植物を操るヒーロー   作:姉小路

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なんか違う感


道場

退院してから早数週間、俺は学校生活を楽しんでいた。

ヴィランの男が襲撃を行った結果、学校の施設や人の多くが失われてしまった。しかしこのアメコミ並みに治安の悪い世界では日常茶飯事なのかすぐさま対応が行われ、俺が退院するころにはすべての対応を終わっており普通に学校生活が繰り広げられていた。少し自分の持つ価値観とギャップを感じ少し考えるもそういうものだと自分を納得させた。

まぁそんな事を置いておき襲撃前と比べて俺の学校生活は一変した。入院生活中に人と積極的に関わる事を心に決めた俺は退院し学校に復帰して直ぐにリーダーの少年を始めとした色々な人とコミュニケーションを取るようになった。クラスのみんなの事は個性と顔で大体認識していたので話す話題には困らなかった。流石に本人たちには名前も分かんない、なんて言えなかった...

兎も角、今は結構満喫している。朝は近くに住む子と一緒に学校へ登校する。昼には机をくっつけて会話を楽しみながらご飯を食べ昼休みには皆で鬼ごっこやドッヂボールをする。

この字面だけを見れば小学生のテンプレートのような生活を送れていると思う。実際楽しいし嫌ではない。ただ個性の訓練が最近は疎かになってしまっているのが心残りである。

効率は目茶苦茶悪くなっているがこれは仕方のない事だと割り切っている。

と、なる訳もなく俺は悩んだ結果、今日から道場に通う予定である。

世の中では一般人も皆「個性」という名の凶器を持つようになったため武術、護身術を習う必要性がなくなり道場を始めとした場は廃っているというのが世間一般での認識だ。

だが完全に無くなる訳もなく現在でも道場は続いている。

主に個性を持たない人や所謂強個性に分類されない個性を持つプロヒーローの人たちが通うらしい。

俺の個性は多分世間的には強個性に分類されると思う。

だが肉体強化系ではない以上、本来である俺は簡単にやられてしまう。コレはヴィランの男との戦いで思い知ったことだ。だから道場で武術を習い近接戦闘を強化しようという思う。

 

「失礼しまーす!」

 

母さんに連絡をつけてもらった道場に挨拶をしながら入って行く。道場の中には6人ぐらいの人が互いに向き合い拳や武器で打ち合っている。素人目では白熱している事しか分からないがきっと凄いのだろう。ほへぇーとしていると一人の男に声をかけられる。

 

「お前さんかい?武術に興味のあるガキっていうのは」

 

「多分、俺のことです」

 

俺の返答を聞き男は興味深そうにこっちを見てくる。体を下から上までゆっくり見てから再び口を開く。

 

「オメェよくその年で鍛えたな」

 

どうやら実力を図ったっぽい。ただの変態かと思ったが違うようだ。俺から見ると男は何処にでもいそうな中年といった感じだがこの人は師範なのだろうかそれとも唯の門下生?何者なんだろうかと考えているとそれを感じ取ったのか男はニヤリと笑みを浮かべる。

 

「俺が誰だか気になるっていう面してるな」

 

「えぇまぁ」

 

「なら!教えてやろう!俺はこの道場の継承者!楊様だ!」

 

男は堂々とポーズを取りながら自分の名を名乗る。

それにしても楊って日本人では無いのか?このご時世少し珍しい気もするが...

 

「なんか信用してねぇだろ、お前」

 

「全然そんな事は」

 

「嘘をつけ、お前オーラが揺らいでんだよ」

 

「オーラって何を言ってるんですか?」

 

「信じてねぇな、まぁいい」

 

ヘラヘラとしながら楊はその場に座り込む。

何だコイツ、本当に道場の師範なのか?とか本格的に後悔と疑念が湧いてき始めた瞬間、足元に衝撃が走りその場にコケてしまう。

痛みを堪えて周りを確認すると眼の前にいた筈の楊の姿がない。アイツ何処に行った!?急いでたんぽぽを成長させようとする。

 

「その思い切った判断は良いと思うが如何せん本体がな」

 

背後から楊の声が聞こえる。俺は持ちうる身体能力の全てを使い思いっきり楊に向かって渾身の拳を放つ。

しかしそれも虚しく宙を切る。そのまま態勢を崩した俺は地面に倒れ伏す。

 

「ま、何となくお前の強さは分かったよ」

 

「ぐうぇ」

 

 

倒れた俺の体の上に楊が乗り体重をかけてくる。小学生に中年男をどかせる力があるわけもなく為す術なく下敷きにされる。ニヤニヤしている面を変えることなく楊が言う。

 

「あんま乗り気じゃなかったけどお前の面倒を明日から見てやろう」

 

「わかったから、どけ」

 

「睨みつけんなって怖いなぁ」

 

口では怖いなどと言っているが表情を変えず、楊は飄々としている。

それにしても明日からって何でだろう、別に今日からでも良いのに...

 

「不満そうな顔してるが明日のメニューを一日考えるための明日からだ。勘違いすんなよ」

 

「人の心を見透かすな」

 

「読み取りやすいおめぇが悪いんだよ」

 

ナチュラルで人の心を読んでくるコイツとは波長が合うし多分仲良くやってけると思う。

取り合えず今日は帰れとの事だったので来て三十分ぐらいの滞在期間で道場から帰る事となった。

あまりに早い帰宅に母さんは驚いていたが何も言わずそのままにしておいた。

 

次の日、学校が終わるといつもと同じようリーダー少年に遊びに誘われたが習い事を始めたと言い断った。一応習い事に分類されるだろうし嘘は言っていないだろう。少し申し訳なさを感じつつ家に帰りランドセルを置いてから道場に向う。

 

「おう、やっと来たか」

 

道場に入ると熱気と汗のにおいが一気にやってくる。大人の皆さんが今日も真面目に修練をしていた。その中、楊は俺を見つけるとこちらに向って手を振ってくる。中年のおっさんが手を振っているのだ少しきつい。

 

「昨日言った通りお前の為にメニューを考えて来た。結構面倒だがついて来れるか?」

 

「もちろんです」

 

「良い返事だ。お前はここに来る前から体づくりをしてたらしいから体力に関しては問題ない。筋肉も年齢と一緒に付けていけばいいだろう。」

 

思ったより真面目な分析で驚いたがしっかりと聞く。

それにしても体力づくりがこのタイミングで生きてくるとはラッキーだな。

 

「お前の個性だがこれは俺が今まで見てきた中でもトップクラスに分類される強個性だろう。だがないくら個性が強くても本体であるお前が弱かったら宝の持ち腐れだ。そこでお前には近接格闘を始めとした格闘技を一通り習ってもらう。」

 

「一通り全部って武器を持つ武術もですか?」

 

「あぁ、お前みたいな体が脆いヤツなら武器を持ってなんぼだろう。武器を持つことを卑怯だと言うヤツもいるが俺様からしたら個性も武器も変わらん。どっちも凶器だ。」

 

この世界において楊の考え方は異質なものだろう。これから先の人生また同じ考えの人を見つける事が難しそうだ。

 

「それで今日からはどの様に?」

 

「お前はまだ若い、取りあえずは型から始めるぞ」

 

「了解」

 

楊は俺の返答に面白くなさそうな顔をする。

 

「お前、本当にガキかよ。お前みたいなガキは型なんてやりたがらないんだけどな」

 

「子供らしくなくてスミマセンね」

 

楊のしょうもないからかいを右から左へと聞き流し早速基本となる型を教わる。一つ一つ丁寧に見せてくれる門下生の動きをよく観察する。十個前後の型が終わった所で俺も見様見真似でやってみる。門下生のやった動きのように一つ一つ丁寧に。それだけを意識して行う。

 

「駄目駄目だな、もっとこう力を抜かないと」

 

そして型を真似するたびに門下生からダメ出しを食らう。まだ初めた初日なんだから優しくしてくれても良いと思う。そのまま何度もダメ出しを喰らいながら動きを改善させていった。楊からは煽られたりしたが何とか初日を乗り越えた。今日の流れを見て漫画の様に一瞬で強くなることは無い、そんな当たり前のことを肌で実感した。

だが焦る必要はない。まだ時間はたっぷりある、着実に積み重ねていこう。そう思った。

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