自由への航海   作:天の川

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要望が有りましたので続きます。

捏造設定満載でお送りする主人公最強クラスのワンピース二次小説になります。









「失礼致します!!」

 

 左右に二匹の龍が描かれた巨大な扉を力を込めて叩いた俺は声を張り上げた。

 世界様と謁見するには1にも2にも気合いが重要なのである。

 只そこに居るだけで、圧倒的な覇王色の覇気を撒き散らすのが世界様だ。

 礼儀作法に拘っていてはお目通りが叶う前に失神してしまう。

 

『No.シックスか……入るが良い……』

 

 扉の向こうから腹の底に響く声がする。

 

 No.シックスとは多分俺の事だろう。

 二年程前に謁見した時はNo.サーティーンと呼ばれていたが、この二年で俺の相対評価は幾分か上がったらしい。

 そして、この呼称されるNo.が、天竜人としての現在の序列を現していると推察出来る。

 寧ろ、こんな分かりやすい制度があるのに、過半数を越える馬鹿貴族が継承権を競わせていると気付かず自堕落に生きているのが不思議でならない……これが愚民化教育の賜物と言えば賜物だが……いや、止そう……今はそんな事を考えている場合では無い。

 

 巨大な扉を押して室内に足を踏み入れる。

 

 何本もの円柱で支えられた薄暗くだだっ広い室内には、世界様の覇気が充満している。

 世界様が座するは俺の正面、一段高いカーテンの向こう側だ。

 

「本日はぁ! 御願いの議が御座いましてぇ!! 参上致しましたぁっ!!」

 

 声を張り上げ気合いを振り絞って、赤い絨毯の上を一歩ずつ進む。

 

 礼儀作法なんて有ったもんじゃないが、こうでもして気合いを入れないと意識が飛んでしまうのだ。

 

 世界様まで後、三十歩。

 

 二年前は入って直ぐに片膝着いた事を思えば、俺も随分と成長したらしい。

 

『海に出るか……許可しよう』

 

 残り二十歩ほど迄近付いた時、世界様が核心を突く言葉を呟いた。

 

 何故知っている!?

 

 海に出たいだなんて今の今まで口にした事は無い。

 聖地を飛び出すと云うことは、世界様に対して反意を表明するとも受け取られ兼ねないのだ。

 俺の権力はあくまでも世界様の許可があって成立するモノであり、その大元である世界様に面と向かって歯向かう事は自殺行為に近く、そんな素振りは見せてこなかったハズだ。

 こうして世界様の元を訪れたのも、黙って聖地を去る事のリスクを回避するためだ。

 天竜人が聖地から脱走……こんな前代未聞の不祥事を犯せば、三大将の追跡を受けるのは明らかであり、それは流石に面白くない。

 

 俺は、世界様に逆らうのではなく、海に出たいから出るのだ……言葉を選んで慎重に御願いして願いを叶えて頂く……そう考えていたのだが……これは、見聞色の覇気の為せる業なのだろうか?

 

 見聞色は俺にも扱えるが、完全に思考を読み取る様な真似は出来ない。

 確か原作では……空の住人が強力な見聞色を使っていたが…………ダメだなハッキリと思い出せない。

 

 

『どうした? 不服か?』

 

「滅相も有りません! 早速の御聞き届けっ! 有り難く存じます!!」

 

 世界様迄、後十歩。

 

 間近に迫ってカーテンを捲ってやろうとも思っていたが、どうやらここまでの様だ。

 その場で片膝を着いた俺は、下を向いて謝意を叫んだ。

 

『……で、あるか』

 

「ハッ!! ではコレにて失礼致します!!」

 

 とにもかくにも俺の願いは叶ったのだ。

 余計な事は喋らず、考えず、逃げるが勝ちだろう。

 

 両手を着いて赤い絨毯に額を擦り付ける勢いで深々と頭を下げた。

 

『左様に急がずとも善かろう……』

 

「ですが、これ以上世界様の御手を煩わせ」

『時にシックスよ……貴様は悪魔の実を所望しておったな?』

 

「は……? ハイ! 過ぎた願い誠に失礼致しました!!」

 

『最強とは何ぞや?』

 

「は……?」

 

 なんだこの世界様は?

 コミュ障か?

 会話が成立していない。

 しかも、最強なんてものは見る人次第でどうとでも変わるアヤフヤなモノだ。

 だが、問われたからには何かしらの答えを述べねばマズイだろう。

 下を向いたままの俺は、世界様の望むであろう答えを必死に探す。

 

『どうした? 貴様が所望した物であろう?』

 

 世界様の言葉に冷や汗が吹き出す。

 

 これは……最強の悪魔の実を望んだ俺への糾弾か!?

 実際に欲しかった訳でも、手に入ると思っていた訳でもない。

 俺は、天竜人がどの程度の横暴を許されているのか確かめる為に、様々な命令を出してきた……その一環だ。

 手に入ったらラッキー位の下心が有ったのは否定しないが、こうやって糾弾されても答えようがない。

 なにせ、俺自身が最強の悪魔の実が何で有るか知らないのである。

 

 どうする?

 

 ありのままを話すか?

 

『面を上げよ……』

 

「ハッ!!」

 

 これ以上世界様の言葉に逆らう様な真似は出来ず、頭を上げた俺は赤い絨毯の上で背筋を伸ばして正座する。

 

 すると、いつの間に置かれたのか、目の前には台座に乗せた悪魔の実が三つ並べられていた。

 

「コレは!?」

 

『餞別だ……好きなモノを選ぶが善い』

 

 餞別?

 何故だ?

 俺は何も答えていない。

 やはり、心が読まれているのか?

 だとすれば、失礼な事を考えなくて良かった。

 

 内心でホッと一息ついた俺は、並べられた悪魔の実に目を移す。

 因みに、悪魔の実を記した大図鑑は何年か前に入手して読破済みだ。

 

 一番左は……ヤミヤミか……確かに最強と言えなくもないが……コレは黒ひげが喰うべき実だな。

 てか、現時点でここに有って大丈夫なのか?

 海賊王が処刑され大海賊時代と呼ばれる様になってもうすぐ20年……時期的にはギリギリか。

 未来知識とも言える原作はなるべく壊したく無いのだが、どの道俺が知る原作は二年後に一味が再集結した辺りまでだし、頂上決戦が起こらなくても割とどうでも良いな。

 とりあえず、保留と。

 

 真ん中は……原作未登場のガスガスか……最強種たる自然系だが扱いが難しそう、と言うより火が弱点になるんじゃないのか?

 とりあえず、保留と。

 

 一番右も……本編未登場の実か……自然系ですらなく図鑑の説明文も大したことのなかった超人系の実だが、俺の推測なら……コイツは最強の実に成る可能性を秘めている。

 覇気を扱える俺にとって、別に悪魔の実の能力は無くても構わない……一か八か、掛け値なしの最強に賭けて喰うのも悪くない。

 

 決まりだな……元より世界様の用意した実を喰わない選択肢など存在しない。 

「お心遣い痛み入ります! では、こちらの実を頂きます!!」

 

 そう叫んだ俺は右端の実を掴んで天にかざすと、大口開けて食い付いた。

 

 マズい。

 

 だが、時間をかければ逆に喰えそうにもなく、二口、三口でろくに噛まずに呑み込んだ。

 

『ほぅ……ソレを選んだか……面白き男よな』

 

「お誉めに預かり光栄の至り! それでは行って参ります! 長きに渡り御世話に成りました! お祖父様もどうかお元気で!!」

 

 直立の姿勢からの直角のお辞儀を行った俺は、キビスを返して背を向けた。

 世界様と向き合うばかりか、入らぬ嫌疑まで向けられた俺の精神はこれ以上持ちそうもなく、なんとしてでも謁見を終わらせたい。

 

 だが、黙って去るワケにはいかない。

 子孫をモルモットの様に育てる世界様に思う所は無くもないが、それでも俺は、この聖地で世界様たるお祖父様から多大なる恩恵を授かったのは事実だ。

 

 そう……例え反逆者として処断される危険が有ったとしても、御礼と別れの言葉を告げないと人の道に反する事に成る。

 我ながら馬鹿げた拘りだが、俺は俺の心の自由に従って動きたい。

 それに、これをしっかりとやり遂げれば、ついでに三大将の追跡からも逃れられるし悪くはないハズだ。

 

『ふ……ふははははっ……我をその様に呼ぶか……行くが善い……No.シックス! 行って己が望み叶えてみせい!』

 

「ハッ!!」

 

 こうして、命を磨り減らす思いで海へ出る許可と、思いがけず最強の能力(予定)を得た俺は、振り返る事なく出口に向かって一目散に駆け出した。

 何度も言うが、世界様の前では礼儀作法なんてものに拘るよりも、素早く要件を済ませ逃げるが勝ちなのである。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

「サーティーン……いくつになった?」

 

 世界様との謁見を済ませ充分に距離を取った俺が、乱れた息を整えつつ歩いていると、突然背後から男の声で呼び止められた。

 

「これは……叔父上、それに叔母上。相変わらず仲が宜しいようで」

 

 振り返った先には紫髪の丸い頭の男が後ろ手に腕を組み、その後方には口元を紫のスカーフで隠した紫髪の女が立っていた。

 大方、何処かで俺の謁見を聞き付けて、探りに来たのだろう。

 

 二人は俺にとっての叔父と叔母……つまり二人とも世界様の子であり、同じ母を持つ兄妹だ。

 No.は兄がツーで妹がフォーだ。

 この二人は天竜人継承レースに気付いている口で、お互いを敵視しているとかいないとか。

 

 まぁ、聖地を去る俺には関係の無い話だな。

 

 関係ないと言えば、各々が異性の護衛を引き連れているが、別段話す事もないしどうでもいい相手だ。

 

「戯れ言を……良いから申すがよい。いくつに成ったのじゃ?」

 

「おかげさまでNo.シックスと呼ばれましたよ。叔母上様」

 

 No.は通達される様なモノではなく、謁見の際に呼ばる事で判明する数字であり、今現在の正確なランキングは世界様しか知らないらしい。

 因みに、No.ワンと呼ばれた天竜人は誰もおらず、日々入れ替わるランキングの性質上、同じNo.が被る事もよくある話だ。

 

「ほぅ……貴様の様な闘いしか取り柄のない我が儘男がシックスとはな……」

 

 眉のない右目をピクリとさせたNo.ツーが感嘆しつつ嫌味を言ってきた。

 

「叔父上様も戯れ言がお好きな様で。俺の何処が我が儘ですか」

 

 先ほどの嫌味に対するお返しだろうか、叔父の嫌味に肩を竦めてみせる。

 

「何っ?」

「そなた、本気で言っておるのか?」

「あり得ない」

「有り得ませんね」

 

 嘘だろ?

 叔父、叔母だけでなく、ほとんど言葉を発さない護衛までもが驚いている。

 

「俺の頼み事など、奴隷を買い漁る事と比すれば可愛いモノではありませんか」

 

「サーティーン……いや、シックスよ。大局を見るが良い……貴様がシャボンディで海賊相手に暴れる為に、どれ程の人間がどれだけの時間を費やしているか考えた事は有るか?」

 

「べ、別にあいつら暇なんだし良いじゃないですか! 大体、俺が付いてこいと言ってるんじゃないしっ」

 

 覇気修行の成果を試すべく、身分を隠してシャボンディで暴れまわっているのは確かだが、海兵達の助けを借りた事はない。

 付いてこなくていいと言ってるのに、ワラワラ集まり遠目に見てるだけの海兵まで俺のせいにされるのは心外だ。

 

「そもそも、奴隷を逃がしたのはシックス、そなたであろう? 買わねばならぬは元を正せばそなたのせいというものじゃ」

 

「え? それは……その……色々と事情が有りまして……奴隷を逃がしたらどうなるかなぁ、なんっつって」

 

 自らの後頭部を叩き、可愛く言ってみたが、向けられたのは四人の白い目と、紫ババァの「最悪じゃな」の呟きだった。

 

 奴隷解放……別に正義感を振りかざした訳でもなく、これにはのっぴきならない事情が有ったのだ。

 

 アレは確か十数年前……前世の記憶を思い出し、天竜人としての暮らしにも慣れ始めた頃だった。

 馬鹿(父)に付き合って行ったコロシアムで、フィッシャー・タイガーの名を聞いてしまったのだ。

 俺の記憶が確かなら、あの男こそが奴隷解放の英雄であり、外部から断崖絶壁をよじ登って聖地で大暴れするハズの男だったのだ。

 しかし、この世界のタイガーは奴隷であり、物理的に外部からの侵入は不可能だった。タイガーが聖地を襲撃しないと、奴隷は解放されずハンコックも解放されずに原作が変わってしまう。

 ワンピースの世界に産まれたからには、いつかはルフィ達との交流も果たしたい……そう考える俺には不都合だったのだ。

 それで仕方なく俺がタイガーの脱獄の手引きをしてやり、原作の流れをなんとか護ったと云うわけだ。

 

 面白い事にこの事件は『断崖絶壁をよじ登って現れた英雄の仕業』と世間では言われており、俺的には、原作の修正力はハンパない、と学んだ出来事になる。

 

 そう言えばハンコックはどうなっているのやら……一応、原作通り七武海に入ったと聞き及んでいるが、少し心配な事もある。

 原作で描かれなかったダケかもしれないが、この世界のハンコックはそれなりに酷い目に合っていた。

 

 奴隷の美少女……これだけ言えば誰でもピンと来るだろうが、そういう事だ。

 原作から外れた人間不信に陥ってなければ良いのだが…………東の海に行く前に立ち寄ってみるか。

 

「まぁよい……それで、旅立ちはいつになる?」

 

「変わった男よな……何の不自由のない聖地を離れ、野蛮な地に向かうのじゃからな」

 

「は? なんでそれを?」

 

「貴様の望んだモノを考えてみよ。戦闘力に海楼石を敷き詰めたダイアルで動く小型の動力船」

 

「どう考えても旅に出ようとしておるではないか?」

 

 No.ツーの言葉をNo.フォーが捕捉する。

 この二人、マジで仲が良いのかもしれない。

 

「別に良いだろ? 俺が居なくなればライバルが減って万々歳だ」

 

 コレで別れとバレているなら、猫を被る必要はないだろう。

 口調をぐずし軽口を叩いた俺は、大袈裟に両手を拡げてみせた。

 

「ふっ……違いない」

 

「愚かな男よな……今少しの辛抱を重ねれば良いものを」

 

「ほっといてくれ。何をするのも俺の自由だ」

 

 紫ババァの言うことは間違いじゃない。

 何を基準に判断しているのか定かでないが、若冠二十歳にしてNo.シックスの評価を得た俺だ。

 更に10年、20年と励めばNo.ワンとなれるかも知れず、そうなれば次代の世界様となり、知りたいことの全てを知れる。

 

 だが……それでは面白くないのだ。

 折角産まれたロマン溢れるワンピースの世界で、他人の敷いたレールの上をひた走る?

 

 そんなのは御免だ!

 

 目の前の二人の様に、籠の鳥と知りつつ辛抱を続ける事は俺には無理だ。

 

「「ならば、精々頑張るがよい。これは餞別だ」」

 

 兄妹の声が見事にハモり、揃って小さな物を差し出した二人は、互いにそっぽを向き合った。

 

 やはり仲が良いのかもしれない。

 

 そんな二人からの餞別を受け取った俺は、別れの言葉を告げると、小型船を預けたシャボンディ諸島へと向かうのだった。

 







No.ツーとフォーさんに前世の記憶は有りません。

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