始発点から青春駅へ   作:3ご

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第6話:シャーレへ(3)

 ナミさんに呆れられながら大食を飲み込み切った私は、追加のデザートを注文しようとした所で内側にある天使と悪魔が戦争を巻き起こそうとしていた。メニュー表に書かれてあるのはよく分からない単語ばかり、まるでおまじないだ。

 

「ん、シロコ、あなたはここで留まるべき。きっと昼食だって美味しいご飯屋さんに決まってる。今は我慢する時。それに食べ過ぎたらお腹壊す」

「ん? いいじゃない。折角の好意なんだから黙って享受すべき。今度はいつ来られるか分からないんだから、今の内に良い思いくらいしていい。シロコはいつも頑張ってるから」

 

 一体どっちが悪魔でどっちが天使なのか甚だ疑問だが、ここは後者の案を採用してみる。

 

「じゃあここは私も餡蜜で」

「あなた結構食い意地張ってるわね……」

 

 食後のほうじ茶で一休みするナミさんを横に、奥の冷蔵庫からすぐに取り出された餡蜜にがっつく。

 寒天に白玉、餡をかけたみつ豆はシンプルながら奥が深い。王道とは一つ一つの技術が最先端でないとただの手抜きだが、流石に洗練されている。

 

「美味しいですか?」

「うん! 美味しい!」

 

 メルの歯に噛む表情に煌めきを感じるのは、餌付けされてしまっただろうか。

 今までの私、そう、この世界の私ならここまで食に心を満たされる事は無かっただろう。朝ごはんはいつもチューブ型の軽食だったし、お昼も適当だった。普段のご馳走と言えばたまにいく柴関ラーメンくらい。

 それがどうだ。私は美味しい料理というのを知ってしまったじゃないか。

 

 自分を知るってとても難しい。

 

 私は私がどこに煌めきを感じて、どこに興味を惹かれるのかたまに分からなくなる時がある。

 機械いじりやDIYもやってみて好きになったし、ロードバイクもそうだ。何故私はこれが好きなんだろうと考えるけど、勿論答えは出ない。

 

「どうしたのよ眉間に皺寄せて。お腹痛くなったの?」

「ううん、美味しいなって」

 

ーー

ーー

 

 人工島の湾岸の中心部に聳え立つ土地、D.U地区。その中心に聳え立てられているのがサンクトゥムタワーだ。

 シャーレはそこから数十キロ先の外郭沿いに建てられており、先生はそこでいつも仕事をしている。

 

「おお、上空からD.U地区なんて久しぶりに見るな」

「くひひ、任務依頼だよね」

「こうしてまたここに戻ってくるとは……人生何が起こるか分かりませんわね」

 

 そうか、彼女達は元SRT特殊学園の生徒。近辺にはヴァルキューレ警察学校もあるし、見知らぬ土地という訳ではないのだろう。

 

「もうすぐ到着? 結構早く着くのね」

「今回は緊急だったので最寄りの空港では無くなってしまいましたから。でも、新幹線に乗ればすぐですわ」

「何から何までありがとねメル。このお礼はいつか必ず」

「うふふ、気にしないでください」

 

 シートベルト着用サインが点滅した後、急降下する感覚が全身を覆う。風を切る轟音と急降下により耳鳴りが響いた後、下部でタイヤを擦る音が聞こえ出した。

 

「くひひ、飛んでみたかったなぁ」

「今からでもまだ間に合うぞヨミ。私に任せてくれ」

「今からなら滑走路に身体中打ち付けられちゃうよ!? 痛いじゃん!? 前回も痛かったんだからね!?」

 

……前、回? いや聞かなかった。私は何も聞こえてない。耳鳴りが激しくて音も入ってこないんだ。大変だ。

 

「服を買い直す程度で済んでよかったじゃないか。あれだけじゃ足りないだろ?」

「んもぉ! サノちゃんったら! そうやって私をいじめて!!」

 

 ここからシラトリ区の近くの空港に降り、そこからは新幹線に乗ってシャーレの近くまで移動する予定だ。久しぶりに来るから道を覚えているか不安だったけど、あれだけのことがあった場所。私の事だからきっと忘れてない。

 

「いじめられるの好きじゃないかヨミは」

 

 二人がイチャイチャし始めた所で飛行機は止まり、ご搭乗ありがとうございましたとアナウンスが鳴ると、ベルト着用サインが消える。どこか懐かしい空気の香りを感じると、内側にあった焦燥感に身を任せ一番に飛行機から降りた。

 大きな飛行場を通り抜ける風。透き通った青空と宙に舞うヘイロー。遠くにある見上げる程高い塔は、この土地の名所でもある。

 

「来ちゃった」

 

ーー

ーー

 

 地下鉄に入り、そのまま駅の方へ向かう。自分が知ってい時よりも大きくなっており、あの事件からそれなりに改築をしたのだと推察した。

 そこら中で見慣れた学生服を着た少女達が満面の笑みで友人達と会話し、青春の1ページに花を咲かせながら歩く姿。こういった風景を見るのはいつ以来だろうと感傷に耽りそうになるも。

 

「シロコちゃん、次の新幹線もう着くって。早くチケット買って乗るわよ」

「あ! あれは周年限定のペロロ様グッズじゃない!? いいな〜」

「ヨミってそういった趣味ありましたっけ?」

「騙されるなメル。あいつはたまに転売してるんだよ」

 

 周りから見れば、今の私も私が見てる様に見えるのかな。

 だとしたら……いつの間にか心置ける仲間に出会えてたという事だよね。

 

「ん、新幹線はこっち。着いてきて。……駅弁いる?」

「まだ食う気かよ。お腹いっぱいだよこっちは」

 

 ゼロコンマでツッコミを入れるサノ。流石だ。

 

「あ、でもシャーレに行くならお土産必要なんじゃないの? くひひ、その点姉さんは相変わらず用意周到だね」

「当然! 私は社長よ? それに娘さんをください……いや、もう私の物って挨拶をしなきゃならないからね。それなりのを用意したわ」

「どんなのを用意しまして?」

「睡眠薬とか催眠術の振り子とか」

 

 会話の節々で妙な言葉が乱立しているが、サノがツッコミを入れないのできっと気のせいだと自分を納得させる。

 

ーー

ーー

 

 新幹線とタクシーを乗り継ぎ外郭地区に到着。

 雑居ビルから照らされる熱が視界を奪うと、そこにあるのは今回の目的地である「シャーレ」が目の前にあった。

 何度も何度も、サポートという体で先生に会いに行っては仕事の手伝いをして、夜が遅くなれば近所のご飯屋さんに行ったり部屋で一緒に過ごしたりしたあの場所。

 

「ん、先生、ちょっと時間貰うね」

 

 時間を貰うどころか、シロコ今日はこれを手伝って欲しいと逆に時間を取ってくる先生。

 焦った顔や安堵した顔が妙に可愛らしく、ついついちょっかいかけたくなる。そんな魅力に惹かれたのを今でも覚えている。

 そんなだから、正直会うのは少しだけ躊躇いがあった。きちんと対面でお話して、もし私の知ってる先生と相違があれば……きっと落ち込むし、悲しくなる。

 でも、今は私は一人じゃない。

 

「ううむ、なんだか緊張してきたな。ヨミ、掴みは任せたぞ」

「なんで私!? サノちゃんこういうの得意じゃない!」

「私もヨミがよろしいと思いましてよ。得意分野でしょう?」

「違う違う!? 待って二人とも落ち着いて。相手は先生だよ? キヴォトスでもめっちゃ偉い人だよ? どうすんの粗相して処刑とか命令されたら!?」

 

 処刑は無いかもしれないけど、ナチュラルなセクハラはされるかもしれないね。

 私も以前お掃除した時に同人誌っての見つけて、その時はなんとも無いような顔して誤魔化したけど、内心赤面してたんだから。

 

「その時は私が皆を守るわ! 例え先生だろうが世界中が敵になってもね! だから安心して行きなさいヨミ。全てはあなたにかかってる」

「プレッシャー!? プレッシャーだよ姉さん!? そんな事言うけど実際何をすりゃいいのさ。私がいつも見てる動画見せる?」

「おいヨミ、どうせならあのビルから飛び降りて無傷ですってパフォーマンスはどうだ? 大受けだぞ?」

「いいですわね。どうせならモモチューブの撮影もやりたいですわ! 再生回数100万回はくだらないでしょうね!」 

 

 なんだか盛り上がってる様子だ。

 ここでもビクビクしているのは私だけ。見習わないと。

 

「んもぉ、何言ってるの皆! あのビルから飛び降りたくらいじゃ服も破れないよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




段々と読者さんが増えてくれて嬉しみ。
もっと増えたらモモイが脱いでくれるってよ。
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