紺野エリカの机を倒した犯人は俺だけど白状禁止にされてる   作:Brahma

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第5話 夏林のVサイン

「紺野がやってたからって、それをそのまま紺野にやり返してたら同じくらい悪いことになっちゃうでしょ」

俺はあらためて、夏林の凄さを再認識した。彼女は何が正しいかしか考えていない。忖度とか躊躇は全くない。みゆきがいじめられたのは間違っている、紺野が自分にいやがらせしたのは間違っている、だからといって紺野を袋だだきにするのは間違っている。本当にそれだけ。全くブレない。それが彼女の強さだった。

クラスメートたちは夏林に対し驚いたように視線を向ける。

夏林は笑顔をつくって

「だからたまにはさ、みんなで仲良く終わろうよ、たまだけに、ね?」

満面の笑顔にチョキをつくって、無邪気に目じりにあててみせる。

「ぷっ…。」

女子の笑い声がもれる。

「なんか。。。花火ちゃんってすごいね。」

尊敬と驚きをふくんだ明るめの声。

「うん、ほんとだよね。びっくりしたけど花火ちゃんの言うとおりだよね。」

日南や七海と仲のいい瀬野や柏崎たちだった。

新しく産み出されたその空気は、クラス全体に波紋のようにひろがっていく。

「一番の被害者がやめろって言ってんだから俺らもやめねーとな。」

男子の運動部連中が照れくさそうな笑みをうかべて、それに同意し、クラスの空気が確実に塗り替わっていくのが感じられた。

きかんぼう、融通が利かないとけむたがられていた夏林の言葉がクラス全体に響いているのだ。俺まで目頭があつくなってしまった。

クラスの空気が完全にあたたかく夏林をつつんでいるのが感じられた。体育祭の話し合いの時に「バレーやりたい」と言ったとき、クラスの空気が重くなったのとは、天地のひらきだ。

夏林は、友崎の方へ向かって満面の笑みでVサインをしていた。

そのとき友崎と菊池さんの顔が笑顔になったのを俺は見逃さない。

ああ、夏林が変わった原因はこいつらかと確信した。

一方、紺野は、ツカツカと激しい足取りで教室を出ていく。

「エリカ!」泉が紺野を追いかけて出て行った。

 

神前は、日南のほうにかけより

「日南さん、ありがとう」

と日南の手を握った。

日南は、心配そうに

「顔大丈夫?」

「ちょっと痛いけどかすり傷だし」

と答えると、神前と秋山は顔を見合わせて、夏林のほうへ歩いていく。

「夏林、本当にごめん。」

と頭を下げる。夏林は、

「いいよ。だけど、わたしだけじゃないでしょ」

と二人へ言う。二人は思い出したようにみゆきのところへいく。

「平林、ごめん。」

と頭を下げる。

「はい、い、いいです。」

みゆきはすこし驚いたように二人の謝罪を受け入れた。

日南が夏林のほうにあるいていく。

「花火、ありがとね。…わたしだけじゃとめられなかったと思う。」

その言葉には切実な感情がのせられていたが、止めたくても止められなかったのではなく、夏林が正義感から必ず動くという計算と確信があったとしか思えなかった。

つまり日南自身は止めるつもりなど全くなかったということだ。

「うん、葵もありがとね。わたしのために闘ってくれて」

夏林は日南の顔を真っすぐに見つめる。

いとおしいものをみつめるような日南の顔と視線。

なぜか数少ないあの女の素顔が一瞬だけ垣間見えたような感覚。

日南は、やさしくほほえんで

「ううん、花火もよくがんばったね。」

と一言かえす。

「うん…」

「けど、あんなことする葵は見たくなかったかな」

うれしいけど悲しい、納得できない、葵はそんなことしたくないはずなどさまざまな整理されない感情で夏林は日南を見つめる。

日南は、きょとんとした表情をして、夏林をみつめた。

「なんのこと?」

ときれいにしらばっくれてみせる。

夏林は、

「ほんとに….そうなんだ」

というと微笑んで教室を出て行った。

水沢と友崎が「チーム友崎」うんたらと言って夏林を追いかけるように教室を出て行った。

 

紺野は、持ち前のコミュ力で以前のような女王とまでとはいかないもののクラス内の地位を回復していった。夏林の言葉がクラスに浸透して、彼女が正直に話すたびにクラスメートが談笑する様子が散見されるようになる。

「ねえ、たまちゃんカラオケ行こうよ」

「ん~、カラオケは行きたくない。でもみんみといっしょならいいよ。」

「う~ん、たま愛を感じる。」

「みんみ、くっつかないでよ。」

「たまちゃんは、あいかわらずみみみのことが好きだね~」

「ん~それはわたしが小さいから」

「ん?なんで小さい話になるの?」

「いまのなし」

赤くなった夏林を瀬野や柏崎がからかう。

「赤くなったたまちゃん、か・わ・い・い・ね^^」

とほおをつつくと

「わたしのたまに手を出すでない」

「みんみのじゃなけどね~」

と言った感じだ。自分もみゆきもほほえましく感じていた。

 

 

 

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