紺野エリカの机を倒した犯人は俺だけど白状禁止にされてる 作:Brahma
文化祭になった。友崎の提案で菊池さん脚本のオリジナル演劇を体育館のステージでやることになっている。主役の鍵屋の息子リブラは、水沢、王女アルシア役は、日南、飛竜を育てる少女クリスは、夏林になった。女性騎士団長レイを選ぶときになった。
「気が強くて、実際に剣の腕も優れていて、面倒見がいい性格。」友崎がそう説明するが、皆に配られたキャラクター設定の説明に『王城の女騎士団長で、背が高く、ブロンドの長髪で目付きが鋭い。リブラたちの行動を規則に基づいて律するが、いざというときは寛容に、リブラたちの味方をする』
クラスメートの視線は、日南に集まったときのように特定の人物に集まる。気が強くて面倒見が良くてブロンドの長髪で目付きが鋭い。 どう考えても紺野だった。紺野は、脱色された金色の髪を指先で触れながら、ちょっと驚いたようにクラスを見渡している。泉は紺野に「ねえ、エリカ、お願い。この役やってくれない!?」と手を合わせて頼む。
驚いたことに夏林が
「紺野、あたしは、紺野のいいところも知ってるよ。風香ちゃんも言ってたけど、厳しいところあるけど、面倒見がよくて、いざというときは落としどころを知っているリーダー。剣の腕も優れているりりしい女騎士団長ってかっこいいじゃん。」
紺野エリカは、めんどくさそうではあったが、はあとため息をついて、にっこりほほえんだ。「わかった。やる。」
紺野の劇に真剣に打ち込む姿を見てクラスメートの見る目が改善されていく。
「紺野さん、こんなイメージでお願いします。」
「こうか?」
紺野がポーズをとる。
「はい。そうです。かっこいいです。」
「菊池、赤くなってる。」
「イメージ通りでかっこいいので」
「菊池~、ここんとこのセリフだけど…。」
紺野がすっかり打ち解けて菊池さんに話しかけている。菊池さんも明るく対応している。一昔前だったら考えられない光景だ。
「はい。それでいいと思います。」
書き言葉の平板なセリフが迫力ある武骨なものに変わっていく。
劇は大成功のうちに終わった。
後日、友崎と菊池さんが付き合いだしたという話がクラスメートの会話から聞こえてくる。
菊池さんがOKした返事は、「リブラは本当に鍵を開けるのが得意なんですね」というセリフだったようだ。みゆきが「そんなロマンチックな恋をしてみたいです。」と上気した顔で俺に話しかけてくる。
「まあ、趣味もアンデイ作品で話が合うようだし、脚本家と監督だったからなあ」
と答えた。俺もなんとかしないとと思うようになった。
さて3年では文系、理系、特進クラスにわかれる。
2組もその例にもれずにばらばらになる。みゆきは、学年10位以内をキープしていたので特進クラスにはいることになる。俺は文系クラスになるようだった。クラスが分かれてしまう前にと、思い切ってホワイトデーにみゆきをデートに誘う。
「みゆき、夏林さんのお店へ行かないか?甘いものすきだよね。」
「うん。恩返しになるし、おいしいって評判だからね。」
駅を降りて三分くらい。樹木をモチーフにした茶と緑の看板。ガラス張りの店頭の奥に洋菓子のおかれたケースが見える。バターと小麦粉の焼けた洋菓子独特の香ばしい香りがただよってきて幸せな気分になる。
「あれ?平林さんと山下?」
「こんにちは、夏林さん。」「こんにちは、花火ちゃん。」
「あら、いらっしゃいませ、花火のお友達?」
「うん、クラスメートの山下と平林さん」
「男の子のほうは昨日も来てくれたわね。ありがとうございます。」
「いえいえ。」
「夏林さん、イートイン使っていいかな?」
「うん、いいよ。」
「ていうか、その前にまず選ばなきゃね。」
「いろいろあるね。」
チョコケーキ、イチゴショート、ラスク、フィナンシェ、クッキーの包みなどがならぶ。
クッキーとマシュマロはホワイトデー用の豪華パッケージがある。
そのほかマンゴーパイ、ももとチーズのケーキ、レモンのロールケーキ…
「どれにするか迷うねえ…」
「おすすめは、何かな」
「う~ん、新作のラ・フランスのシャルロットがおすすめかな。」
「じゃあ、それ2人分。」
「紅茶は、ダージリンで」
「わかった。毎度あり。」
「じゃあ、あそこにすわろう。」
俺はみゆきをイートインでも奥まった席にいざなっていく。
しばらくふたりでケーキと紅茶を楽しんだが,
店のレジは、ホワイトデーなので、にぎやかで結構来客があってこんでいるようだ。あの豪華パッケージが売れていくのが傍目でもわかる。