始発点から青春駅へ   作:3ご

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第四十七話

 目を覚ます。

 

 知らない天井に暖色の照明。そしてやたら静かな換気扇の音。寝起きだから頭がぼーっとして、周りの音を正確に認識出来ていないのかと思ったが、どうやら静音性が高いだけみたいだ。

 頭を動かし、辺りを見回す。まるでモデルルームの様な部屋。暖色の照明が部屋の四方の設置されており、直接目に光が入って来ない様に意識しているのか、間接照明が壁を伝う。

 そして壁際には大きなテレビ。その前にはローソファが並んでおり、柔らかそうな緑色のラグが白色のフローリングと相まって部屋のインテリアに彩りを加える。

 

「ふかふかのベッド」

 

 私のベッドは優に四人は眠れる程大きく、それにちなんで枕も四つ。

 

「お、起きた起きた!」

 

 奥の扉が開くと、そこにはサノとメル、ヨミの姿があった。

 ヨミは真っ先に私の元に駆け寄り、両腕いっぱいで抱きしめ、耳元を指で撫で始める。

 

「ミコトちゃん体大丈夫? 随分長く寝てたけど……起きてよかった」

「あの麻酔が効いたんだろうさ。もうすっかり夜中なんだぞ? 心配させないでおくれよ」

「疲れていたのかもしれませんわね。この部屋シャワー室もありますし、ゆっくりしましょう」

 

 麻酔……つまりここはまだカイザー基地の中。

 この基地は私の中の世界線の移動の鍵を求めている。だから私をここに幽閉して、実験が完了すれば殺すつもりだ。どうして三人がこの基地でカイロスの洗脳を受けたのかは知らないが、もしかしたらあの情報を真意を知る為に舞い戻って来たのだろう。そしてムネモシュネの仮面の力に負けた。

 

「ん、じゃあ先にシャワー浴びるね」

「着替えは洗面台後ろのタンスの中に入っているから、好きに取ってくれ」

「その間にカレー温め直さないといけませんわね」

「髪の毛のメンテは私に任せて!! あとはよろしくねサノちゃんメルちゃん!」

 

 バスタオルを頭に巻き、靴下を脱ぎ始めるヨミ。もしかして一緒に入るつもりだろうか。

 が、その欲望を早急に察知したサノがヨミを羽交い締めにし、リビングへと引っ張っていく。

 

「ああーんサノちゃん! ああーん!」

「わざとらしい声を出してもダメだぞヨミ。ミコトだって困ってるじゃないか。大丈夫、急に居なくなったりしないさ」

 

 「うん」としおらしく声を出し、頬を膨らませながらトボトボとリビングに戻っていく。

 扉が閉まると、サノは私の方へと向き、真っ直ぐに瞳を見つめて来た。

 眉を曲げ、瞳を細める。眉間に皺を寄せるその顔は、今までに見せた事のない悲しそうな表情だった。

 

「急に……居なくなったりしないよね?」

「え? ……ん、多分」

「多分じゃだめだ。絶対……絶対なんだ」

 

 拳を握りしめ、目を伏せる。

 

「理由だけ聞かせてくれ」

「理由?」

「あの作戦の後、一体どこに隠れていたんだ? どうしてすぐに戻って来てくれなかったんだ? 私達が一体どれだけ……いや、この話はよそう」

 

 感情的な言葉を発する自分に気付いたのか、彼女は何も言い残す事なく踵を返し、ドアを開け洗面所から出ていった。

 

「……私じゃないよ」

 

 服を脱ぎ、まずはシャワーを浴びる。

 本当はこんなのんびりしている時間は無いのだが、まだ状況が掴めていない。まずは出口を探さなければならない。

 

「三人の洗脳を解くには、あの仮面をどうにかしなきゃ」

 

 カイロスの行動を思い返してみる。奴がその気になればいつでも三人を操れるのだろう。正直、まともな武器を使ったとしてもどうなるか予測が付かない。ただ組み伏せられただけだが、それだけでも彼女達の戦闘力は本物だと理解出来る。今までも思い返してみてもそうだ。あの電波塔での出来事や普段の彼女達を見る限り、流石はSRTの生徒と言うべき。

 つまり、今の状況は分が悪いと言う事。戦闘も説得もダメなのなら、外部からの助けに頼るしかない。

 ここには私の命を狙う作戦もあり、しかもナラム・シンの玉座もある。

 

「シャーレに、先生に伝えた方がいい」

 

 何故、世界線の移動をする必要があるのかは不明だが、どうせ碌でも無い事に違いない。

 

「怖いけど、私がやらなきゃ」

 

 蛇口を閉め、バスタオルで体を吹上げ、ドライヤーの温風に髪を靡かせる。

 とても長く眠っていたのだろう。目元はぱっちりと開いていて、顔も浮腫んでいない。夜と言っていたから麻酔で眠らされて翌日の夜のはずだ。

 

「明日はロードレース……今はそれどころじゃないか。でも、ナミさんにとても怒られそうだ」

 

 ドライヤーを止め、コードを巻き付けてサイドパネルの側面に置き、振り向くと、そこには真っ暗な世界が広がっていた。

 一瞬、停電でも起きたのかと脳が錯覚を引き起こしていたが、よく瞳を凝らしてみると、視界の脇の所から僅かな光が漏れ出ているのを見つける。

 スリッパから伝わる床の温度は冷たく、まだ目は慣れていないが、天井には薄らと吊り革がぶら下がっていた。

 

「あれ? ここは──」

 

 見覚えがあった。

 一回だけ、来た事があるその空間。

 窓から顔を出すと、上空には満天の星空と、地面には鏡面反射した水面が広がっている。

 反対側の窓には駅が映し出されており、相変わらず文化祭のポスターはボロボロで、当然中身も変わりがない。

 

「こんにちは」

 

 声の方へと振り向く。

 活発的なウルフカットとは対照的な長いまつ毛。真っ白な肌に、それを包み込むトリニティの制服を着た少女。

 ──黒野リアだ。

 

「こっち。こっちこっち!」

 

 片手で座席をポンポンと叩き隣に座るように誘導してくる。1回目の時とは違い、今回は戸惑いを感じないし、以前よりも元気な様子の彼女にホッとし、安心感を覚えた。

 誰も仲間が居ない状況だと思ってたけど、なんだか彼女は心強い。

 

「シャワー中だったんだね。バスタオル一枚じゃここは寒くないかな?」

「これくらいなら平気。元気にしてた?」

「うーん、ずっと眠ってるからね。元気なのかな? あ、でもどうしてかは分からないけど、以前よりも力が増しているんだよね。何か心当たりない?」

「私じゃ分からないよ」

「そっか。もしかしたらあなたが何かしてくれたのかなと思ったけど」

 

 手招きされた隣の座席へと移動し、腰を下ろす。

 お尻の冷たさが全身の体温を下げるが、深呼吸して心を落ち着かせる。

 

「急に呼んでごめんね。障壁に何か引っ掛かったから、どういった状況なのか聞いておこうと思って」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回で総話数50話行きました!
頑張った偉いぞゲーム開発部!
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