始発点から青春駅へ   作:3ご

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※いつも誤字報告下さってほんとありがとうございます....!! 頑張って減らします。


第四十話

 スキャン結果で見た通り、この施設は中央が地下から地上まで大きな吹き抜け。その周りに各階層があり、階層によって役割が異なっている。

 

 全体で四階の構造。私達が来た所は四階で、手すりを超えて吹き抜けから見下ろしたら一階の地面が見える筈なのだが、三階と二階の間に円を描いた黒い球体が鎮座しており、視界を遮る。

 吹き抜けに沿った通路で囲むようにあるその黒い物体。通路に伸びた細長い橋から複数の職員が出たり入ったりしている事から、何かしらの部屋であることは想像出来る。

 

「サノちゃん。あのオブジェクトってスキャンにあったっけ?」

 

 釣られてサノも手すり越しの地下に視線を送る。

 

「いえ、あれはスキャンに無かった物体です。……一体何の部屋なのでしょうか」

「不自然だよね」

 

 おかしな事に、その黒い物体を視界に入れると、ピリピリと体全体に静電気の様な磁気が纏わりつく感覚がした。あまり良い感触ではないので、無理矢理背を向ける。

 

「ともかく、警備室に向かいましょう」

「そうだね。でもどうやって見つける?」

「一つ一つ部屋を当るしかなさそうですが、それだと怪しまれる。一度下のフロアに降りてみましょう」

 

 メルやヨミが向かった逆の通路に足を向け、脇にある細い通路に入る。

 吹き抜け沿いの通路には階段は無かった。だとすると、外側に向けて伸びている通路の途中にきっとある筈。

 

「ふむ、シュミレーション室にエネルギー管理室か」

 

 部屋の上部に刺さってあるプレートには、各部屋の名称が書かれてあった。

 

「想像ですが、エネルギー管理室なるものがあるという事は、それなりに規模の大きな実験なのでしょうね」

 

 眉間に皺を寄せ、指先が顎に添えられる。

 しばらく歩いていると、今度は部屋では無く四角に切り取られている箇所に出会した。

 中を覗くと階段がある。まるで病院みたいに、そこの空間だけやたら反響音が鳴り響く。

 作戦中に大きな音を立てるのは論外だと言っていたサノは、小声で囁くような声色を使い、指先で私の視線を誘導した。

 

「ほらここ、階層の部屋名がずらりと並んでますね」

 

 四階は先程見たシュミレーション室にエネルギー室。そして居住室に飲食室。

 三階はテクニカル室と会議室。二階はデータ解析室に……時間・空間研究室? 一階はセキュリティ・警備室だ。

 

「警備室あったね。それよりも……時間・空間研究室が気になる」

「ええ、ここで一体なんの実験をしているのか俄然気になりました。とにかくまずは一階に降りましょう」

 

 時間帯も時間帯で、館内を行き来している人は殆どいない。が、それでも数人の職員の人とすれ違う事から、朝と夜で交代制の作業があるのだろう。それ程管理しなければならない物があるのか。気になる。

 

「私達の姿に疑問を持たず軽く会釈するって事は、中の職員達は同じ職場の顔を把握してないのかな」

「有り得ます。まぁ、和気藹々しに来た訳ではないでしょう」

 

 確かに。

 こんな秘密施設で働くくらいだ。

 

 コツリコツリと反響する靴音を何度も響かせると、1Fの文字が上部に記載されたフロアに躍り出た。

 早速通路を直進し、中央の広場に出る。

 

「この階は部屋が少ないね」

 

 上を見上げる。

 そこには四階から見た球体の大きなオブジェクト。下から見ても風景は同じだ。中には何が入っているのだろう。

 

「丁度向かい側に小窓があります。その奥にまた通路。何かの受付室みたいになってますが、恐らくそこがセキュリティ室でしょう」

「ん、どうやって中に入る?」

「シンプルに誘き寄せましょう。の前に、警備員の対処はどっちがやります?」

「私が引き受けよう」

「了解。では向かいましょう」

 

 側面沿いを歩き、警備室の手前。

 サノが一体何をやるのかと思えば、まず手始めに小窓を叩いた。

 すると、中からイヤホンを付けた大人が顔を出し、彼女の顔を確認したあと、面倒そうに窓を開ける。

 

「なんだ? 見ない顔だな。ま、全員の顔を覚えてる訳じゃないから当然か。ヒック」

「私もあなたの顔を見るのは初めてだよ」

「ん? そんな訳ないだろう。入口はここ1つだけ、出口も三階にしかないんだ。その時全員受付してるはずだぜ」

 

「人の顔を覚えるのは苦手なんだ。ってそれよりも、今動ける警備員あなただけか?」

「ああ、今日の夜勤は俺だけさ。やってらんねーぜったくよぉ」

「わかった。とりあえず一緒に来てくれないか? 向こうで人が倒れてるんだ」

 

 サノがそう話している間、私はというと受付の下でうずくまり、少しずつ移動中。

 監視カメラには映り込んでいるが、それを監視する警備員はサノに集中している。

 

「何ー? くっそ面倒だな。あー行けばいいんだろ行けば。どうせ深酒しすぎて倒れただけだろ。この環境ストレス溜まるからな。ひっく」

 

 鍵音が鳴り、扉が開く。

 それを閉めようとした瞬間、受付の首に麻酔銃を放ち、意識を奪う事に成功。

 すかさずサノが倒れて床に頭を打ち付けそうになる受付をキャッチし、ゆっくりと寝そべらせる。

 

「ここの大人達はマヌケが多いな。普通こんな古典的な方法引っかからない──て、酒飲んでたのか。随分怠惰だな」

「それくらい退屈で暇なのかな」

「元々人に見つかりにくい所ですからね。警備業務は意外と辛い仕事ですから」

 

 セキュリティ室に入ると、そこには10台以上のモニターが壁に埋め込まれており、そこには各箇所の部屋やなんと休憩室まで映し出されていた。もしこの受付がまともに仕事をする人であったのなら、今頃は警備員総出で牢屋の中に閉じ込められてしまっていたかもしれない。

 

「さて、パソコンはこれか。監視カメラの映像を消して、他にも情報が無いかを探ってみましょう」

「了解! とにかく触ってみようか」

 

 サノがメインPCをいじっている間、私は横に置いてあったサブであろうノートパソコンを立ち上げる。

 最初のパスコードはサノの持っているUSBを差し込むだけで解除出来た。どうやら色々なソフトにも汎用的に使えるようで、重宝しているそうだ。

 

「んっと、メールから開くかな」

 

 手紙マークのアプリをクリックし、ウィンドウを出す。

 左側に件名、そして右側に本文と、一般的なメールアプリと同じデザインだ。

 

「一番最初のメールから読んでいこう」

「お、良い手際ですね。そっちは頼みましたよ」

 

ーーーーーーーー

 件名:プロジェクト「クロノス」について。

 

 ※このメールは極秘事項を含んでおりますので、取扱いには十分ご注意ください。

 

 20xx年⚪︎月⚪︎日。

 

 あなたはプロジェクト:クロノスの警備員として任命されました。下記事項を読み、速やかに指定の位置まで移動してください。

 来月の第一週から実装フェーズに移行します。

 具体的なスケジュール・住所については、添付ファイル「ProjectC_.pdf」をご確認ください。

 

 これらの情報は厳重に管理され、関係者以外には絶対に漏洩しないようお願いします。

 ※万が一漏洩した場合、命の保証は無いと思われてください。

 

 何か不明点がございましたら、直ちにご連絡ください。

 

 どうぞよろしくお願いいたします。

 

 担当:⚪︎⚪︎

 カイザーコーポレーション

 

ーーーーーーーー

 

 漏洩した場合、命の保証は無い。

 もしかしたら、いきなりこんなメールが来たのかもしれない。そう思うと同情する。力の無い人ならば抵抗も出来なく、殆ど強制連行をしているのと同じだ。

 プロジェクト「クロノス」。

 月刊キヴォトスのクロノスジャーナリズムスクールの事かと思ったが、関係無いだろう。あそこがカイザーと繋がりがあるなんて聞いた事が無い。

 他のメールも見てみよう。

 

ーーーーーーーー

 件名:クロノスの秘匿事項・全体会議について。

 

 お疲れ様です。⚪︎⚪︎です。

 

 ⚪︎月⚪︎日。三階の会議室にて、クロノスの現状について発表を行います。

 業務時間帯の調整を行い、下記時間帯に必ず全員参加してください。

 

 開始時間:18時

 終了予定時間:19時 

 

アジェンダ:

 

 プロジェクトの現状確認

 次フェーズのタイムライン確認

 各チームの役割と責任分担

 セキュリティ対策とデータ管理

 

質疑応答

 

準備事項:

 

 最新の進捗報告書を各自持参してください。

 次フェーズに関する質問や提案があれば、事前にまとめておいてください。

 

 ※今回、プロジェクト主任・司令官であるカイロス様がご出席されます。

 各員、服装・身だしなみには十分気を配るようお願い申し上げます。

 

 よろしくお願いします。

 

ーーーーーーーー

 

 カイロス……カイロス?

 これってまさか──いや、偶然?

 黒野リアが倒してって言ってきた人の名前だ。

 でも、黒野リアって生徒は存在しなかった──いや、私が探し切れてないだけかも。

 

「シロコさん? こちらの作業は終わりました。もし気になる資料があれば渡したUSBメモリの中にダウンロードしてください。とにかく動きますよ」

「……うん。えと、次は?」

「あの黒い球体の中に入りましょう。構造を見る限り、ここからが入り口となってるみたいです。特記事項に防護服の着用も無かったので、生身でも問題無いはず。どうやら何かしらの船みたいなものらしいですから」

「船?」

「はい、なんの船かは知りませんが、まずは見てみる事が重要です。写真にも収めましょう」

 

 手に負えない内容なら、ヴァルキューレや連邦捜査部シャーレに連絡すればいい。

 彼女はそう言い、部屋から出る。

 心臓がドクンと脈打ったが、今はそんな暇は無い。

 

「ヨミとメルは出口を見つけたみたいです。私達は私達の仕事をこなしましょう。さぁ、行きますよ!」

「了解。こっちも重要な情報は手に入れた。リスクの為にも早く退散しなきゃね」

 

 彼女の足取りを追いかけ、扉を閉める。

 扉から右側に向き、奥に続いている通路をひたすら走って移動すると、エレベーターが見えた。上階に停止していたのを呼び、乗り込む。

 

「この船のような物で何をしているのでしょうか。皆目検討が付きません」

「……船って事は、移動する前提があるということ」

「たかが移動の為に、辺り一体を吹き飛ばすのですか?」

「……やるでしょ。カイザーなら」

 

 ベルの音が響く。

 開かれた扉の先には、チタニウムに包まれた無骨なデザインの通路。

 楕円の形をした小窓が複数左側にあり、そこからは深紅に近い光が漏れ出ていた。

 私は、この風景を見た事があった。でも、ただの既視感だと自分に言い聞かせる。

 

「ゲームでよく見る宇宙船みたいな感じですね」

「宇宙に……行くのかな」

 

 さらに前進すると、そこには大きくて重そうな扉。

 横にあるキーパッドにIDカードを読み込ませると、左右に向けてゆっくりと扉が開く。

 

「あ……」

 

 多次元解釈エンジン管制室。

 扉の先に広がっていたのは、中心を囲むように紅線が側面から円を描き。床には機械エンジンが露出され、円を描くように外側に広がる。

 私達が足を踏み入れると、床は仄かに白く輝き、紅色のフォグが部屋全体を充満させた。

 

 疑問がぐるぐると頭を駆け巡る。

 忘れる筈が無い。

 忘れる事など出来ない。

 だって、私はずっとここにいたから。

 

 ──ナラム・シンの玉座に。

 

 

 

 

 




急展開の中申し訳ないですが、またしばらく書き溜めの旅に出ます。

そういえば、先日は沢山の方に読んで頂き、何と日間(ルーキー)最高7位まで昇ることが出来ました。
ありがとうございます。
(私の世界線の)ゲーム開発部の皆もとても喜んでいました。

個人的に一番嬉しかったのは、ランキングに載ることや多くの方に読んで貰うと言うのも勿論なのですが、何より最新話まで読んでくださる方の人数が多くなったのが一番嬉しかったです。
本当に個人的な考え方ですが、一話を千人の方に読まれるよりも、最新話を数人の方に読んで貰う方が本当に嬉しい。私のモチベーションの割合の中でも大半を占めています。

なので、今最新話まで読まれてる方へ。※勿論全読者様もですよ!

感謝しています。

紆余曲折あると思いますが、この物語は最後の最後まできちんと書き切りますので(プロット自体は最後まで組んでる)お付き合い頂くと幸いです。

と、モモイが言ってました!
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