始発点から青春駅へ   作:3ご

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第19話 大実メルの場合(5)

 ──ここは私達が占拠した!! この、ワンワンヘルメット団がな!!

 

 スタッフルームのドアを締め切らず、僅かな隙間を作って外界の情報を取得。その間にロッカーの中に無造作に放り込まれていた防弾チョッキを被り、元々持っていたハンドガンのレバーを引く。

 本当はライフルなどの攻撃性能の高い銃がいい。けど、今手元にはマガジンが三つと警棒のみ。相手がヘルメット団関係なら組織力は高いが、一人一人の戦闘力はそこまで高くないのが特徴だ。

 アビドスに居た頃は多少遅れを取った事もあったが、今の私は以前までの私じゃないし、何よりあの時と同じくらいの心強い仲間がいる。

 

「ワンワンヘルメット団? 聞いた事あるか?」

「いえ、初耳ですみゃ」

「くひひ、私も初耳だにゃ!」

「ん、私も……わかんにゃい」

 

 サノの物凄い速さの手刀が私達の頭をスイカ割りの様に両断していく。いざ白刃取りと両手を頭の上に合わせたが、私の時だけ絶妙に加速したおかげで隣の二人よりも手痛い結果となってしまった。間抜けな姿と防御に失敗した辛さが虚無感を産み、私の脳内を駆け巡る。

 

「馬鹿言ってないで状況を把握しろっ。相手は犬派の敵共だ。痛い目に合わせてやろうじゃないか」

「あら? 実は私も犬派でしてよ。サノ、敵?」

「メルちゃんにとってにゃんこハンターは本当の狩りだったってことか」

「あの時の店員さんいたらどうしよう」

 

 ズドドドドドド───

 

 薬莢の鋭い音と銃弾が放たれる音が鳴り響くと、以前よりも人の叫び声が大きくなった。まずい、敵は思ったよりも容赦なく人を傷つける輩だ。そもそも何が目的でこんなテロ行為をしているのだろうか。

 

「もしかしたら、このクローバーグループの施設を狙うのが目的なのかもしれませんわ」

 

 以前から、様々なテロリストや暴徒の対処をしていると言う。

 今の時代、一企業が民間軍、いわゆるPMCと提携するのは普通の事だ。それはクローバーグループも変わらないのだが、彼女達は少し特殊。

 

「私達は私兵を雇って長期の雇用を促すタイプですわ。それは個人を成長させるため。SRTに似た学園も経営したりもしていますの。あそこまで飛び抜けた学校ではないですけど、将来PMCになりたい人の養成機関であったり。特徴としては、この通り絶対数が少ない分、各所に警備が回らない所ですわね」

 

 空港の警備はとても凄かったのを覚えている。

 装備は最新式だし、何より警備員の数が多かった。下手したらカイザー基地よりも多いのではと思わせる程だ。

 

「カイザーグループのせいで人員の確保に苦しんでいるとは聞いていたが、まさかここまでとはな」

「面目ないですわね。……ご来店くださったお客様には申し訳ないですわ」

「メルちゃん、でも敵も誤算があるよ!」

「誤算?」

 

 すると、ヨミは私に視線に合わせて片目を閉じる。

 

「ん、ここに私達がいるからね。SRT最強と言われたウルフ小隊。そして正面からそれを打ち破った私が居れば鬼に金棒……いや、鬼に二丁拳銃だよ」

 

ーー

ーー

 

「おい、これで全員か?」

「ああ、逃げ出した奴は一人もいない」

「そうか……ふぅ。なぁ、私達はこの作戦が成功すれば何を知ることが出来るんだろう」

「そんなの決まって──あれ? なんだっけ。ボスはなんて言ってたっけ? 本当の自分を知れるって言ってたよな?」

「そうそう、それで私達の能力をもっと引き上げれるとかどーとか」

「……私達、どうしてこんな行事に参加したんだろうな。思い出せるか?」

「おいおい私に聞くなよ。最初に質問したのは私なんだからな」

 

 気になる会話だが、急ぐ。

 四つん這いになる程の低い姿勢で二人の間に急接近し、片方の手は一人の頭を。もう片方の手も一人の頭に添え、胸を張って張り切った状態で一気に両手に力を入れ、互いの頭を衝突させる。

 瞬時に反応しようとしたが、力を込めた時点で遅い。金属に近い硬度のプラスチックのヘルメットがぶつかる音が響くと、二人はその場にうなだれ横になる。

 

「ん、ボスがいるのね。それは良い情報」

 

 暗闇に慣れた視界の先に、サノとヨミが他のヘルメット団を己の素手で張り倒す光景が見えた。

 その間にメルは集められて怯えてる人に声を掛け、銃を持って応戦する様に説得する。  

 

「五分の勝負」

 

 私は踵を返し、他に敵がいないか、人質がいないかと探索をするのが任された仕事だ。

 目的地は全スクリーン。この映画館は五つのスクリーンの比較的小規模な映画館。だからどこで何が起こっているかを把握するのは容易い。

 

 フードコーナーを横切りチケットのゲートに入る。

 角の手前に左足を置き、死角になっている角から飛び出して先を確認すると、二メートル先にもう一人のヘルメット団が待ち構えていた。私の急な登場に慌てた声を出し面食らうが、すぐさま銃口を向け応戦の姿勢を取る。

 彼女達にしては素早い反応。だが、私の前で一秒を無駄にした罪は大きい。

 彼女が銃を構え照準を合わせる前に、飛び出した右足は彼女の手元を蹴り上げ、小ぶりなライフルはいとも簡単に宙に投げ出された。その右足は左側にある壁に衝突させて急停止。その反動を使いヘルメットの側頭部をかかとで打ち抜く。

 

 当然、バランスが取れない彼女は体全体を打撃の勢いのまま地面に倒れさせる。

 私の蹴りをもろに食らったんだ。そのまま立てないかと思ったが、彼女はそのまま片方の手を地面に突き指し、衝撃を前回転という形で和らげ何とか体制を立て直し、私に視線を送る。

 

「っとと。くっ、今までの私ならこういった場面で終ってただろうけど、今の私は違うんだ! 自分を知り、強くなったんだ! どんな相手でも──」

 

 きちんと視界が確保出来なかったのだろう。

 私の次の一手、右の拳から放たれる正拳突きが顎先正面を捉えると、彼女は大の字で仰け反り、そのまま動かなくなった。

 

「……ん、耐久性と反応速度が上がってる。今までのヘルメット団とは一味違う」

 

 私が知ってる範囲で言えば、いつもの彼女達……下っ端のヘルメット団は、最初の飛び出しにすら反応出来なかった。

 訓練をした? それが妥当な解釈だろう。

 でも、さっきの二人もそうだったけど、どこか不気味な……なんとも言えない胸騒ぎを感じる。

 

ーー

ーー

 

「ん、どのスクリーンにも人質はいなかった。これで全部だと思う」

「シロ、ご苦労様。私達も脱出の目途が立ちましてよ」

「メルはシロと行動して敵の親玉の正体を暴いてくれ。私とヨミは非戦闘員を脱出させる。準備はいいかヨミ?」

「くひひ、私はいつでもおーけーだよ!」

 

 メルはこんな時でも瞳を伏せて落ち込んだ表情だ。

 サノの機敏さとヨミの圧倒的防御力。メルの戦局を読む力とバランスが良い兵の私。このメンバーなら誰と組んでも上手くいくのは間違いないが、今この状況では最善。けど……それでもメルはどこか悲しい表情だ。

 

「メル?」

「は!? は、はい! すみませんぼーっとしてました」

「ん、緊張しすぎ。大丈夫だよ、色々考えるのは後からでも出来る。ね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ᓀ‸ᓂ+〈ん、ちょっと体調崩しちゃって執筆遅れるかも。
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