透き通る世界観を食い物にする存在がいる。
彼らは往々にして残虐で非道で鬼畜で悪辣。キヴォトスを荒らし回って破壊の限りを尽くし、焼け野原にして満足すれば次の平行世界でまた破壊を繰り返す習性を持つ。
彼らは生物ではないため栄養補給の必要が無く、傷は一瞬で癒えるため永遠に動き続け殺し続けることが可能。死という概念が無いためキヴォトス人は彼ら全てを行動不能にしなければならない。
~死亡した生徒の手記より抜粋。
破壊と殺戮こそが彼らの存在意義であり、それ以上のことはしないしそれ以上のことは考えない。ただただ殺し、殺して回る。そこに意志は無く生物が呼吸するのと同じように彼らは人を殺す。
そんな殺戮人形のような彼らには天敵がいた。
世界の守り手にして愛すべきハゲ。
キヴォトス人からは『先生』と呼ばれる存在である。
彼はどの世界でも必ずと言っていいほど彼らの前に立ちはだかり、最後の一滴になるまで抗い、彼らに少なくない被害を出す。どんな不利な状況でもある程度盛り返し、キヴォトスに可能性を見せる。
死んでも死なないし殺しても死なない。生徒に庇われるため生存率も高く、執念だけは誰よりも強いため決して諦めず最後の瞬間まで戦い続ける。
天敵というかゴキブ・・・・・・・ゲフンゲフン。
とにかく、あまりにもあまりにもあまりにも『またお前か』が続くため一度彼らは話し合った。
アイツがいなければ破壊は楽だ。じゃあアイツをどうにかして処理しよう。しかしどうする。我々では大々的に動けない。動くなら電撃戦だもんな。う~ん。
彼らの議論は3年続き、やがて彼らは『1人の少年』に目を付けた。
ーーーーーーーー特徴的な水色のハッピを着込み、声が小さく色白で。病弱で背が低くて見るからに弱そうでありながら纏う雰囲気はバケモノのソレ。
ーーーーーーーー顔面を蒼白にさせながらも刀を構える様は、悲壮感に溢れていた。
「お前はヨくやった。ダが残念だったナ。我々ノ勝ちだ」
少年の周りを沢山の怪物が囲んでいて。
そして少年の腕の中には、死体。
ーーーーーーソレは少年の“推し“の死体だった。
全身がズタズタでところどころが千切れていて、見るからにボロボロで触ることすら躊躇う状態だったが、ソレは“推し“と同じカタチをしていた。
「お前に選択肢ヲやろう。このまま死に絶えるか、次の世界デ我々に準ジて先生を殺すか。選ベ」
「何を言って・・・・・・・・・」
「もし断れば、次の世界でもお前の“推し“を辱めた上デ殺そう」
「っ・・・・・・・・・」
彼らは残虐で非道で鬼畜で悪辣。そして人間の心理をよく理解していた。
「肉体ヲ改造して最強にしてやる。誰ニも負けない強い身体を与えテやる。だから殺セ。『先生』を殺セ」「先生を殺せ」「先生を殺せ」「先生を殺せ」「先生を殺せ」「先生を殺せ」「先生を殺せ」「先生を殺せ」
彼らの合唱が少年の鼓膜を激しく揺らす。彼らの憎悪が少年を包み込み、彼らの少年の瞳を曇らせる。恐怖が理性を覆い尽くしていく。
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アビドス自治区で雑務をこなしたその帰り道。見送りと言いつつ寝所までついて来そうなアビドス生にやんわりと断りを入れていた『先生』の視線の先に。
ずぶ濡れの少年が1人。
「?先生、どうしたの?」
「あ、いや、ちょっとね・・・・・・・・・」
手には逆刃の刀。着ている衣服は百鬼夜行のソレ。
今にも潰れてしまいそうなぐらい弱々しく、悲嘆に暮れた瞳はもはや病人のソレだったが、彼の刀には濃密な死が纏わりついていた。
「っ、みんな逃げて!!!」
先生が自身の第6感に従って叫ぶが、しかし遅かった。
「飛天御剣流ーーーーーーーー
ーーーーーー雷龍閃」
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『先生』及び生徒の無力化に成功。あとは飛飯綱で遠くから雑に斬れば終わりのハズなのだが。
少年の手は震えていた。恐怖していた。
なまじ先生の優しさを知っているからこそ、享受していたからこそ先生を殺すことがどういうことかを理解できてしまっていた。
「はっ・・・・はっ・・・・」
どんどん呼吸が荒くなり、手の震えが激しくなっていく。
「はっはっはっはっはっはっ」
自然と足が後ろへ流れ、この先へ踏み出すことに対する恐怖心が彼の脳髄を覆い尽くした。
「はっはっはっはっはっはっ」
そして。
「何の光かと思って来てみれば・・・・随分と楽しそうね。私も混ぜてくれるかしら?(ふっ、決まったわね)」
ピカッ→「ギャー」がバカゲーすぎて一番好き。