自由への航海   作:天の川

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諸事情により主人公の名前が代わりました。

本編4話目にして、主人公の容姿と人格、強さの説明回。
主人公は天竜人です。
基本的に、馬鹿で傲慢。
嫌いな人はご注意下さい。
ハンコックに対する暴言もあります。








 カームベルトに浮かぶ男子禁制の島、アマゾン・リリー。

 一昔前は幻の島とも言われていた女ヶ島だったが、僅か二日で無事に辿り着く事が出来た。

 

 偉大なる航路を海賊の墓場たらしめているのは、大別すると三つの要因があげられるだろう。

 一つは、磁場の乱れや嵐といった自然の脅威。

 一つは、海王類に代表される巨大生物の脅威。

 最後の一つは、人間である海賊による脅威だ。

 

 俺は天竜人の権力をいかんなく発揮して、これらの脅威を脅威で無くす事に成功していた。

 自然の脅威は、用意した小型船とエターナルポーズで乗り越え、巨大生物の脅威は、海楼石の船底と幼い頃より海軍本部の連中を呼びつけて、鍛えに鍛えた身体と覇気でブッ飛ばす。

 海賊の脅威は、覇気と懐中時計に刻まれた天駈ける竜の蹄の紋章で追い払う予定であったが、どちらも使う程の相手に会うことも無くアマゾン・リリーへと辿り着いたので、拍子抜けと言えば拍子抜けだ。

 

 とは言え、順風満帆であったか? と聞かれれば答えはノーだ。

 僅か二日に満たない航海であったが、大きな問題に直面したのである。

 

 それは……。

 

 暇なのだ。

 

 大海原に浮かぶ小さな船の上で、たった一人で一体何をしろというのか?

 あと、飯の用意とかが面倒だ。

 早急に誰かを見付けて旅の道連れにすべきだろう。

 理想はソコソコ強くて料理が得意、その上で原作に与える影響の少ない人物が望ましい。

 

 まぁ、この問題は後でじっくり考えるとして、先ずは間近に迫る問題を片付けるとしよう。

 無事にアマゾン・リリーへと辿り着いた迄は良かったが、少々面倒な事に成りつつある。

 

 島の内部へと通じる川を遡っていると、川幅が狭まった辺りで左右の岸に蛇みたいな弓を手にした、多数のビキニ姿の女が現れ行く手を遮られたのだ。

 

「だからっ! 海賊女帝に合わせろっつってんだろうが!」

 

「出来ぬと言っている! 早々に立ち去れ!!」

 

 緩やかに流れる川に浮かぶ小型船の船首の上に立った俺は、島の護衛団の隊長格と思われるビキニ姿の女と押し問答を繰り返している。

 

 天竜人だと名乗ればハンコックに警戒されるのは火を見るより明らかであり、かといってハンコックが隠そうとする十数年前の出来事を明かす訳にもいかず、こうやって面会を頼んでいるのだが、中々上手くいかない。

 

 てか、いい加減面倒だな……死なない程度にブッ飛ばすか?

 集まった百を越える女の中には隊長格の女を筆頭に、原作で見たような人物の姿もあるが、所詮は覇気無しルフィにあしらわれる程度の連中だ。

 俺の敵では無いし、殺さなければ原作に与える影響も最小限になるハズだ。

 

 …………。

 

 よし、ブッ飛ばそう。

 

 それから岩壁に作られた中国風の城に行けば、ハンコックに会うという俺の目的は果たされるハズだ。

 

「み、皆の者気を付けよ! コヤツ、何かしでかす気だ!! 刃向かってくるなら殺しても構わん!」

 

 俺が戦闘モードに意識を切り替えると、すかさず隊長格が周りの女兵に注意を促す檄を飛ばした。

 未熟ながらも見聞色の資質を兼ね備えているのかもしれない。

 

「ま、待ってください。相手は女です。殺さなくても国外追放で良いのでは?」

 

 見覚えのある女、確かマーガレットだったかが甘い事を言っているが、色々かつ根本的に間違えている。

 

「そこの黄色い髪の女ァ! 俺は男だ!! フザケタ事を抜かしたらブッ飛ばすぞ!」

 

 フザケなくてもブッ飛ばしは決定事項だが、普通、間違えるかぁ?

 そりゃ、身長は如何な天竜人の命令であっても伸ばす事が出来ず、170程度の細身の身体だが、肝心の顔は其なりに整っていると自覚があっても、何処からどう見ても男の顔だ。

 

 コレか?

 この長く伸ばして無造作に束ねた薄紫色をした髪のせいか?

 刃物を持たせた人間を背後に立たせたくなかったのが、まさかこんな形で裏目に出ようとは。

 

「男だと!?」

「きゃー男よぉ!」

「始めて見たの巻き!」

 

「己っ、我等を謀りおったか! 皆の者、矢を放て!!」

 

 団長格が振り上げた腕を下ろすと、左右の高みから覇気を纏った矢が一斉に放たれた。

 

「はぁ? 謀ってねーしっ、お前等が勝手に間違えたんだろがっ……オラァ!」

 

 下手に避けると船体が傷付く……両手に覇気を纏わせた俺は、ラッシュを繰り出し迫る矢を叩き落としてゆく。

 叩き落とす際は矢尻の先との正面衝突は避けて、横からショートフック気味に叩くのがポイントで、コツさえ掴めば矢を叩き落とすのは簡単だ。

 

 しかし、船の上で闘い続けるのはマズイ。

 只の矢尻であっても覇気を纏わせれば、その攻撃能力は貫くから爆破に変わるのだ。

 万一、流れ矢が船に当たると考えるのも恐ろしい事態を招くだろう……主に、俺の怒り的な意味で。

 

 俺は、隊長格が陣取る川岸に向かって小型船を蹴り大ジャンプを繰り出した。

 

「貴様っ……覇気使いか!」

 

 近距離で俺と対峙した隊長格は、手にする武器を弓から剣に変えて俺を睨み付ける。

 

「よう……人が下手に出てやったのに、やってくれたじゃねぇか? 覚悟は出来てんだろな?」

 

「下手だと!? 貴様がいつ下手に出たというのだ!」

 

「海賊女帝に合わせろって頼んだだろうがっ」

 

「そんなモノは下手とも頼みとも言わん! いや、問答は最早不要! 貴様が男なら死、有るのみ!」

 

「気が合うじゃないか? コッチにも話す気はもう無いんだよっ! お前等全員ブッ飛ばして海賊女帝を引き摺り出してやるぜっ」

 

「やはり、狙いは蛇姫様か! 皆の者、遠慮は無用だ! かか、れぇ……!?」

 

 こういう時は先に頭を潰すべし。

 周りに指示を飛ばす隊長格の鳩尾に一撃を食らわせ意識を奪う。

 

「隊長!?」

「見えなかったの巻」

 

「さぁ、次はどいつだ? ブッ飛ばされたくないヤツは、海賊女帝に泣き付く事をオススメするぜ?」

 

 こうして不適な笑みを浮かべた俺は、降りかかる火の粉を払うべく、戸惑う女達に殴り掛かるのだった。

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

「これは一体にゃに事じゃ!?」

 

「ニョン婆ぁ様!?」

「お、お逃げ下さい!」

 

 八割方倒したところで密林を掻き分けて三頭身のババァが現れた。

 

 女達は九蛇の戦士と呼ばれるだけあって、どいつもコイツも逃げようとはせずに、意識を取り戻しては俺に向かってくる。

 手加減も面倒になってきたし、これで風向きが変われば良いのだが……。

 

 ってか……ミスったかも知れない。

 存在をすっかり忘れていたが、ハンコックの事情を知るであろうこのババァを最初に呼んでいれば、こんな真似をしなくても良かったんじゃないのか?

 次からはもっと慎重に原作知識を思い出して、よりベターな行動を取るべきだな。

 

「お主、一体にゃに者じゃ? にゃんにょ用があってこにょアマゾン・リリーに来たにょじゃ?」

 

 にょにょにょにょ五月蝿いが、若い連中よりは話が出来そうだ。

 

「やっと話せる奴が来たか……俺の名はオーザ。ワール・D・オーザだ。海賊女帝に会いに来た」

 

 散発的に放たれる矢を払い除けながら、現れたニョン婆の近くへと移動する。

 

 話をするなら、お互いに声を張り上げずに済む距離が良いだろう。

 

「ワール・D・オーザ?ワール・D・オーザとな? 聞かぬ名じゃな。蛇姫に会うてどうするつもりじゃ?」

 

「別に何も? 会うのが俺の目的だからな」

 

「にゃんと!? 蛇姫に会う為だけにこれ程にょ事をしでかしたと言うにょか?」

 

「はぁ? これ程? こんなのは当然だろ? コイツらは武器を手に襲って来たんだ……殺されなかっただけ有り難く思うんだな」

 

 俺の言葉にニョン婆が何故か目を見開いて驚き、地に伏す九蛇の戦士の何人かが悔しそうに下唇を噛んでいるが、知ったことではない。

 弱い奴は全てを奪われ蹂躙される……嫌ならヤられたらヤり返す……それがこのワンピースの世界だ。

 奪われたくなければ、権力でも腕力でも知力でも数の暴力でも、何でも良いから『力』を手に入れ自らを護るしかないのだ。

 奪われたくない俺は、血ヘドを吐きながらも絶対的に信頼出来る力として、戦闘力を手にしたのである。

 

「にゃんと言う言い草じゃ!? じゃが、お主が如何に強く我が儘でも目的は叶わにゅ。蛇姫は外海に出ておるにょじゃからな。いくら暴れようとも、城に乗り込もうとも蛇姫には会えぬにょじゃ」

 

「マジかよ……」

 

 だったらなんでコイツらは馬鹿みたいに襲ってきたんだ?

 俺に弱者をいたぶって悦に入る趣味はない。

 ハンコックが居ないなら、完全に骨折り損のくたびれ儲けじゃないか。

 

「ニョン婆様!」

 

 ニョン婆の発言の何が気に入らないのか、満身創痍の隊長格の女は仲間の肩を借りて起き上がると、咎める様にニョン婆の名を叫んだ。

 

「よいではにゃいか。どにょ道ここに居る者達ではこにょ男は止められにゅ。真実を告げて帰ってくれりゅにゃらそれも国を護る一つにょ手じゃ」

 

「ですがっ、不法に入国した男は死罪! それがこの国の絶対の掟!!」

 

「そんにゃ事を言うても、如何にしてその掟を果たすというにょじゃ? そにょ男は、掟だから従ってくれと言うて従うようにゃ男ではあるまい」

 

「そ、それは……九蛇の戦士の誇りを掛けて必ずやっ」

「はいはい。内輪揉めは後で勝手にやってくれ。海賊女帝が島に居ないなら好都合だ……俺は其処らの沖合いで九蛇海賊団が帰って来るのを待つとしよう。邪魔したな」

 

 この場を去ると告げた俺は、川に浮かぶ小型船へと飛び乗った。

 

「にゃ、にゃんと!? ま、待つのじゃ!」

 

「ニョン婆様、どうしてくれるんですか! その者は目的を果たさず引き下がる様な男では無いのです! 拳を交えた私達には判ったのです……例え、死んでもこの男を蛇姫様に合わせられないっ……それをっ」

 

「男は勝手と聞いていたけど……」

「男は恐いの巻ね」

 

「は? 誰が勝手で誰が怖いってんだ?」

 

「貴様に決まっている!!」

 

 隊長格の女がビシッと腕を伸ばして俺を指し示すと、意識のある女の全てがウンウンと頷いた。

 

 なるほど……世間と隔絶された女ヶ島に暮らすだけあって、男の勝手のなんたるかを理解していないらしい。

 俺が勝手なら他の馬鹿貴族はどうなるって話だ。

 

 まぁ、コイツラが世間知らずでも、俺にはどうでもいい事だ。

 死者を出して原作に影響を与えない内にサッサと出航するとしよう。

 

 俺は、動力元となるダイアルを二度、三度と蹴りつけて出航の準備に入る。

 

 ん……?

 

 この感覚は……?

 

「ま、待つにょじゃ! お主に勝手をされてはここに居る者達はどうにゃる!? 護国を果たせにゃんだ者は罪に問われ……最悪、死を賜るにょじゃぞ!!」

 

 川辺に慌てて駆け寄ったニョン婆が両の拳を握り締め、自分達の都合を力説している。

 

「そんなの俺が知るかよ。国を護れないのはソイツラが弱いせいで、死を告げるのはお前等の王であり掟だろうがっ。人に責任を擦り付けんな!」

 

「お、お主には人にょ心がにゃいのか!?」

 

「さぁ? どっちにしてもアンタラにとっては手遅れで、俺にとっての目的達成は直ぐソコだ」

 

 下流に浮かぶ巨大な船を指し示す。

 ゆっくりと川を遡る海賊船の帆には、九匹の蛇をイメージしたシンボルマークが描かれている。

 そして、船を引く巨大な蛇の様な生物の頭の上には、長い黒髪を風に靡かせた女性の姿が見てとれる。

 

「蛇姫様!」

「蛇姫様!」

「蛇姫様ぁ」

 

 徐々に近付く九蛇の船に気づいた女達は、目を輝かせて両手を合わせて握り締め、一斉に蛇姫の名を連呼する。

 

 どうやら、あのデコっ広女が王下七武海の一角、海賊女帝、ボア・ハンコックで間違いないらしい。

 確かに、原作通りの整った綺麗な顔立ちをしているがソレだけだな……能面を思わせる冷酷そうな表情には何の魅力も感じない。

 馬鹿みたいに騒ぐ女達は、ハンコックの放つ覇気とメロメロの実の力で魅力されているのだろう。

 

 ともあれ、容姿や周りの反応に関しては、ほぼ原作通りだ。

 残る問題は性格だが…………兎に角、我が儘だったら原作通り、なのか?

 

「わらわの出迎えもせず、かような場所で何をしているのじゃ?」

 

 俺の小型船の横を素通りしたハンコックは、隊長格の近くで船を停泊させると詰問を開始した。

 

 言葉の一つも聞き逃すまいと小型船を操った俺は、巨大船と並走するように川を遡る。

 

「ハッ! 不法に侵入した者を捕らえる為に、この場で戦闘を行っておりました」

 

「侵入者じゃと? ……そこの男か?」

 

 蛇の頭の上から、俺をゴミでも見るような視線で文字通り見下ろしたハンコックは、直ぐに興味を無くしたかの様に隊長格に視線を戻した。

 

「ハッ! その者、中々手強く、又、蛇姫様の御帰還はもう暫く後かと思っ」

『メロメロ・メロゥ!』

 

 隊長格の発言が終わらぬ内に、ハンコックが両手を前に突き出して指でハートを形取っかと思うと、ハート型の何かが発射され、隊長格とその周りの数名を石化させる。

 

「言い訳など聞きとうない……わらわの出迎えと侵入者の駆除、どちらが大事かも判らぬとはな」

 

「侵入者の駆除に決まってんだろがっ! このデコっ広女ぁ!!」

 

 あまりに愚かなハンコックの暴挙に、俺は蛇を見上げて思わず叫ぶ。

 

 隊長格は俺に敵いこそしなかったが、ハンコックの為に闘ったのだ。

 それをハンコックが傷付けるのは、自らを傷付けるのに等しく、その様な愚かな行動は天竜人だってやりはしない。

 

 自らを貴人で尊き者であると自認する天竜人にとって、海軍や城は自らを護る矛であり盾なのだ……それを虐げるのは自らの否定に繋がりタブーとされているのだ。

 つまり、海軍を頻繁に呼び付けた俺は、天竜人の中に在って異質な存在だと言えるが、それでも無意味に呼んだ事はない。

 

「な、なんたる暴言!」

「神をも恐れにゅとはこにょ事じゃ」

「姉様、お気をしっかり」

 

 俺の事実を指摘する発言に一瞬固まった女達であったが、気を取り直すとある者は驚き、ある者は天を仰ぎ、又ある者は崩れそうになるハンコックを抱き支えた。

 

「貴様っ……わらわに向かってその様な暴言が赦されると思っておるのか!」

 

 正気を何とか保ったハンコックが鬼の形相で、震える声を絞り出す。

 

 さっき迄の能面よりも余程美しく見えるのは俺の気のせいか?

 

「はぁ? 俺は何を言っても赦されるんだよ! 何故なら俺は…………偉いからだ!!」

 

 何故偉いのか判らないが、偉いのは事実だ。

 

 固まる女達をよそに、腕を組んだ俺は高笑いを上げ続ける。

 

「さ、最悪じゃ……アレではまるで、蛇姫が二人ではにゃいか!?」

 

 笑う俺と、それを睨み続けるハンコックに向けて、誰かがこんな事を呟くのだった。

 









次回!
「VSハンコック!」
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