新生B小町の新曲PVを宮城で撮ることが決まり宮城旅行も決定する。
同行できることになった硝太とフリルを見てルビーはキャリーケースを始めとした旅行グッズの買い物に行くことを提案。
旅行を行くことを決めた硝太は『東京ブレイド』の作者鮫島アビ子の元へと戻り彼女の状況を確認する。もう会いに来ないつもりの硝太だったがアビ子の様子から契約ではなく知り合いとして関係を続けることを決める
硝太と二人っきりになるのは別に珍しいことでもない。ストーカー事件から事件に巻き込まれた被害者二人として、
デート、と呼べるようなことは一回したがそれも硝太の認識では事件後気になることを調査というレベルの話である。その後の映画も彼にとっては同行人の頼みを聞いた、程度の認識でしかない。
「今日のも、ただのお出かけってレベルなんだろうな」
着ていく服を選びながら見られる相手の顔を思い浮かべる。硝太の服の好みはルビーから聞いたことがある。彼女曰く露出が多い物よりスタイルがよく見える物の方が好みらしい。胸の大きい女が好きだと何度も言っていた。これだけの情報だと硝太の好みは長身で胸の大きいいい女。中身で言うなら母性たっぷりの女性ということだろう。見た目だけではなく人の好みも小学生っぽい、と思ってしまうのは私だけではないだろう。そんな硝太が好きな私も私なので特に文句は無いが。
何はともあれ身長はともかく胸に自信が無いなら大きく見せるしかない。ひっそりと買った胸が大きく見える服を出してみる。ファンからはスレンダーなのがいいと言われる私の身体だが硝太から見たら胸のボリュームはやはり物足りないと言わざるおえない。
「入学した時よりは大きくなってるはずなんだけどな…」
バストアップにいいマッサージや筋トレをしてできるだけ大きくなるように努力して少しは大きくなっているはずなのだが自分自身ですら変わったように感じない。毎日のようにGカップのみなみと会っていて家に帰ればみなみと同じかそれ以上のサイズのお母さんがいる硝太からすれば私の胸のサイズは小さい部類に入っても仕方が無い。B小町のメンバーで見てもルビーも比較的大きくてMEMちょもほぼ同サイズ。私より小さいと思うのは有馬かなぐらい。ここから手術もせずにでかい側に入るのはかなり難しいだろう。
ならば、持ち味を生かすべきかか。背が高く、スタイルがよく見える服をとりだしてみる。体のラインがよく出て大人っぽい、芸能人『不知火フリル』の印象から外れることのない、番組出演にも使えるようなクールな印象を与える服。
だがいくらなんでも芸能人『不知火フリル』の印象に合いすぎて硝太から好評だとしても他の一般人にバレる。サングラスやマスクである程度隠すことは出来たとしても今度は子供の誘拐犯だ。硝太が小学生みたいな見た目なので彼氏だとか言われることは無いだろうが記者に余計なネタを与えたくないのも事実。取り出したばかりの服をそのまま押し入れに戻す。
どうにか年の離れた友人、あるいは姉弟のように見えて尚且つ私が不知火フリルだとバレないようにするにはどうすればいいのか。
「…?」
そう思いながら服を片付けていると、奥の方から買った覚えのない服が見えた。一瞬ストーカーの存在が頭をよぎるも気になるので引っ張り出す。
「あっ、これ…」
そこにあったのは真っ赤なブラウスと薄い茶色めのロングスカート。ゆったりとしている以外にこれといった特徴も柄も何も無いシンプルなものでイメージ的にも私にはあまり似合っていない。若者感も薄れており、着るとしても十年は後になりそうだ、だから着ずに買ったことも忘れてしまったのだろうがこの服を見た時別のイメージが頭に浮かんだ。
「硝太のお母さんみたい」
硝太の母親、苺プロの女社長で硝太のみならずアクアとルビーも育て上げた女傑。硝太の人生観を作った心の支えとなってる女性。硝太との関係もきっと彼女は気付いているのだろう、ストーカー事件で私が原因になって硝太が怪我してしまったことに気付きながら誰にも言わずにいてくれたという意味では十分恩もある。
硝太はマザコンなので彼女が着ていそうな服を選べば反応はいいかもしれない。もしかしたらそう思ってこの服を購入したのかもしれない。私の趣味という訳でもないし私らしいと言う訳でもないが、彼の好みという点なら一番可能性がある。
「…着てみるか」
迷いながらもその服に袖を通すフリルだった。
◇◇◇
同時刻、苺プロ社内。
「はい、硝太。今日はこれ着てってね!」
ルビーが硝太の部屋に入るなり、お出かけ用の服を置いていく。硝太の身長からして当然子供服になる訳だが幼く見えすぎないようにちょっと大人めな服を選んでいる。
衣服に関して頓着がない硝太に好きな服着ていけと言うとまず間違いなく動きやすさに特化したダサいジャージで外を歩く。散歩やジョギングをするのが目的というのならともかく、女性とデートするのにまずジャージは着ない。そもそも女性とデートするのと言う認識事態硝太にないと思われるが。硝太がそんな状態なので外を出る時の服はほとんどルビーが選んでおり、硝太は自分がどんな服を持っているかすらほとんど知らない。今度の宮城旅行でも同じような状態になるだろうとルビーは若干呆れた様子で姉離れできない末っ子を見る。
「ありがと」
ルビーが呆れてるとは考えもせずにルビーの方に近寄るとルビーが硝太を着替えさせる。不知火フリルのストーカーに刺されてもう3ヶ月以上経ち、左腕が動かない状態にも慣れてきた。日常生活はほとんど問題なくできるようになったとはいえ、着替え等まだ一人でやるには時間がかかったりできないものもあり、そういう所はルビーとアクアが中心になって介護をしている。
「今日は特にちゃんとしてかないとね」
「なんで?」
「だって硝太、フリルとデートじゃん。いい?男と女が二人で出かけたらそれはもうデートなの」
「へぇ…」
着替えをさっさと終わらせると硝太を自身の膝の上に乗せて髪の毛を整える。母親譲りの癖っぽい毛をクシでとぎながらフリルとの買い物をデートと意識させることを怠らない。だが当の本人は興味無さげに壁を見つめている。
確かに硝太の認識では旅行に行くのに必要なものを買い足すという買い物が目的であって、フリルと共に行くのもルビーやミヤコのような身内と共に行けないからでしかない。デートという認識がゼロなのは言わずもがなだが身嗜みすら姉のルビーが手を出さないとちゃんとしない辺り脈の無さを感じる。
──いや、ちょっと違うな。
ルビーは硝太の様子を見て小さな違和感に気付く。違和感、とは言っても硝太がなにか別のことを期待するような、心ここに在らずと言うべきだろうか。そんな状態になっていた。
まさか、ほかの女のこと考えていないだろうか。ルビー目線では硝太と恋愛的に最も進んでいるのは漫画家の吉祥寺頼子。男女的な相性ですら同年代のフリルよりよく見えるのでフリルにとっては一番大きな
まさかとは思うが恋愛のことを何も知らないくせに甘えられる相手にはひたすら甘え続けることに迷いがない硝太の事なので同年代との甘いデートより一回り以上年上の人に撫でてもらってる方が喜ぶと考えると否定できる言葉がない。
「硝太、女の子とデートに行くんだから余所事考えるの禁止ね」
「…ん?」
いくら恋愛感情が分からないからとは言っても友人のフリルのことを蔑ろにはしないだろうが一応釘は刺しておくルビー。硝太には引っかかるものはないため糠に釘でしかない。何も理解出来ないため真上にあるルビーの目を見上げてルビーの言葉の真意を見抜こうとする。硝太にじっと見られたルビーは撫でる手を止めてじっと見返す。
お互いに黙ったままそうしてると硝太の懐から着信音が流れる。ルビーから視線を外すと、ポケットからスマホを取りだして相手の名前を確認する。
「フリルから?」
「いや…ごめん、ちょっと。もしもし、僕だ」
今日のお出かけについてフリルから連絡があったのかと思ったルビーが一人で盛り上がるが硝太は普段ルビーには見せない冷たい表情を見せると膝から降りて落ち着いた声で電話に出る。雰囲気も口調もルビーが見慣れた弟としての硝太からズレた大人っぽいもので違和感を感じる。
「ああ、連絡した通りだ。今回ばかりはこちらに合わせてもらう。ああ、
「彼女!?今彼女って言った!?」
至って真面目に電話で話している硝太に対してルビーは『彼女』というワードを拾って先程自分がした最悪の想像が当たったのかと驚く。その時には数秒前に感じた違和感は明後日の方向へと行ってしまったようで『彼女』という言葉に頭が占領されている。当然硝太という彼女とは《Girlfriend》ではなく《She》の方なのだが硝太の対人関係において頭の中がピンクになる傾向のあるルビーにはもう違いが理解出来ていない。因みに吉祥寺とルビーが最初に会った時も同じような勘違いをしているのでルビーは学習していないことになる。
「悪い、後でメール出す」
彼女という言葉を聞いて驚いたルビーの声が電話相手に聞かれたのを嫌って硝太は簡潔に言いたいことだけ言うと一方的に電話を切る。
「ねぇ!電話の相手誰?」
「別に大したことないよ」
ルビーは電話の相手を聞くも硝太は誰か名前を言わず、大したことないとだけ告げる。個人名を出さないことで嘘をつかないようにする彼なりの誤魔化し方なのはルビーもよく知っている。だがその時ルビーはやっと電話をかける時の違和感を思い出す。いつもの声変わりしていない幼い弟らしい声と口調が大人っぽい。慣れていない人を相手にするときの警戒心と共にまるでドラマで偉い人が電話をかけてい時のような荘厳さを感じた。カッコつけるにしてもやりすぎで、硝太がそんなことを上手くやれるわけない事をルビーは知っている。つまり、先程硝太の電話が恋愛ごととは全くもっと別ののこと。それも誤魔化すということはルビーには話したくないもっと重大なことということになる。
そこでルビーが思い出すのはルビーを転生者だと言い当てた『魔女』の存在。ルビーが転生者だと知っているのはアクアとルビーだけのはずなのに初めて会った瞬間に言い当てられた。当然ルビーは『魔女』を警戒しているが感じ取っているのかそれ以降姿を現していない。何度もエゴサをしたがあの魔女はまだ誰にも「星野ルビーは転生者である」ことを告げていないようでネットで情報がばら撒かれたりはしていない。まだ「星野ルビーは転生者」なのはばら撒かれても信じる人なんてそうそういないので問題ない、「星野ルビーの前世は天童寺さりな」なのも同じだ。だが「B小町のアイと星野ルビーは親子関係」だけは絶対にバレてはいけない。それはアイが命を落としても守った約束を反故にすることではあり、ルビーの名誉と共に母親のアイの名誉も奪うことになる。まだ『魔女』が本当にそれを知っているのかは分からないが「星野ルビーが転生者である」ことを知っている以上、何を知っていても不思議じゃない。
──もしかしたら、硝太は既に会っていて対策しているのかも…
硝太が警戒心剥き出しで過ごすのは家の外にいれば日常茶飯事だが電話する相手にもそうするのは珍しい。そもそもそんな相手からの電話を受け取ること自体そう無い。だが硝太は姉の前でも電話を普通にとって会話をした。それだけの理由を考えると必然的に家族に関することが関わっていると結びつく。
──私も『魔女』に会ったよ、って言った方がいいのかな?
だが、それを言ってしまえば硝太に「星野ルビーは転生者」だと告げているようなものだ。別にバレてもなにかされる訳でもないとはいえ本当は別件だった場合硝太が『魔女』に危害を与えてでも口止めをすることは想像に難しくない。ただでさえアイの一件で一度記憶喪失になっている上に別件とはいえ芸能人のフリルのストーカーに刺されているのだ。今度硝太の身に何が起こったら無事でいる保証もないし、高校生にもなって事件のことで関わらせたくない。
なのでルビーはただ黙ることにした。直前まで『彼女』というワードに驚いていたり、硝太の様子から『魔女』と関わりがあるのではという疑いも全部頭の中にありながら表情や態度には出さず綺麗に取り繕う。アイドルなら誰もができる最低条件だ。
「そっか」
なんとなく、笑顔で頷いてみる。『魔女』は私が何とかするしかない、と思いながら笑顔でそれを隠した。
ラブコメやってるフリル&気ぶりお姉ちゃんルビー。
けど魔女の事を考えて硝太を心配しちゃうルビー。
弟の介護はミヤコさんとアクアもやるだろうけど基本的にルビーがやってそうな気がするのはルビーの前世がさりなちゃんなせい。自分がベットから起きられない女の子だった過去を持ってると同い年の弟が片腕動かないとずっと心配してくれそう。
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硝太はお姉ちゃんに感謝が足りないと思う