始発点から青春駅へ   作:3ご

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ここから、メイン三人のオリジナルキャラクターが出てきます。



第五話

「イカれたメンバーを紹介するゼェい!!」

 

 翌日の朝。

 ナミさんは善は急げの精神だと高らかに言葉を発し、もの凄い勢いで書類を作り上げ、最速で生徒に召集をかけ集めた。

 

 土曜日、時刻は午後8時。この地域では繁忙日であっても、この時刻になるとレンタルしている自転車は全部戻ってくるから残りの仕事は掃除だけ。メンテナンスは明日の朝やれば十分間に合うから、割と暇をする事が多い。

 

「まず一人目ぇ!! ドゥルルルルルルルル……ジャンっ!! 月森ヨミ!!」

 

 名前を呼ばれると、店内のスタッフ専用扉から一人、おとなしそうな子が出てきた。

 前髪は切り揃えられ、スカートは長め。まんまるいぱっちりとした目元に、長いまつ毛。ふっくらとした頬からは幼気を感じる。

 

「こ、ここここんばんは、初めまして……月森ヨミ……です」

 

 どちらかと言えば、図書委員に入ってそうな見た目をしている女の子。少し怯えているのか緊張しているのか、前髪から外を除くような上目遣いを私に見せてくる。

 

「お、大人と話すのはそんなに得意じゃなくて……。普段は整備場の方で自転車の整備をしてます」

 

 ぺこりと頭を下げると、そそくさと後ろの扉に逃げようとする彼女を、ナミさんがハイスピードで接近し、襟首をつかむ。

 

「こーら、まだいくつか残ってるでしょ!! 逃げないの!!」

「うぅ……でもでも、聞いてたよりもすごく美人さんで……ドキドキして緊張しちゃって」

「あーなるほどねぇ。確かにシロコちゃん大人の色気あるもんね。じゃあ尚更仲良くならないと」

 

 もう一度私の正面に立たせる。

 もじもじして赤面している姿は可愛らしいが、あまりに時間をかけると可哀そうだ。ここは一つに絞り、早急に終わらせてあげないと。

 

「えっと……私の名前はシロコ。初めまして。ヨミちゃんは何かお好きな趣味とか……ある?」

「は、はい! 趣味は動画鑑賞とか、イラスト描いたりとか……です。……すみません、それくらいしか好きなのが無くて」

「へー! 動画鑑賞か! 今流行りだもんね。モモチューブ? それなら私もたまに見るよ! どんなの見ているの?」

 

 自分の趣味に興味を示してくれたのが嬉しかったのか、段々と表情が綻んできた。

 笑顔がとても可愛らしい少女。りんごほっぺというのだろうか、化粧とはまた違うチークのような赤面をする。これは年上のお姉さんとかに可愛がられるだろうな。

 

「えっと、私はこういうのが好きなんです!」

「んーどれどれ? ……蟻地獄チャンネル? んー見たことないな。どんなの?」

「ふひっふひひ! えっとですね、このチャンネルはひたすら沢山のアリがセミとかバッタとか、色んな虫の死骸を食べる動画なんですよ!」

 

 ん? パンチ強いな?

 

「ふひ、ふひひひひ! じゅるりーーおっと、ついつい涎が出てしまいましたね。はいこれ見てください! 沢山のアリが大きなムカデを捕食する動画なんですけど、命の儚さと尊さ、複数のアリによってたかって体を蝕まれてるムカデの気持ちを考えるとですねーーぁあっ! 全身がピクピクしてきましたぁっ!」

 

 どう反応したら良いかが分からず、横目でちらりとナミさんの方に視線を合わせる。が、すぐに目を逸らされてしまった。腕を組んでダンマリの姿勢だ。

 

「う、うん。そうなんだ! 人には色々な趣味嗜好があるからね! 良いと思うよ私は!」

 

 なんとか話題を変えようと書類に目を通す。

 トリニティ学園の2年生。特に部活もしておらず、それよりもバイトが部活みたいなものになっているそうだ。

 

 ナミさんからの評価は特に普通。それなりになんでもそつなくこなす。が、基本的に人は苦手そうだ。

 

「くひひ、シロコさん本当に綺麗な人……美味しそうだな。妄想が止まらないな」

 

 まずい、彼女は猪突猛進タイプな人間だ。

 一度自分の世界観を作ったらずっとそこに篭りっきりになる。創造性は豊かで良いのだが、チームとして動くとなると若干協調性に欠けーーえ? 今美味しそうって言った? もう捕食対象なの?

 

「家に帰ったら早速ーー」

「はーーーい!!! カンカンカンっ!!! カンカンカンカンカンカンっ!! ノックアウトKOだよヨミちゃん!! それ以上はだめ!!」

 

 わーん! と声を上げながら首根っこを捕まえてスタッフルームへと運び出されるヨミという少女。

 最後のセリフが気になりすぎたが、人生、知らない方が良い情報も沢山ある。

 っていや無理無理無理。気になりすぎるから後でとっ捕まえて色々お話ししてみよう。

 

「はぁ、はぁ……まさかこんなに暴走する子だったなんてね。気にしないでねシロコちゃん」

「待ってナミさん。気にしないっていうのは無理。これは更なる会話が必要だね」

「おぉ……! 寛容だね」

「私は、私と関わってくれる人は大事にしたいの」

「ふ、大人だな。じゃ次、二人目ぇっ!! ドゥルルルルルルルル……ジャンっ!! 大実メルっ!!」

 

 奥の方から、お嬢様のような甲高い笑い声が聞こえてくる。

 が、扉のノブが上手く回せないのか、おほほっ! おほぉっ! と力を込める声とお嬢様声のハイブリットが店内に響き渡る。

 

「あ、建て付けまだ悪いもんな。開けてあげるよ」

 

 ナミさんがかちゃりと扉を開けると、そこには金髪のツインテールをした女の子が喉をむせながら突っ立っていた。

 早く入ってと急かすナミさん。きっとこれは日常風景なんだと容易に想像。

 

「おほほほほぉっっっかふっ!、けふっぅ。うぉっふおっふっ、こほん、失礼しました」

 

 気を取り直してか、何事も無かったように丁寧なお辞儀をかますお嬢様。片方の手はスカートを左側に浮かせ、もう片方の手は丁寧に胸に当てて頭を深々と下げる。本物の挨拶は見たことないけど、なんかこれは本物っぽいなと感じた。

 

「私の名前は大実メル。あの超巨大で有名なクローバーグループの会長の親族にあたりますの。つまり、とても偉いの。よろしくて?」

「あ、どうも初めまして。私の名前はシロコ。よろしくね」

「ははぁん、あなたがあの有名なシロコ様ですか。ふーん……」

 

 あの? 有名な? シロコ? はてなんのことやらさっぱりだ。

 

「おっと、あくまで社内での噂ですのよ? このキヴォトスサイクルでのね。黄泉社長が大層懇意にしている方がどんな方かと思えば……ふむ、ふーむ? おお、なるほど」

「な、何がなるほどなの?」

「色気……ですわね」

「い、色気!?」

「ええそう。きっと夜な夜な二人でさぞや激しい事をしているのでしょう? やはり噂通りでしたわね。もしかして今日もーー」

 

 彼女がそう言いかけた瞬間。せいやーー!という掛け声と共に、音速の勢いで社長であるナミさんが飛び出して行き、メルという少女を羽交い締めにする。

 

「言えええええ!!! 一体誰がそんな噂を流している!!! 絶対喋れよてめえええええ!!!」

「ふん!! そんな程度の拘束でこの私が口を割るとでも!?!? 甘いわね黄泉社長!! 昨日食べた蜂蜜トーストにジャムを乗せて、その上から砂砂糖を振りかけた絶品フレンチトーストよりも甘いですわ!!!!」

「なんだと!? オラあああああ!!!」

 

 膝を蹴り飛ばし地面にひざまづかせると、今度は片方の腕を握り、上体を地面に沿って捻じ曲げる。いわゆる四の字固めである。

 

「ぎゃあああああ!?!?!? 肩がミシミシ言ってますのおおおおお!!!!」

「これでしゃべる気になったかぁ!? なったよなぁ!? ならねえとへし折るぞその腕!!!」

「ひいいいいぎゃああああ!!! これよおおおこれですわあああああぁぁぁぁぁんーーあぁぁああぁああーーーー」

 

ーー

ーー

 

「こほん、ではご趣味を聞こうじゃないか」

「趣味ですか? 趣味はさっき見せたと思いますが、基本的に体を痛めつけられるのが趣味ですわ」

 

 ええええあれ趣味だったのおおお。うっそだーーぁ。

 

「あとは、こうしてお嬢様っぽく振る舞う言動も趣味ですわね。普段は普通にしゃべるのですのよ? 学校でこんな喋り方していると変人だと思われますからね。ごめんあそばせ?」

「そ、そうなんだ!」

「でも拍子抜けですわ。私はてっきりあなたと黄泉社長がガッツリな体の関係だと思っていましたのに」

「そ、そう? でも女同士だよ? ちなみにさ、社内ではどんな噂が流れているの?」

「そうですわねー、うーん、激しいのと軽いのどちらが聞きたいですか?」

 

 どっちも聞きたくないなぁ。

 

「じゃあ、激しいので」

「そう来ましたか。まぁ簡単に言うと、社長があなたをガンガン孕まーー」

「ストオオオップ!!」

 

 後ろを振り向くと、そこには鬼を超えて修羅に変貌した黄泉社長の姿があった。

 片方には社内電話。もう片方にはデザートイーグル。

 

「続きを喋ったら脳天にこれをぶち込むことになるけど、どうする?」

「おほほ、それも酔狂ですわ!」

 

 あーれーー、と首根っこを掴まれ、退場させられる大実メル。

 文字通りイカれたメンバーだ。

 

「はぁーー……疲れた。あのシロコちゃん、変な誤解はしないでね。きっと色々尾鰭がついてるだけだから」

「うん」

「なんでうんだけなのよ。もっと反応見せなさいよ」

「うん……」

「変な困り顔やめてくれる!? ええいもういいわ! 次が最後のメンバーよ! ドゥルルルルルルルル……ジャンっ! 末子サノ!」

 

 ーー失礼します。

 掛け声一つ。少し低めの、奥まで通る声についつい緊張が出てしまう。

 前の二人が強烈過ぎたせいか、まともな挨拶でさえ新鮮に感じる今日この頃。

 

「こんにちは、初めまして。私の名前は末子サノと申します。よろしくお願いします」

「よろしく。ええっと、サノちゃんはミレニアムサイエンススクールなんだね」

「はい、私は主に電子機器系全般を触る仕事をしています。具体的に壊れたライトや、電動システムの修理などです」

 

 おおう、やはりとてもまともな回答だ。

 

「ふふ、とっても勉強が出来るんだね。じゃあさ、趣味はどんなことをしているの?」

「はい、私の趣味は主にグーパンとえっちな妄想です!」

 

 ん?

 

「え? ぐ、グーパン? グーパンってなに? あ! もしかしてパンを焼く事? グーパンっていうパン?」

「いえ違います。グーパンとはグーで物や人を殴ることです! 最近、ボケが過ぎる人がいたのですが、グーでノリツッコミしてしまって怪我をさせてしまったので、今は停学処分を受けております!」

 

 なるほど、イカれたメンバーね。

 

「そ、そうなんだ……えっと、私の事は殴らない、でね?」

「当然です。私は人を選んでグーパンしていますので、今はまだシロコさんは該当に入っておりません! よろしくお願いします!!」

 

 どうしよう、よろしくお願いされちゃった。

 さっきから社長は目を合わせてくれない。さては図ったな?

 

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