共に流れた時の先で   作:鶴(鳳凰)

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独自解釈増し増し、独自設定増し増しなので苦手な方はブラウザバックお願いします。

『共に流れた時の先で』の悪魔さん側の話になります。

ほむばゆssはいくらあってもいいのになぜか少ないので自家発電ついでにネットの海へ放流することを決めました。
対戦よろしくお願いします。

味を占めてまた悪魔さん視点を書いちゃいました。シリアスは入ってないですね、ポンコツです。


Film H.A DAY.X After Rebellion

 

 この時を、待ってた。

 

 限界を迎えた私を迎えに来た彼女を、この手で捕まえた。

 

「ほむらちゃん、駄目……私が、裂けちゃう……」

 

 ソウルジェムに溜まった呪い()が溢れ、彼女を包み、女神を引き裂く。

 女神の一部。元々人間だった頃の、彼女の肉体と記憶の一部。

 女神を裂いたヒビは世界へ、全ての宇宙へと拡がり、再び宇宙がて書き換えられていくでしょう。

 

 裂けた女神から零れ落ちたまどかの身体を抱えると、女神はこちらに向かって手を伸ばしていた。

 いえ、何かが……私に流れてくる。

 

<「そのフィルムを持っていって。きっと、ほむらちゃんに必要なものだから──」>

 

 抱きしめていたまどかと、円環の理から同じ言葉が聞こえてくる。

 真意を問いただす前に、世界の再編が始まった。

 

 

 

 

 ゆらゆらと落ちていく。海面を漂うように。深海へ潜るように。

 海を泳いだことなんてないけれど、そう表現するしかないもの。

 呪いでヒビ割れたソウルジェムを噛み砕いて、新しい力を手に入れる。

 私と一緒にここまで落ちてきた、円環の理の力の一部。

 それを元にした力。

 

 前の事を覚えていないインキュベーターに、軽く説明してあげたら逃げようとしたので、捕まえて世界に湧く呪いの処理に協力してもらうことにした。

 

「──さて」

 

 書き換えが終わるまで、まだ少し時間がかかる。

 円環の理が、裂かれる瞬間に渡してきたものを調べるとしましょう。

 人間のまどかを維持するために必要だった記録と、そのための最低限の力しか剥ぎ取っていないにもかかわらず、円環の理の方から渡された物。

 具現化するなら……映画のフィルム、かしら。二つ分、私の名前が書かれた物と、知らない誰かの名前、『愛生まばゆ』と書かれた物。

 

「この苗字、なんて読むのかしら。アイショウ? それともアオイ、かしら? 愛に、生きる……読み方は分からないけれどいい苗字ね」

 

 なぜ、まどかはコレを……何か意味があるのかしら。もう少し詳しく調べてみましょう。

 映画……なのだから、映写機よね。

 円環の理の力で映写機って出せるのかしら。

 

 …………パンッ

 

 念じながら手を叩いたら映写機が出せたわ。

 さすがまどかの力ね。

 

 これで観れるようになったわね。あと必要なのは……。

 ……こたつかしら? 

 なぜこたつが必要と思ったのかは分からないけれど、なんとなく映画とこたつはセットな気がするのよね。まぁいいわ。

 こたつも出したことだし、サクッと観てしまいましょう。

 私の名前が書いてある方をセットして、と。

 

 上映前のブザーとか上映中の注意事項まで出てくるのね。まどかが映画にハマってたなんて思わなかったけれど……そんな素振りもなかったもの。

 

 始まったわね……。

 これは、私の記録……いえ、記憶かしら? でも、なぜまどかが持っていたのかしら……。三つ編みを解いて眼鏡を外したという事は、三回目の時間遡行の後ね。

 確かこの周では、まどかの契約を阻止するためにキュゥべえを撃って……まだこの時はキュゥべえは一匹しかいないと思い込んでいたから、油断していた所をまどかが契約してしまったのよね。

 私の油断が招いた結果。映像に映る私が、あの時まだまどかの周りを見張っていれば、契約を阻止できたかもしれないのに。

 

『そんな……』

 

 誰? と、映像の中の私と言葉が被った。時間停止中、私は私以外の誰かと会った記憶などないし、止まった時の中を他の誰かが干渉してくるなんて事はありえない。

 にもかかわらず、キュゥべえを撃った直後に、私しか居ないはずのその場から私以外の声がした。

 

 別の世界線、異なる可能性の私の記憶かしら。この私には思い当たる節は無い──

 

「────こともないわね」

 

 最後の周の病室で私が書いていた、一ヶ月間のフローチャート。あれを書いた前後の記憶が少し曖昧だった事と、そのフローチャートが明らかに私一人では達成不可能なものだった事。

 

 もし、私に協力者がいたなら。

 もし、その協力者が私と似たような魔法を持った魔法少女だったなら。

 

 私は重大な何かを忘れている。或いは忘れさせられた可能性がある。

 そして、その忘れてしまった私の記憶を、何故か円環の理(まどか)が持っていた。私に必要だと渡してくれた。

 

「多少乱暴になるけれど、全て取り込みましょう」

 

 映写機からフィルムを取り出し、円環の理の力と記憶操作の魔法を併せて、記録の全てを読み取った。

 

「──あ、あぁ……!」

 

 何かを忘れていた私の記憶と、フィルムの切り口がピッタリと重なり、一つになる。

 

 

 キュゥべえからまどかを守り、ワルプルギスの夜を一人で倒すと決心した私のもとへ乗り込んで来たあなた。

 キュゥべえが生きているから、まどかが契約してしまうと叫ぶあなた。

 まどかのもとへ急ぐ私の後を、少し遅れてついてくるあなた。

 半ば八つ当たりのようにキュゥべえへ弾丸を撃ち込む私を止めるあなた。

 

 そんなあなたへ、銃を向ける私。

 

 私の力になりたいといったあなた。

 

 それに敵意と嫌悪で返す私。

 

 姿を消して、逃げ出すあなた。

 自動車工場に現れた魔女に苦戦していたまどかを助けたあなた。

 助太刀に入るもあまり戦えないあなた。

 

 見ていられなくなって、時間を止めて介入する私。

 

 まどかを見捨てたくなくても、いずれはこの時間のまどかを見捨てて時間を巻き戻すから、これ以上まどかと仲良くなっちゃいけない、関わっちゃいけないと弱音を吐く私。

 

 そんなのダメだと、別れが辛くて苦しくても、その気持ちは大切なものだから、関係ない、関わりはないと嘘をついちゃいけないと、私を叱るあなた。

 まどかとの別れに、鈍感にならないでと、そう願うあなた。

 私が挫けそうになったら、傍でなんでもやると言ったあなた。

 

 そんなあなたを、信じることができない私。

 

 魔女に爆弾を投げ、倒したと油断し、魔女の触手に囚われた私。触手を切り落として、囚われた私を解放し、代わりに魔女の攻撃を受けたあなた。

 

 腕を折られ、足を断たれ、頭蓋骨が内側に落ち込み、身体を刺され、肋骨が内蔵に突き刺さり、心臓が止まり、あなたのソウルジェムが砕ける所を、ただ見ている事しかできなかった私。

 

 時を戻し、再び私の前に現れたあなたに、安堵を覚える私。

 

 あなたの名前を呼ぶ私と、私の名前を呼べないあなた。

 あの高架下で、特訓をするあなた。

 

 魔法少女になれば私の助けになれるかなと言うまどかを遠ざけるために、まどかを傷付けた私を気遣ってくれるあなた。

 

 魔法少女の真実を教えたにも関わらず、魔女のために契約してしまったまどかと、その契約によって生まれたなぎさ。

 

 あなたと、私と、まどかと、なぎさ。四人でレコンパンスのお手伝いをした事。

 四人でワルプルギスの夜に挑み、なぎさを見送って、時間を巻き戻した。

 

 次の周からは、まどかとキュゥべえを接触させないように動いていたものの、美樹さやかを介して接触を許してしまった私たち。

 

 私との繋がりが美樹さやかにバレて、反感を買ってしまうあなた。

 

 結局まどかが契約してしまい、また時間を巻き戻した私たち。

 

 次の周では、前回と同じ方針を取りつつ対策を立てて進めて行った私たち。

 しかし、キュゥべえに隙をつかれ、まどかとの契約を許してしまった私たち。

 

 次の周では、美樹さやかと友達になると言い出したあなた。

 美樹さやかも契約させないように誘導していたものの、魔法少女である事がバレて、またも反感を買ってしまったあなた。

 

 次の周。美樹さやかの記憶を切り取る事で契約させない事に成功したあなた。

 この力はできるだけ使いたくないと言ったあなた。

 

 ワルプルギスの夜に破壊されていく街を見たまどかは、キュゥべえと契約し、そして最大の魔女となってしまった。

 

 次の周。見滝原で集められる最大限のグリーフシードを使いワルプルギスの夜に挑むも、やはり越える事はできず、またまどかが魔女になってしまった。

 

 次の周。見滝原だけでなく、近隣の街への遠征でグリーフシードをより多く稼ぐ事を決めた私。

 その結果、佐倉杏子の縄張りに踏み込み、激怒している彼女の猛攻を受ける私を庇ってソウルジェムを砕かれてしまったあなた。

 

 あなたを死なせてしまった私がこの後どう動いたのか、フィルムには記録されていなかった。

 

 結局ワルプルギスの夜は越えられず、また時間を巻き戻すことになった私。

 その事に、何処か安堵していた私。

 

 次の周。目覚めと共に病院から抜け出し、あなたの元へと向かう私。

 あなたの部屋に忍び込み、気持ちよさそうに眠っているあなたを見て、安心した私。

 

 目覚まし時計が鳴るのと同時に飛び起きるあなた。

 

 私が部屋に居ることに困惑するあなたに、助けられたお礼と、二度と死なないでと釘を刺す私。

 頑張ると返事するあなたに、ついでに部屋を片付けるように言う私。

 それに対してのあなたの返事は、先程より小さかった。

 

 他所の街の魔法少女に注意しながらありったけのグリーフシードを集める私たち。

 それでも、ワルプルギスの夜には届かず、まどかが契約してしまい、時間を巻き戻した私たち。

 

 次の周。巴マミの記憶から、自分が何をしたのか知ってしまったあなた。

 自分の行いに、絶望してしまったあなた。

 あなたを絶望から救うために、契約してしまったまどか。

 

 

 きっと、あなたはここで、魔法少女が救われる未来──円環の理を視たのね。

 

 

 ここから先のフィルムの私の動きと私の記憶は、ほぼ一致していた。

 時々、あなたの元を訪れる私が居た。

 

 ワルプルギスの夜の日、未来を視たあなたは、みんなで力を合わせてワルプルギスの夜を倒せると言った。

 

 

 嘘ね、と。フィルムの中の私と、私が同じ事を思っていた。

 

 

 やはり、ワルプルギスの夜を越える事はできなかった。

 

 

 時間を巻き戻し、 フローチャートを作り直している私の元を訪れたあなた。

 少し削れば、自分の協力は要らないと言い出すあなた。

 

 私と、あなたとの、思い出を語るあなた。

 

 あなたが何をしようとしているのか、気付いてしまう私。

 

『ほむらさん』

 

 長い繰り返しの中で、初めて呼んでくれた私の名前。あなたのその柔らかい声が耳から離れない。もう一度呼んで欲しい。

 最後に見せた優しい顔から目が離せない。

 

 今までのお礼と共に、私からあなたの記憶を全て切り取ってしまったあなた。

 まどかを魔法少女にさせないため、同じ時間を一緒に繰り返した私と、あなた。

 私の知らない(知っている)あなた。

 私が繰り返す時間を、無限にも続くような迷路を諦めること無く進む事ができたのは、あなたが隣りに居てくれたからだったのね。

 

 

「ありがとう、まどか。あなたを否定した私に、無くなってしまった大切なものを思い出させてくれて」

 

 世界の再編が終わる。

 

「今度こそ、あなたを助けてみせるわ……まどか」

 

 もう離さない。

 

「また会いましょうね、まばゆ」

 

愛生(あき)まばゆ』と書かれたフィルムを抱きしめ、眠りに着く。

 目が覚めれば、私が作り替えた世界が待っている。

 

 

 


 

 

 

 改変は終わり。とても永い一瞬を経て世界がまた動き始めた。

 今のところ、歪みの類いは感じられない。どうやらうまくいったようね。

 巴マミも、佐倉杏子も、円環の理の遣いだった百江なぎさもこのことには気付いていない。美樹さやかは意志が強いから、今頃飛び起きて私を探そうとしている頃でしょうね。

 分かりやすく通学路に陣取ってあげましょうか。

 もう通学も始まっていることだし、そのうちまばゆも通りかかるでしょう。

 

「──ん? ん!?」

 

 なんて思っていたら来たようね。

 声をかけようかしら。でも、向こうは私を知らないのだし……というか、なんで百面相してるのかしら。

 ふふ、変わってないのね。なんだか面白いわ。

 

パリン! 

 

 あ、まばゆを呼ぼうと手を動かしたらカップを落としてしまったわ。

 

「うぎゃ!」

「今の声、まばゆさん?」

 

 巴マミも近くにいたようね。接点を作るつもりはないし、一度引きましょうか。それに、美樹さやかも私を補足したようだし、そちらの相手をしてあげましょう。

 

 


 

 

 あの日から、まばゆの動線でまばゆを待っていたのだけど、全く近付いてくる気配がないわ。

 まぁ、まばゆ自身、覚えていないのだから仕方ないのだけど……やっぱり、寂しいわね。

 今日はレコンパンスに入ってみたのだけど、まだ学校から戻っていないようだったし、何も買わず店を出るのも忍びなかったのでケーキとコーヒーを持ち帰りで買ってみたわ。

 まばゆにも子供達(手下)を付けようかしら。でも、巴マミに気取られて手駒を減らしてしまうのは避けたいし……。

 

「あ、あああ、あ、あの!」

 

 この声、まばゆね。やっと来てくれたのね、この時を待ってたわ。

 

「ごきげんよう」

「ご! ごきげんようございます!」

 

 ごきげんようございます……ごきげんようの敬語か丁寧語かしら。

 顔も真っ赤で目まで回しちゃって、どうしたのかしらね。

 とりあえず座ってもらいましょう。

 

「立ち話もなんだし、座ったらどうかしら」

「は、はい、失礼します……」

 

 何かもてなせるもの……レコンパンスのケーキがあるわね。丁度いいしこれを出しましょう。まばゆは食べ飽きているかも……咲笑さんの腕にかかれば、関係ないわね。

 うん、普通に食べ始めたわね。この人、警戒とかしないのかしら。それともレコンパンスのケーキとコーヒーだったから? 

 わからないけど、まぁいいわ。

 ……あっという間に食べ終えたわね。遠慮もないのかしら。

 すぐにでも記憶を戻してもよかったのだけど、少し意地悪しようかしら。

 

「あなたはこの世界が尊いと思う?」

「へ?」

「欲望よりも秩序が大切だと思う?」

 

 コーヒーを啜りながら返事するあなたに、あの日にまどかにしたものと同じ質問をした。

 何てことはない、ただ気になっただけ。まどかはこの世界が尊いと言った。自分勝手にルールを破るのは悪いことだと言った。

 まばゆはなんて答えるのか、ただ気になった。それだけ。

 

「そりゃあもちろん欲望ですよ。規制の激しくなる昨今ですが、公序良俗に反する物からしか得られないものというのはありますからね。それに、暖かいお部屋でダラダラしながら映画を観る。冷たいコーラとポテチがあれば言うことはありません。もう最高ですね」

「──そうね、あなたはそういう人よね。碌に片づけもしてない部屋でこたつに包くるまりながら映画を観ているんでしょう?」

「ギクッ! いいじゃないですか! 必要なものがすぐ取れる位置にあるんですから、今の状態が一番なんです! それにこたつに包まって映画見るの最高じゃ……ないですか……」

「今日は楽しかったわ。また会いましょうね、まばゆ」

 

 魔法を行使してまばゆの記憶から私に関するものを消し、私とは会わなかったことにして家に瞬間移動で戻ってくる。

 そうしないと、何かが溢れてしまいそうだったから。

 

 


 

 

 夜。

 暗くなった途端に魔獣が沸き始めたわ。

 発散にもならなかったけれど、放っておくこともできないもの。

 巴マミたちは手一杯のようだったし、鉢会わないように動きながら魔獣を狩って回ってきたわ。

 

 そして、また来てしまったわね。レコンパンス。

 中の様子を窺う限り、まばゆはもういないようだけど……あ、エイミーがいるわ。

 たしかまどかとまばゆが、エイミーはグルメだと言っていたわね。何味が好きなのかは聞いていなかったけれど……。

 とりあえず、コンビニで猫用のおやつを買ってきましょうか。マグロ味とかかしら。

 

 

 

 全然ダメね。いくら近付けてもそっぽを向かれてしまうわ。

 

「……食いつきが悪いわ。まばゆは何をあげていたのかしら」

「エイミーはグルメさんなのでチキン味のカリカリしか食べないんですよ」

 

 ──もう帰ったものと思って油断したわね。適当に流して、また記憶を消して去りましょうか。

 まばゆも言っていたけれど、あまり使いたい魔法ではないわね。大切な人なのに、その人の中から思い出を奪うような魔法だもの。

 

「──そう、道理でこのマグロ味のカリカリには食いつかない訳ね」

「で、ですです!」

「なら仕方ないわね、今日は帰ることにするわ。また会いましょうね、まばゆ」

「あ、また名前……」

「──また?」

「え? あ、いえその……さ、さっき会った時もわた、私の名前を……」

 

 まばゆの記憶を消そうと動かした手が止まった。

 また? まばゆはさっき私と会ったことを覚えている? 

 記憶操作の魔法が効いていない……というよりは。

 

「──そう。あなたはまた私の力の内側にいるのね。いえ、私のこの力があの子とあなたの影響を受けていた、という方が正しいのかしら?」

「な、なにを……」

 

 どうせ私の記憶操作の魔法が効かないなら、思っている事全部言ってしまいましょうか。

 あなたをまた巻き込んでしまうことになるけれど……また、あなたと一緒に日々を過ごせるなら……。あなたはどう思うのかしら。

 

「あなたは大切な人たちを絶望から救うために、その大切な人たちの中から、そしてあなたの中からもあなたという存在を消して見せた。共に時間を歩んだ少女に全てを託してね。結果としてその少女は、あなたの献身と大切な友達の自己犠牲の果てに報われない運命から解放され──悪い魔女のいない未来を掴んでみせた」

「あ、あの──」

「でもね、あとを託されたその少女はそんな未来、認めたくなかったの。あの子が傷つき、犠牲になることで救われるくらいなら、そんな未来は欲しくない。だから私は女神を引き裂き、世の理を搔き乱したの。何よりも大切な人には幸せな未来を歩んでほしかったから」

「……あなたは、優しいんですね」

「──もし、あなたが望むなら。私を見つけてみせなさい、まばゆ」

 

 言うだけ言って、また、逃げるように帰ってきた。

 まばゆは私を探してくれるのかしら。

 

 


 

 

 翌日。

 まばゆはどうしているかしら。

 少し様子を窺ってみましょう。

 ……電話しているようね。咲笑さんね。

 …………電話が終わったら、空を見て……泣いてる? 何をしているの? 

 美樹さやかと佐倉杏子が通りかかったわね。二人して抜き打ちテスト赤点だったから補習に連れていかれていたわね。それが終わって巴マミと合流でもするのかしらね。私には目もくれず走っていったわ。

 

「すみませーん」

 

 まばゆ? どうしたのかしら。

 

「すみません……あなたを見つけるというのは、ただこうして声をかけるという訳ではないんですよね?」

「そうね」

「ちょっと私には難しくてですね……」

「それで、私に聞きに来たと」

「はい」

「バカなの?」

「ストレートな暴言! 仕方ないじゃないですか! 私友達なんて一人しかいませんし、その一人には断られちゃったんですから!」

 

 友達……まばゆに? ……巴マミね。まぁ、いいわ。私を一所懸命に探してくれているようだし。私を。

 

「あなたに友達がいないことくらい知っているわ」

「い、言いますね……」

「普通なぞかけを出された人が出した人にヒントを聞きに来るかしら?」

「……それって普通のことでは?」

「…………」

「おやおやぁ?」

 

 そう言われれば、そうね。

 でも、まばゆに言い負かされるのはなんだか気に食わないわ。

 

「風穴、あけられたい?」

「あはははは、ジョーダン、ジョーダンですって!」

 

 いつかも、似たようなやり取りをしたわね。

 

「それで、何が聞きたいのかしら?」

「では、あなたの名──」

「却下よ」

「言いきってすらいないのに却下!?」

「それも含めてあなたが見つけなさい」

「うぅ……ではあなたのことをどう呼べばいいんですか?」

「そうね……なら、『悪魔』とでも呼びなさい」

「……」

 

 なによその間は。悪魔よ悪魔。あなたこういう映画っぽい話題好きでしょう。

 

「では悪魔さん、あなたを見つける……とはどういう意味ですか? こうして会っているのは見つけたの内には入らないんですよね?」

「そうよ。あなたには少し難しかったかしらね。少しヒントをあげるわ。──私を見つけたければ、まずはあなた自身を知りなさい」

 

 あなた自身。つまり、自分が魔法少女であることを知りなさい。

 

「今晩……いえ、これから巴マミを探しなさい。運が悪ければ見つかるわ」

「──マミさんを? でも、マミさんは用事があるようで……」

「今日も楽しかったわ。また会いましょうね、まばゆ」

 

 ヒントはこのくらいでいいでしょう。今日は魔獣の瘴気が一段と濃い。巴マミたちとは別で私も動いた方がよさそうね。

 巴マミなら万に一つも有り得ないでしょうけど、一応まばゆのボディガードに子供達(手下)を二匹つけておきましょう。なんて名前だったかしら……。

 

 


 

 

 イヤーカフスから耳打ちが聞こえる。どうやらまばゆは無事に巴マミたちと合流できたようね。

 魔獣の方もあらかた片付いたことだし、今日はもう帰りましょうか。

 魔獣退治中の巴マミたちと接触すれば、魔法少女の存在を知ることになる。まばゆは勘がいいし、もしまばゆが気付かなくても佐倉杏子が気付くでしょう。同類の匂いには敏感だもの。

 

「魔獣も引き始めたようね。後片付けは任せたわ」

「片付ケ」

「ケケケ」

「山みたイ」

「グリーフキューブの山」

 

 


 

 

 翌日。昼休み。

 寝坊してさっき登校したわ。なんだか最近寝つきが悪いのよね。

 まどかと美樹さやか、志筑仁美は教室に居なかったわね。

 屋上かしら? まどかに付けている手下、こういう時に限って報告しないのよね。

 

 

「──も、もう行きますね」

「い、いえいえお気になさらず。それでは……」

 

 今の声、まどかとまばゆね。

 なにかあったのかしら、とりあえず二人の近くに──

 

「ほむら、さん……」

「なにかしら」

「ぎゃああ!」

 

 あなたが呼んだから来たんじゃない。なんでそんなに驚くのかしら。

 

「い、いきなり驚かさないでくださいよ悪魔さん!」

「あら、もう名前では呼んでくれないの? 結局前も一度しか呼んでくれなかったのだし、名前で呼んでくれてもいいのだけど」

「え! ほ、ほ、ほほほ……あくまさん!」

「あら、残念ね」

 

 何故名前で呼んでくれないのかしら。巴マミのことはあっさりと名前で呼んでいるのに。

 

「まぁいいわ。自分のことも知れたようだし」

「あ、そのことなんですけど……」

「えぇ、教えておげるわ。付いてきなさい」

 

 まどかがさっき向かって行ったのは、食堂の方ね。なら、屋上の方が都合がよさそうね。

 手下を使って人除けを済ませて、まばゆを屋上へ連れてきたわ。

 証拠は残さないようにしたけれど、念には念を入れて結界を張りましょう。

 

パンッ

 

「へ? へ?」

「慌てる必要はないわ。面倒なのに嗅ぎ回られると嫌だから結界で区切っただけよ」

「は、はい──はいぃ!?」

 

 どうしたのかしら、いきなり大声出して。ただ変身しただけじゃない。

 

「あなたも変身しなさい」

「なるほど……」

「まばゆ? 何をしているの?」

「あ、すみません」

 

 まばゆも変身したわね……当たり前だけど、同じ姿ね。

 さて……失敗は許されない。そして、成功したとしても、まばゆが私に付いてくれるとも限らない。

 

 ──それでも。

 

「私の目をよく見なさい」

「目、ですか?」

「そうよ」

「な、なぜ……」

「見ればわかるわ」

 

 あなたの魔法と、私の魔法・私の記憶。そしてまどかから貰った私とまばゆのフィルムを掛け合わせて、まばゆが切り取った記憶を()()()させる。

 

「先に行っておくわ。これからあなたの力があなたに視せるのは、あなたの母親が視ていたのと同じような『未来』じゃない。『私の歩んだ道と犯した罪』、そしてあなたが切り取った『あなたの記憶』よ」

 

 何かを言いかけたまばゆが意識を失ってしまった。

 倒れる前にまばゆの体を受け止め、ゆっくりと寝かせてあげる。

 

 あなたが起きるのは、いつ頃かしらね。

 寝ているあなたの頭を撫でながら、ゆっくりと待たせてもらうわ。

 

 


 

 

「気分はどうかしら、まばゆ」

「……最高に最悪です」

「そう。それは良かったわ」

「──暁美さん。起き上がりたいので、頭から手を離してください」

「嫌よ。また逃がしちゃうかもしれないでしょう」

「ここ、あなたの結界の中ですよね。逃げられるハズないじゃないですか」

「それでも」

「……」

 

 どうやら、しっかりとフィルムを植え付けることができたようね。やっぱり名前では呼んでくれないようだけど。

 

「なぜ、あんなことをしたんですか」

「この前言ったはずよ。大切な人には──まどかには人としての幸せな人生を歩んで欲しい。魔法少女なんかのために犠牲になって欲しくない」

 

 だから私は、まどかがまた人として過ごせるようにするために、まどかを否定した。

 

「駄目じゃないですか。鹿目さんを裏切って……一人になっちゃうなんて」

「いいの。私がどうなろうが、まどかが生きてさえいてくれれば、それで」

「駄目です」

「いいの」

「駄目です」

「埒が明かないわね」

「譲りません。暁美さんは鹿目さんの傍にいるべきです」

 

 私がこれでいいと言っているのに、どうしてそこまで固執するのかしら。

 だいたい、元々まどかを契約させることなくワルプルギスの夜を越えた後は見滝原から去るつもりだったのだし、これからも近付きすぎず離れすぎずの距離感でまどかを監視するつもりだもの。

 それに──

 

「あなたは何か勘違いしていたようだけど、私のゴールは『まどかを魔法少女にしない』ことが大前提なの。『全ての魔法少女の救済』は関係ない」

「……えぇ、知っています」

 

 そう、知っていたの。でも、あなたが最初(最後)の日にああしたのは、きっとそれが最善だったから。

 その結果が、私の望んでいたものではなかったというだけ。

 

「人間のまどかと円環の理を切り離すことはできたけれど、彼女はまだ不安定。何かのキッカケがあれば、まどかは円環の理へと戻ってしまう」

「……そういうことですか」

「そういうことよ。また協力してもらうわよ、まばゆ」

 

 よかった。

 

 もう結界も必要ないわね。結界を解いたら包囲されていた、なんてこともなかったし、上手く隠蔽できていたようね。

 

「見つからないように用意した結界だったけど、上手く作用したようね」

「見つかる? 誰にですか?」

「巴マミ」

「あー……。なんでマミさん名指しなんですか」

「佐倉杏子は自分の利益にならないことに対しては積極的に動かない。美樹さやかは現状、まどかが関係しない限り私にはあまり近寄らない。校内で何者かが結界を作れば真っ先に駆けつけるのは巴マミ、あなたと親しいのも巴マミ。一番面倒なのが巴マミなのよ」

「なんという言い草……」

 

 私の記憶の一部と偽物の見滝原の事を知っている今のあなたなら、理由はわかるでしょう。

 

「あの、マミさんと私、友達なんですけど……」

「そこは問題ないわ。むしろ好都合よ。あなたが巴マミの近くにいれば、まどかとの接触を回避しやすいはず」

 

 巴マミはまどかの魔法少女に対する憧れを作る大きな要因の一つでもあったし、巴マミ近付いてしまいそうな事があれば、まばゆに対処してもらうこともあるかもしれないわね。

 美樹さやかの方には私から釘を刺してあるから今のところは問題ないし、当面はまどかと巴マミにあまり近付けないようにすることと、まどかやまどかの家族が魔獣に襲われないようにすることね。

 

「細かな作戦会議は今度にしましょう。私の家はわかるわね」

「はい」

 

 まばゆの返事を聞いてから、ずっとまばゆの頭に置いたままだった手を離してあげる。

 ……なかなか起き上がらないわね。それにモゾモゾと動き始めて……。

 

「やったら風穴よ」

「ジョーダンですよ、ジョーダン」

 

 二人で屋上を後にし、廊下を渡り、校門を出て、別れ道まで一緒に歩く。

 その間、特に会話はなかったけれど、何処か心地好くて、ずっと残っていた不安が無くなって、安心感を抱きながらまばゆの隣を歩く。

 

「それじゃあ暁美さん。また、明日」

「ええ。また会いましょう、まばゆ」

 

 

 これからは、ゆっくりと眠れそうね。

 

 

 


 

 

 

 ────珍しく、夢を見たわね。

 あの時の事を夢に見るのは初めてね。

 

「理由は……これかしらね」

 

 体を起こし、隣で寝ている人の顔を見る。

 

「ふふ、よく寝てるわね」

 

 まだ朝が来たばかり。昨日に続いて今日も休みだし、この人なら昼近くまで寝ていそうね。

 ……あの日みたいに、膝枕でもしてみようかしら。起きた時の反応が楽しみね。

 

「……んぐ」

 

 頭を枕から膝に移すことに成功したわ。

 起きる気配はないわね。

 

 ……。少し頬をつついてみようかしら。

 えい。えい。

 

「むにゅ、んにゅ……」

 

 …………。摘んでみましょう。

 

「んにゃ……んむぅ……」

 

 ……………………。柔らかい。

 

「んむう……いたひ……」

 

 …………………………。

 

「い、いたひ、いだ、いだだだ」

 

 起きちゃったわね、残念。

 

「あ、暁美さん……何するんですか……」

 

 ………………………………。

 

「んむぅ、は、はなひへ(離して)ほっへはらへをはらひへ(ほっぺから手を離して)

「名前で呼んでって言ったでしょう」

「ほ、ほふははん(ほむらさん)!」

「それでいいのよ」

「うう、なぜ朝からこんな……おはようございます、ほむらさん」

「ええ、おはよう、まばゆ」

「どうしたんですか? 今日も学校は休みですし、もう少し寝ていたかったんですけど……」

「いえ、特になにも」

「なにもないのにこんなにいじられたんですか?」

「夢を見たのよ」

「夢、ですか?」

「ええ、いい夢だったわ」

「そうでしたか。では一緒に続きを見るっていうのはどうですか?」

「いいかもしれないわね」

「では早速、二度寝と行きましょう……おやすみなさい……」

 

 

 




以下、後書きです。

まどドラ(マギエク・ギアドラ・ギドラ・どかドラetc)にマギレコ君が居る、少なくとも要素は確実に存在していることが確定してとても嬉しい。
ありがとうf4samurai。ありがとうポケラボ。ありがとう知久。

日々scene0の二次創作やポストを漁るゾンビ活動をしていますが、結局五度目のハザードをしてしまいました。

マギレコが散りゆく中でscene0を見始めた人が増えていてとても嬉しいですね。
scene0に触れたそこの貴方。どうです、一度筆を執ってみては?
完成度なんて二の次です。一番大事なのは、貴方の妄想を他の人とも共有してあげることなのです。その妄想が栄養源な人もいますので、恵んであげてください。
おや、書かないのですか?ならば仕方ありません、無理強いはしないので今すぐテキストドキュメントを開いてscene0の感想をFilm毎に2000文字ほど書いてください。そうするとあら不思議、誰かの栄養となる怪文書が出来上がります。それをネットの海に放流してください。


お前も物書きだ。
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