始発点から青春駅へ   作:3ご

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第十九話

「いやあああああああ!!!!!!」

「おほほーーーーーう!? ほほう!?」

「うわあああああああああああぁぁぁぁ!!!」

「「んんんんんんんんんーーーーーー!?」

「おほほーー……ほほ!?」

「ん……グスっ、んんーー」

「ふひひ、ふひひひひひひ」

「ぁぁぁぁ……」

「ん、んん!!? んんーーーー!! んんんんーーーー!?」

 

ーー

ーー

 

「だ、大丈夫ですかシロコさん?」

「ダンゴムシになってますわね。無理もありませんわ」

「ほらだから言っただろう!? これが普通の反応だよ!?」

 

 真っ暗闇。

 

 柔らかい羽毛布団の世界は、私を優しく包み込んでくれる。それはまるで外敵の侵入を防ぐ要塞で、心の中に入り込む邪悪な煙さえも通さない。ここは安全地帯、安全地帯なんだ。降り注ぐ無数の手も、井戸から出てくる髪の長い女性もこの羽毛要塞の前では右往左往する。ずっと篭っていれば、きっと諦めて井戸の奥底へと帰っていくだろう。ふふふ、私の完全勝利なのだ。

 

「頭隠して尻隠さずですわね」

 

 この羽毛布団の防御力を考えると、頭を隠すだけで精一杯なんだ。お尻はもう諦めた。命さえあればきっとまた元気に歩けるようになるよ。

 

「……サノちゃん、これが見たかったんだよね? どう? これでサノちゃんの作品の進捗はとてもとっても進むと思うのだけど」

「ええ、そ……そうですわね! それもこれも全てはサノのえっちな作品の為ですもの。私は――止めましたのよ?」

 

「ちょっと待て!? それはあくまでも肝試しでの話しだろ!?」

「えっと、その肝試しの演出としてね、私は依頼されたの」

「違う違う違う!? っというかここまでやべーの選ぶなよ!? もう三段階低くてもよかったんじゃないか!?」

 

 そっか、犯人はサノちゃんなんだ。

 私をここまで弱らせて、ダンゴムシにさせて、一体君は何をしようとしているんだい?

 

「と、とりあえずだな、一旦この布団はひっぺがそう」

「え、流石のそれは鬼の所業というか……ふひひ、流石はサノちゃんだ。人間の心を持ってないね」

「ヨミに言われたかねーよ!!」

「ほらほらシロコさん、もう大丈夫ですよ。お化けはいません。出てきてご覧なさい」

 

 メルちゃんの声を聞くと、まるで揺り籠の中であやされてるみたいで落ち着く。が、私はそんな簡単な手には乗らない。きっとお布団を脱いだ瞬間、あの髪の長い女性が眼前にいるに決まってるんだ。

 

 けど、私もずっとこのまま布団に包まれてるだけでは餓死してしまう。戦う覚悟を決めなければ。

 

「あ、獣耳だけ出した」

「ふひひ、げんなり垂れてるね。相当テンション低いね」

「もう一声ですわね。どう致しましょうか」

 

「うーん、サノちゃんのパワーで無理やりひっぺがすのも良いけど、それよりも私に良い案があるんだ」

「おほほ? 良い案とは?」

「くひひ、私もついに人間の心を無くす時が来たかもしれない。サノちゃんには負けるけど、極悪非道だよ」

 

「私を引き合いに出すな!」

 

 床の軋む音が響く。この足取りはヨミちゃんだ。彼女は一体何をするつもりなのだろう。

 

「今日買ってきたジャンボデラックスペロロ様プリン……確か数は4つでしたよね? ふふふ」

 

 彼女は鬼だった。

 傷心の私を癒すどころか、追い討ちを掛けて来たのだ。

 私は思わず飛び上がってしまい、頭を守っていた絶対的な守護の鎧であるおふとぉんベールを脱ぎ去ってしまった。これで無防備だ。というか、正直言うとこの顔を見られたくなかったと言うのが正解なんだ。

 

「あっれぇ〜私まだ数しか言ってなー……」

「ヨミ、悪逆非道な行いはそこま……え?」

「言っておきますが、決して私の案……」

「ん……グスン、何、じっと見て」

 

 顔を見合わせる三人。

 でも正直言うと、私も自分のこういった側面に驚いている。どれだけ痛くて辛い事があっても中々感情的になる事が無い私が、ホラー映画一本でここまで打ちのめされたんだもの。

 

「わ、わ、わ……わあああぁぁぁぁぁぁ!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!」

「ガチ泣きじゃないですか!? ちょちょちょメル!! タオルタオル!!」

「あわわ、わわわわわ。ど、どどどどどうすれば、私はどないしたらええのや!!」

「メル!? ダメだ口調が戻ってる……くそ、ここは私が!!!」

 

 一瞬で間合いを詰めたサノが、むぎゅっという音と共に私を抱きしめ、ゆさゆさと背中をさすり始めた。

 そのくらいでこの傷心の私の心が治るとでも? ふーん……あれ、これ結構いい。

 

ーー

ーー

 

 最終的に四つのプリン権限を手に入れた私と共に、四人で近くの山道の麓にある、肝試しの神社までロードバイクを走らせる。

 時刻は夜の9時。ここら辺は基本車で走る道だからか、街灯も少なく、主役は凛々とした虫の鳴き声と、にっこりと微笑むお月様だ。

 

「じゃあ持ち物をチェックしよう」

 

 懐中電灯、スマホ、飲み物。そして何かあった時の保険としてハンドガン。虫除けスプレーも念入りにするべき。

 

「あ、あのー……」

 

 オドオドした顔で自信なさげに手を挙げるヨミちゃん。

 さっきの出来事でよっぽど罪悪感が溜まってるみたいだ。

 

「どうしたの? 言っとくけどプリンは渡さないよ。あれは献上品なんだ」

「えっとそうではなくてですね。実はプログラム的に、この石段を登る前に怪談を声に出して読むってのがあるんですけれども……」

「うっ!」

「で、ですよね!? すみませんすみませんすみません!!」

 

 肝試しはまた今度にしようかと話しが出たが、それだと私があのホラー映画に負けたみたいで嫌だと駄々をこねた。が、これ以上恐怖を体に入れると心が壊れそうだから遠慮しておく。

 

 




次回の更新はまた書き溜めを行いますので、日を跨いでの更新になります。
ここからぐいっとお話の展開が変わっていきます!お楽しみに!

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