星野兄妹に挟まるワンコ系末っ子。
この3人の仲のいい掛け合いとそれを聖母の笑みで見守るミヤコさん。大好き
陽東高校には制服が存在する。
上半身は白のカッターシャツの上に襟や裾が金色になっている紺色のブレザー。下半身は男子は灰色のズボン、女子は短めのスカート。好みでネクタイかリボンをつける構成となっている。
高校に行く以上必ず身につけるもので合格した以上着ないという選択肢は存在しない。
「…硝太のサイズの制服がない?」
「そうなのよ。男子の制服って最小サイズでも硝太には大きくって…」
リビングで家族4人で並んで必要品を揃えている途中。陽東高校の出している制服のサイズを選んでいた時に硝太の制服のサイズがないことが発覚した。
硝太には分かるはずもない事だが、硝太は『あの事件』までは同年代と比べると身長が高い部類だった。兄姉と比べてガタイも見た目だけなら年上に見られることも珍しくなかった。しかしその事件以降身長を含めた見た目がまるで変わっていない。兄姉も年齢を重ねて順当に成長しているというのに硝太だけは見た目は4、5歳頃に見える。小学生ならともかく高校生にその年頃の子供にあった制服を用意しているはずもない。
「硝太って今何cmだっけ」
「140cmぐらい?」
陽東高校の男子生徒の制服は最小サイズで150cm。これでも-2SDと呼ばれる身長が標準偏差の2倍以上低い場合、つまり低身長に当たる。それでも硝太が何となくで答えた140cmには10cmも足りない。ズボンは裾の調整程度で何とかなるとしてもジャケットのようにそうするわけにいかないものもある。
「そんなもんか?」
直立している硝太の頭頂部は現在、同じく直立しているルビーの胸のあたり。つまりルビーの頭一つ分以上に低い。ルビーの身長が158cmであることを考えると135cmから140cm。妥当といえなくも無い。しかしアクア目線ではつま先立ちをして必死に高さを稼いで、それでも髪の毛で数cmぐらいは盛ってるように見える。その分を考慮しなければ120cmから110cm程度。サバを読みすぎて逆に騙されそうになるがそれ以上は追求しないでおいた。
アクアなりの兄心、なのだが硝太の家庭の事情を知ってるミヤコとルビーからするとアクアが硝太の父親役をやろうとしているようにしか見えない。
「そんなもんだと思う」
「硝太はー小さい頃からほんっっっっとに変わってないもんねー」
だから可愛いんだけど、と付け加えながらルビーが硝太の首を締めるように抱きしめながらその場でぐるぐると回る。これはルビー、そしてミヤコのくせで硝太の脇の下に手を回して持ち上げるように抱きしめることが多い。抱きしめると落ち着くのと同時に幼いながらも力をつけた硝太が迷子になったり暴走したりしないようにするための行動。硝太は脇の下を持ち上げられると急に力を失って大人しくなることが多い。硝太がだらんと力を無くしてなすがままになっている姿は足こそついているものの親猫が子猫の首根っこを掴んで運ぶのに近い。
その様子をミヤコが視界の端で捉える。
変わっていない。本当に変わっていない。硝太だけ『あの事件』から時計の針が止まったように変わらない。もちろん、背が伸びないどころか顔も大人びた形にならず、声も変わらない硝太のことはすぐに病院に検査してもらった。強いストレスを受け続けると成長が遅くなったり止まったりすることがあるという話は何度か聞いたことがある。硝太もその類だと思った。
──しかし病院の答えは『分からない』だった。
ストレスの可能性もあるし、元々生まれながらにそういう体質の可能性もある。『あの事件』以降変わった体質になってしまったのも原因なのかもしれない。
ここまで大きな成長阻害は前例がないため医者もこれといった答えを出すことが出来ず、成長ホルモン等の治療にも踏み出せない。
背が伸びたりという成長は一切見られないのに筋肉だけついて体重だけなら一般的な成人男性に近いのも尻込みする理由に拍車をかけているのだろう。様々な医療機関に足を運んでも出てこない答えと治療。その中でとある医者が放った言葉が耳に残る。
『まるで、この子が成長を嫌がっているようだ』
根拠なんて無い、予想にしても当てずっぽうすぎる独り言でしか無かったがその言葉は妙に記憶に残っている。
成長を嫌がったぐらいで背が伸びなくなるなんてそんなわけが無い。仮にあったとしても硝太は成長しないことを問題視しているのでそれも有り得ない。
だが、ミヤコには思い当たる節があった。
もし、成長したくないと思っただけで成長が止まるのなら。もし、硝太が記憶障害になってもトラウマを持っている理由がつけられるのだとしたら。
──いいとこもやなとことも全部お姉ちゃんでしょ?なんかコギレーなとこだけみてってわかったキになるのやだ。
幼い硝太がとある女性に言っていた言葉。まだ2歳か3歳の幼い子供がさも当然のように言うには大人びていて、それでいて年相応に舌足らずな子供らしさのアンバランスさに聞いてすぐは笑ってしまった事もよく覚えている。
だがあの発言は硝太の真意だとしたら。硝太が成長したがらない理由には十分なる。
「とりあえず最小サイズの制服にして裾あわせするなりしてあわせるしかないわね」
ルビーに振り回されている硝太の頭を優しく叩きながら硝太の制服を最小サイズで申し込む。同じ年齢、性別のアクアが平均的な成人男性の背格好で制服を申し込んでいる分非常に目立つ。
「…ごめんなさい」
「いいのよ。気にしないで」
内心で考えていることに気付いたのかルビーに抱かれながらも弱々しく謝ってきた硝太の頭を優しく撫でる。
「入学の前準備はこんなもんか」
「そうだね…2人共は大丈夫そう?」
「お姉ちゃんは大丈夫だよー」
「俺は硝太の方が心配だけどな」
「なんでさ」
アクアも硝太を弄るのに参加して、子供達が入学に向けて会話している様子は三人が子供の頃から変わらない。
ルビーが天然発言をしながら硝太を可愛がって硝太が少しズレた対応をしてアクアが長男としてそれにツッコミをしたり訂正して纏める。
硝太と二人の血が繋がっていないとはとても思えない仲の良さにミヤコは自身の頬が緩んでいるのを自覚した。
因みに硝太の身長はスレ内で設定がコロコロ変更されていまして最初はアクアより少し低い、程度だったのですが硝太の設定が変更されていくタイミングでだんだん縮んでいき、今では140cm(ぐらい)となってはいますが4、5歳からほとんど変わっていないという設定上まだ縮む可能性が高そうなのでこの話では確定せずに140cm以下、としました。
※追記硝太の身長は110cm程度(比較するとルビーの胸の辺り)と設定変更しました
硝太の身長がほとんど変わっておらず声変わりもしていない理由は本編で語る予定なのでお楽しみに。
感想、評価の方よろしくお願いします。
次は入学式、お楽しみに