene0コラボー!とかで愛生まばゆ実装!とかなれば喜んでガチャを回すけど。
ワルプルギスの廻天におけるまばゆ出演問題に関してもほぼ同じスタンスですね。出てきて欲しくない気持ちと、歩いてる生徒に混ざって一瞬とかでも映ってくれたら狂喜乱舞するだろうという気持ちがある。心が二つあるのじゃあ!
正直まばゆの使い所は映画内ではなくその前、叛逆で物語コラボした時のような映画を見る上での注意事項解説係だと思うんすよ。最適じゃない?tear1キャラでしょ。キャラ評価sssランクでしょ。まばゆのクソ長い講釈を聞きながら廻天へのワクワクを楽しみてぇよォ……。
まどドラくん外伝コラボどころかマギアレコード含むまどマギ外伝総ナメゲームで草
もし次書くとしたら前々からずっとくださいください言ってるメガほむばゆが可能性大ですね。入院中メガほむの唯一の趣味が映画鑑賞なif。魔法少女とかそんなファンタジーな存在はないのでガチifみたいなやつになると思います。それまどマギじゃなくない?知るかバカ。
失敗ばかりの転校生が屋上でぼっちでDVDプレイヤーで映画を観てるところに挙動不審なヤバい人に絡まれるところが見たいんです。魔法少女の云々なんて本編に任せておけばいいんですよ。
貴方が代わりに作ってくれてもいいんですよ。是非ともよろしくお願いします。こっちには人質がいるんだぞ