始発点から青春駅へ   作:3ご

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第21話:大実メルの場合(7)

 装備を整えコーヒーショップから勢いよく飛び出す。

 とにかく今は時間が大事。少しでも早く目的地である敵のボスの所まで駒を進めなければ事態はもっと深刻になる。敵は恐らくまだ制圧段階を抜け切れてないはずだ。警備ロボットの銃撃音がまだ各所で鳴り響いているし、それにショッピングモールに残っている逃げ遅れた人をサノとヨミが回収している。あの二人に敵うヘルメット団なんてそうそういないだろう。

 

「このショッピングモールは支配人がおりますから、敵が拠点とするなら支配人室ですわ。館内の制御盤も全てそこに集約していますから」

「監視カメラも?」

「ええ。大元の電気制御版も全てコンピューターで管理していますからね。館内の電気は落ちていますから、きっとそこにいるはず」

 

 そう喋り終わると、走って速度が出ている足を前方に出しながら視線を左斜め後ろに回し、そのまま左腕の脇の下を右手で構えている銃で交差させ、発砲。もののゼロコンマ数秒で鈍い打撃音が聞こえたと思ったら「んぎゃ」と間抜けな悲鳴を上げながら倒れているヘルメット団が一人。

 

「油断大敵。ですが、多少敵を引き付けてでもこのまま走り抜きますわよ」

 

 今の、どうやって敵を感知したのだろう。あまりにも一瞬だった神業。それを呼吸するのと同じように当たり前にこなし、 かといって速度も落ちず。

 ロードレースの練習の時もそうだし、カイザーの基地で戦った時もそうだけど、メルは体のバランス力が異次元に発達している。今のは私でも無理だ。あんな咄嗟に判断出来ない。

 

「敵、引き付ける前にメルが全部倒しちゃうかも」

「そうですわね。きちんと装備が整っていたら私一人でもこの集団を壊滅させるのは容易だったでしょう。ですが、今は火力が心許ない上に精神が……」

 

 平然とそこまで言えるのは凄いこと。一体SRTでどんな過酷な訓練をこなしてきたのだろうか。訓練だけじゃなくて、任務も沢山こなしたのかな。気になる。

 

「と言っても、そんな私達に一人で勝ったシロが一番──」

 

 そう言いかけた瞬間、メルは私の腰に腕を回し、前方に乗っている力を利用し勢いよく彼女の方に回転させると、そのまま体全体で私の身体を受け止め傍にあった植木鉢の隅に隠れる。耳元で「しー」と囁くような耳打ちと、メルの柔らかな枕の様な胸部に、埋めた顔から来る暖かい感触のおかげで一瞬だけ家にいるような錯覚を覚えた。

 

「シロ、あれを見てくださいまし」

 

 メルに言われるがままに視線を指先に誘導させると、突き当りの角から大勢のヘルメット団が珍しく整列して主通路に躍り出る場面があった。ここまで会った奴らとは違い、統率が取れている。

 人数は約20人だろうか。4人5列。そして中心3列目の前には一人。如何にも隊長的な存在。

 

「あれが今回のボス……? どうして堂々と歩ているのでしょうか」

 

 黒く大きなヘルメットの後ろに伸びる赤いロングヘアー。黒のフードが付いたジャケットはジッパー両開きに開かれ、その奥には黄色の大きなリボン。白いセーラー服を際立たせる灰色のロングスカートはまるで校内で幅を効かせているスケバンみたいで、圧力を感じる。

 

「……あれは」

 

 腰には手榴弾が数個。そして何故が銃口を手に持ち引き金側を肩に乗せ、バッドの様な扱い方をする人物。

 私は知っている。一人だけ知っている。

 アビドスの皆でリゾート地に遊びに行った時、その所有権を争い合った。数あるヘルメット団。その中でも一人だけ判断力、実力が他とは違う生徒が一人居たのを覚えている。

 

「うちらは逃げも隠れもしねぇ。そこに隠れているんだろ? 出て来いよ」

 

 河駒風ラブ。

 ジャブジャブヘルメット団を率いる隊長……なはずだが、今回はワンワンヘルメット団なのだろうか?

 

「あらあら、私達の居場所がばれているみたいですわ。これでは隠れても意味がないですわね」

 

 メルがハンドガン片手に両手を上げ、ゆっくりと植木鉢の陰から体を出し、相手を正面に据える。「ほら、シロも」と言われたので、私も渋々彼女と同じように両手を上げ敵の正面へと振り向いた。

 やっぱり……河駒風ラブだ。間違いない。

 

「そーそー、大人しく言う事聞いてくれればうちらだって手荒い真似はしないさ」

「あら、それは安心しましたわ。で、本日はどんな御用で?」

「大実メル……クローバーグループの令嬢。あんたを攫うのが今回の私の仕事さ。悪く思わないでくれよ」

「攫う? それはまた物騒ですこと。で、依頼主はどなたかしら?」

「依頼主? 依頼主……依頼主って? うち、誰かに頼まれたっけ? ああそうか、頼まれたんだ。でも……誰に?」

 

 メルが溜息を吐き、私に視線を合わせる。そして小声で「左からお願い」とつぶやく。この距離なら相手も聞こえないし、それに……言ってることが支離滅裂。私の記憶ではある程度まともな人だったと思うけど、この世界では違うのだろうか。

 

「依頼主が分からないなんておバカな解答ですわね。まぁ、おいそれと話す訳ありませんか」

「くそ……あたま、痛い。これ誰の記憶だよ……くそ。まぁいい。とにかくお前を攫ってカイザーに突き出せばうちはうちを知ることが出来るんだ!」

「カイザー? あら、本当に喋ってしまわれるなんて」

「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!!! 私の邪魔をするな!! 私の存在を無視するな!! あんたはどこにいるんだ!? 私はここにいる、ここにいるのに!!! く……うぅ……」

 

 頭を抱え、その場にふさぎ込む。

 

「おいお前ら、手に持っている銃を捨てろ。そのまま手を離して落下させろ」

 

 メルと目を合わせ、こくりと頷く。そして言われた通り手に持っている銃を離した。二人同じタイミングで。

 ラブの「それでいい」という台詞が語尾に向くにつれ、段々と低域の効いた伸びた音になる。音像の輪郭は失われ、声の反響音だけがこだまする。

 

 集中。

 

 集中する。

 今、銃が落ちている。視界は小刻みな画像の連番。意識を高めると段々と緩やかな景色が、かくかくとしたコマ送りになる。

 敵は20人。私がこくりと頷いてからこわばった肩を落とした数は、8人。

 銃が落下する。その落下を目で追っている人は10人。トリガーを指にかけている人は一人。が、一番奥の列で、直線状に私は被っておらず、そのまま撃ったら仲間に当たる。

 落下した銃に目掛けて膝を落とす。その行動に反応出来たのは二人。それも前方右側の一列目の一人と、二列目の一人だけ。訓練が足りてないのか、照準を合わせようとせず銃口を下に向けた大きな予備動作を行っているだけだ。

 

 落下した銃が地面との接触で衝撃を産み、飛び上がる。

 

 その時には私の肩は地面と平行になっており、右手はサブマシンガンのトリガーに指を掛けている。

 そして握り込むことなく勢いよく銃を発砲させると、反動でサイトの方向へと自然に飛び上がり、私の役目は照準を合わせる事と反動の勢いを殺すことなく銃から手を離さないようにすること。

 一発目は私から見て左側の戦闘の頭を打ち抜いた。そのまま綺麗に一列目の敵の頭を打ち抜くと、その間には私も銃の制御が行えるようになり、そのまま二列目三列目の敵を打ち抜いていく。

 メルは私が倒し損ねた敵の頭を正確に打ち抜き、私は彼女のカバーを信じ、好き放題に敵の集団に弾をぶちまける。

 

 銃が落下してから10秒後、敵はラブ一人だけになった。

 あまりの一瞬の出来事だったからか、彼女は呆然とするばかりで、肩に背負っているショットガンを構えようとしない。

 ただ反応出来てないだけかと思ったが、ラブの表情はどこか不気味で、やはり私が知っている彼女では無かった。

 

「あんたら強いなぁ。ま、伝説のウルフ小隊のスナイパーと、反転した狼。当然か」

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






余談ですが私、youtubeの先生お時間頂くシリーズあんまり見てなかったんですよ。
で、シロコのだけでも見るかぁーと思って覗いてたんですけど。


こたつ、入っとるやん。


君、こたつ入っとるやん。って。

なんとなくこたつでもふってそうだなーとか思ってたんですけど、割と正解でしたね。
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