姫川…もとい上原宅へいくフリル。姫川大輝と家族のことについて話をするが、母親の姫川愛梨の件はネットに出ている知識程度のことしか知らないことが分かる。
そんな時フリルのカバンに隠れていた硝太が姫川を奇襲して気絶させる。硝太を叱るフリルだったが自分がつけられていたこと、つけていた相手か来ていることを知らされる。まるで自分が襲われたストーカー事件の時と同じような構図に、フリルは硝太を止められず「忘れるな」としか言えなかった。
舞台『東京ブレイド』も何度か公演を行い千秋楽が見えてきたある日、苺プロ。B小町の三人組はレッスン用の部屋でいつも通りのレッスンをしていた。その休憩中、何かを確認していたMEMちょが自信ありげな顔で発表する。
「遂にYo〇Tubeの登録者が2万人を超えました」
B小町の3人で運営しているB小町チャンネルの登録者数が2万人を超えたのだ。春頃にチャンネル開設して半年以上が経つB小町チャンネルだが苺プロがネット動画に強いのと元々人気な為客寄せとしてもY〇uTuberとしても強いMEMちょの加入でチャンネルの登録者数は伸びて2万人という大台を越えた。
MEMちょは女子高校生二人が喜ぶ様を想像して胸を張るが本人達二人の反応は淡白なものだった。
「あーまだそんなものかー」
「登録者100万人は遠いなぁ、もっと頑張らないとね!」
そんなものかとため息をする有馬はいつも通りだがいつもやる気で元気一杯のルビーでさえMEMちょの反応から期待したのか、その分肩透かしをくらったようでガックリと肩を落として有馬と共にため息を吐く。二人の頭の中には超有名人投稿者達の100万人という桁が違う数字が浮かんでいる為2万人という数字は目標のたった2%という少なすぎる数字に感じてしまっている。
「もっと私を褒めてぇ!?」
二人が喜ぶと思った分、MEMちょも反応が薄いというよりガックリとした二人を見て驚きの顔を見せる。
それもそのはず。B小町チャンネルは苺プロとMEMちょで投稿から編集まで全て終えており、外部の事務所や編集の力を使っていない。その上で1年も経たずに登録者2万人という日本のチャンネルの中で上位10%の中に入っている。たまにテレビに出るような投稿者が100万人クラスの超人気者で、MEMちょの個人チャンネルがB小町入る前の時点で37万人もいて今も少しづつとは言え上がり続けているため目が眩むが開設して1年経たずに2万人の時点で十分上澄みなのだ。
「そんなこと言ったって今月の収益なんてお小遣いレベルじゃない」
とはいえ収益としては個人でやってやっと生活ができる程度であり、事務所の取り分も当然ある。その上B小町チャンネルの場合メンバーが3人いるので3等分することになる。そうして残った収益などその辺の高校生が同じ時間バイトした方が儲かるレベルである。
MEMちょもそこは認めるしかなく微妙な顔をして近くの椅子に座るが、何か思い出したようで即座に立ち上がる。
「まぁ、現状の財政状況はあまり宜しくない…というわけで!テコ入れプランその1!PVを撮ろう!」
「PV!」
「まぁ、楽曲PVが一番アクセス数取れるからねぇ」
これまでB小町チャンネルは最近の流行やら喋る系やチャレンジ系、たまにゲーム実況等の動画を撮ってきたがアイドルといえばやはり楽曲。PV動画がファンが一番望んでいるものであり、アクセス数も稼げる。百万単位のアクセス数を取れる動画が一本でもあればそれをサンプルに営業にも行ける。
「でも撮影って高いんじゃない?」
「ふっふっふ。地方でデザイン会社やってる私の友達がね、現地まで来たらお友達価格で撮ってくれるって前言ってた!」
撮影の料金を心配する有馬だがMEMちょは自身の人脈の広さから宮崎でデザイン会社をやっている友人を思い出す。アイドルになった事を報告した時にいつかPVを撮るならウチで、と話してくれた相手で価格とクオリティ共に申し分ない。苺プロとの関わりはないのでMEMちょの人脈がなければここまで都合のいい条件はありえないだろうと言っていい。
「『東ブレ』ももうすぐ千秋楽だし、硝ちゃんの怪我の治りも順調だし慰安旅行も兼ねるのはどう?」
「まぁ…いいわね」
現地でなければ撮影はできないというポイントもあるが彼女の手でかつ格安でPVを作ってくれると思えば全然目をつぶれる。むしろ『東京ブレイド』の舞台が終わればメンバーの仕事も一先ず落ち着くのでついでに旅行でもしてしまえばいい。MEMちょは左腕に三角巾を巻いている姿を見なれてしまった弟分を思い出す。彼は毎週のように病院に行っているが怪我の治りは今のところ順調らしい。医者の判断は聞いていないので確証は無いが旅行ぐらいなら行けそうだと思う。
「で、地方って何処?」
「えーっとね──」
「宮城の高千穂かな?アマテラスの逸話が有名なところだね」
MEMちょがスマホを取りだして調べようとするのとほぼ同時にレッスン用の部屋に硝太が入ってくる。先程までの話を聞いていなかったのに、聞いていても分からないはずのMEMちょの友人のクリエイターのいる場所を言い当てる。
「なんでわかったの!?」
まるで未来視をしたように言い当てた硝太にMEMちょは今日一番の驚いた顔を見せる。有馬も声に出すことはなかったが目を丸くして硝太の方を見る。
しかしこういう時一番に反応するはずのルビーは硝太ではなく、硝太が言い当てたMEMちょの友人のいる場所に注目した。
──宮城の高千穂。
宮城県はルビーの前世、天童寺さりなが産まれて、そして亡くなった場所である。高千穂の周辺にはルビーが亡くなり、雨宮吾郎がいたはずの病院があったはずだ。
それだけなら懐かしんだりする程度で終わる。懐かしい物が見れたり、もしかしたら雨宮吾郎に会えるかも、と考えたかもしれない。だがルビーの頭の中に浮かんだのは別のこと。
『じゃあね、次は高千穂で会おうか』
魔女と名乗った謎の女に言われた言葉。その女はルビーを見て「転生は初めて見た」とルビーのことを転生者だと知っていないとできない発言をした。本当はルビー本人とアクアしか知らないはずの、アイですら知らないことを勿体ぶって言う訳でもなく、さも当然のように、まるでルビーかアクアが周りにそう吹聴しているようにさらりと言った。
まだ転生者だということがバレているだけならいい。だが友達にも言ったことの無い事実を知っていることは全て知られている可能性もある。ルビーの前世、天童寺さりなの事も。最悪の場合、ルビーとアクアがアイの子供だということも知っているかもしれない。そんな相手が次に会おうと言ったのが宮城県の高千穂。当然その時ルビーは宮城県に行く予定なんてなかった。ルビーとしてアクアと共に産まれたのが宮城だとどこかで聞いたが、自分が転生したと気づく、普通の赤子で言うなら物心がつく前に東京へと来てそれ以降旅行などで宮城に行った機会もない。だが少なくとも今回のPV撮影で行く場所が宮城だということを魔女は知っていた。未来を見ているような発言にルビーの背中に冷たい汗がつたう。私に
魔女の素性も名前ですら分からないのもあって何をしてきても不思議じゃない。ルビーはアクアのように頭の回転が早いわけでも対応力が高い訳でもないのでこれといって答えを出すことも出来ず、何も言えずに視線を落としてしまう。
「──姉さん?」
考え込んでいるのを疑問に思った硝太がルビーの顔色を確認する。右目が青くなっている訳では無いが2人の身長の関係上覗き方が俯いたルビーを見上げているのでルビーの視界の大半を硝太が占める形になる。それを急にやったものだからルビーも驚いて近くのソファに座る。疑問に思いながらも硝太はその隣に収まる。
「ううん、なんでもないよ。えーっと、なんだっけ?」
「みんなで宮城旅行行こうって話だっけ、東ブレの話だっけ」
「PVだよっ!?」
魔女を名乗る不審人物に隠し事を暴かれた、なんて素直に言えるはずもなくルビーは硝太の目線を嫌って頭を押し付けるように力強く撫で回す。とは言え相手は硝太。ルビーの力では押し付けることなど出来るはずもなく、ただ撫でられているのを喜んでいる様子が残りの二人に見える。そんな状態でも仲良く姉弟らしいバカっぽいやり取りをしてMEMちょが素早くツッコミを入れる。
おバカキャラを自称するMEMちょも実際はキャラを作っているだけあって真のおバカであるルビーと視点がズレている硝太には手玉に取られる。わざとらしく咳払いをして一旦リセットする。
「とりあえずPVの件は社長にも話は通しておいたし、スケジュールは早め組んでおくから確認してね。硝ちゃんも行けるか確認しといて」
「お母さんが行くなら飛行機にしがみついてでも行くから安心して」
「冗談に思えないから辞めなさい」
スケジュールの心配事といえば『東京ブレイド』の舞台と硝太の怪我程度なもので学生の有馬とルビーは今後冬休みで時間が取れるしMEMちょも個人営業主なので時間は作れるので相手の反応に合わせてで柔軟に動ける。硝太はキメ顔で飛行機にしがみついてでも同行すると冗談のようなこと言うがJIF本番前に某蜘蛛のヒーローのように天井に張り付いた姿を見た有馬は冗談に聞こえず横からキツめに言いつける。
「PV撮影するなら新曲の分も撮りたいねー」
「新曲?そういえば社長が頼んでるって」
PVの話に戻るとルビーは前々から聞いていた新曲の話を思い出す。現在B小町はアイがいた頃の旧B小町の曲でやりくりしていた。必然的にファン層は旧B小町ファンが多くなる。十数年前の曲となれば古臭く感じるところも多い。昔懐かしい曲が一周まわって新しく感じるという意見から盛り上がっているところもあるがどうしても今のSNS時代に乗り切れていない。
何より新生B小町が伝説のアイドル『アイ』がいた旧B小町を懐かしむためのグループでしか無くなってしまう。実際センターのルビーはアイの娘である事実を世間は知らないが血は争えないので顔や雰囲気が似てる。ペンライトも赤で共通点が多い。
なんだかんだ芸能界に長くいる有馬と元々You〇uber兼Tikto〇erとして多くのファンがいるMEMちょと違ってルビーは新参者。新参者がいきなりアイドルの花形と言えるセンターに収まっている理由をファンが探せば『アイ』に似ているから、という理由が作れてしまう。『星野ルビー』は『アイ』の代わりになってしまっているのだ。イメージ戦略としてもアイとルビーの親子関係がバレない為にもそれはよろしくない。ルビーはルビー、ただアイに似ている見た目を持つだけで別の女の子だと言わなければならない。
そんなイメージを振り払う為にも新曲とそのバズが必要。これは新生B小町が旧B小町から卒業する為に必要な儀式なのだ。
だが肝心のその新曲は苺プロの元には届いていない。四人はその確認の為にレッスン室から出てミヤコのいる事務室へと行く。事務室には予想通り数人の従業員と共にミヤコが仕事していた。
「お母さん、B小町の新曲の話ってどうなってるの?」
硝太がミヤコの隣に瞬間移動と間違えそうなスピードで移動すると四人を代表してミヤコに新曲のことを聞く。
新曲の発注自体は硝太がB小町のマネージャーをしている時からあった。だがミヤコは何故か発注した相手をB小町の三人だけでなく、マネージャーだった硝太にすら伝えていなかった。硝太が隠し事が下手だと言ってもあくまで事務作業をする立場の硝太に隠すということはよっぽど大事な情報なのだろう。だが、もう発注したと聞いてから半年近く経つ。いくら何でも遅すぎるのでこれでは本当に発注したのかどうかすら怪しい。硝太の場合はミヤコを疑うことは欠けらも無いが、理由として気になるのも事実。三人が揃って来ているのもありミヤコは誤魔化せないと考えると「皆を驚かせようと思って黙ってたんだけどね」、と前置きを置いてパソコンを畳んで立ち上がる。
「新生B小町の初オリジナル曲はB小町の楽曲を多く手がけてきた『ヒムラ』さんにお願いしたの」
「誰それ」
「えっ!?ヒムラ!?」
発注の遅れの理由が聞けるかと思ったら発注した相手を聞いた硝太は素直に切り捨てる。だがB小町の三人はそれぞれ変なポーズをとりながら驚いている。
「自身もトップアーティストとして第一線で活躍して…!」
「作曲家としてもヒット曲を連発…!」
「B小町の代表曲『START☆T☆RAIN』を手がけたあの…!」
三人とも分からないと思っていた硝太はファンなのかと思う程良い連携でヒムラという男の紹介をする三人を見て絶句する。三人が取ったポーズが某光の国の巨人を真似しようとするも記憶が薄いので真似出来ないと言っているようなヘンテコなのもあるが仲のいい三人の作ったようなセリフと絶妙な連携を見るのがこれか、と肩透かしを食らった気分にもなる。それはそれとしてどうやらヒムラという男は大御所らしい、それも旧B小町つまり昔の苺プロに関わりのある相手なんだと理解させられる。
思わぬ大御所へのオファーに三人とも「早く歌いたい」と喜んでいるが、問題はそこではない。ミヤコもそれに気付いているので表情を歪ませながら言葉を続ける。
「ただね──先月末までの締め切りだったんだけど、まだ上がってないのよね。向こうも忙しいでしょうから仕方ないけど」
まさかのオーバー発言に大物作曲家の作曲した曲を歌えると喜んでいた三人も苦い顔でボソボソ言い始める。
「あー100%舐められてるやつだこれ」
「芸能界長い人ほど締め切り守らないよねぇ。ホントのヤバいやつしか守らない…」
芸能界に触れている時間の長い二人は思い当たる節があるのか、ウンウンと頷いている。
世間からすれば新生B小町はできたばかりの新人アイドルグループ。B小町という名前と業界歴の長い有馬とMEMちょがいるとはいえ大物作曲家にはおいそれと頼めるものではない。立場として相手の方が上なのだろう。
硝太も「そういえばアビ子先生もオーバーしそうになってたこと何度もあったな」と超売れっ子の漫画家を思い出す。アビ子には舞台の初日を見て以降会っていないし連絡も取り合っていない。舞台は成功してもアビ子の周りが良くなる訳でもなく、今も作業に追われているのだろう。宮城旅行の前に一度顔を出してみるかと関係ないことを考える。
「だからもう少し時間がかかるかも…」
「やだ、催促しよ?」
これといって大きい訳でもない事務所が大物作曲家に圧をかけるのは相当難しい。最悪の場合「じゃあ辞めます」と言われて辞退されることもあるし、そこからその話を広げられたら他の作曲家にも話を通すのが難しくなる。MEMちょと有馬もじゃあ仕方ないか、と諦めていたところにルビーは圧をかけ始めた。天真爛漫で子供っぽいルビーの圧なので特別怖い訳でもないが諦めが悪いことに変わりはない。
「そうは言ってもヒムラさんに書いてもらえるだけありがたいのよ?一応メールで催促は…」
「やだ!やだ!やだ!やだ!やだ!やだ!今電話して!」
弱小事務所である苺プロがヒムラに作曲してくれと頼んで受けてもらえる理由はヒムラが『B小町』に思い入れがあるから、でしかない。
一応メールで催促していることを言うミヤコだがその程度でルビーが収まる訳が無い。お菓子を買って貰えない幼稚園児のように床に寝転がると「ヤダヤダ」とじたばたしてごねる。
こういう時にミヤコの味方になるのが硝太だ。ミヤコは硝太のいる場所に目線を向けるが、肝心の硝太はルビーの真似をしているのか高速で屈伸運動をしながら動く右腕をバタつかせている。ルビーのようにごねてる訳では無いが真顔で黙りながら動いているせいでFPSの煽り行為にしか見えない。なんか2、3人に分身しているように見えるが、流石のミヤコもそれは目の錯覚ということにしておいた。
頼みの綱であるはずの硝太がルビーの味方に回るとミヤコは押されるしかない。今までルビーのことを娘のように思って接してきたが、あくまで他人の子だということもあって今まで強く言葉で叱ることが出来なかったので今もこうして戸惑っていることしか出来ない。
「そんなに焦らなくても…」
「焦るよ!アイドルがアイドルでいられる時間は短くない」
ルビーはじたばたするのに飽きたのか急に立ち上がると今度は真っ直ぐミヤコを見て視線で訴えてくる。
アイドルは女性芸能人の中でも驚くほど旬が短い職業だ。男性アイドルなら4、50代もたまにいるが女性アイドルは求められているものの性質上20代までが限界とする意見が多い。若者にとっての10年は驚く程に短い。
「先輩は時期が来たら役者の道に戻っちゃうし、MEMちょはあと5年で三十路に──」
「ぐふぅっ!」
MEMちょに流れ弾が一発。MEMちょは今25歳なのであと5年で30歳。先述の例に当てはめるならアイドル引退も見えてくる。
有馬も元々は女優志望でアイドルも名前を売るためでしかない。目的を果たせばアイドルをやめて再び役者としての人生を歩むだろう。そういう意味ではMEMちょよりアイドルの期間は短いかもしれない。
それはそれとしてMEMちょに襲いかかった年齢という流れ弾のダメージは意外と大きいようでMEMちょは白目を向きながら倒れそうになる。それを先程まで屈伸運動していた硝太が素早く支える。ミヤコの影響で女性の年齢を特に気にしない、むしろあればあるほどいいとでもいいそうな硝太だが、社会はそう優しくない。
「大丈夫だよMEMちょ!まだ5年
「もう5年
「ぐはぁ!」
MEMちょに流れ弾二発目。
支えているはずの硝太が渡したパスをルビーが勢いよくドライブをかけて放つ、というイメージで出てきた言葉はMEMちょの逃げ道を塞ぎ致命傷となった。
残念ながら5年という期間を先に設定されたせいで硝太の「30歳でもアイドルやれるよ」という言葉は出てこなかった。
「…」
吐くもの吐き出したのかと思うほどげっそりしながら白目を向いてビクビク跳ねてるMEMちょを硝太が片腕とほんの少しだけ動く左手で器用にお姫様抱っこすると近くの長椅子に寝かせる。姉と一緒にトドメを刺したクセにこういう時の対応は恐ろしく早い硝太を有馬はジト目で見つめるが特に何も言うことはなかった。
MEMちょが倒れてもルビーはミヤコから目線を離さずミヤコを見つめる。
「私達は今を走っている。ゆっくりしてる暇は無い」
ルビーの発言に何やら思うところがあるのかミヤコは目線を外してしばらく考える。ルビーの言っていることは最も。SNS時代の今、人気者が人気者でいられる時間は短いをただでさえ旬が短いアイドルなら尚更動き出しは早いに越したことはない。
とは言え先程から考えていたようにヒムラに逃げられては困るので苺プロとしては強く圧はかけられない。メールでの催促をしてるが結果として出てこない以上電話も断られる可能性が高い。だが新生B小町最初の曲はヒムラに書いてもらいたいとミヤコは思っている。ヒムラの書いた曲ならそれだけで業界的なイメージはいいだけではなく、アイのいた旧B小町に思い入れのあるヒムラにこそ今のB小町の曲を書いて欲しいと思っている。今更新しい作曲家を探すなんてことはミヤコも考えていない。ヒムラをどうにか曲を書かせる方向に導かせられるものがあれば、状況が変わるかもしれない。
「分かったわ。じゃあその為に、ルビーには少しお願いしてもらいたいことがあるの」
ただ催促するだけでは良くない。なら書きたくなるだけの熱力を与えるのが一番軋轢が少なくて済むしルビー達の自信にもなる。もちろんこれも絶対では無い。だが強く要求した結果逃げられたり、時間がかかりすぎてなあなあで済まされるのに比べたら十分メリットの方が大きい。
そう感じたミヤコは親から娘としてではなく、苺プロの社長からB小町の
「良いの!?何!?」
「その新曲欲しいって言うのをヒムラさんにビデオメッセージとして送って欲しいの。私が言うよりルビーの気持ちが伝わった方がヒムラさんもいい曲が書けるでしょ?」
「ほんとだ!流石ミヤコさん!」
ルビーもやる気のようでカメラマンとしてMEMちょの介抱をしている硝太を抱き上げると先程までいたレッスン室の方へと駆け出す。
純粋で、天真爛漫で、みんなに元気を届けられる。そんなルビーならヒムラの新曲へのやる気に熱を届けられる。芸能事務所の社長として色んなタレント達を見てきた立場からミヤコはそう判断した。
「ホント、あの子はアイドルね」
高い演技力で精巧な世界観を届ける役者でもなく、圧倒的な歌唱力で歌に彩りをつける歌手でもない。ルビーは暗い闇の中でさえ輝く一番星、アイドルだと。やる気がなさそうで誰よりもアイドル業務に真摯に向き合っていたアイのことを思い出してミヤコは頬が緩む。
「…そうですね。本当に、アイドルです」
有馬も、そんなルビーを見てアイドルとしては敗北を認めた。最初はルビーのことを顔だけの女と言ったが、持ち前のやる気と好きだという気持ちでルビーはもう立派なアイドルになった。事務所がもっと強ければトップ級のアイドルグループに入ることも出来たかもしれない。それだけの素質を持つルビーに少しだけ悔しく感じる自分がいるのを、認めたく無いのか有馬はレッスン室に行くことはなくMEMちょの近くに腰を下ろした。
前回の終わりから安定の時系列スキップ。
まぁ今回のやつはどっかのタイミングで過去回想として書きます。
それはさておき今日の話は原作のルームツアーとPV、新曲の流れを一話にまとめました。ホントMEMちょの存在が希少。ギャグやらせるのに全く抵抗なくて話も回せる優秀人物。映画なら最優秀助演賞貰ってる
感想、高評価、お気に入り登録よろしくお願いします!
ルビーがボケてMEMちょが反応して有馬がツッコみする