始発点から青春駅へ   作:3ご

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第三十五話

 ──ウルフ小隊。

 

 初めて聞く名前。以前テレビでFOX小隊がインタビューされてたのは見た事があるけど……でも、知らないのは当然だ。

 SRT特殊学園は連邦生徒会長直属の学園組織。ヴァルキューレとは打って変わってその秘匿性は高く、いくら調べても情報すら出てこないはず。

 でも、目の前に書かれてある経歴には間違い無くそう書かれてあった。

 そもそも応募しないと生徒名簿は届かないはずだけど……誰かが送ったのかな。

 

「……これ以上の時間いるのはまずい。とりあえず帰らなくちゃ」

 

 事務室の鍵を掛け、社長室に戻し、セキュリティ装置を起動させてお店を出る。

 店内は冷気の残りで涼しかったが、外に出るとむわりとした湿気と熱風が首元にじわりと汗を滲ませた。

 

「死亡……。あの三人と友達の子、間違いない」

 

 以下三名の記載。そして一年生の空白期間。

 もしかして、あの三人もSRT特殊学園の生徒だったの? 今は連邦生徒会長も失踪しているから、ヴァルキューレに吸収されたとは聞いた事あるけど。

 でも、時期的にそれ以前の出来事だ。

 

「でもあの身のこなしと基礎体力。軍用装備を軽々と扱う練度の高さを考えると」

 

 合点が行く。

 SRTに入るくらいだ。相当な訓練を積んでいるのだろう。

 ロードレースの練習なんてへっちゃらだし、警備の薄い電波塔に入る事など朝飯前だ。

 カイザーの基地に拘るのも、もしかしたら何か確執があるのかもしれない。

 

「大口ミコト、私にそっくりなのは偶然?」

 

 ポケットに入っているスマートフォンからバイブが鳴る。

 漕ぐのを辞め、脇道にロードバイクを停めスマートフォンを確認すると、いつものメンバーのモモトークにメッセージが入っていた。

 

ースキャン結果が出た。結論から言うと黒だった。

ーそれってサノちゃんのパンツの色だよね?

ーおかしいですわね。この前は白でしたのに。

ーなんで態々自分の制服の中をスキャンしてお前達に報告する必要があるんだ!あとなんで知ってる!?

ーん、あのスーパーの?

ーですです。地下に直線的な長いトンネルが掘ってあって、その行き先があの大口神社でした。

ーこれはいよいよ来る所まで来たね。私はいつでも準備おーけーだよ。

ー私もですわ。

ーシロコさんはどうします? 割と危険が伴いますが……。

ー私は大丈夫。この前みたいにヘマはしない。でも、ブリーフィングがあると助かるかも。

ー分かりました。銃は自前のですと痕跡が残りそうなので、こちらで全員分用意します。

ーサノちゃんポテチも忘れずにね。電波塔の時大好評だったから。

ーあとアップルティーも欲しいですわ。

ーん、ヨミちゃんが食べてたジャーキーが気になる。

ーほんとですか!? 私の食べかけと新品はどちらがいいですか?

ーヨミ、普通にキモイぞお前。

ーヨミったら……ちょっとそれは。

ーん、新品未開封でお願い。

ー乙女の可愛らしいジョークじゃないですかぁ〜!

ーじゃあお前はシロコさんの食べかけのジャーキー食えるか?

ーいや全然いけるでしょ。サノちゃんぶっ飛ばすよ?

ーサノったら……流石にそれはいけますわ。

ーなんで私が責められてるんだ!

ーん、新品未開封でお願い泣。

ーじゃあ明日はジャーキーパーティーですね!

ーうん、家に来る?

ー行きます。何度もすいませんがお邪魔しますね。あとパーティーでは無いからな?ブリーフィングな?

ー気絶マカロン余ってますけど持っていってもよろしくて? 消費出来なくて困ってますの。

ーいいよ。皆で気絶しよう。

 

 今の関係を壊したくない。

 時が経って、もっと深い仲になってから聞くべきだ。

 私の行動は、ただの無粋。

 沢山の情報が頭の中でぐるぐるするけど、それは今考える時じゃない。

 

ーー

ーー

 

「ではこれより、:一網打尽!?チキチキ!カイザー撲滅キャンペーン!!:会議2を行う。書記はヨミ、議事録はメル。進行はこのサノが務めさせて頂きます。シロコさんは……うんと、えっと、まぁそこに座っててください!」

 

 以前に比べてハイテンションなサノの前に、私達三人はと言うと、乙女とは言い難く肉の燻製物に口内をクチャりクチャりと舌鼓させていた。

 ヨミセレクションのジャーキーに、メルセレクションのジャーキー。

 お題は勿論「任務前に皮肉を言いながらそれっぽく食べても違和感の無いジャーキー」だ。

 

「おい書記、お前の位置はホワイトボードの前だろう」

 

 ゴゴゴゴゴゴと圧死面接官の如く詰め寄るサノ。流石のヨミもひぇ〜とジャーキーを咥えながら素早くホワイトボードの前に移動する。

 悪いね。私は何も役職が無いから、ここでジャーキーを食べ放題なのさ。

 

「ああ! なんて忙しいのでしょう!」

 

 議事録係のメルもサノの窒息面接官のような出立に怯え、必死に仕事をするふりをする。

 血走った目でギロリと見られれば誰だって怯えるだろう。

 

 悪いね、私は無能だから何も役職が無いのさ。つまり、このジャーキーは食べ放題。

 

「シロコさんも真面目に聞いてくださいね」

 

 100倍の重力を思わせる圧を全身に帯びた私は、とりあえずいそいそとテーブルに散らばったジャーキーを集め、袋の中に仕まう。

 一口大きめのジャーキーを口に咥えサノに向き直すと、それまでの死神の表情とは打って変わって天使の綻んだ表情に様変わり。

 

「えーでは始めます。結論はモモトークで話した通りです。やはりあのスーパーと神社の基地は繋がっています。シロコさんの言う通り、日用品はこのルートを使って仕入しているのでしょう」

「ルートは一つしかないですわね」

「そうだ。まぁ前回会議で話した内容と被るが、やはり業者に成りすまして奥地に入るのが自然な流れだろう。そこで問題なのが、誰に成り済ますかだ」

 

「うん、スーパーの店員さんではダメだろうね。それとカイザーの基地へ運ぶ人は無関係だろうし」

「だと、私も思います。なので変装は良いですが、それをどこのタイミングでするかを真剣に考えなければいけません」

「後、変装の衣装もどうするかですわ」

「メル、それはお前の家のお金の力でどうにか出来ないか?」

「……余裕ですわ!」

「余裕なんだね!」

 

 早速発注しますわと、パソコンをカタカタさせるメル。

 

「じゃあ、次は装備に関して話しましょう。中型のライフルはダメですね。出来てもハンドガンのサイズがベストでしょう」

「後は超小型のPCが欲しい」

「だそうだ、メル、すまないが財閥の力で用意出来ないか?」

「余裕ですわ!」

 

 




やっと第一コンセプトの核心に迫って来ました。
ウルフ小隊と大口ミコトに関してはだいぶシリアスな話しを設定していますのでお楽しみに・・・!
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