始発点から青春駅へ   作:3ご

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第三十二話

 電波塔の管制室。今回の目標地点はそこだ。

 制御盤のアクセス端子にサノから渡されたUSBメモリを差し込み、その場でドローンのスキャンが完了するまで待機。

 彼女のパソコンがUSB経由で制御盤を操作し、周波数帯域の範囲を拡大する。これが私達に与えられた今回の任務だ。

 

「前方よし。オールクリア」

 

 その電波塔までの約10分の距離、敵地のど真ん中に私達はいる。

 ステルス迷彩服のおかげでロボット達は私達を視認する事なく、視界に入っても派手に動きさえすれば認知されることは無い。

 まさかキヴォトスにこのような装備があるとは……いや、きっと私が知らなかっただけだ。今まではとりあえずド派手にドンぱちをしていた。お金も無かったし。

 

「では、残りはこの検問所を突破するだけですわね。フックショットなんて久しぶりに使いますわ」

「だね〜」

「私は使ったことないけど、これどうするの?」

 

 あ。と呆けた顔をする二人。

 え、まさかそれを忘れていたの。通りで事前説明が無さすぎると思ったんだ。聞かなかった私も悪いけど……覆面の存在のせいで意識が全部持ってかれてしまっていたかもしれない。

 

「あ、あれー? 使った事ないかそうですか」

「そういえば説明していませんでしたわね。装備点検でじっくり見ていたからてっきり知っているものかと……」

「ん、見様見真似で出来るでしょ。心配いらないよ」

 

 ま、私なら大丈夫だろう。

 

「じゃ、私から行くね。シロコさんじっくり見といてくださいね」

 

 ヨミが検問所のフェンスの先の高い建造物の鉄棒にフックショットを放つと、そのワイヤーは真っ直ぐに伸び、鉄棒に掴むように絡まる。すると、ワイヤーは中に芯が入ったように硬く伸びきり、まるで細長い棒のような形状になった。

 なるほど、これで力任せに一本道を作り、そこに体ごと移動するという事ね。

 かなりの筋力を使いそうだけど、出来ない事はないかも。リールの力と自身の最初の跳躍力を利用して一気に飛び込む。

 

「ほっ!」

 

 まるで真夜中の大都会に暗躍する泥棒のような身軽さで一気に移動するヨミ。そのまま上までよじ登り、二階建ての監視所の屋上からこちらに手を振る。

 

「では次は私が」

 

 メルも同じように軽やかに移動し、瞬時に屋上まで辿り着いた。ヨミに手を引っ張られ、同じように手を振る。

 

「簡単そうだね。じゃあ次は私」

 

 照準を定め、トリガーに指をかける。

 正確な射撃をするのもそれなりに鍛錬が必要だ。私は多少訓練はしているが、彼女達二人のように同じ場所ぴったりに当てれる自信は無い。

 だから、少し下の、被写体が大きなコンクリートの壁を狙おう。

 

「ふっ!」

 

 フックショットの掃射音が鳴ると、先端の刃が手振れに応じるように、先端から回転し荒ぶりながら飛んでいった。

 待って何これ。想像以上に反動が大きいのだけど。

 かなり見当違いの所に飛んでいってしまった。

 

「ええい、やり直し」

 

 トリガーをもう一度引くと、同じように突っ張り棒になりながら手元に戻ろうとする。

 これもかなりの筋力がいるはずだ。それを平然とやってるあの二人は本当に何者なのだろうか。

 

「次こそは! ……あれ? 引っ掛かった?」

 

 ワイヤーリールの動きが止まった。何度もトリガーを引いても地味に動くだけで巻き戻ろうとしない。

 

「ぬぬぬ、戻れ戻れ」

 

 全力でトリガーを引きまくる。

 力一杯、全力で。

 すると、大きな金具の破裂音が周囲に鳴り響いた。地面を削る音と同時に手元に巨大な物体がやってくる。そう、フェンスだ。

 

「……やっちゃったかも」

 

──警報! 警報! 警備ロボットは直ちに現場に急行し、状況を確認せよ!

 

 絡まったワイヤーを抜き取り、もう一度フックショットを放とうと監視塔に視線を送ったが、目の前には何十対もの警備ロボットが私の所へと急行しており、照準を合わせている場合では無くなってしまった。

 すぐさま踵を返し、近くにあった大きい段ボールの影へと隠れ、懐の無線機を取り出す。

 

 ーーサノちゃんメルちゃん聞こえる? ごめん、私は失敗した。二人は先に管制室を抑えて。私は何とか突破して後から合流する。

 ーー……了解。幸運を祈る。生きて帰ってこい。

 ーー帰って美味い紅茶を飲む約束だぜですわ。

 

 通信終了。

 さてどうしたものか。

 

「ギギ、シンニュウシャ、シンニュウシャ ノ コンセキ」

「ツカマエテ ワレワレ ノ ブヒン 二 シテヤル」

 

 うう、捕まったらバラバラにされるらしい。

 銃をぶっ放しても良いけど、下手に戦ったら隠密作戦じゃなくなるよ。

 ここは大人しく段ボールでも被ってやり過ごそう。

 

ーー

ーー

 

「という事があったのさ!」

 

 翌朝、私達四人は電波塔が襲撃されたというニュースを見ながら、事の経緯をサノに説明する。

 

「けっふっ!」

 

 お豆腐の味噌汁と白飯、そして出し汁をたっぷり使った卵焼き。

 サノが朝ごはんは和食が良いと以前言っていたので、早めに起きてせっせと作ったのだ。

 だって、昨日の結末を話したら怒られそうだもん。

 上手く行った万歳! って合流した時の喜んでた顔を崩したくなくてね。とりあえず黙っておいた。まぁ朝言えば良いかなって。

 

「おかわりいる?」

「くふっけふ……ちょちょちょっと待って下さいね」

 

 言われた通りちょっと待つ。

 よし待った。

 

「おかわりいる? 朝は沢山食べるんだね」

「ええ、お願いします……。ぁぁ、よかったぁ、沢山予防線貼っててよかったぁ……」

 

 今回は装備に助けられた。それが無ければ任務は失敗。あのロボット達の部品になってたかもしれないと思うとゾッとする。

 

「でもフックショットは初見は無理ですわね。私達も会得するのに2ヶ月は掛かりましたし」

「そうだよ。シロコさん気にしなくて良いですよ。次ですよ次っ! あ、おかわりください!」

「うう……へこむなぁ」

 

 色々経験したから何でも大丈夫だと思ってたけど、驕りだった。

 どこかから「驕るな──!!」と声が聞こえてきそうだ。

 でも、たまには失敗するよ。

 世の中には踊ってない夜が気に入らない人もいるんだ。それは、踊らない夜が気に入らない事を知る為に、踊らない夜を過ごしたという事なんだよね。

 うん、何を言っているんだろう私は。

 今日はお休みだし、ご飯食べたら二度寝しよう。

 

 




もうそろそろ前編の終章辺りです。
ここら辺からお話は加速していきますのでお楽しみに。
あ! 実はここだけの話しですが、ご評価とかしてくれるとモチベ上がるんですよね!
かなりのトップシークレットな情報ですが、ここまで読んでくださってる方に特別にお教えします!
ふふ
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