植物を操るヒーロー   作:姉小路

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ヴィラン

地獄だと思っていた小学校生活。始まってみると苦痛はあるものの想定していたよりかは圧倒的に良い物であった。

最初こそ沢山の子に話しかけられもした。だが数回一緒に遊ぶうちに俺と何かしらのギャップを感じたのかその数は減っていき一年が経つ頃には話しかけられなくなった。

そのお陰もあってか入学前と比べては少なくなってしまったがそれでも十分自分を鍛える事ができている。

 

俺の個性は植物の成長を操る事ができる。だが植物が種の状態であっても使うことが出来るのかは疑問のままであった。コレが出来るようになると場所に囚われずに個性を使うことができるようになるので革命が起きる。

なので植物が好きな母の元へ行き様々な植物の種を譲ってもらい検証を行った。成功することに期待していた一方で上手くいくとは思っていなかった。なので成功した時には大声を上げてしまった。母は俺の大声を聞いて凄い驚いていて部屋に来た。また個性が暴発したと思ったらしい。心配させてごめん。

一応母に種を個性で発芽させる事が出来たを伝えたら凄い喜ばれた。なんか日本では飼育が難しい植物の種を買うつもりらしい。なるほどそういう道もあるのか。

新たなアイディアを母から貰い少し日常が楽しくなる。

 

「自分の個性を調べるのは楽しいな」

 

お昼の放課中に廊下をルンルンで歩きながら教室に向かう。周りからヒソヒソと陰口を言われている気がするが気にしないでおこう。今日は気分が良い。

最近の休み時間のマイブームは学校の端っこで色々な植物を操る事と色々な植物の性質を知る為に図書館に入り浸っている。種に関しては植物好きな母にお願いすれば貰えるので兎に角、今は知識を付けている。

なので授業中も先生の言葉を聞かず借りた本をずっと読んでいる。なまじ前世がある分、指名されても答える事ができるので先生たちの顔引き攣った。どうやら前世で勉強は出来ていたらしい。よくやった俺の前世。

なので最近はドンドン知識を付けれている。成長を実感できるのは楽しい。そんな訳で算数の授業中の今も時間を読んで知識を得ている。

 

「なので〜三角形の面積は...」

 

異変が起きるのはいつだって平穏が続いた時である。その異変は先生が三角形の面積に関して解説しているときに起きた。

 

ドゴォン

 

と大きな音を立てて爆発が起きた。

教室の中にいた先生を除いた生徒たちは何が起きたのかワイワイ盛り上がっている。そんな中先生が現状を把握するために隣のクラスの先生と話している。

そんな中、教室の中のいわゆる主人公席と言われる席にいた生徒が大声を上げる。

 

「た、体育館が燃えてる!!」

 

その一言で生徒が窓辺に集まり件の体育館を見ようとする。俺も気になったので窓辺により様子を見る。

見てみると実際に燃えていた。確か今の時間は体育をしていたクラスがあったはずだ。その人達はどうなったんだろう?死んでしまったのか?それとも生きている?どうなったんだ一体?

 

ドゴォン

 

新たにまた爆発が起こる。次は職員室のある特別棟の方から聞こえてきた。そこで初めて事態の異常性に気づく。体育館が爆発した際には体育館裏にあるガス管が爆発したものだと無意識のうちに楽観視していた。特別棟にはガス管なんて無い。要するにこの一連の出来事は人為的な物だと分かる。

生まれてからこの方、犯罪に巻き込まれた事が無かったから忘れていた。この世界の住人は皆個性という凶器を持ち歩きながら生活している。だから犯罪件数が前世と比べて異様に多い。その事を完全に忘れ平和ボケしていた。

 

「皆さん教室にいて下さい、先生たちが状況を確認してきます」

 

どうするべきか考えていると先生が俺たちにそう告げる。先生が言うなら大丈夫、そう考えたのか窓辺に集まっていた生徒たちが一度落ち着き席に戻る。

それを確認した先生は満足そうに頷き隣のクラスの先生と職員室の方へ向かった。生徒たちは先生が行ったことを確認すると再び席を立ち話し始める。

 

「先生が行ったからもう大丈夫だな」

 

「ビックリしちゃったよ〜」

 

「でも授業サボれてラッキーじゃん」

 

「あはは〜確かに〜」

 

そんな会話をしているが俺は先生が行ったことで事態が収まるとは思えない。むしろ...

 

ドゴォン、ドゴォン

 

下駄箱の方から響く2回の爆発音。教室が一番端にあるのでよく聞こえる。あぁやっぱりか...

爆発音を聞きさっきまで雑談に更けていた生徒たちの間に沈黙が生まれる。そして次の瞬間、皆一斉に話し出す。

 

「え?今の音なに!?」

 

「また爆発した?」

 

「もしかしてヴィラン?先生たち大丈夫かな...」

 

「ヴィランが来ても俺がけちょんけちょんにしてやるぜ!」

 

反応は様々。困惑する者、心配する者、カッコつける者、多種多様である。そんな中俺はどう動くべきかを考える。

一人で逃げるのは多分イケる。けどここにいる皆を捨てて良いのか?皆で避難する場合、誰がヴィランを足止めするのか...そんな考えが頭の中を渦巻く。

そしてこの思考のための数秒が命取りとなる。

 

「ようガキども元気にしてるか?」

 

教室のドアがガラガラと開かれ浮浪者のような見た目の男が入って来る。大体180 センチ程だろうか、その大きな体をのそのそと動かしながら教卓の前に立つ。

 

「さてお前ら問題だ」

 

ニヤニヤと汚い笑みを浮かべながらそんな事を言い出す。なんだコイツと生徒たち全員思ったことだろう。疑問を顔に浮かべる生徒たちを見ながら男は言葉を続ける。

 

「お前たちの先生は何処に行ったでしょーうかぁ」

 

男から出された問題に生徒たちは誰も答えない。

否、答えることができないのだ。男から発せれる異質な気配を感じ取ってか本能が口を開くことを拒んでいる。

 

「はぁ、誰も答えれねぇのか。期待外れだなぁ」

 

頭をポリポリ掻きながらハァっと溜息をつく。

動け動け動け動け動け動け、俺の体よ動いてくれ!!

 

「じゃ、不正解の劣等生は処分という事で」

 

ドゴォン

 

手をこちらに向けながらそう言った次の瞬間、男の手がキラリと光り大爆発が起きる。煙によって視界が塞がれる教室。

 

「なんだ、ガキのくせに中々やるじゃねぇか」

 

俺の視界には男と生徒たちを遮るように成長した植物があった。間一髪の所で成長させた植物の名前はイチョウ。便利だから校庭に生えている木から種を取っていたこの植物は、耐火性に優れており木造建築でよく使われる植物でもある。今回はその耐火性に助けられた。

 

「木の壁とは面白い、一体どのガキの仕業だぁ?」

 

笑みを浮かべながら生徒たちを一瞥する。

怖い、逃げたい、知らないフリをしたい、でもこの教室で植物の個性を持っているのは俺だけなので皆が俺の方を見る。クソ、やはり小学校は地獄であったか、こうなったらもう頑張るしか無い。恐怖で震える体を気合で動かす。

 

「逃げろ!!」

 

その叫ぶと同時に個性を発動させる。

種を一気に成長させ被害が出ないように生徒たちから射線をずらす為に走る。展開されるのはたんぽぽ、が更に成長したわた毛。そしてコレを再びたんぽぽにしてわた毛へ成長させる。この動作を繰り返し密度を上げる。

 

「ギャハハハ、おもしれぇなおい!」

 

男は爆発を起こして一気にわた毛を燃やす。

だが一度で燃やし尽くせなかったため再びわた毛は増殖を始める。その間に生徒たちの方を見て逃げ遅れていないかを確認する。どうやら全員教室からは逃げれたっぽい。

 

「おいおい仕掛けてこねぇのかよ、詰まんねぇな!」

 

大爆発、一気にわた毛が燃されて俺までの道筋が一直線に現れる。どんな火力してんだよ。

 

「来ねぇならこっちから行くぞ」

 

わた毛を使い出来た穴を塞ごうとするも俺が個性を発動させるよりも先に距離を詰めてくる。

修復が間に合わないことを察知し防御の姿勢を取ろうとするもそれよりも早く男の拳が俺の腹に直撃する。

衝撃によって体が硬直し動けくなった所に容赦なく次の拳が顔面に食い込む。

幼い俺の体は少し飛ばされて地面をコロコロ転がる

 

「おいおい本体は貧弱だなぁ。ま、ガキに期待しても意味ねぇか」

 

なら言うなよ!と反論したいが殴られた痛みで口を開くことが出来ない。多分ひどい顔してんだろうな、とか思ったがふと我に返りそんな思考を放り捨てて次どうすべきか考える。

男の方は何か期待するようにこちらを見るだけで追撃はしてこない。残る種でも何か有効打を与えられそうなものは無い。また状況を打開できるような優れた策は殴られた痛みで考えることも出来ない。となればやる事は一つ。

 

「は?おい!?」

 

一瞬の隙を見計らって意識がそれた瞬間にイチョウで教室の扉に壁を作り全力疾走。

校庭に行くとまだ誰かが残ってるかもしれないので後先考えずに兎に角階段をのぼる。

体全身が痛く満足に動くことは出来ないので登るペースは遅いが階段にもバリケードを作り時間を稼ぐ事に徹する。

そのまま登り続け無事に追いつかれることなく最上階である三階まで辿りつく。このままヒーローがくるまで時間を稼げば俺の勝ちだ。

そう思い少しでも体を休めようと一度座り込む。

 

ドゴォン

 

俺の前で爆発が起きて廊下に穴が開く。んな馬鹿なと思いつつ重たい体を起こして穴から離れる。

 

「よう、随分とコケにしてくれたなガキィ」

 

清々しい程の笑顔でこちらを見る男。

ヒーローはまだ来ない。

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