始発点から青春駅へ   作:3ご

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第13話:仲間達

 プラナは続けていくつかの質問を重ねてきた。

 

 そもそも、何故カイザーは世界線を移動しようとしているのか。

 何故、その世界線移動の鍵が私の中にあるのか。極論、先生ではダメなのか。

 そして何故移動の道筋を示す”残滓”が私の中にあるのか。

 

「残滓とは、正確には経路のことではありません。言葉の意味を言えば残りかすのような物です。が、逆に言えば再生可能な物質とも捉えられます。修復可能なファイルソフトをイメージしてください」

「残滓が二回と言っていたのは、修復可能な残骸が二つあるってこと?」

「はい。ここで重要なのはあくまでも”残骸”だということ。それ自体に効力や効果がある訳でもありません」

 

 仮にその残滓を利用して世界線を移動するというのなら、復活させる算段があるのだろう。あの実験室、そして部屋の名前。それらを加味して単純に思考する。

 

「……時を戻す?」

「理解が早くて助かります。あの実験場では空間の圧縮を利用した時間のコントロールを行おうとしていたみたいですね」

 

 プロジェクト─クロノス─。

 データの中にはそう書かれていた。

 けど、私が三人を助けに潜り込んだ時は、もう既にもぬけの殻になっていたし、メールの文面にはプロジェクトの解散というメールが飛び交っていた筈だ。

 

「シロコさんに対し、生死を問わない条件を課していたのはそれが理由の可能性もあります。仮に実験が成功して時間のコントロールが可能になれば、対象の人物は殺害して置いて重要な場面で使えばいいですから。といっても、効果がどれほどあるかの見込みも、演算すら出来ていませんでしたので結果的にはただの夢物語で終わっていましたが……」

 

 ヨミが小さく手を上げると、発言をどうぞとプラナが場を仕切る。

 

「あの、夢物語で終わっているのであれば、結局プロジェクトは頓挫しているのですよね?」

「ええ、履歴を調べる限り、シロコさんがあなた達三人を助けに行くときには解散命令が出ていました」

「それなら、立案者は一体誰が? あのカイロスとかいう主任?」

「……いいえ、違います。違いました。ヴァルキューレの取り調べ履歴を見ましたが、カイロスには一切の記憶が残っていませんでした。念の為。同意のもと自白剤を飲んで取り調べを受けたみたいですが、ここ数か月の記憶すら残っていないという有様です」

 

 黒野リアとの会話が頭をよぎる。

 あのムネモシュネの仮面が偽物。つまり、”誰かの意図によって恣意的に銀仮面カイロスも操られていた”という結論になる。

 どこかのタイミングで偽カイロスも記憶を消されたのだとしたら、まだ私達はこの事件の真相の領域にすら踏み込んでいない。

 

「なぁ、まずはどうしてシロコの中に世界線の残滓があるんだ?」

「それは単純な答えです。まずは彼女と私、別世界の先生がこの世界に来てそれが一回。そして二回目はアトラ・ハシースから脱出する際に一回です」

「待ってプラナ。それなら私だけじゃなくて、他の生徒達も同じ状況だったはず」

「ええ、勿論それも調べました。残滓は特殊なスキャナで調べる事が出来、もう完成してその時ワープホールを使った生徒達には既に機器を送って結果が返ってきています」

 

 恐ろしいまでの仕事の速さ。流石優秀な管理者だ。

 

「誰一人、残滓の兆候はありませんでした。と言うよりも、きっとその残滓がシロコさんにしか残っていなかったから標的をあなたにしたのでしょうね」

 

 私にだけしか残っていない理由が今一分からない。

黒野リアは私の世界の先生が明確に残したと言っていたけど......今考えても仕方ないか。

 

「ここからは憶測の話しになりますが、あくまで敵は”シロコさんの残滓”を狙っている節があります。その理由ですが、仮にです。仮に敵が世界を渡る方法を見つけ成功した場合、その行先は? 結論、私とシロコさんが居た世界に到着する形になります」

「……もう、滅んでいるのに?」

「ええ、それから先の話はまだ掴めていません。彼らが何をしようとしているのか」

 

 彼女からの話はここまでだそうだ。

 

「シロコさんが出会ったのがあなた達で安心しています。何せあの伝説のウルフ小隊。能力値が高すぎて表に出てこれないなんて、SRTがそんな判断をするとは思いもしませんでした。あなた達とシロコさんの戦闘データを見ましたが、小隊として発揮した能力値が約50%。個々として発揮した戦闘能力値が約70%。シロコさんの本領値が約30%低下している状況だったとは言え、反転した彼女に対してとてつもない能力を見せつけましたね。まさか私が知り得ない猛者がいたとは、驚きです」

 

「どうして三人の能力値がそこまで低下したの?」

「恐らく、催眠効果があったのでしょう。そういえば薬か何か飲まされました?」

 

 三人顔を見合わせる。

 

「仮面が光ったのは覚えている。それ以外は……」

 

 サノは明確に覚えていたそうだ。

 二人が急に彼女に銃口を向け発砲したとのこと。

 

「なるほど、光信号で催眠を誘発。それも一瞬でですか。ふむ……調べておきましょう」

 

 そう会話していると、ディスプレイ手前の置時計から小さなピープ音が出た。

 時刻は16時。私が飛び出したりしたから予定時刻よりも押しており、窓の外を眺めると夕日が沈む準備をしていた。

 

「皆様、お疲れ様でした。今度こそお開きの時間です。シロコさん、検査のスケジュールは追ってご連絡致しますね。それと、先生の大人のカードを忘れずに持って行ってください。大丈夫です。今の先生はそれに全く意識を向けていません」

「ありがとうプラナ。……ん、大事にする」

 

 ナミさんと皆が立ち上がり、先に下に降りていると言って部屋から出て行った。

 何時間も座りっぱなしだったから、外で新鮮な空気を吸いたいのだろう。

 

「プラナ、ムネモシュネの仮面って知ってる?」

 

 さようなら、また今度と言いかける彼女の言葉を遮り、質問を重ねた。

 

「あと、黒野リアって生徒の事も調べて貰えると嬉しい」

「どなたですか? どこの学生……。いえ、とにかく調べてみます。仮面については初めて聞きました。また追って連絡しますね」

 

 意図を悟ってくれたのか、会話を断ち切るように電源を落とした。今度は私も皆の元へ歩き出す。きっと彼女なら何かしらのヒントを見つけてくれるに違いない。無責任な人任せだけど、私が調べるよりかは遥かに効率がいいし、それに彼女なら安心して任せられる。

 

ーー

ーー

 

「お、来た来た」

 

 扉から出て瞬間、脇の方から伸びた腕が私の首元に巻かれると、その巻いた腕の手のひらで今度は強引に、獣耳の間をこねくり回すように撫で始める。

 

「お昼まだだったね。何か食べに行く? もう夕方だけど」

「休憩したいですわね!」

「いろんな情報があったからな。身体と頭を休ませる時間が必要だ」

「くひひ、肩の力抜かなきゃね」

 

 確かに皆の言う通り、色々あったからか体がどっと疲れている。泣き疲れも重なってどちらかと言えば横になりたい気分。

 

「なぁメル。確かクローバーグループってリラクゼーション施設にも力を入れてるって言ってたよな? 以前、時間が空いたら皆で行こうって言ってたやつだ」

「そうですね! 良いアイデアですわ!」

「リラクゼーション施設?」

「ええ、温泉やサウナ、岩盤浴などがありますのよ。確かこの近くにもあったはずです」

「ん、岩盤浴って行ったことないかも」

「くひひ、大きな石に上下から潰されてサンドイッチになるんだよ。耐えられるかな!?」

 

 なんて恐ろしい施設なんだ。

 

「シロコちゃん疲れたって顔してるし、そこにお邪魔しに行きましょうか」

「了解ですわ。早速連絡を入れて人払いを──」

「待って待ってそこまでやらなくて大丈夫。普通に、普通に行こう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




プラナちゃんまじ優秀。どこぞのポンコツとは全然ちげーやっ!
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