植物を操るヒーロー   作:姉小路

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その先は地獄

個性の使いすぎによって入院してから3日が過ぎた。つまり今日が念願の退院日である。

今日までの三日間、隠れて個性を使用するも直ぐにバレて怒られるという流れを繰り返していた。

しかし退院する今、俺を阻むものは存在しない。

 

「個性を使いすぎてまた倒れちゃダメだよ~」

 

「分かってるって」

 

「そうやって言う子は大体分かってないんですよね~」

 

今日までの三日間、俺の行動をずっと咎め続けていたナースに釘を刺される。こんな返事をしているが一応理解してるつもりではある。

俺の個性は自分の「生命力」と引き換えで使うことができる。しかし「生命力」を使いすぎてしまうと呼吸困難、頭痛を始めとした様々な命に関わるデメリットを食らうことになる。意識を失うって相当重症じゃない?とは最初に思った。

以上のデメリットを食らう利点が全く思い浮かばない。なのでおれは多分だけどナースさんの助言は守ると思う。

そう本人に伝えたら「ホントかなー」っと呆れ顔で言われた。解せない。

 

 

 

 

 

退院した日から一週間程が経過した。

様々な検証を行い自分の個性についての把握を行った。

入院する前に検証した内容は変わらずそのままだったが新しくわかったこともいくつかあった。

まず始めに限界まで植物を成長させたらどこまで伸びるのか。結論から言うと限界まで伸ばして約1.5メートル。

まぁ実際にコントロール性を上げようと思ったらもっと短い距離でしか発動出来ない。それでも1.5メートル伸びるのだ。自販機の下に小銭を落とした際に役立ちそうな気がする。

次にコントロール精度。マジックアームみたいに使ったり料理しようとしてみた。なんとコレが思ったよりも上手くいった。

料理は流石に両親に止められたがマジックアームにして背中を洗ったり遠くにあるリモコンを回収したり様々なことに使うことが出来た。しかしながらまだまだ粗いので要練習である。

そして最後に「生命力」について。

個性のコントロール精度の検証を運動しながらだとどの程度操れるのかを実験していた結果体力がついた。検証の結果は散々だったが思わぬ副産物として「生命力」の総量が増えた事に気づいたのである。ならば体力をつけないと、等と思い最近はランニングを行っている。

毎朝ランニングをする6歳児。異端だな...

 

「お母さんただいま~」

 

「おかえりなさい、今日も偉いわね」

 

「まぁね、父さんは?」

 

「お父さんならもう出勤した筈よ」

 

「まだ朝6時だよ...」

 

我が家の朝はいつも大体こんな感じである。

母は普通の人、父も普通の人そして俺の一般的な家庭。いや父さんは一般人よりかは社畜かもしれない。

兎も角、日々平和に日常を過ごしている。

しかしもうすぐでその平和が崩れてしまう。きっと毎日地獄のような思いをするのだろう。考えるだけで憂鬱である。

 

 

「小学校にそんなに行きたくないの?」

 

「そりゃ行きたくないよ!!」

 

そう小学校に通い始める事になるのだ。

正直考えるだけで地獄。覚えてはいないが一度は人生を歩んだこの身、流石に小学生とは精神性に違いがありすぎる。

それに今まで個性の検証に費やしてきた時間が無くなってしまう。ようやく個性の全容が見えて来た所だったのに普通に悲しい。

 

「まぁ義務だから行くんだけどさぁ」

 

口にした通り、この世界でも小学校は義務教育。絶対に行かなくてはならない。なのでこんな所でグダグダ言っていても仕方がない。気持ちを切り替える。

次は何を検証しようかなと考えながら朝食を食べた。関係ないけど朝はパンより米のほうが健康的な気分になるよね。

 

「さて、今日も頑張りますか」

 

今日も今日とて検証する。

 

 

 

 

 

とかやってたら四月。晴天の中、満開の桜が咲く中入学式が行われる。皆新たなる一歩を踏み出すことを喜んでいる。そんな中、明らかに俺だけは空気が違うと断言できる。周りの子たちはキャハハって感じなんだが俺はドヨーンとしている。子供たちは気づいていないようだが何人かの大人たちはコレに気づいて引き攣った笑みをこちらに浮かべている。絶対変なやつだと思われた...もうイヤぁ。

正直逃げ出したい。だって勇気を出して隣の子に話しかけてみたは良いものの会話が支離滅裂でキャッチボールにならない。

そんな苦痛を耐えてなお地獄は続く。

次の苦痛は校長の有り難いお話。新入生向けの話が長々と続く。正直伝えたい内容は分かるのだが如何せん長い。あえてもう一度言おう、長い。

子供たちはおろか保護者の人も数人耐えられずにソワソワしている。やはりどの世界でも校長の話が長くなるのは共通だったようだ。

呑気にこんな事を考えている俺も結構限界。こうやっていらない思考を繰り返して耐えているだけである。正直耐えなくても良いのだがなんか負けた気分になる。なので俺は最後まで聞き続けたい。頑張れ俺!!

なおこの後10分ぐらい校長の話は続き多くの人が犠牲となった。

 

入学式も終わり新入生は各々決められた教室へと向かう。

周りは皆一緒に行ってしまったので俺は一人になってしまったが全く悲しくない。強がりでは無いからね。

教室に着くとそこには第三の地獄が待ち受けていた。

個性社会になったからこその現象。

自己紹介ならぬ個性紹介である。炎が飛び交い人が宙を浮き、更には眼からビームを出してる奴までいる。多分大きくなったらここまで酷くないと思う。ただ小学生レベルだと俺の目の前で起きている光景になる。

この中に入っていくのかと考えると....

俺はまた溜息をつくのだった。

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