自由への航海   作:天の川

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今回で原作前は終わりです。





 聖地への指針を頼りに、東を目指して小型船を走らせるコト1週間。

 永久指針が聖地を指し示すのだから、真逆に進めばリバースマウンテンへ辿り着くというコトに他ならない。

 今現在、どの辺りを航海しているのか判らなくとも東に進んでいるのは確実で、そのうち赤い大陸にぶつかるだろう。

 

 問題であった『暇』も、女ヶ島で一人の乗組員を迎え入れた事で、ある程度解消出来ている。

 当初、ハンコックは九蛇の船で送るとほざき、それが駄目なら自分が船に乗り込むと言ってきかず、ひと悶着の挙げ句、隊長格であったキキョウに『九蛇の戦士としてこの御方を護衛せよ!』と命令を下したのである。

 嫌そうなキキョウを無理矢理連れ回せば危険になるが、皇帝直々の命令となれば俺が無理強いしている訳ではなくなり、裏切られる心配がかなり低くなるので受け入れた次第である。

 堅物のキキョウは話相手としては微妙で、料理もさほど得意でないが、及第点の強さを備え『悪魔の実の能力者でない』のがポイントだ。

 俺が海に落ちた場合の救出はキキョウに全てが懸かっているのである。

 つまり、万が一に備えてキキョウとの信頼関係を築くのが目下の課題となってくる。

 

 そんな訳で俺は、今日もキキョウに話し掛ける。

 

「暇だなぁ……キキョウさんや……飯はまだかい?」

 

 前方を横切る帆船を見付けた俺は、船縁に顎を乗せたまま振り返らずに、背後で腕を組んで立っているキキョウに呼び掛けた。

 

「先程食べたではないかっワール殿! 大体その呼び方は何なのだ!?」

 

「そう怒んなって。ちょっと呼んだだけじゃねぇか?」

 

 振り返った俺は、船縁を背もたれに座りキキョウを見上げた。

 

 キキョウは航海に出ているというのに、首に蛇を巻き付けビキニ姿にマント、要するにアマゾン・リリーの頃と全く同じ格好をしているのだが、この狭い船上でその露出はどうかと思うぞ。

 俺しか居ないから良いようなモノの、この航海中には世の男の常識を学んでもらいたいモノである。

 

「貴様はっ……普通に呼べんのかっ」

 

 信頼を築こうと何かにつけて話し掛けてはいるが、キキョウの反応は大体がこの調子だ。立場の違いによる不幸な事故でブッ飛ばしたのを根に持たれているのかもしれない。

 

「キキョウって服装の割にはお堅い奴だよな? もっと気楽に出来ないのか?」

 

「出来ぬっ……私は貴様の護衛としてここに居るのだ! それと、この服は九蛇の戦士としてのたしなみだ! 馬鹿にするなっ」

 

「馬鹿にはしてないし、お前がどんな格好をするのもお前の自由だ。けどな? こんな小さな船でそんな格好をしているから俺を誘ってんのかと思ってな? 俺ならいつでも良いぞ」

 

 小さな船と言っても長期航海を前提に作られた船であり、情事を行える程度の船室は備えている。

 船の形状としては、ヨサクとジョニーが所有する船に近いハズだ。

 

「……なっ!?」

 

 年甲斐もなく顔を赤らめたキキョウが絶句する。

 男との接点が無かった生活を送っていた割に、この手の言葉の意味は解るらしい。

 

「冗談だって。俺は後腐れの生じる相手とはしない主義だから安心しな。それより、あの船の帆に描かれた紋章に見覚え無いか?」

 

「し、知らぬ……あ、生憎と外海に出た事が無かったんでな」

 

「あぁ、そういやそうか……あの紋章、昨日も見ただろ? アレは俺の記憶が確かならアラバスタ王国の紋章だ」

 

 起き上がった俺は、キキョウの横に並び立ち帆船に向けて指を指す。

 

「アラバスタ……王国、だと?」

 

「ん? それも知らないのか? ま、知らないなら仕方ないけどよ? 嫌々でも世界を旅するなら、色々と見て学んで楽しんだ方が得だと思わないか?」

 

「そう、だな……善処しよう」

 

 組んだ腕を崩して顎を触りながらキキョウは僅かに考え、そう呟いた。

 

「だから堅いって。まぁ、いいや……それで、あの船の行き先には多分アラバスタ王国がある……ってな訳でアラバスタに行こうぜ!」

 

「何故そうなる!? 貴様は東の海に行くのでは無いのか!?」

 

「東の海には行くさ。だがなぁ? 寄り道こそが旅の醍醐味! ついでに、食料の補充をしておくか?」

 

「む……そういう事情ならば……。出来れば『ついで』の方を理由としてもらいたいモノだな」

 

 こうして俺は呆れるキキョウを説き伏せて、アラバスタへと船首を向けるのだった。

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 やって来ました『夢の町』レインベース。

 キキョウには告げなかったが、ここに来たのは理由がある。

 

 先ずは時間軸の確認。

 クロコダイルが健在でアラバスタの内乱が起こっていないなら、それだけでルフィ達がこの地を訪れていないのは確定する。

 そして、アラバスタはキナ臭いながらも内乱は起こっていない。

 

 次に、クロコダイルとニコ・ロビンに会うのも目的の一つだ。

 クロコダイルは大人気漫画における、不人気キャラの一人であるが、俺はそうは思わない。ユートピア作戦が成功していれば、クロコダイルは革命を成し遂げた偉大な王となったのだ。

 産まれながらにして王は王……産まれだけで全てが決する王国制度と、その上に君臨する天竜人。

 クロコダイルの計画が悪であるとするならば、誰も新たな王とは成れず、知らず知らずの内に世界は天竜人を認めていると謂うことになる。

 コレに真っ向から異を唱え反抗を起こすのがクロコダイルであり、出来れば会って話がしたい。

 まぁ『出来れば』なので会えなくても構わないし、どうせ失敗する計画に協力する気も更々無い。

 

 他にキキョウの服を買ったり、上手い飯をくったりもしたが、なんと言っても本命の目的が一番重要だ。

 

 本命の目的はズバリ、金稼ぎである。

 長きに渡る金を持たない天竜人の暮らしのせいで失念していたが、旅をするには金がいる。

 その金を手っ取り早く稼ぐには、なんといってもギャンブルだ。適当に賞金首を狩っても良いのだが、派手に狩ると何処でどう転んで原作に影響を与えるか解ったもんじゃないので控えている。

 原作に拘り過ぎる気もないが、進んでぶっ壊す気もないのである。

 

 そんな訳で俺は今、レインベースにあるカジノで見聞色の覇気を武器にカードゲームを楽しんでいる。

 

「ストレートだ……俺の勝ちだな?」

 

 手札をテーブルに広げて見せた俺は、積み上げられたチップの山を両手で手元に引き寄せる。

 

 手札の都合で降りる事があっても、相手の手札も何となく判り、まさに連戦連勝……ウハウハの丸儲けである。

 

「わ、ワール殿……か、勝ちが過ぎるのでは有りませんか?」

 

 ジプシー服に身を包んだキキョウが、背後で訳の分からない事を言っている。

 

「あん? 勝って何が悪いんだよ? てか、何で敬語?」

 

「で、ですが、周りの目というものもアリマス……み、見てください、あの怨嗟に歪む顔をっ」

 

 なるほど……向けられる人の敵意の視線にビビっているのか。

 解らなくもないが、こんなモノでビビっていたら天竜人はやってられない。

 

「あぁ、自分で賭けて自分で負けておきながら、負ければ人のせいにする馬鹿共か……そんな負け犬は気にするな。それより、次の相手はどいつだ? このチップの山を奪ってやろうって強者は居ねぇのか?」

 

 先ほどの勝利で俺の対面の席は空席となっている。

 

 次なる挑戦者と言う名のカモを求めて、きらびやかな店内をぐるっと見回す。

 しかし、どいつもコイツも俺と視線が合うと目を反らしやがる。

 

 ちっ……相手が居ないなら仕方ない。

 

「俺が相手をしてやろう」

 

 ここらが潮時か?

 そう思った時、背後となった対面席からふてぶてしい男の声がした。

 

「あれ? クロコダイル……?」

 

 振り向けば対面席にクロコダイルが座っていた。

 

 …………。

 

 い、いや、計画通り!

 

 カジノで荒稼ぎして騒ぎを起こすと、オーナーであるクロコダイルが現れる……まさに、予定通り!

 葉巻をくわえてふてぶてしく椅子に腰掛けるクロコダイルが、ここのオーナーだと忘れていただとかでは断じてない。

 

「ほぅ……加減を知らねぇ馬鹿でも俺の事は知っている様だな……」

 

「誰が馬鹿だ! 埋めるぞ、このっ鰐野郎!!」

 

 クロコダイルの登場に静まり返った店内だったが、俺のこの発言を切っ掛けに関を切った様な勢いで客が退出していった。

 慌てながらも殆どの客がチップをしっかり回収していったのは流石である。

 

 ガランとなった店内に残されたのは、俺とキキョウにクロコダイルとディーラー役の顔面蒼白の男。

 そして、向かいにあるカウンターに背を向けて座る女だけだ。

 

「クククっ……青二才が……イカサマの種は見聞色か……使える割にヤることのセコい野郎だ」

 

 逃げた客の反応とは裏腹に、クロコダイルは一切取り乱す事なく、落ち着いた口調で俺に語り掛け、値踏みするような視線を向けてくる。

 

「ふんっ……見聞色が禁止と何処に書いてある? ダメなら最初から明記しておけよ、間抜け野郎」

 

「違ぇねぇが、使える奴がこんな所でセコい真似をするたぁ思ってなかったんでな……。金が欲しけりゃソコラにいる賞金首を仕留めりゃ良いだろ? 使えるテメェが賞金首を怖がるってわけもあるまい……何故こんな真似をした?」

 

 なるほど……ルフィに敗れる雑魚武海かと思っていたが中々どうして、七武海なだけの事はある。

 得体の知れない俺が相手だ、例えムカついても直ぐには殺さず情報を引き出して裏を取る……そんな用心深さが感じ取れる。

 コイツが俺を殺せるかどうかは別にして、この用心深さは見習うべきだろう。

 

 ずっと我慢は普通に無理だが、せめてクロコダイルとの対面位は武力に頼らず、忍耐と智力で終らせたいモノである。

 

「お前と会って話す為だ。 普通にやっても七武海には会えないだろ?」

 

 バロックワークスを探っていると思われれば戦闘は避けられまい。

 慎重に反応を伺いながら言葉を紡ぐ。

 

「面白そうな話ね? この人を呼び出して何を企んでいるのかしら? それに、使えるって何のコトかしら? 私が見ている限りあなたは不審な事をしていなかったわ……寧ろ、喜びが顔に出過ぎて勝てるのが不思議な位だったわ」

 

 カウンターに座っていた女が席を立ち、話ながらコチラのテーブルへとやってきた。

 華やかな店内に在って暗い陰を背負う女、クロコダイルのパートナーにして賞金首のニコ・ロビンだ。

 

「お? ニコ・ロビンか?」

 

 ここで『ミス・オールサンデー』と呼ぶような真似は、いくら俺でもやりはしない。呼んでしまえばイコールB・Wを知っていると言っているようなモノで、敵対は避けられまい。

 闘って負ける気はしないが、ここで鰐野郎をブッ飛ばせば原作に与える影響は計り知れない、ってかグランドライン以降がほぼ白紙になってしまう。

 原作に拘らないとしても、白紙は流石にマズイだろう。

 

「何故私の名を……!?」

 

「本気で言ってるのか? 手配書見れば誰だって判るレベルだぞ……なぁ、ディーラーさん」

 

「え? ぼ、僕は、な、何も知りませぇん!!」

 

 言葉を向けられたディーラーの男は恐怖の限界を越えたのか、カードを放り投げて逃げ出した。

 

「って訳だ。ニコ・ロビンと気付いてる奴も鰐野郎の威光を恐れて何も言わないだけだぞ」

 

「そぅ……私は自分で考えるよりこの人に護られているのね……」

 

「なんだ? 不満そうだな? なんなら俺と一緒に来るか?」

 

「嫌よ。貴方と行く位なら彼と居る方がマシね」

 

 クロコダイルを嫌っているはずのロビンは、顔色一つ変えずに断った。

 連れ出す気は全く無かったが、こうもハッキリ言われると軽くへこむぞ。

 

「貴様っ……姫様がいながら他に色目を使うとはっ!」

 

 今日のキキョウさんはテンパッているのか、訳の分からない事を言いたいお年頃らしい。

 

「はぁ? デコ姫様は関係無いだろ?」

 

「姫、デコ、覇気……。ふぅ……テメェらハンコックの手の者か?」

 

 葉巻の煙を吐いたドヤ顔のクロコダイルは、三つのワードを頼りに俺達とハンコックを結び付けた様だが、普通に間違えている。

 

 まぁ、好都合なので乗っかっておこう。

 

「おぉ、そうそう。デコ姫様から世界を見てこいって指令を受けてな? 近くに来たからお前の顔を見に来たって訳よ」

 

「それで? ハンコックの伝言はなんだ?」

 

「いや、伝言なんて無いぞ? 俺がお前と会いたかったダケだからな」

 

「……話にならねぇな? ニコ・ロビン、指令だ。コイツと行動を共にして監視しろ。俺の邪魔をしようとしているなら……殺せ」

 

 小さく溜め息を吐いたクロコダイルは、背後に控えるニコ・ロビンに首を向けて指令を出した。

 

「分かったわ」

 

 無表情のままニコ・ロビンが頷いた。

 

「二人とも頭大丈夫か? 目の前で暗殺の指令を受けた女を誰が連れ歩くかっ」

 

「なら、ここで死ぬか? 青二才」

 

「あん? 夢破れた銀メダリストが、コレから輝く俺に勝てるとでも思ってんのか?」

 

 覇王色の覇気を放ちテーブルを挟んでクロコダイルと睨み合う。

 

 最近になって気付いたのだが、俺の覇王色は世界様と向き合った事で大幅に威力を増している。

 これで鰐野郎が泡を吹いて倒れたら面白いのだが、流石にソコまで雑魚ではないらしい。

 

「テメェっ……死にたいらしいなっ」

 

 青ざめるロビンと違い、クロコダイルは俺の覇気をマトモに受けて尚、ふてぶてしい態度を崩さない。

 覇気を知らない訳でもあるまいに、この余裕……鰐野郎には原作で描かれなかった自信の源でも有るのだろうか?

 

「ま、待って! 彼、海賊女帝の手下なのよね!? 今、他の七武海と問題を起こすのはまずいわ」

 

「どうだかな……この野郎は人の下に付くようなヤツじゃねぇ。おい、女……お前ら何者だ?」

 

「わ、私はキキョウ。蛇姫様の命を受けてこの無礼者の護衛の任に就いている。この無礼者はワール・D・オーザ……その……今日はこの男が迷惑を掛けて申し訳ない」

 

 クロコダイルは何故か俺を無視して、背後に控えるキキョウに語りかけ、彼女は何故か謝罪の言葉を述べている。

 

「はぁ? 俺がいつ迷惑をかけた!?」

 

「護衛さん……貴女も大変な様ね」

 

 ニコ・ロビンの同情する様な視線がキキョウへと向けられた。

 

 それから、キキョウの説明を一応信じたクロコダイルは、ニコ・ロビンを残し砂化して去っていった。

 

 こうして俺はカードゲームで稼いだチップを金に代え、旅のお供にニコ・ロビンを加えて東の海へと旅立つ事になるのだった。

 









次回!
「麦わらの一味(3人)登場!」


でも、更新は遅れます。
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