「映画? ん、まぁ興味ない事はないけどいきなりだね。どうしたの?」
昼手前の日曜日。朝食を共にした私とメルはまだ時間があるからと、優雅に紅茶を嗜んでいた。このお供に出てきたチョコレートが絶品で、折角の紅茶の甘みを消してしまうんじゃないかと抵抗があったが、杞憂だ。舌で転がすジュースとは違い、紅茶は吹き抜ける香りを楽しむもの。チョコも甘味はあるものの香りは抑えられており、上手くチューニングしてある。
「クローバーグループをご存知ですわよね?」
「うん、メルの実家だよね?」
「実は……今日は試写会のお誘いですの」
「試写会?」
メルがどうしても誘いたい用事があるからと、日曜日の繁忙日に休みを取って欲しいとせがんで来た。彼女がこの様に頼むのはとても珍しい事で、ナミさんもメルがそこまで言うなら仕方ないと、時を待たずして首を縦に振る。お店はヘルプ軍団が沢山いるからと胸を張って声を上げたので、ここは大人の余裕に甘えてみてもいいかなと私も快く了承したのだ。
まぁ三人で遊ぶのは好きだし、平日ならまだしも休みの日に一緒にお出かけなんて仕事上多くはないから、純粋に嬉しい。
「映画……ホラーじゃないよね?」
以前の記憶が蘇る。
ヨミが持って来たホラー映画、未だに思い出すと背中にぞくりとした感触が這うのだ。もう絶対見たくない。
「おほほ、そんな訳ないじゃないですの。今回は私達クローバーグループがスポンサーになって映画制作に協力しましたのよ? おかしいですわね……結構テレビで宣伝してましたのに」
「あの家アンテナ通ってなくてさ。テレビはあるけど見れないの。主にネット用」
なるほどですわねぇと、カバンから一枚の紙を取り出す彼女。
そしてその紙を私の前に差し出す。
「ん、これが映画のタイトル……?」
──キヴォトス創作童話「エッチ売りの少女」
「んふぅっ!」
むせて変な声出ちゃった。だって何を売るってさ?
「あら大丈夫ですか?」
「う、うん。……けほけほっ。こ、これが映画のタイトルなの? えっとレーディングとか大丈夫? エッチなのはいいの?」
「うふふ、全てをクリアしててよ」
さて行きましょうかと立ち上がるメル。私も急いで紅茶を口に含み、バッグにスマホを直したあと、ご馳走様と店主に声を掛け店を出る。
「うふふ、きっとスタンディングオベーションが起こるに違いありませんわ!」
悪戯っ子のように歯に噛む彼女はとても楽しそうだった。きっと皆びっくりするに違いないわと声を漏らし、ロードバイクに跨る。
私はタイトルに不穏さを覚えながらも、一体どんな映画だろうと少し楽しみになっていた。深い穴を覗くような感覚に身を委ねるのも悪くない。
私はまた、友人の手に引っ張られ新しい世界に行くのだなと、心を躍らせているのであった。
ーー
という事で宣伝です。
彼女達が映画館へと遊びに行く場面で劇中劇を制作していたのですが、その劇中劇が思ったより長くなったのでもういっそ短編で出すかぁ!と、先日短編で出してしまいました!!
キヴォトス創作童話「エッチ売りの少女」
※2024/06/26・ルーキーランキング11位に乗りました! ※この記事描く前です。
面白い仕上がりになりましたので、ぜひ読んで頂ければと思います!
評価感想によっては、こういった短編を書き続けてもいいなぁと。
それでは!