紺野エリカの机を倒した犯人は俺だけど白状禁止にされてる   作:Brahma

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第3話 女王の抵抗

「真央、お前がやったんだろ」

「いやいや、なんでそうなるの?やってないんだけど」

「じゃあだれだよ?お前だろ」

「なにそれ?証拠もないのに、まじありえないでしょ」

「はあ?」

「ていうか決めつけすぎ。何様?」

「おまえ、最近いろいろあやしかったじゃん?」

「なにその怪しいって?」

「最近付き合い悪くなってたし、わたしら以外と楽しそうにしていたじゃん。」

「え?わたしが誰と仲良くしようとそんなの自由じゃん」

「へえ、うちらにいじられるから、グループ抜けようとかそういうダサいの顔に出るから」

「エリカこそ、いつも着ている黒いオフショル(ダー)中学生みたいでクソダサいから」

「ああ、真央、今なんつった?」

「黒いオフショル(ダー)クソダサいって言っただけだけど?」

「….。」

「あとエリカってつけツケま(つげ)つけるの下手くそでまじダサいから」

「この~お前いい加減に…」

エリカは声を荒げて真央の腕をつかんだ。真央は、その手を振り払おうとする。彼女の爪は、真央自身のほおを目じりに向かってななめにこする。擦り傷から血がにじんだ。

「いった…」

(…これマジきついな。俺一生黙ってなければいけないのかよ。でもこれエリカに抗議できなかった自分のせいだよな。夏林ってマジすげえな…)

「真央、大丈夫?」

心配そうに支えるのは、秋山美佳だ。

「真央…」

紺野も動揺している。

「謝りなよ」

そのとき日南の口からフラットなのに鋭さを感じさせる言葉が放たれた。

「はぁ…なんでこんなやつに…。」

普段から真央を子分あつかいで見下す気持ちがその言葉からむきだしになる。

「なにそれ?」

さすがの真央も紺野をにらみつける。

「いや…わたしは…」

紺野がらしくなくうろたえている。

「エリカ、今のはない」

責めるトーンが含まれたつぶやきにもにた指摘が日南の口から発せられる。

「勢いでやっちゃったのはわかるけど、それを謝らないのはよくないよ。」

それは紺野への共感まで含んだ反論を許さない公平な糾弾。

「たしかにいまのはないよね…」

「今のはエリカが完全に悪いっしょ」

クラスの空気が音もないのに雪崩うつように動いていくのが俺にも感じられるほどだった。

「俺もそうおもうわ」

「そうだな。どう考えても紺野が悪いわな」

運動部の男子たちからつぎつぎに賛同のつぶやきがもれる。

「ちょっと引いたわ」「ごめんくらい言えないのかな」「謝ったことみたことないわ」「自分勝手すぎでしょ」「どれだけ女王様気取りなんだろ」

そして

「暴力はんた~いw」

男子の中からギャル口調で語られるそのつぶやきは、かって紺野が夏林に対して投げつけたセリフだった。

「つーか、今のは完全に偶然じゃん。暴力の意味わかってる?」

紺野は強気で反論するが、クラスの空気は簡単にそれを蹴散らす。

「意味わかってないのはそっちじゃね。」「じゃあ夏林のも暴力じゃないよね。」

「そうそう、あれこそ偶然だったし。」

「エリカがやってきたの偶然だったの今のだけだしね。」

 

「やっぱり謝らないとだめじゃない?」

日南の視線は中村修二に向けられるが、それはほんとうに微妙なもので日南自身を目で追っていないと気が付かないほどだ。

(うわ…この女怖い…)

俺は、この女敵に回したくないと心底思った。

「だな。つーか、エリカ、ここ最近の花火に対する態度とか完全にお前が悪いし、今も先に手を出したのお前だろ。素直に謝れよ。」

紺野が息をのむのがわかるくらいだった。

「今謝れば、真央も許してくれるよ。ね?」

日南は、同意を促すようにほおをかすかに傾けて泉へ視線を向ける。

「そうだよ。エリカ。勢いでやっちゃったのみんなわかってるからさ。お互いあやまってチャラにしよ」

泉の言葉は、皮肉なことに優しく、本音であったにもかかわらず、

紺野は、いらだつように

「…何なのお前ら」と言い返す。

般若というものが現実に存在するとするなら、このときの紺野の表情がそうだった。

すさまじい形相で中村と泉をにらみつけ、

「付き合い始めたからって、調子に乗るなよ」

「え、エリカ…」

泉は、とまどうような口調で言葉をもらす。

俺には、紺野の話し方で、日南がなにをしようとしたかわかった。

日南の次の言葉でそれは確信に変わる。

「ね。二人もそういってることだし、謝ろう」

つまり、自分が好きだった男とそれを奪った女、紺野が劣等感を抱く対象であるカップルが一丸となって諭してくるという屈辱的な場面が作り出されている。

「いちゃいちゃは、うちでやっとけよ。」

「いちゃいちゃって…」「被害妄想じゃね」「二人は何も悪くないじゃん」

つぶやきが聞こえる。紺野は周囲をにらみつつも、中村と泉に向き直った。

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