無名の大魔族リーナ、魔族ライフを謳歌する 作:ヌメロン使いの男
リースは1週間ずっと床や天井を平らにする作業をしてました。
リーナ「いやー、作り始めたら楽しくなっちゃってね」
アウラ「よく考えたらこんなに大きくする必要ないわね・・・」
リース「・・・」←一番頑張った人
「だいぶ寒くなってきたな」
シュタルクが寒そうに体を震わせている。
ヴァイゼを離れてからしばらく経ったころ、私達はエルンスト地方にたどり着いていた。
「農村がありますね。・・・フリーレン様」
不意にフェルンが立ち止まった。
「どうしたの、フェルン」
「あの村、様子がおかしいです」
フェルンの視線の先には、確かに農村があった。
しかし、明らかに様子がおかしかった。
多くの建物の壁にはヒビが入っていて、いくつかの建物は完全に崩れている。
何か異常が起こったのは明らかだ。
「早く行こう。怪我人がいるかもしれない」
「・・・ひどいね、これは」
たどり着いた村はひどい有り様だった。
建物の中は、ぐちゃぐちゃになった遺体が飛び散っているものや、複数の死体をつなぎ合わせてできたオブジェが置いてあるもの、内臓と骨、肉に分けられて積み上げられているものがあった。
状況から推測するに、この村は魔族か何かに襲われたらしい。
明らかに知性のあるものがこれをやったはずだ。
それに、この惨状にはどこか見覚えがあった。
ヴァイゼで見た、リーナの記憶。
兵士達に襲われた村は、こんな感じではなかったか?
つまりこの村は、魔族ではなく人間に襲われたのではないか?
あの兵士達のような人間に。
平気で人を殺すような人間に、この村は・・・。
そう考えると、気分が悪くなってくる。
「フリーレン様、顔色が悪いですよ?大丈夫ですか?」
「・・・うん。大丈夫」
「おーい、ちょっと来てくれ!」
シュタルクが呼んでいる。
「生きてる人を見つけたんでしょうか?行ってみましょう」
「おかあさん・・・おかあさん・・・」
「・・・これは」
シュタルクの視線の先にいたのは、5歳くらいに見える魔族の少女だった。
崩れかけた家の中で、床に飛び散った肉片をかき集めている。
「フリーレン様、一体何が・・・っ!」
少女の額の角を見て、フェルンが杖を構える。
「待って、フェルン。あれは何か違うかもしれない」
「え?」
見た目は完全に魔族だけど、何か変だ。
こちらに気付いているはずだけど、ずっと肉片をかき集めている。
フェルンが杖を構えたときも、全く反応がなかった。
「・・・なあ。ここで何があったのか、俺達に教えてくれないか?」
シュタルクが話しかけると、少女は体をビクンと震わせて振り向いた。
「だれ・・・?」
「俺はシュタルク。さっきこの村に来たんだ。お前は?」
「ロゼ・・・」
「そっか。じゃあ、ロゼ。ここで何があったか、俺達に教えてくれないか?」
「うん・・・」
今日の朝、起きたら角と尻尾が生えてたの。
びっくりして泣いてたら、お母さんが部屋に入ってきて、私を見てびっくりしてたけど、すぐにわたしをぎゅって抱きしめて、
「どんな姿になっても、私はあなたを愛してるわ。泣かないで。ずっとそばにいる」
って、言ってくれたの。
それから、朝ご飯に私の大好きなサンドイッチを作ってくれたわ。
デザートにリンゴの皮をむいてくれたの。
でも、いきなり壁が壊れて。
お母さんがいなくなって。
部屋が、真っ赤になったの。
「・・・そうか」
「・・・ロゼ。ちょっとこっちに来て」
ロゼの体内から感じる、嫌な気配。
それは、胸のあたりから漂っていた。
「・・・これは」
ロゼの体内でうごめく、蛇のような何か。
私はこれに見覚えがあった。
「・・・リーナの魔獣だ」
「え?」
間違いない。これは、あいつの魔獣だ。
そもそも、人を魔族に変えるなんて、あいつしかやりそうな奴がいない。
となると、襲撃してきたのは何者だ?
この付近は比較的穏やかだけど、北部高原には凶暴な魔物も多い。
なんらかの要因で、魔物がここに移動して来た?
でも、魔物が死体をあんな風にするだろうか?
「フリーレン様。あちらから何者かが近づいているようです」
「魔力はそんなに多くなさそうだけど、リーナの手先の可能性もある。警戒して」
そしてそいつは、建物の陰から姿を現した。
「た、助けてください!急に魔族に襲われたんです!」
服はところどころ破れ、あちこちに擦り傷ができている。
一見、ただの人間の男にしか見えない。
でも、あの魔力の感じは見覚えがある。*1
「・・・『
魔法を撃ち込むと、そいつは軽々とかわし、真顔になって言った。
「ひどいじゃないか、助けを求める村人を攻撃するなんて」
「村を襲ったのはお前だろ、魔族もどき」
「・・・」
無言のままこちらに突っ込もうとしたが、フェルンの魔法で全身を消し飛ばされた。
「・・・今のが、この村を襲ったやつ?」
「そうだろうね」
人型をしていたけど、あれは人間でも魔族でもない。
「あれも、リーナが創った魔獣」
「まじか・・・角も尻尾もなかったし、人間と見分けがつかねえ」
「ある程度実力のある魔法使いなら気付けるかもしれませんが、それ以外には無理でしょうね」
人を魔族に変え、人に近い姿の魔獣が人の中に紛れ込み、人を襲う。
大きな街なら、混乱を発生させてその隙に人を襲い、更に混乱を広げられる。
人間の中に魔獣が紛れ込んでいるとバレても、住民たちは疑心暗鬼になり、最悪人同士の無益な殺し合いが始まる。
リーナが考えつきそうな、陰湿なやり方だ。
「あいつが、本格的に動き始めたってことだね・・・」
これは、人が多ければ多いほど効果を発揮するものだ。
積極的に人類に被害を与えようとするリーナが、大都市でやらないわけがない。
「とりあえず、近くの村や街を回ろう。あの魔獣を探し出すには、魔法使いがたくさん必要なはずだ。ロゼみたいな状態になってる人もいるだろうしね」
「ロゼはどうするんだ?」
「置いていくわけにもいかないし・・・私達と一緒に来る?」
「うん・・・シュタルク達についてく・・・」
「ふふふ、第2段階も順調に進んでいるね。だんだん魔法使いの数も減ってるし、第3段階もうまく行きそうだ」
やあ。天才軍師、リーナだよ。
今僕達は、第3段階の準備をしながら地上の様子を魔道具で観察しているんだ。
僕が人型魔獣に出した指令は二つ。
人間を殺して、その罪を誰かになすりつけること。
そして魔法使いを見つけたら、積極的に殺しに行くことだ。
人間を魔族や魔獣に変化させたのもあって、各地で大混乱が起こっているね。人型魔獣も、フリーレンならまだしも、そんじょそこらの魔法使いには見破れないはずだ。
そして予想通り、「魔獣狩り」が起こってるね。
魔獣が殺した数より、人に魔獣だと疑われて殺された人のほうが多いんじゃないかな?
気に入らないやつを魔獣だって告発して殺してるやつがいたのは、僕でもドン引きだよ。
こんな緊急事態でも争いをやめないとか、本当に人類って愚か。
でも見当違いの奴が殺されてくのは、人狼ゲームみたいで見てておもしろいよ!
「戦力は削った。団結なんて今はできない。うんうん、予想通りの結果だね」
人類への被害は甚大。
「でも、ここで終わりじゃないんだよね!」
「ここで第3段階・・・人類の組織的抵抗を不可能にするのよね」
第2段階まででも、被害はもっと広がるだろう。
でも、それだけじゃ足りない。
数を減らしたところで、人類はまた増える。
いつかは復興し、厄災は過去の話になる。
過ぎ去った厄災から、誰かの英雄譚が生まれる。
英雄譚は、誰かの希望になる。
僕はそんなの認めない。
人は惨めに滅ぶべきだ。
争い続けた自身の愚かさを嘆き。
失ったものの大きさを知り。
叶うわけもない復讐を誓い。
誰かを呪いながら、誰かを憎みながら。
失意の底で、死んでいけ。
だから、僕は決定的な崩壊をもたらすんだ。
用意はもう済んだ。
もう魔獣は全て配置済み。
「人は滅ぶべくして滅ぶ。でも、それは人同士の争いによってじゃない。僕達魔族が滅ぼすのさ!」
「ええ。さっさと済ませちゃいましょ」
「了解しました」
僕達の準備も万端だ。
「今こそ、世界を魔族のものに!」
人型魔獣がロゼを残しておいたのは、村への襲撃の罪をなすりつけるためです。
配置された村・集落を壊滅させたあとは、第3段階の準備をしています。
リーナは犯人への憎しみを抱かせるために、死体をめちゃくちゃにするよう人型魔獣に指示を出しています。