自由への航海   作:天の川

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主人公は天竜人です。
価値観がおかしいので嫌いな人はご注意下さい。









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 キキョウとニコ・ロビンを連れた俺は、早くもココヤシ村に到着していた。

 

 これは、別段ココヤシ村に用が有った訳でなく、バギーの居ないバギー海賊団と行動を共にするメリットとデメリットを秤に掛けた結果である。

 と言うのもバギーの居ない海賊団は正に烏合の集であり、単なる客人ポジションである俺に船と行動の指針を求める有り様だった。

 原作で描かれたバギーと手下の合流経緯をハッキリ覚えていたなら、誘導するのも吝かな話でなかったのだが、只でさえ薄れている原作の記憶。

 扉絵で描かれたダケのバギーの冒険を覚えている筈もなく、辛うじて覚えていたのは『バギーと手下達は放っておいても合流する』といった事だけであり、それ故に余計な口出しをしない方が良いとの思いから、

 

『俺が知るかっ』

 

 と、バギーの手下達を突き放し、ビブルカードと伝言を残して単独行動を取った次第である。

 

 することの無くなった俺は、約束の日より1週間も早くココヤシ村へ到着する羽目になり、それ以来3日に渡ってニコ・ロビンから、

 

『この村だけでなく諸島全体が魚人の支配下にあるそうね』

『海軍と手を組んでいるらしいわ』

『ターゲットさんはこの状況を知っていたのかしら?』

『どうして暴れないの?』

『そんなに大事なの?』 

 

 等と、主語の抜けた何を言いたいのか判らない言葉も含めて、疑惑の目に晒され続けた。

 

 困ったことにニコ・ロビンはオレンジの街以降、更に話し掛けてくるように成っており、腹の探り合いを越えて少々煩わしいレベルに達しているのだ……今、魚人の皆さんが現れたら腹いせ混じりにブッ飛ばしてやるのだが、現在のところ現れていない。

 

 そう……現れていないのだ。

 

 原作を知る俺は、ニコ・ロビンの調べを聞くまでもなく、この村を含めて周辺の集落が魚人の支配下にあることを知っていた……この村に来るまでは辛気臭い住民をイメージして嫌な気分になっていた位だ。

 しかし、予想に反して村の住民達は泊まり客である俺達に対して営業スマイルを見せるばかりか、夜ともなれば村人同士で酒を酌み交わし談笑する程度のゆとりを持っていた。

 勿論、聴こえてくる談笑内容の大半は、代名詞を用いての不平不満になるわけだが、暮らしに不満が有るのは何処の世界でもあり得る事である。

 

 原作においてこの村の住民は、不満の矛先であるアーロン達に命を掛けて刃向かう事となるのであるが…………正直、何に対する不満で命を掛けるのか俺には判らないでいる。

 

 ナミの義理の母に当たるベルさんが殺されたことに起因するのか、それとも単に貢ぎ金が高過ぎる事への不満なのか、はたまた魚人が支配者の地位に居ることに対する差別的な偏見故か……ある程度の目星を付けるコトが出来ても、どれも決め手に欠けるのだ。

 

 ナミの義母に関して言えば、支配者に逆らい処刑されるのは割とよくある話で、これが蜂起の原因であるとするならば、天竜人は支配するべき下々民の大半から蜂起されるべきであり、支配どころではなくなるハズである。

 貢ぎ金に関しても、決して安く無い額を納めているが、基本的には金さえ払えば命を落とすことなく生活を営める。

 ニコ・ロビンの調査によると、魚人達は巻き上げた貢ぎ金を集落で使い経済を循環させているらしい。

 貢ぎ金は一人頭10万ゼニー……子供であっても5万ゼニーが課せられる。

 搾取のみを続ければ、そう遠くない内に破綻するのは明らかであり、生かさず殺さず搾取する為にも魚人達は貢ぎ金の一部を集落で使い、仕事を与えては報酬という形で集落の人間に還元するのだろう……まぁ、還元といっても元は集落の人間の金であり、実質タダ働きをさせている上手い手法だったりする。

 又、支配の為に外敵の脅威から金づるである住民を護っていたり、逃亡を防ぐ意味もあって島外との取り引きは魚人自らが行い、住民が収入を得る手助けもしているらしい。

 

 このようにアーロン達魚人海賊団は、暴力と金と労力を巧みに使い分けて、コノミ諸島の支配を行っているのである。

 つい最近、貢ぎ金が払えずに破壊された村があるそうだが、それは払え無かったのが理由である。

 言い換えるならば、多少の自由と金を引き換えにすれば、魚人達が命の保証をしてくれるのだ……そう悪い条件でもない生活のハズが、蜂起を招く。

 

 ヤハリ、支配者が別種族の魚人であるのが蜂起を起こす最大の理由と見るべきなの、か?

 それとも、貢ぎ金の支払いが滞ると殺されるのが原因だろうか?

 だが、殺されるのが嫌で歯向かって殺されるなら、本末転倒としか言えないのではないか?

 

 …………。

 

 判らない。

 

 判らない事は聞いてみるのが手っ取り早いが、今はまだその時ではない。

 

 原作では、ナミの貯めた1億ベリーが奪われる出来事をきっかけとして、ココヤシ村の住民のほぼ全てが命を捨てる決意を固める……話を聞くならそのタイミングだ。

 

 その為にも俺は何もせずに、こうしてボーッと日々を過ごす事が肝心だ。

 原作は些細な事で変化する……バギーの時の様に原作修正に苦心するのは御免被りたい所である。

 

 とりあえずアーロンだ……今の時点でアレと会うのは色々とマズイ。

 いっそ、この村を離れるのも一つの手か?

 

 俺はこんな事を考えながら、ココヤシ村の大通りに面して造られた木製のパラソルの下で、蜜柑ジュースを飲んでいた。

 天然果汁100%らしく普通に旨い……一杯1000ゼニーと少しお高いのがネックだが、それだけの価値はあるだろう。

 

「何を考えているのかしら?」

 

 そこにやって来たニコ・ロビンが丸テーブルに鞄を置いて対面に座ると、いつものように探りを入れてきた。

 

「別に何も? ってか、俺が何を考えていても、お前に関係無い」

 

 いずれ別れるニコ・ロビン……素っ気ない態度をとらざるを得ないが、せっかくの旨いジュースが台無しだ。

 普通に話し掛けてくるなら普通に話してやるモノを……まぁ、普通に話す関係じゃないから仕方ないか。

 

「そうね……だけど、私は貴方が何をしようとしているのか知りたいと思うの。これは、私の自由よ」

 

 サングラスを外しそう告げるニコ・ロビンはいつにも増して真剣だ。

 

 なるほど……本腰入れて俺の秘密を探ろうというコトか。

 東の海に来てからの俺は、我ながらおかしな行動を取ってきた。

 ニコ・ロビンの探求心に引っ掛かったとしてもなんら不思議ではない。

 

「ふんっ……探るのはお前の自由だな。まぁ、だからと言って親切に教えてやる義理も義務も必要もない」

 

「えぇ、そうね…………そうそう、貴方に会いたいってお客さんを連れてきたわ」

 

 サングラスを掛け直し両手を突いて立ち上がったニコ・ロビンは、腕を使って大通りの向こうを指し示す。

 

「客だって?」

 

 ニコ・ロビンの示す方向に視線を向ける。

 そこに見えたのは、一際大柄なアロハシャツの男を先頭に、ゆっくりと此方にやってくる20人ばかりの集団。

 

 はぁ……やってくれるぜ、ニコ・ロビン。

 俺の動きを確める為にここまでするか?

 上手く立ち回らないと原作ブレイクは確実だな。

 

「シャーハッハハハ! ようこそ、下等なる人間よ! オレのシマで嗅ぎ回ってるのはテメェかっ!?」

 

 目算で三メートル。

 間近までやって来たアーロンと思われる魚人は、両手を拡げて高笑いを上げるとギロリとニラミを向けてきた。

 巨体故か、それなりの威圧感はあるがそれだけだ……闘って負けるような相手じゃなさそうだ。

 

「はぁ? キキョウさんや……コイツ、いきなりお前の事を下等扱いしてんぞ」

 

 後ろを向いた俺は、ご苦労な事に背後で立ち続けるキキョウに意見を求める。

 

「ふむ……戦士に向かって初対面でこの態度。許せんな」

 

「あら? ターゲットさんの事を言ってるんじゃないかしら?」

 

「いや、違うだろ。俺は『下等なる人間』どころか偉いからな。ってか、なんでこの負け犬を連れてくるかな?」

 

「私の仲間に会いたいと言うから連れてきたのよ……何かマズかったかしら?」

 

 シレッと言うニコ・ロビンだが、俺とアーロンを鉢合わせにすれば何も起こらないハズもなく、頭の良い彼女がソレに気付かないハズもない。

 やはり、探求心から確信犯的にアーロンを連れてきたとみるべきか。

 

「よく言うぜ……誰が仲間だ?」

 

 言葉尻を捉えて突っ込みを入れるも、既にニコ・ロビンはソッポを向いて知らん顔だ。

 

 全くっ……やってくれるぜ。

 

「テメェっ…………負け犬たぁ誰の事を言っている!?」

 

「お前だよ、長っ鼻。情けない野郎だぜ……グランドラインで勝てないからって、最弱の海で支配者ごっこかぁ? 魚人ってのはもっと骨のある連中だと思っていたが、あのタイガーだけが特別だったってワケか」

 

 十数年前に出会った鯛の魚人は、奴隷の首輪を付けられながらも、その眼と身体には覇気を宿していた。

 それに比べてコイツはどうだ……狂暴性こそ有る様だが、とても七武海の一角であるジンベェと肩を並べていたとは思えない。

 

 ってか、絡んでくるなよな……俺の強さが判らないほど鈍いのか?

 

「ナニぃっ!? テメェ、鯛の兄貴を知っているのか!?」

 

「さぁな? お前に教えてやる謂れがないし、俺はお前に用も無い。サッサと自分の城に帰って引き込もってな」

 

 スナップを効かせてシッシッと手首を振った俺は、アーロン達を追い払おうと試みる。

 

 周囲の村人が「アイツ、なんて口を」とか「殺されるぞ!?」とか言っているが気にしない。

 

「ニュ〜。おめえ何処で鯛のお頭の事を聞いたんだ?」

「ハチっ、馴染むな。大方、聞き齧っただけだ、チュッ」

「舐めた態度の男だが殺すのもマズイ……アーロンさん、パークに連れ帰り尋問しましょう」

 

「馬鹿かてめぇら? 俺はこの村で人を待ってるんだ……用も無いのに誰が付いて行くかっ」

 

「テメェに選択権はネェんだよ、人間! チュウっ、連れてこい!!」

 

 幹部の助言を受けたアーロンが、唇の長いチュウと呼ばれた魚人に俺の連行の指示を出す。

 

「あいよ、アーロンさん……ぐはっ!?」

 

 座る俺の背後に回り、馴れ馴れしくも肩を抱いて来たチュウと呼ばれる魚人の顔面に裏拳を食らわせる。

 

 暴れるのもどうかと思うが、連行されても良いこと等なく、ここに至ってはこうするしか無いだろう。

 

「チュウ!?」

 

「なんだぁ? この程度で失神か? お前等どんだけ弱いんだよ?」

 

 ドサッと音を立てて背中から倒れたチュウに呆れた視線を向ける。

 

「よくもっ……エイっ」

 

 お下げの魚人が駆け寄り腰を落として正拳突きを繰り出した。

 

 正確な型だがモーションがデカいし遅すぎる。

 

「させるかっ!」

 

 突き出された魚人の拳をキキョウが横から片手で受け止めた。

 

 ま、そうなるわな。

 

「なにっ!? ぐはっ」

 

 伸ばされた腕を掻い潜ったキキョウが魚人の腹部に掌底を放つと、魚人の巨体が勢いよく後方に吹き飛び、大通りを挟んだ向かいにある家屋の壁へと激突して白目を向いた。

 

「クロオビっ!?」

 

「おらっ、雑魚は大人しく引き込もってろ。俺に話が有るなら…………4日後に聞いてやる」

 

 倒れたチュウの衣服を掴んだ俺は、アーロンに向けて放り投げた。

 

「下等な人間が同胞に何をした!! これ程の事を仕出かしたお前達を黙って見過ごすとでも思ってるのかぁ!!」

 

 投げられた魚人をガッチリ受け止め、近くの魚人に預けたアーロンが凄みながら近付いてくる。

 

 ナミが麦わら一味に正式加入するまで、アーロンに手を出したくなかったのだが、舐めた態度で掛かってくるなら仕方ない。

 

「やれやれだ……仕掛けて来たのはお前の方だろ? 魚人ってのはどんだけ被害者ヅラが得意なんだ?」

 

 俺は肩を竦めて御手上げのポーズをしてみせる。

 

 手を出したのは俺が先かも知れないが、俺の自由を奪う連行を仕掛けて来たのは魚人の方だ。

 人の権利を奪おうとすれば、時に手痛いしっぺ返しを喰らう……アーロンはこんな当たり前の事も知らない馬鹿なのか?

 

「テメェっ!!」

 

 前方の視界を遮る迄に近付いたアーロンの巨大な握り拳が木製のパラソルを打ち壊し、俺の頭上から振り下ろされる。

 

「ふんっ……やっぱこんなもんか? 2000万ってこたぁないが、4、5千万が良いとこだな……オラぁ!!」

 

 俺は繰り出されたアーロンの拳を指先で受け止め、ソレをデコピンの要領で弾き、突き出た顎を狙ってラッシュを繰り出した。

 

「なっ!? 下等な……人間がオレにっ……」

 

「黙れ……俺を下等な人間と一緒にするなっ」

 

 フラつきながらも両腕を伸ばして掴みかかろうとしてくるアーロンの腹部にアッパーを叩き込むと、前のめりに倒れ俺の身体にのし掛かる。

 

 魚人も生物に代わりなく、脳を揺らしてやればザッとこんなもんだ。

 

「アーロンさんっ!?」

「まさかっ!? アーロンが!?」

 

 この光景を見ていた魚人だけでなく、村の連中もどよめいている。

 

 これは……かなりマズイな。

 

 この状況から原作修正って可能なのか?

 まぁ、やっちまった事は仕方ない……あとは原作の修正力に期待しよう。

 

「ニュ〜……おめえら、皆を連れてパークに帰るぞ」

 

 額を掻いたタコの魚人がおあつらえ向きに撤退を告げる。

 

「おぅ、そうしろタコ助……おらっ、シッカリ受け取れ!」

 

 俺は渡りに船とばかりに、タコ助に向けてアーロンを放り投げた。

 

「ニュ〜……すまねぇなぁ」

 

「気にすんな……ってか、お前ハチだろ? なんでアーロンなんかとつるんでるんだ?」

 

 あ、しまった。

 

 ハチの醸し出す狂暴性とは対極にあるノンビリとした雰囲気に、俺は思わず余計なコトを口にする。

 

 アーロンを含めて聞きたいこと、言いたいことが有るには有るが、今はまだその時ではない。

 

「顔が広いのね」

 

 すかさずニコ・ロビンから突っ込みが入るも、華麗にスルーだ。

 

「そんな事言われてもアーロンさんは仲間想いのイイヤツだからなぁ……仲間は裏切れねぇ。って、おまえオレの事も知ってんのか?」

 

「ん……お前は、俺の知り合いの恩人、らしい。話しに聞いていたダケで、お前と会ったのは今日が初めてだ」

 

 こんな話はレイリーから聞かされていないが、内容自体は真実だ。

 俺の誤魔化しがバレるコトもないだろう。

 

「ホントかしら?」

 

「にゅ〜? 恩人……? あ、そのマントっおまえレイリーの知り合いかぁ!?」

 

 四本の腕を使ってアーロンを頭上に持ち上げるハチは、残り二本の手をポンッと打っては「懐かしいなぁ」と勝手に納得している。

 

 ニコ・ロビンは「レイリー?」と訝しげだし、村人達は、「アーロンがイイヤツだと!?」 「ふざけるなぁ!!」 と、息巻いてるし正直勘弁してほしい。

 

「おらっ、無駄話は良いからサッサと帰れよ? 暴動に成っても俺は知らねぇからなっ」

 

 俺の半ば投げ槍な言葉に他の魚人達も慌ただしく動き、倒れたチュウとクロオビを協力して抱え、今来た道を引き返していった。

 

 その様子を憤慨しながらもただただ眺める村人達……頼むから手出ししないでくれよ。

 

 今を好機とみて闘い死ぬのは村人達の自由だが、俺のプランが狂ってしまう……ナミだけは麦わら一味に欠かせないのだ。

 他の誰が欠けても麦わらの一味でなくなるが、中でもナミは格別だ。

 おそらく、ナミが居ないとマトモに航海できず、ルフィは儚く海の藻屑と消えるのだ。

 

 俺は祈るような気持ちで魚人達の撤収を見守るのだった。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 魚人の撤収が滞りなく終わり一段落を迎えた俺達は、丸テーブル囲んで蜜柑ジュースを飲んでいた。

 解せないコトに、御代は全て俺持ちだったりする。

 

「捕えなくて良かったの?」

 

 主語の抜けたニコ・ロビンの言葉だが、さすがにコレは想定内。

 

「捕える必要があったのか?」

 

 わざとらしく小首を傾げた俺は、意地悪く質問に質問を返してやる。

 

「村の人達が困っているわ」

 

「そうみたいだが、それは俺に関係の無い話だ。誰かが困っている度に助けていればキリがないし、そもそも、村の問題を何とかするのは村人自身のハズだろ? 俺が勝手に助けてどうなるもんでもない」

 

「厳しい意見ね……だけど、貴方に倒された魚人達が八つ当たりで暴れても、俺に関係ないと言えるのかしら? 彼等、理知的には見えなかったわ」

 

 なるほど……その発想は無かった。

 アーロン達が腹いせに他の村で暴れるのは、十分に考えられる事態だ。

 それどころか、再び俺に向かってくる可能性も大いにある。

 

「それはマズイな……一応、釘を刺しておくか」

 

「おかしな事を考える男だ……奴等が暴れてマズイなら、捕えて海軍なりに突き出せば良かろう」

 

 キキョウの意見は至極尤もだが、そうは出来ないのが転生者の辛いトコだ。

 

「海軍はマズイだろ? な? ニコさん」

 

「そうかしら? 護衛さんが連行すれば良いし、しっかりと縛れば村の人達が連行するのも可能よ……最悪、殺すのも仕方ないわ。彼等はどの道賞金首……そうしない理由は何かしら?」

 

 真っ直ぐ見詰めてくるニコ・ロビンは一体俺をどうみているのだろう?

 よもや転生者と気付くようなコトは有るまいが、これ以上行動を共にするのはマズイ気がする。

 

 いや、既に手遅れかも知れない……今日の様な事態を招いたのは一重に、ニコ・ロビンの与える影響力を甘く見ていた俺の責任だ。

 

 それにしても、ニコ・ロビン、か……世界政府に追われる悪魔の子。

 しかし、その実はこの村の心配をする極普通の女。

 頭の良すぎるのがタマにキズだが…………まぁ、一緒に居て楽しい女だったのは、否定の出来ない事実になるか。

 

 だが、それもこのココヤシ村を出るまでだ。

 

「あの……よろしいですか?」

 

 俺とニコ・ロビンが見詰め合い微妙な空気が漂う中、見知らぬ女が割り込んできた。

 

「ん? なんか用か?」

 

 てか、誰だコイツ?

 見覚えが有るようでピンとこない。

 

「お願いですっ! 魚人をっ……アーロンをっ、倒し……いえ、殺して下さい!!」

 

 いきなり現れた薄紫の髪の女はそれだけ叫ぶと、頭を地面に擦り付けるように土下座した。

 

「やなこった」

 

「え……?」

 

「ナニを惚けてる? なんで俺が見ず知らずのお前の頼みで殺しをしなきゃいけねーんだ? 何の得にもなりゃしねぇっつーの」

 

「ならば、金を払えばやってくれるのか!?」

 

 今度は帽子に風車を着けた全身傷だらけの男が口を開く。

 

 この親父は確か原作キャラだな。

 

「そうくるか……んじゃ、二億の現金一括払いで考えてやる」

 

 この村にそんな金が無いのは原作的にも明らかだ。

 俺がアーロンを始末する訳にもいかないし、ソレっぽい理由を明確にしてサッサと諦めてもらおう。

 

「そんな金有るわけ無いじゃないか! アンタ、その女に聞いて知ってるんだろ? この村がどういう状況に置かれているのか!」

 

 今度はさっきの土下座女が立ち上がって捲したててくる。

 

 この口調には覚えがある……コイツ、ナミの義姉じゃねーか。

 

 はぁ……なんで原作キャラばっか寄ってくるかな?

 

「知ってたからなんだってんだ? そんなもんは俺が動く理由にはならねぇ。大体、二億ってのは妥当な金額だぞ? アーロンを殺すコトでお前等が助かるとすれば、むしろ安い位だ……違うか?」

 

「……っ!? だったら二億の代わりにアタシがアンタの物になる!! それで良いだろ!?」

 

 ナミの義姉は刺青の入った胸元を叩いて仕切りにアピールしているが、何がだったらで、それで良いのか皆目見当もつかない。

 そもそも人は売り買いするようなモノでなく、オマケにコイツは気が強く、ナミの義姉って付加価値まで付いてくる。

 

 幾らであろうが絶対に買いたくないぞ。

 

「……お前が二億? 馬鹿じゃねーの?」

 

「貴様っ!! この娘の覚悟を嘲笑うかっ」

 

「何を怒ってんだ? 逆だ、逆。一説によると、人の命は世界より価値があるとされているんだ……たかが二億とソイツじゃ釣り合うワケがない。不釣り合いな取引は俺の趣味に合わねぇんだよっ」

 

 俺は、僅かに残る前世の知識を使って煙に巻こうと試みる。

 駐在も義姉も面食らった様な顔で固まっているし、どうやら上手くいきそうである。

 

「ふふ……残念ね、お二人さん。貴方達の反逆の意思は聞かなかったコトにするから、私達のことは放っておいてくれる?」

 

「勝手に決めんなよ……ま、コイツの言う通りだ。さっきの件でアーロンが暴れないようにもしてやるから、俺をアテにするのは止すんだな…………俺はアーロンを倒さねぇ」

 

 と言っても、アーロンをどうやって説得すれば良いのやら。

 

 こうしてプチ原作ブレイクを果たした俺は、半ば諦めの心境で駐在達を追い払い、ナミが現れるまでの数日をどう乗り切るか頭を悩ませるのだった。

 

 

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