始発点から青春駅へ   作:3ご

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第四十一話

 あの日、あの時、私は……救われた。

 本当なら自爆シーケンスにその身を任せ、私の世界の先生と一緒に死後の世界へと旅立つはずだったのに、この世界の先生は最後の転移装置を私に使った。

 そして、私はこの世界で生きる事になった。

 成りたい自分になっていいんだよって、命を賭けて私に伝えてくれた偉大な人。私の大好きな人、尊敬している恩師。 

 ナラム・シンの玉座は、私が先生と過ごした数少ない命以上に大切な思い出の場所。それが何故カイザーの基地にあるのか、疑問と同時に憎しみが湧いてくる。

 

「どう……して」

 

 宇宙空間に近い大気圏で爆発し、その後はヴェリタスやエンジニア達が回収したとニュースで見た。

 文字通りの爆発で、木っ端微塵になっていたはず。それがどうしてここにある。しかもこんなに綺麗な状態で。私が先生達と戦った跡すら無い。

 

「シロコさん? ここには空間だけで何も無いようです。この先の時間・空間研究室に何かあるかもしれません」

「う、うん。ごめん、なんだか気分が悪くなっちゃって」

「目に悪い配色ですからね。とにかく先に行って出ましょう」

 

 私の時とは違い、出口扉なる物がくり抜けられており、そこからエレベーターに乗り階層ボタンを押す。

 

「気分、大丈夫ですか?」

「……ん、ごめん、ちょっと無理かも」

「了解。そもそも長居は危険で無用ですから。次の部屋のデータを抜き次第退散しましょう」

 

 心臓の鼓動が加速し、呼吸が上がり額から汗が滲む。

 心の芯を掴まれ、ヒビを入れられたような胸の苦しさ。真っ暗闇に放り投げられ彷徨う孤独のような不安が、身体中を駆け巡る。

 

 エレベーターから降り、一つ自動扉を潜り抜けると、そこにはメルとヨミが最後の一人であろう研究員に麻酔銃を打ち込み、気絶させている最中であった。

 部屋の中にはすやすやと眠る人が三人。オフィスチェアにぐったりと腰掛け、まるで急に睡魔が来たかのような唐突さ。

 二人は互いに顔を見合わせると、私の足元に駆け寄り、顔を覗き込む。

 

「シロコさん? 顔が青いですよ?」

「もしかして黒の球体の部屋、やばい所でした?」

「……ごめん。慣れない事の連続で疲れたのかも」

「ですね。さっさと情報だけ抜き取って帰りましょう」

「そだね。でもサノちゃん、どのパソコンに入ってるかな? やっぱりこのメインモニターの前のやつかな」

 

 部屋の中心にある、デスクと一体型になっている大きな機体。

 起動すると、見た事のないロゴが現れすぐにデスクトップの画面に切り替わった。パスコードは生体認証となっており、近くで寝ている職員の指を指定の場所で認識させる。

 下にあるUSB差し込み口にメモリを挿し、重要そうな書類が入っているファイルを探しあてる。流石にデータそのものをぶっこ抜こうかとしたが、それぞれスタッフによってアクセス出来るファイルがあるらしく時間を考えて断念せざるを得なかった。私は少しでも体調を回復しようと、別のパソコンの前に座り込む。

 

「メル、ヨミ、脱出口の確保は大丈夫か?」

「バッチリですわよ! 大口神社の昇降口、あそこから出られますわ!」

「その後は歩きで帰らなきゃだけど、まぁたまにはね?」

「ん、ここからだととてもしんどい。野宿必須だね」

「ふ、言うほど離れてないでしょう。のんびり帰れば──」

 

 サノは何かを見つけたのか、急に喋るのを止め姿勢を前のめりにし、画面に釘付けになった。

 メルとヨミはその動きに違和感を持ったのか、彼女の近くに駆け寄り、中の画面を一緒に見る。

 私の座っている角度からは見えなかったので「どうしたの?」と声を掛けたが、三人は画面から目を離す事なく、目線だけを動かしていた。

 

「……何これ?」

 

 ヨミが眉を困らせながら口元を抑え、後ろに後ずさる。

 サノも眉を顰め、段々と前のめりの姿勢を正し、大きく深呼吸すると私を一瞥し、画面を指差す。

 

「何かあるの?」

 

 ナラム・シンの玉座の事が頭から離れないが、彼女達の反応がどうしても気になったので、席を立ち画面の前へと向かう。

 

「どうしてカイザーがこんな情報を……?」

 

 メルの手が握り拳になり、画面に向かって殴り掛かろうとする所をサノが必死に呼び止め、肩を抑えこむ。居ても立ってもいられなくなった彼女はその場にしゃがみ込み、両手で目元を覆い隠した。

 

 画面を覗く。

 

 そこには、数人の人の情報が書かれていた。生徒名簿と同じデザインで左側に本人の顔写真、右側に概要。

 月森ヨミ、大実メル、末子サノと大口ミコト。そして──砂狼シロコ。私の写真も大口ミコトの写真も、瓜二つと言って良い程似ていて、今の私と区別するのが難しい程だ。

 

 四人の横に書かれてあるウルフ小隊という名前。大口ミコトの横には、20xx年x月x日に死亡と書かれていた。

 

 プロジェクトークロノスーにおいて、ウルフ小隊残党の三人はプロジェクト進行の妨げになる危険人物として。砂狼シロコはこのプロジェクト成功の要として、生死問わずで確保の命令が出ていた。

 作戦の本懐となる、世界線移動の鍵として。実際に世界線を移動してきたこの世界ただ一人の人物として。

 どうしようもない変える事のない真実が、目の前に書かれていた。

 

「世界線の……移動?」

 

 サノの視線が私から離れず、疑問を口にする。

 私も聞きたい事や知りたい事は沢山あるけれど、私達が今一番知らなければいけない事はこの作戦の目的だ。

 でも、三人にとって知りたい事は、きっと私のこと。

 

「まず、この場から離れよう」

 

 

 

 

 

 

 




おっと、何故カイザーがプロトコル:ATRAHASISを持っているのでしょうか!?
あれは名も無き神々の王女の為の筈では!?
まーそこまでこの物語では重要ではないのですけどね!!!
あ、あと更新を少しの期間ばらつかせます。ちょっと現実が忙しく・・・
なのでお気に入り登録してもらえると嬉しいですね! あとめっちゃ小声ですけどご評価とかくださるととても嬉しいです・・・///

ってアリスが言ってました。
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